長江俊和のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
禁止シリーズ。
薄いながら、なかなかの読み応え。
展開も分かりやすく、サクサクと読みやすい。
─── 木村瑞帆は、か細い腕に満身の力を込めた。
瑞帆は、なぜ殺人者となったのか。
そして、その罪を抱えてどう生きていくのか。
人を殺したのなら、警察に自首する。
それが当たり前の選択なのだろう。
それでも、その選択をできない瑞帆を非難しきれないのは、きっと自分の中にも「今ある幸せを手放したくない」という、人としての自分本位な思考があるからだと思う。
物語に時折現れる、「誰からも愛される女」。
瑞帆もまた、男たちからその〝容姿〟ゆえに愛される女だった。
「儚げで、不幸そうな美人」
守ってあげたくなるのか。
自分なら幸せにしてあげられると思うのか。
高校時代、生徒からも人気の担任教師との秘密の逢瀬。
職場では、上司からの誘いをさりげなくかわす日々。
営業先で出会った顧客からの思わぬ好意。
そして、知人を介して知り合った男性との新たな恋愛。
本人が望むと望まざるとにかかわらず、男たちが寄ってくる。
モテる女は辛いよね。
そして、その「モテる」が幸せを運んでくるとは限らない。
むしろ瑞帆の場合、その容姿に引き寄せられた男たちによって、少しずつ不幸へと落ちていく。
とはいえ。
やっぱり最初の事件を犯したあとの瑞帆の行動が、すべての諸悪の根源かなとも思う。
一向に明るみに出ない事件。
消えた死体。
まるで、なかったことになってしまった自らの罪。
あなたならどうする。
どれだけ事情があっても、どれだけ今の幸せを失いたくなくても、一つの罪を隠すためについた嘘は、次の嘘を呼ぶ。
そして気づけば、もう戻れないところまで来ている。
うん。
ヒトを殺してはいけません。
今年の22冊目 -
Posted by ブクログ
2015年第4回うつのみや大賞 受賞
初出は2014年、文庫化は2017年
既読の「放送禁止」は 角川ホラー文庫でしたが、
こちらのシリーズは新潮文庫のようです。
ミステリー色が濃いめのモキュメンタリーでした。
文庫本をお借りしましたが、装幀はお写真でしょうか、現物を見るとわかるのですが、一般的な上下とは逆になっています。
禁止の禁も字が裏面です。
明らかに ひっくり返しますって表明されていました。
しかし 相変わらず 何事も気にしないで読んでしまうタイプなので
いつひっくり返されたのか気づかず、正しく読めたのかどうか定かではありません。
登場人物のお名前が 突然一度平仮名で表記されていまして、登場人物名をいつもながら覚えていないものですから
それを名前と気付くことができないまま、実は正しい読み方をしてしまったという
著者も呆れる読者となっております。
ただ、なぜ文庫化から約10年を経た本作が、今年になって突然「新潮文庫の100冊」に選ばれたのか。これもまた、本作以上のミステリーでした。
私なりに考えてみると、この作品は2014年刊行。当時はまだ珍しかった、モキュメンタリーの手法のか小説の先駆けの一つだったように思います。その後、『出版許可』『掲載禁止』などへと発展し、シリーズとして現在も続いています。
「新潮文庫にも、こんなモキュメンタリーがあります。よろしければ、この機会にシリーズもどうぞ。」そんなところでしょうか
もちろん、これは私の勝手な考察です。
この作品に限っては、読後にあれこれ考察してしまうこと自体が、著者の思うつぼなのかもしれません。