田丸雅智のレビュー一覧
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先日、ハヤカワ文庫JAで「ショートショートなSF」が出たばかりなのに、連続で今月も早川書房からショートショート関連の本が出た。しかも文庫本ではなく単行本での発行なので、早川書房の気合度が伺える。本書はSFマガジンの連載を纏めたもの。確か、一話2ページの量だったと思う。過去の記憶を呼び起こしながら読み進めたが、ストーリーは殆ど新鮮に感じたので、もしかしたらSFマガジンでは読んでいなかったか?
先週のハヤカワ文庫JA「ショートショートなSF」では数多くの作家の多岐に富んだ文体を楽しむことができた。一方、今回の「未来図」では単一作家によるショートショート27篇を一冊に纏めたもの。安定した語り口でとても読みやすく楽しかった。ただ、この本の続編、続々編は簡単に続くのだろうか。「未来図」は一つ一つの作品の完成度が高く、内容の面でもバラエティに富んでいるのだが、これがいつまで続くのか。つまり、いつかネタ切れ、似たようなストーリーが繰り返されてしまう等の懸念点が想定される。我々読者は楽しむだけでなので問題はないが、そのうち飽きるのではないか?星新一の新潮文庫のシリーズを読み返した時も、似たような作品が相次ぎ出版だけは継続、そのうち星新一作品は殆ど読まなくなった記憶がある。時々思い出した様に星新一に、ショートショートの特集が組まれたりするものの、それでも全く読む気にならなかった。
著者の田丸雅智さんは初めて名前を聞く作家。本の帯に名前が出ているお二人(入山章栄、藤吉雅春)の名前も初めて聞く名前。そう言えば、「ショートショートなSF」で素晴らしい作品を書いていた星新一賞受賞作家の名前も全く知らなかった。ホラー系やミステリー系の作家もたまにショートショート作品を作ってくれるが、いずれも単発で作品数もそれほど多くない。
ショートショートはSF黎明期、SF第一世代の頃から素晴らしい作品が輩出したが、今一つブームが盛り上がらないのは、ショートショートだけに作品が短いことに起因するのではないかと考える。作品が短いと、本にするには作品数が求められる。そして、その数に対応したアイディア数が求められる。すなわち、数多くのアイディアを捻りだし続けなくてはいけないというのが足枷になっている。これはもうどうしようもないことなので、私ができることは、SFショートショート関連の本が出版されたら、それを買い続け読み続けることぐらいしかできない。 -
Posted by ブクログ
もう…ひと言で言うと不思議なグルメ小説でしたw
何が不思議って食材が自動車だったりマウスポインターだったり新幹線だったり…目次を見たときは訳が分かりませんでしたw
不思議な食材は調理の為に捌いたり下拵えをして行くと可食部が出てくるんですよね…
この本の世界においてちゃんと普通の食材は有るのですが、シェフと食材ハンターは不思議な食材ばかり使っていきます。そしてそのどれもがとても美味しそうです。
様々な悩みを抱えながらこの店に辿り着いた客が、食事をする事により解決の糸口が暗示されるのはグルメ小説定番な流れです。
ただその暗示も使われる不思議な食材にちなんだ物になるのが流石です。
…いや、でもやっぱり食材がインパクト強すぎますw
巻末には「不思議な食材を使わずに普通の食材を使った時のレシピ」も載っているのであの食材はこんなイメージなのか…と言うの想像しやすいかもしれません。
一つのお話自体は比較的短く、とても読みやすいストーリーですので通勤のお供に良さそうです。
それにしてもシェフの正体が最後まで謎のままだったなぁ…何者なんでしょうか? -
Posted by ブクログ
「ガラスのすぐ向こうにあったのは、もうひとつの別の窓だ。」
この一文は、心を掴まれました。
クスッと笑えて、途中では思わずニヤニヤし、気づけばドキドキしている。そして時々、いや、それはないやろ!とツッコミたくなる。なのに、その全部が不思議なくらい気持ちよい。
読み終えたあとに残るのは、爽快感です。
この本のすごさは、物語の奇抜さだけではなく、次々に飛び出してくる発想が、読んでいるこちらの当たり前を軽々と飛び越えていくところにあります。
普通はこう
現実的にはありえない
そんな展開にはならない
普段、自分がどれだけ常識という見えない枠の中で物事を考えていたのかを、思い知らされました。
もしかすると、大人になるほど、知らないうちに想像力よりも納得感を優先してしまうのかもしれない。でもこの本は、その凝り固まった頭をぐいっと揺さぶってくれます。
もっと自由に考えていいんだ
もっとぶっ飛んでいいんだ
そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。
ただ面白いだけじゃない。読み終えたあと、自分まで少し枠の外へ踏み出したくなる本です。
最近、刺激が足りない人。発想が固くなった気がする人。
そして、まだ見たことのない景色を覗いてみたい人に、ぜひ読んでほしいです。 -
Posted by ブクログ
面白い。
表題作の「いつ?何時何分何秒?地球が何回まわったとき?」にはじまり、「泥団子づくりに夢中になる」だったり「静かになるまで5分かかりました」のような“小学生あるある”や、「雷が鳴ったらへそを隠せ」や「ため息をつくと幸せが逃げる」や「夜口笛を吹くと蛇が出る」のような昔からの言い伝えなどが、もし実際にあったら?という出発点から膨らませたショートショートの数々。
そんなバカな、と力が抜ける荒唐無稽なストーリーなのに、なんだか本当にあるとしたらこんな感じになりそうと思わせるリアリティがある。それはおそらく現実にあるもののパロディになっているからだ(例えばため息をついた時に逃げる「幸せ」は、GPSを付けて探したり迷子の張り紙を電柱に貼ったり、ペットのように描いている)。
『世にも奇妙な物語』のコメディ回を観た感覚に近い読み味。
ショートショートだから一日でサクサク読めた。
この著者はショートショート専門の作家さんらしい。星新一みたいだ。これを機に他の作品も読んでみたい。
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Posted by ブクログ
暇な探偵事務所に持ち込まれる奇妙な依頼、「足を踏まれる」「なかなか料理が来ない」「服が他人とかぶる」等々を、嫌々調査する探偵西崎とノリノリで調査する助手の若菜。その裏に隠された秘密を探り当てるうちに、やがて〝憂鬱探偵〟と人々に認知されるようになる。
タイトルに「探偵」と付くものの、ジャンル的にはミステリーというよりはSFに近い。ショートショートなので、一つ一つはとても読みやすく、トンデモ真相なわりに話もすっきり纏っていてよかった。軽く憂鬱な出来事に対して「本当にこうだったらいいのに」と思える、どちらかといえば前向きになれる内容だった。
ちょっと読み慣れないジャンルだったが、最後まで楽しく読めたので、同じように苦手意識を持っている人にもどんどん薦めていきたいと思った。
個人的に好きな話は「服が他人とかぶる」で、あるあるな憂鬱をクスッと笑えるものに変えてくれる話だった。