浅井晶子のレビュー一覧
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詩を愛する内向的な少年が小説家の青年となり、旅先でかつて愛した少年少女の幻を見る…この短い物語の骨子はそのように単純なものだが、その最もドラマティックな箇所は意図的に曖昧に描写され、主人公トニオが出会ったのは本当にかつての恋人たちなのか、あるいは他人の空似というやつなのか、判然としないまま幕を閉じる。
30歳前後の、芸術至上主義的でどこか青臭い文学青年が、ふと思春期のありふれた恋の記憶に再会し、画家の友人から突きつけられたある言葉の意味に目覚めるビルドゥングスロマンとして、鮮烈な作品である。
長年、この作品はそのように読まれ続け、支持されてきたようだ。現代ではジェンダー的視点からの解釈もあり興 -
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こんなヒロインを待っていた!
スコットランドヤードの女性刑事ケイト・リンヴィル巡査部長。
三十九歳でいまだ独り身。夫なし、子どもなし、恋人なし、友人なし。
特別美人でもなく、髪はバサバサ、とうてい魅力的とは言えない。
周りの同僚たちは誰ひとり近寄ってはこないし、ケイトが会議で口を開けば決って天を仰ぎ、間違っているとみなしていた。
なにより自分自身が自分を信用していなかった。
そんな中で彼女が敬愛する父親、伝説的な名刑事として誰からも尊敬されていた父親が何者かに惨殺される。
ケイトは父殺しの犯人を追うが、それは父の隠された別の顔を暴くことになるのだった。
もちろん最後には「生きづらさ」を -
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ネタバレ探偵小説や警察小説には、完全無欠だったり良くも悪くも癖が強かったりといった主人公が多く登場するものだが、この作品の主人公ケイトは、スコットランドヤードの刑事でありながら地味でネガティブ、人付き合いが苦手ととにかくパッとしない。そんなケイトの能力を唯一正当に評価し、スコットランドヤードから地方のスカボロー署にリクルートしたケイレブ警部も、アルコール依存症を患う訳ありの警察官。それぞれに苦悩を抱えているからこそ、読者は二人に感情移入し応援したくなる。
物語は主人公のケイトを中心に、襲撃を受けたクセニアやソフィア、ケイトの友人コリンらのパートが入り混じりながら展開していく。その中でも重要なのが、オリ -
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ネタバレこのシリーズの安定の面白さよ!
そして前回まで頑なにケイトを幸せにさせなかった著者もようやくそろそろ幸せを掴ませようという気配が。
原作はあと2作品刊行されてるようなので続きが気になります。ケイトとケイレブの関係も。ケイレブが仮に退職してもまあお互い今まで散々管轄外で行動取ってきたわけだし。
サーシャがとりあえず可哀想で。当時なんかやりようあっただろと。アリスへのフォロー含めて。今回の全ての発端はアリスの夫ですね。責任感じてるくせに少年院の訪問も2回で辞めてるしひたすら嫌なことから目を背けてるだけで結局最後まで生き残ってるという。 -
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上下巻に分かれているので、まとまった時間が取れないと読めないなぁと暫く積読になってた本作、漸く読めました。
もっと早く読めばよかったと後悔するくらい面白かったです!
ドイツの作者さんとのことですが、舞台はイギリス。ヨーロッパの作品らしく、全体的にどこか湿っぽいミステリーに仕上がってます。
ケイトという39歳独身女性が主人公。夫も彼氏も友達もいなくて、仕事でも評価されないという設定。卑屈な設定に聞こえるけど、こういう人っていっぱいいると思います(かくゆう私も主人公の設定に大体当てはまっているひとり笑)。事件そのものもスピード感・意外性があって面白いのだけど、主人公や犯人役はもちろん、脇役の人 -
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ドイツの作家のベストセラー後半。
舞台はイギリスのヨークシャーです。
退職した警部だった父が殺され、休暇を取って故郷へ戻ってきたケイト。
スコットランド・ヤードの刑事だが、自分に自信がなく、周りにも溶け込めないでいた。
だが、誇りに思っていた父親の事件を放っておくことは出来ず、独自に動き出す。
事件を担当する警部のケイレブはアルコール中毒という問題を抱えている。
どの人物も、人に言えない秘密や重い気持ちを抱えていて、それが次第に絡み合っていく‥
リーダビリティはさすがで、その過程で少しずつだけどケイトが優秀さを発揮し、成長していくのが読みどころ。
これまでに「姉妹の家」「沈黙の果て」「失 -
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全体的に当たり前のことを書いているだけなんだけど、具体性と詳細さで細やかな部分まで主張を伝えてくる。当たり前のことに詳細に気づくことの難しさを感じるし、そういうことをきめ細やかに内省させてくれる。そして自分で気づき続けなくてはならないことを教えられる。のだが、こういう本を読む人にはたぶん少なからずその土壌がある。この本に手が伸びない人に、どうやって伝えていくかを考えると気が遠くなるとも思った。
イスラム教徒を差別することがISの理想(ある限られたイスラム教徒のみを認める過激な信条、ヨーロッパの二分化)を叶える方向に作用するという説明はなるほどと思った。
多様性のなかにいると落ち着く。それはつま -
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ネタバレ読書備忘録673号。
★★★★★。
作者の実力が遺憾なく発揮されたミステリー。
時代も舞台もばらばらな場面が入れ替わり繰り広げられ、徐々に全体像を描いていく手腕。しかし、そこに間違いなく感じる違和感。そして巧妙に仕組まれたミスディレクションの罠。さすがとしか言いようがない。
★5つに飢えていたので、即決★5つにしてしまいました。笑
舞台はオーストリア。片田舎で家族と幸せに暮らすカンボジア移民のキム。
50歳節目の誕生日を迎える。ヨーロッパでは、誕生日パーティは特別な意味を持っているとのことで、特に40歳とか50歳の節目には、自ら盛大な誕生日パーティを企画するのだとか。
本人は乗り気でない誕 -
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凄惨な殺人事件。その被害者は元警部でその娘はスコットランドヤードの刑事ケイト。このケイトの造形がとてもいい。孤独で同僚とも打ち解けることが出来ず落ちこぼれのように思われている。そのケイトの父が殺害されたことで地元警察に協力する。でもそこでもなかなか上手くいかない。次第に見えてくる父の秘密と殺人が終わらない事件。捜査で出会う刑事たちとの微妙な距離感。派手さはないけれどとても緊迫感のある展開と事件の奥にある被害者や関係者の人生の秘密や裏切り。冒頭から強く惹きつけられる力のある作品。シリーズ第二作の刊行も決まっているということもとても嬉しい。
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ネタバレドイツクラウスニッツに到着した難民達のバス、アメリカニューヨーク州スタテンアイランドで脱税たばこを売っていたと疑われて警官に取り囲まれたエリックガーナー、共に一方的な他者の憎しみが描かれている。バスの中の難民一人一人の境遇があるにも関わらずな難民として不可視な存在として全てを排除しようとしているのである。かたや黒人というだけで常に恐怖の一旦として疑われ、警察に取り囲まれ命を落としてしまった彼は本当に言葉で言い表すことができない。
偏った見方をしてしまうアメリカ国内の歴史もあるのだと思うが、現代でまだ起こりうる、起こり続けているこれらの問題に対して個人個人がよく考えて行動をしていくしかないのかな