浅井晶子のレビュー一覧
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太宰の『人間失格』を読んで、この主人公は自分だ、と思ったなんて感想をよく聞く。
僕にとっては、この『トニオ・クレーガー』がそういう本だったようだ。
「ねえ、ハンス、『ドン・カルロス』は読んだかい?君の家の庭の門で約束してくれたね。でも、どうか読まないでくれ!」
「瞬間撮影写真の載った馬の本を読むほうがずっといいなんていう人たちを、詩のほうへ誘い込んだりしちゃだめなんだ!」
「君のようになれたら!もう一度最初からやり直して、君と同じように成長することができたら。」
トニオの愛の言葉は痛烈だ。憧れの裏返しや、少年時代の気の迷い、そんな言葉で片付けられるような生易しいものじゃない。
周りの世 -
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ケイト・リンヴィル シリーズ第2作。シリーズ第3作から読み始めて、第1作を読んで、本作に。自分にとって3作目。ケイトもユアンも自省的に自分の行動を描写する。そこがすんなり作品に入り込める理由。
とにかく先が楽しみで、下巻へ。
自立して自分のことをわかっていて他人も冷静に観察できる女性が、マッチングサイトを使ってまでパートナーを求めるというのは、シリーズ第3作『罪なくして』を読んだときには解せなかったが、第1作から読んで起きたことを知ると、第2作の本作では、納得がいった。
『罪なくして』にも登場していたコリンが本作で初登場。体重82キロ、45歳。自信満々な男。フィットネススタジオに最低でも週4 -
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ウゲォーヌ(人間には発音できないタイプの音)
いやーマジかー
すげー結末だったわー
この結末全く頭の片隅にもありませんでした
そう書くとネタバレになっちゃうかな
うーん、お見事だったわー
ミスリードが巧み
ということでミステリーとしてもかなり上質だったんですが、やっぱり主人公の女性刑事ケイトよね
はっきり女性としての魅力なしって書かれちゃってるという新しいタイプのヒロイン
恋愛経験ほぼゼロの41歳は、やっぱりけっこう拗らせちゃってるわけです
そんなもん自分に自信なんか持てません
あらゆる場面で自分なんか…
自分なんかが誰かに愛されるわけがない
自分なんかが事件を解決できるわけがない
そん -
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ドイツの人気作家がイギリスを舞台に描くシリーズ。2作目後半。ベストセラー。
ケイト・リンヴィルは、スコットランドヤードの巡査部長。
実家を片付けるために休暇を取り、近くの宿に泊まったら、その家の娘アメリーが失踪。
ケイトが刑事と知った母親デボラに頼りにされることに。
管轄外なのは1作目と同様、しかも今度は自分の家族の事件でもないのですが…
スカボロー署のケイレブ・ヘイルは知り合ったばかりの頃のようには拒否的でなく、ケイトを認めていることは示すのだった。
アメリーは不可解な状況で発見される。
しかも、アメリーを海から救い上げた男性は、両親にたかってくる。
少女の行方不明事件は他にも起きていて -
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詩を愛する内向的な少年が小説家の青年となり、旅先でかつて愛した少年少女の幻を見る…この短い物語の骨子はそのように単純なものだが、その最もドラマティックな箇所は意図的に曖昧に描写され、主人公トニオが出会ったのは本当にかつての恋人たちなのか、あるいは他人の空似というやつなのか、判然としないまま幕を閉じる。
30歳前後の、芸術至上主義的でどこか青臭い文学青年が、ふと思春期のありふれた恋の記憶に再会し、画家の友人から突きつけられたある言葉の意味に目覚めるビルドゥングスロマンとして、鮮烈な作品である。
長年、この作品はそのように読まれ続け、支持されてきたようだ。現代ではジェンダー的視点からの解釈もあり興 -
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こんなヒロインを待っていた!
スコットランドヤードの女性刑事ケイト・リンヴィル巡査部長。
三十九歳でいまだ独り身。夫なし、子どもなし、恋人なし、友人なし。
特別美人でもなく、髪はバサバサ、とうてい魅力的とは言えない。
周りの同僚たちは誰ひとり近寄ってはこないし、ケイトが会議で口を開けば決って天を仰ぎ、間違っているとみなしていた。
なにより自分自身が自分を信用していなかった。
そんな中で彼女が敬愛する父親、伝説的な名刑事として誰からも尊敬されていた父親が何者かに惨殺される。
ケイトは父殺しの犯人を追うが、それは父の隠された別の顔を暴くことになるのだった。
もちろん最後には「生きづらさ」を -
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ネタバレ探偵小説や警察小説には、完全無欠だったり良くも悪くも癖が強かったりといった主人公が多く登場するものだが、この作品の主人公ケイトは、スコットランドヤードの刑事でありながら地味でネガティブ、人付き合いが苦手ととにかくパッとしない。そんなケイトの能力を唯一正当に評価し、スコットランドヤードから地方のスカボロー署にリクルートしたケイレブ警部も、アルコール依存症を患う訳ありの警察官。それぞれに苦悩を抱えているからこそ、読者は二人に感情移入し応援したくなる。
物語は主人公のケイトを中心に、襲撃を受けたクセニアやソフィア、ケイトの友人コリンらのパートが入り混じりながら展開していく。その中でも重要なのが、オリ -
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ネタバレこのシリーズの安定の面白さよ!
そして前回まで頑なにケイトを幸せにさせなかった著者もようやくそろそろ幸せを掴ませようという気配が。
原作はあと2作品刊行されてるようなので続きが気になります。ケイトとケイレブの関係も。ケイレブが仮に退職してもまあお互い今まで散々管轄外で行動取ってきたわけだし。
サーシャがとりあえず可哀想で。当時なんかやりようあっただろと。アリスへのフォロー含めて。今回の全ての発端はアリスの夫ですね。責任感じてるくせに少年院の訪問も2回で辞めてるしひたすら嫌なことから目を背けてるだけで結局最後まで生き残ってるという。