浅井晶子のレビュー一覧

  • 裏切り 上

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    ドイツの国民的人気作家シャルロッテ・リンクの作品。
    なぜか舞台はイギリスが多く、これもそうです。

    ヨークシャーで退職した元警部リンヴィルが殺され、一人娘のケイトが休暇を取って戻ってくる。
    ケイトは、スコットランド・ヤードの刑事だった。捜査に参加は出来ないが、じっとしてはいられない。
    捜査に当たる警部ケイレブらにいささか邪魔にされながらも、諦めることは出来なかった。
    内気な性格で友達もいないケイトにとって、毎週電話していた父親は、唯一の心の支えだったのだ。
    仕事柄、犯人は恨みを持つ犯罪者ではないかと思われたが‥

    一方、スランプに陥っているシナリオライターが妻子とともにヨークシャーの農場に引っ

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    2023年07月16日
  • 最終法廷 ~ヨアヒム・フェルナウ弁護士~

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    ドイツの法曹ミステリー。
    いや、タイトルは「最終法廷」だし、主人公は弁護士なんだけれど、法廷内が舞台ではなく、むしろ「探偵ミステリー」という感じかも。

    不可思議な事件、依頼人の死。仕事のない貧乏弁護士フェルナウが、奇妙な事件の真相が知りたいと調査を始め、その謎がどんどん大きくなっていく。すべて謎が解けた、と思いきや、いろいろなドンデン返しが波のように押し寄せて、うわーー、どうなっちゃうのーー?的に面白いミステリーでした。

    超美人の検察官や、弁護士事務所の相棒(ちょっと変人?)や、ケチな犯罪者の依頼人や、たくさんの登場人物たちが出てくるのだけど、なんとなくみんな愛すべきキャラクタ。

    どうや

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    2023年06月06日
  • 裏切り 下

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    恋人や友人もおらず、仕事も上手くいっていない39歳独身女性ケイト。ここまで自己肯定感が低い人物が主人公なのも珍しい。読み進めるうちに、彼女だけでなく、誰もが表向きの人格とは別に、孤独や闇を抱えていることが分かっていく。人の温もりを欲しているくせに、己れの醜い心まで覗いて欲しいわけではない臆病な気持ちは、共感しかなかった。
    途中で話が繋がっていくステラのパートは、不穏過ぎて、ちょっと読み飛ばしてしまった。小さな子供がいると辛い。すべての人が傷つく結果になってしまったが、終わってほっとした。ケイトは少しだけ未来が見えたのか。シリーズものらしいので、次が楽しみ。

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    2023年05月28日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

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    ホロコーストやユーゴの集団強姦などの非人道的な暴行・扱いを受けた人間が、なぜ自分の身に起きた出来事を話せないのか。
    常軌を逸した出来事を経験したからこそ、それを首尾一貫して説明できることは難しい。被害者の供述が曖昧だったり支離滅裂だった時、決してそれはその被害者の記憶力や説明力が問題なのではなく、ただその人の身に起こった出来事が異常だっただけである、と言う彼女の主張が非常に印象的だった。
    とても心の優しい人なんだろうなと思った。
    訳も結構読みやすい。

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    2023年02月13日
  • 裏切り 下

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    父親の元警部のことで話があると、ケイトに謎の電話をかけてきた女性は誰か? その頃、ロンドンのシナリオライターが、バーンアウト寸前でヨークシャーの人里離れた農場に妻子とともにこもることにした。養子の五歳の息子の生みの母が突然、現在の恋人という得体の知れない男と現われるが、彼の正体は? 浮上するケイトの父親殺しと彼の関係……。

    初めて読む作家。なかなかのページターナーでした。

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    2022年09月09日
  • 裏切り 上

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    スコットランド・ヤードの女性刑事ケイト・リンヴィルが休暇を取り、生家のあるヨークシャーに戻ってきたのは、父親でヨークシャー警察元警部・リチャードが惨殺されたためだった。名警部だった彼は、刑務所送りにした人間の復讐の手にかかったのだろうというのが地元警察の読みだった。激しい暴行を受け自宅で殺されていた父。いったい誰が、なぜ……?

    初めて読む作家。もう一つの事件が同時並行で描かれる。どうなる、後半。

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    2022年09月07日
  • 誕生日パーティー

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    いじめられたくないから、いじめる。
    世界共通の子供心。
    そして子供ゆえの残酷さ。

    はじめは、自分達の正義のためだったのに、心にも身体にも、国土にも、傷を残してしまう。。。

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    2022年08月14日
  • 裏切り 下

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    とある人物の存在がわかってから怒涛の展開。スリルが素晴らしいです。事実が分かると、確かに酷い!と思いますね。のうのうとしてられるの?レベルです。圧倒的な筆致、今回も楽しませていただきました。スーパーじゃない主人公にも好感持てます。

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    2022年08月07日
  • 裏切り 上

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    いいですねー、この書きっぷり。ベースとなる事件にサイドストーリーがかぶさる、どうなっていくのかページを捲る手が止まらず、ゾクゾクします。いろんなことが浮かんできて、その中の一つが的を射るかも。でも、驚愕のラストに期待します。さあ、下巻!

