亀山郁夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
亀山氏が学生時代に「悪霊」に出会った衝撃は他のドストエフスキーの作品以上に強かったという思い入れの強い作品をロシアの第一人者と語った記録です。ラスコーリニコフとスタヴローギンの相違点、なぜ悪霊の主人公は醜悪な存在として著者は意識して書いたのか?ここまでリアリティがあるからにはモデルはあるのか?作者本人か?などと謎を二人で語っていくこの本はぞくぞくするほど魅力的です。登場人物の解き明かしも明快であり、また読みたくなります。この2人の読み方の違いもあるのが、一層興味を深めてくれています。キリストに対するスタヴローギン、ピョートル、キリーロフ、シャートフの4人主要人物の立場の違いの表現は一言が実に端的にものがったっています。「私にとってキリストは存在しない」「私はキリストの代わりである」「キリストが存在しないなら、それは私である」「キリストがいるなら、私も存在する」
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Posted by ブクログ
僕は『悪霊』の中で最初に読んだのがここで取り上げられている『スタヴローギンの告白』の章です。そのあまりに反社会的内容のために雑誌の掲載を拒否され、国家からも睨まれるという理由が本当によくわかりました。
僕が現在読んでいるドストエフスキーの『悪霊』。その中でもハイライトでもあり、内容が『一人の少女を陵辱した上に自殺に追いやる』という反社会的なことこの上ないために当時連載していた雑誌の編集長から掲載の拒否を宣告されたことを始め、数々の『毀誉褒貶』やその他もろもろの要素に晒され、なんと百年近くも『お蔵入り』の憂き目に遭ったとされる、いわく付きのテキスト、大学時代からドストエフスキーに耽溺し、数々の新訳でその作品を現在によみがえらせた亀山郁夫氏による解説で紹介する、というのが本書の基本的な内容です。
それにしても…。本書は三部構成になっていて、なぜ『悪霊』なのか、ということに始まり、主人公のスタヴローギンが「神のまなざし」に自らを持っていこうとすることで、自らが『神』に成り代わろうとするかということが解説されます。そして最後の『少女はなぜ死んだのか?』ではスタヴローギンに陵辱されたあと、マトリョーシャが熱にうなされながら、『私は神を殺してしまった』とうわごとのようにつぶやき続け、小屋の中で縊死という形で自らその幼い命を絶つまでのプロセスが記されており、詳細に関しては実際にお読みいただきたい所ですが、『14歳』という年齢がいかに『危険』な年齢であるということと、あいまいにぼかしたような表現の中にこれほどの『倒錯性』を盛り込んだドストエフスキーの手腕に恐ろしさすら感じてしまいました。
スタヴローギンの『告白』は『福音書』に体裁をなぞらえ、舌足らずなロシア語で書かれているという(あくまで亀山氏の解説からですが)文体から、それとはかけ離れた『黙示録』的な内容で、スタヴローギンという人間の中にあらゆる『悪』というものを詰め込みに詰め込み、神になろうとした男が最後に自らに課した運命がこのマトリョーシャと同じものであるということがなんとも皮肉というのかなんというのか…。彼は最期を遂げるときに絹紐に石鹸をべっとりと縫っていた、という記述があって、それが気になって仕方がないのですが、このディテールの意味をご存知の方はぜひとも、僕にお教えください。 -
Posted by ブクログ
チャイコフスキーは53歳でこの世を去っている。私と同じ年齢だ。これまで自分がなし得た事と1840年生まれのチャイコフスキーがなし得た事のあまりの違いに愕然とする。
本書は表題と中身の印象が少し違っている。著者の亀山氏が「チャイコフスキーがなぜか好き」なのであって、チャイコフスキーに深く入り込んだ解説書ではないのだ。
つまりロシア文学者としてロシア音楽が好きでチャイコフスキーも好き、そんな著者が好きなロシア音楽についての深い洞察とご自分の人生の懐古とロシア音楽への愛情を書き連ねたのが本書。
したがってチャイコフスキーに詳しくなれるわけではありません。
「ぼくたちがロシア音楽に聴き取っているのは、まさしく、人間の感情を足場にした<魂の全体性>なのだ。(中略)ロシアの作曲家は、人間の存在をまるごと包み取る巨大なタペストリーのごとき音楽、人間に固有な様々な魂の表現を描きとる音楽を生み出してきたのだった。」
本書で私はむしろムソログスキー、リムスキーコルサコフ、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ショスタコービッチについて少し学んだ。
他にも知らないロシアの作曲家に詳しく記載されているが、知らないだけに読んでもピンと来ない。
ソビエト連邦という国に翻弄された芸術家達の苦悩が、この深く表現力のある音楽を生み出したのかと思うと複雑な気持ちになる。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
ドストエフスキーの全作品でもっとも危険とされる「スタヴローギンの告白」(小説『悪霊』より)。
作家の全人格が凝集されているこのテクストには、人間の“堕落”をめぐる根源的ともいえるイメージが息づいています。
文学のリアリティとは、人間の可能性とは?
一人の男がさまよいこんだ精神の闇をともに探究してみましょう。
[ 目次 ]
テクスト―「告白」(ドストエフスキー『悪霊』より)
第1回 なぜ『悪霊』なのか(『罪と罰』―憑依の体験;動機―なぜ『悪霊』なのか;『悪霊』とはどんな小説か ほか)
第2回 「神」のまなざし(「告白」とポリフォニー;壊れた文体;告白の意味 ほか)
第3回 少女はなぜ死んだのか?(「完全」と「欠損」、神への近さ;「奇跡」を求めて―スタヴローギンの世界遍歴;二重写し―黄金時代とマトリョーシャ ほか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]