橋本幸士のレビュー一覧
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―この世は”ひも”でできている―
このような言葉を聞いてすぐにピンと来る人はごくわずかかもしれませんが、実は最先端の物理の分野では超弦理論という考え方があます。そしてそこで議論されているのは、素粒子がイメージとしては輪ゴムのような”ひも”として存在しているのではないかということです。われわれ人間を含め、この世に存在しているものはすべて突き詰めれば素粒子からできています。そのためこの素粒子がひもであると考えると冒頭のような表現がありえてしまうのです。
また、ひも理論に欠かせないのが次元という概念です。我々が感じることができる次元は縦・横・高さの3次元までですが、ひも理論では例えば9次元といった異次元を考えないといけなかったりもします。
前置きが長くなりましたが、この本はひも理論及び異次元について物理学者のお父さんとその娘との会話を通して説明・解説している本です。
この本の良い点として図が多く、わかりやすい点が挙げられます。異次元がポイントとなるこの本ですが、例として描いてある図がわかりやすく、改めて図の強力さを感じました。また、マルダセナの予想という呪文のような内容の読んだだけではよくわからない予想が出てくるのですが、やはり図のおかげで概念はつかむことができました。このように読んでぴんと来ない部分でも図が助けになることが読んでいて何度かありました。
そして、最も目から鱗が落ちたのは次元は力の伝わり方を見ればわかるという視点です。なぜこの世は3次元だとわかるのかと問われたときに答えに窮しますが、力の伝わり方を調べれば次元がわかります。この本ではバネや水面などを例に挙げていますが、個人的には物理学で現れる逆2乗則の説明で腑に落ちました。逆2乗則の2乗はどこからくるかというと球体の表面積(4π×rの二乗)です。数式の導出の過程で出てきたこの二乗が残り、導出した数式が実験結果と一致していることから、この世は3次元であるということがわかるのです。私は現在物理を学んでいる立場ですが、この次元に関する視点はこれまで学んできた中で完全に抜けていたものだったので、これが得られただけでもこの本を読んでよかったと思いました。
まとめると、ひも理論及びそれに付随した異次元を中心とした話題をわかりやすく解説しており、イメージや概論をつかみやすい良書だと思います。おすすめです。
余談
物理学ではこの世に4つの力(重力・電磁気力・強い力・弱い力)しかないと考えられています。ひも理論は提唱された当初はあまりホットではなかったそうですが、これらの力の統一を考える際にひも理論を用いて考えるとうまくいくということから研究が盛んにおこなわれるようになったという経緯があります。もちろん最先端の分野なのでひも理論に対する反対意見を存在しますが、一見無駄に見えてしまう研究でも無駄にならないものであり、多少の遊びや余白を許容する余裕が大切だと感じました。 -
Posted by ブクログ
今まで単語でしか分からなかったことが、ばばばと全てが鮮やかにつながった。読み始めは、こんな女子高生がありえないと受け止め難かったが、最後はこの設定で良かったと思う。とにかく説明がうまい。共形不変性、ホログラフィーという対応理論のあたり、本当にうまい。
・平面波の方程式から質量が出てくる機構。p84
・グルーオンだらけになる=逆ゼロ乗法則。p101
・陽子が異次元の方向に回っているとするとエネルギーがあることになり、質量を持つ。p107
・それを異次元空間に拡張し、質量を持たせる計算例。p114
・光は開いたひも。あらゆる方向に振動できるから。p127
・重力はとじたひも。振動が二種類で距離が計算できるから、p129 -
Posted by ブクログ
極端に言えば、まるでホログラム写真のように、この宇宙も本当は2次元なのに、3次元の空間として見えている。さらに噛み砕いて言うと、「宇宙は幻」ということになるのだという。
このホログラフィー原理という不思議な考え方を通して、「宇宙(最も大きなもの)はいったい何からできているのか」という問いに、素粒子(最も小さなもの)から迫る、現代物理学の最前線。
宇宙の始まりとは何か?という問いには、素粒子レベルの宇宙を考えることのできる物理学も必要。
