中山七里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
フォローしている方のレビューを読んで「読みたい」に入れていた本。
陸上200m走でオリンピックを狙う市ノ瀬沙良は交通事故に巻きこまれ左足を切断せざるを得なくなる。加害者は隣家の幼馴染みの相楽泰輔だったが、沙良が隣家で引き籠る泰輔に恨みを募らせる中、泰輔が部屋で殺害された姿で見つかる…。
ここから物語は二つの流れに。
ひとつは、泰輔の事件を追う警察の捜査。こちらには、犬養隼人刑事と御子柴礼司弁護士が登場。完璧なポーカー・フェイスを操る御子柴に食い下がる犬養。丁々発止のやり取りが楽しめる。
もうひとつは、沙良が義足のランナーとして再び200m走に挑んでいくお話。パラアスリートを巡る世界を描いて、こちらもまた面白いが、二年先までスケジュールが詰まっているような著名な義肢製作者が時間を割いてくれたり、その縁で東大の研究所がサポートしてくれたりと、うまく行き過ぎるのがやや不満。身体をライバルと同じにしてライバルと同じ走法に変えるというのも、ちょっと無理筋じゃない。
二つの話が交わるところ、トリックは分からなかったが、沙良がどうして高価な義足を手に入れることができたかは想像の範囲。いつもは悪辣さが目立つ御子柴がなんだかいい人に見えた。
今年の4月から障害者差別解消法の改正により事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されたが、268頁の『鬼怒川は自分の眼鏡を指差した。「これがなければ日常生活にも事欠く有様ですけど、自分では大した障害だとは思っていません。それと一緒ですよ」』という文章は、合理的配慮が障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり「特別扱い」ではないということを伝えるための、とても分かり易い例示だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【収録作品】「ヤツデの一家」 新川帆立/「大代行時代」 結城真一郎/「妻貝朋希を誰も知らない」 斜線堂有紀/「供米」 米澤穂信/「ハングマン -雛鵜-」 中山七里/「ミステリ作家とその弟子」 有栖川有栖
いずれも2022年~2023年に雑誌に掲載されたもの。世相を反映しているものが多い。
「ヤツデの一家」 父親の後継者として政治家になった娘の、後妻の連れ子である兄と実妹への執着を描く。
「大代行時代」 代行業者の話。新入社員の一人は退職代行を依頼。もう一人が依頼したことは。
「妻貝朋希を……」 迷惑動画で炎上した男について、記者の取材に周囲の人間が答える形で事情が説明される。ファンタジー要素なしの実録ドキュメント風ミステリ。気が滅入る。
「供米」 小此木春雪という詩人の遺稿集を出版した未亡人の思惑。盟友の目から語られる詩人の姿と二人の育んできた友情が美しい。
「ハングマン」 シリーズものの一篇。メンバーの一人で情報収集担当の凄腕ハッカー・比米倉内記の視点で語られる。闇バイトがらみの事件。これで終わりではなさそうなので、単行本化が待たれる。
「ミステリ作家と……」 ミステリへの皮肉、というか自虐かな。スランプ気味のミステリ作家の下に弟子入りした男の思惑は。ミステリ講義として持ち出される話が面白い。 -
Posted by ブクログ
それなりに売れている作家さんの、業界で生き延びる知恵。
三人の著者なのだが、各々がそれぞれの十のテーマについて書いていて、対談みたいになっているのは最後の章だけだった。
業界の裏っぽいところとか、死ぬほどサバイバルな荒野で、新人賞取ったって、ライバルがアマチュアからプロになるだけで、ほぼ絶滅していくとか、この世界で生きていきたい人にも、単に小説が好きな人たちにも、面白く読めると思う。
が。
どなたかも書かれていたが、結局生き残っている人たちの「生存者のバイアス」からは逃れられない。
生き残っている人たちが自分たちの体験を振り返っても、その何がポイントだったのか、生き残れなかった人たちと何が違ったのか、全然わかんないのだ。
思い込み以外には。
ギャブルの必勝法を語るギャンブラーみたいな感じもしたな。
三人が三様、違うタイプを持って来て、それぞれ言ってることが違ってそこも面白いのだが、共通してるのは。
兎に角沢山書け。
心折るな。
早く自分のスタイルを見つけろ。
それだけだ。あと、思い上がるな、かな。
昔は漫画家になりたい人向けにこういう本いっぱいあったな。
今はむしろ漫画家になる方が簡単かもしれない。発表の場が増えたし、普通に、上手い人が増えた。漫画は、まず絵が描けないと漫画家になろうとも思わないだろうが、「文章」だけなら、日本人なら取り敢えず誰でも書けるのが違いかなと思う。それで、漫画と違って、読む方にも「読解力」がそれなりに必要だし。
まあ色々感心したりそうかなあと思ったりしながら読んだが、絶対に間違ってるのは、当選の確率を上げるのは、宝くじをたくさん買うこと、って言ったとこだな。
確率はあがんない。買えば買うほど、損をする確率が上がる。
要は、平均を狙いたいのか、大きく当てたいのか。大きく当てたければ、大損する確率も上がる。コツコツやれば大損しないが、絶対勝てない。
小説家としても、小説を書きたいのか、商業ベースで食って行きたいのか、超ベストセラー当てたいのかで、戦略も変わるのだろうが、例え悪すぎ。
基本的には、デビュー直後の作家さん向けの内容なのだが、この業界ってどれだけ才能があろうが、いい作品が出ようが、購入者の資金が限られていると考えれば、一定以上パイは広がらないんではないか。
業界が萎縮すると食えなくなるが、自分たちの足元脅かされても食えなくなるのはないかね。
新人は生かさず殺さず。
そんな本だと考えれば、怖い。
編集者と出版社と読者は、新しい才能がどんどん出て来てほしいところだろうが、作家自身は微妙だなあ。
もっとも1番の大問題は、この三人の作家さんの誰一人も知らないし、どの作品も知らないし、挙げられてる大家先生の誰も面白いと思わないことかもしれない。