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    2022年08月06日
  • 裏切り 上

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    スコットランドヤード刑事のケイトと父親の惨殺事件。片や子を巡る実母と養父母の不穏な出来事。どうなるのかハラハラして読み進めたら少し道筋が見えそうになった所で上巻が終わる。早く下巻が読みたいと思える作品。

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    2022年08月02日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

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    言語化することは、その治療的側面からとても深い意義がある。その人の内面の課題を解決するためには、内面を言語化するしか方法がないと私は思っている。
    カウンセリングにしろ、トラウマ治療にしろ、その基本は「傾聴」することだ。すべてそこから始まる。ナラティブセラピーしかり、メンタライジングしかり。発達の未熟さから言語化が難しい幼児は「表現」でその代替行為をする。絵を描いたり、工作をしたり、箱庭療法なんかもその一つだ。言語にするなり形にして表すなりすることで、内面にあるイメージ、感覚、感情を整理し、内面を客観的にして初めて自分自身の状況を把握できるのだろう。「治療」というが、つまるところ、自分自身で自分

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    2022年07月23日
  • 誕生日パーティー

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    ポルポト暗黒時代のカンボジアと、その地獄から生還した者たちのその後を描く。過去と現在を往来しつつ、次第に伏線が回収されていく結構。それにしても、偏った情報しか与えられず、間違った思想に流されていくさまとか、一部の狂気が圧倒的な犠牲者を生むさまとか、今これを読むと、どうしてもロシアを思い浮かべずにいられない。戦争を止めろ。

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    2022年03月23日
  • トニオ・クレーガー

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    トーマス・マンの自伝的小説。若い頃の作品のせいか、自分の小説家という境遇と一般的な人々の乖離という悩み自体が若書きという感じ。文章の端々にベニスに死すや魔の山の萌芽が感じられてその後の作家的な成長を予感させる作品。

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    2022年02月12日
  • イエスの意味はイエス、それから…

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    旧西ドイツに生まれた著者、カロリン・エムケは、日本ではまだメジャーではないジャーナリストだ。
    現在は議論の場を設けたり、幅広いテーマで著作活動を行なっており、精力的な活動を行なっているという。
    彼女、そして本書に出会えたことは、大変良い出会いであった。

    日々、私には何ができるのだろう、とか、なんとなくの違和感とか、不快とは言えないけれど、モヤっとすることがある。
    それは会社での会話だったり、新聞の投書だったり色々なのだが、こんなことが一例としてあげられる。
    ある日の新聞のオピニオン欄で、女性の生理用品を買えないことについて、識者や読者の意見が載っていた。
    読者である年配の男性は、たかが数百円

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    2021年06月13日
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について

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     強制収容所での拷問、戦時中の集団強姦など、悲惨な体験をした被害者たちの話を聞いてきた著者。彼らが「それ」としか呼ぶことができない体験を言葉にしていくことの意義や、その過程で聞き手側に望まれる態度について論じるエッセイ集。後半は、故郷についてや、旅をすることについても語っている。

     印象に残った部分を抜粋。

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     こういった理解不能な世界は、子供たちとは違った形で大人たちを脅かす。「残虐の規範」に直面したとき、誰よりもまず打撃を受けるのは大人たちだ。別の規範、別の秩序のもとで育ってきた彼らは、新たな規範を理解することができないのだ。(P.35)
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     アウシュヴィッツでの

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    2020年01月03日
  • 憎しみに抗って――不純なものへの賛歌

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    自分が傷つけられたことには意識的である。反対に人を傷つけたことには、気がついていないのだろう。多分、これまで、何気なく人を傷つけきたのだろう。
    多数派である限り気がつくことができない。さまざまな人がいる。よく対話をすることなくして、安易な思い込みでの発言や、軽はずみな発言は控えなければならない。
    自分が自分らしく自由にいられるためには、ひとが傷つかないように気遣う必要がある。

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    2019年02月16日
  • 失踪者 上

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    ドイツの国民的人気作家のミステリ。
    舞台はなぜかイギリスが多いようで、今回もそう。

    元ジャーナリストのロザンナが復帰後初仕事として、行方不明事件を取材することになる。
    それは5年前、ロザンナ自身の結婚式に招いた幼馴染のエレインが失踪したというもの。
    霧でジブラルタルへ向かう飛行機が欠航となり、やむなくエレインはとある弁護士の家で休んだのだが、以来行方がわからない‥
    疑われた弁護士は家庭も仕事も評判も失ったが、何の証拠もあったわけではないのだ。

    エレインの行動を追うロザンナ。
    弁護士を疑うエレインの兄。
    一方、妹を殺されたアンジェラ一家の悲しみと、誰かから逃げているパメラの章が交互に描かれ、

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    2018年07月31日
  • 悪徳小説家

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    いやあ、これは面白かった。ピカレスクものになるんだろうけど、型にはまらないユニークな一篇だ。主人公は実に悪いやつなんだが、なぜか共感させられてしまう、その書き方が秀逸。「悪」って一体何なのかと考え込んでしまう。ラストはもう一つスッキリしない感じもするが、まあいいか。

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    2017年01月05日
  • 悪徳小説家

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    確かに、「太陽がいっぱい」と比べたくなる。(主人公の人物造型、××が×から出てくる、あたり。)
    結末がちょっとどうなのという感想をちらほら見かけるが、私は嫌いじゃないなー。

    この虚無感、殺伐とした感じ、クールな感じが、50年代風に思えて、時々出てくる携帯やカーナビなどの小道具に、あ、そうか現代だったのか…とハッとする。
    好みです。

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    2016年08月02日
  • 罪なくして 下

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    「罪なくして」というこのタイトル、
    なんとなくわかるようなわからないような言い回しに感じられ、原題をしらべてみると、
    (ドイツ語なので英語に翻訳)
    “Without guilt”

    日本語だと、罪がない状態で、とか罪なしに。
    英語だと罪悪感なしに、とか罪の意識がない、となり
    またまたちょっと微妙な違いを感じてしまう。

    前者だとすると
    罪はないのに巻き込まれた感のある青年を。
    後者なら人を殺めることに躊躇のない
    犯人であるもう1人の男を指すように思う。

    とにかく今回はとてもスピーディーな展開で
    途中まではワクワクしながら読んだけれど、
    結末はすごく放り出されたような終わり方で
    えー、この先が

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    2025年07月26日