宇宙物理学と素粒子物理学の融合が実現すれば、その糸口を掴めるかもしれない。相対性理論と量子力学など、未だ辻褄が合わない部分があり、それを解決するための新しい理論の有力候補のひとつが『ホログラフィー原理』とのことだ。
数式の細かいところまで理解したとは言い難いが、
簡潔でわかりやすい説明のおかげで、直感的にどのような概念なのか知ることができた。
この奇想天外な考え方が真剣に検討され、多くの研究者を巻き込んだ一大研究テーマとなっていることに驚かされた。今後、この理論をめぐる研究がどのように展開し、どんな新しい発見につながっていくのか、楽しみだ。 -
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理論物理学において、森羅万象を説明しうるカギとして多くの研究者が注目する「ホログラフィー原理」を一般読者向けに解説するブルーバックス。映像用語としてのホログラフィーとは別物。
物質の構造を突き詰めると素粒子に行きつくが、その入れ物たる空間はどのようにできているのか。この問いを理論的に解明できそうなのがホログラフィー原理であると著者は述べる。
この世界の成り立ちを説明するために、その次数を下げることで手持ち理論の射程内に入れようとする攻め方が果たして成功するのか、道半ばですが興味深いですね。
本書では原理の概念をイメージしやすいように嚙み砕いて説明してくれていますが、具体的中身である計算部分を省略したために納得感が希薄になってしまって消化不良でした。詳述されたところで私の頭はついていけないのですが・・・
騙され感はありつつも何となくのイメージ把握にはつながったので、継続して自分のペースで理解を深めたいと思います。 -
Posted by ブクログ
一般向けに書かれた本だが、自分には難しかった。
量子力学と相対性理論を統合させた重力量子理論統一の鍵とされるのがホログラフィー原理であるということで、イメージはつかむことができた。
【目次】
第1章 宇宙は何からできているのか?
第2章 ホログラフィー研究の今
第3章 ミクロの物理学、その成功と立ちふさがった大問題
第4章 重力とはどのような力なのか
第5章 ホログラフィー原理の歴史--ブラックホールが生んだ原理
第6章 ホログラフィー原理は力を時空と置き換える
第7章 ホログラフィーの未来--超ひも理論がホログラフィー原理を証明するか?
第8章 量子もつれが時空をつくる? ワームホールとホログラフィー
第9章 はたして、私たちの宇宙はホログラフィックなのか? -
Posted by ブクログ
文章は平易、構成は丁寧、そして内容は決して平易ではない、ホログラフィー原理についての解説書。
どうにも扱いづらい重力と言うものを、別の存在にまるっと置き換える事で、重力に縛られる事なく、理論を組み立てることができる。重力の存在しない、一次元下の空間(3次元からすれば2次元)の活動で、重力が存在する次元の活動が説明できる、と言うそんな感じの…… うん、もっと勉強が必要ですね。
理解が追いついているかは別として、文章はとても読みやすいもの。六章の図解は膝を打つものでした。こんなこういう概念を、図で示せるんだ…… と。
昔どこかで読んだ、ブラックホール情報パラドックスの話なのかな、と思って読み始めたのですが、もっとスケールの大きな話でありました。
常日頃悩むような問題とはまるで違う、こういう本を読むのは、頭の切り替えにとても大事。
折に触れて読み返したいと思います。 -
Posted by ブクログ
私には物理学者の義父がいます。義実家で義父との話題に窮していて、何か良いヒントが得られないかと思い、書店で購入しました。
傘なしで雨に濡れずに帰る方法や、貧乏ゆすりの波を打ち消そうとする話、どの話も仮説と検証結果に解離があり、くすくす笑えます。もちろん、理論はしっかりあるので、「科学」も堪能できる内容となっています。
特に良かったのが、人の死に対する考え方を書いている章です。著者は、死に対して唯物論的な考え方(人間は火葬後に水と二酸化炭素になり、大気中に帰る等)をお持ちなのですが、それでも無機質な方ではなく、文章の中から大切な人を失った時の悲しみが十分に伝わってきました。とても著者に好感が持てる章でした。
物理学者が皆この様な考え方だとすると、とても義父と噛み合う話ができる気がしないのですが、日常に少しでも科学的な視点を取り入れてみようと思わさせてくれる、そんな一冊でした。