浅井晶子のレビュー一覧

  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について
    ホロコーストやユーゴの集団強姦などの非人道的な暴行・扱いを受けた人間が、なぜ自分の身に起きた出来事を話せないのか。
    常軌を逸した出来事を経験したからこそ、それを首尾一貫して説明できることは難しい。被害者の供述が曖昧だったり支離滅裂だった時、決してそれはその被害者の記憶力や説明力が問題なのではなく、た...続きを読む
  • 裏切り 下
    父親の元警部のことで話があると、ケイトに謎の電話をかけてきた女性は誰か? その頃、ロンドンのシナリオライターが、バーンアウト寸前でヨークシャーの人里離れた農場に妻子とともにこもることにした。養子の五歳の息子の生みの母が突然、現在の恋人という得体の知れない男と現われるが、彼の正体は? 浮上するケイトの...続きを読む
  • 裏切り 上
    スコットランド・ヤードの女性刑事ケイト・リンヴィルが休暇を取り、生家のあるヨークシャーに戻ってきたのは、父親でヨークシャー警察元警部・リチャードが惨殺されたためだった。名警部だった彼は、刑務所送りにした人間の復讐の手にかかったのだろうというのが地元警察の読みだった。激しい暴行を受け自宅で殺されていた...続きを読む
  • 誕生日パーティー
    いじめられたくないから、いじめる。
    世界共通の子供心。
    そして子供ゆえの残酷さ。

    はじめは、自分達の正義のためだったのに、心にも身体にも、国土にも、傷を残してしまう。。。
  • 裏切り 下
    とある人物の存在がわかってから怒涛の展開。スリルが素晴らしいです。事実が分かると、確かに酷い!と思いますね。のうのうとしてられるの?レベルです。圧倒的な筆致、今回も楽しませていただきました。スーパーじゃない主人公にも好感持てます。
  • 裏切り 上
    いいですねー、この書きっぷり。ベースとなる事件にサイドストーリーがかぶさる、どうなっていくのかページを捲る手が止まらず、ゾクゾクします。いろんなことが浮かんできて、その中の一つが的を射るかも。でも、驚愕のラストに期待します。さあ、下巻!
  • 裏切り 上
    スコットランドヤード刑事のケイトと父親の惨殺事件。片や子を巡る実母と養父母の不穏な出来事。どうなるのかハラハラして読み進めたら少し道筋が見えそうになった所で上巻が終わる。早く下巻が読みたいと思える作品。
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について
    言語化することは、その治療的側面からとても深い意義がある。その人の内面の課題を解決するためには、内面を言語化するしか方法がないと私は思っている。
    カウンセリングにしろ、トラウマ治療にしろ、その基本は「傾聴」することだ。すべてそこから始まる。ナラティブセラピーしかり、メンタライジングしかり。発達の未熟...続きを読む
  • 誕生日パーティー
    ポルポト暗黒時代のカンボジアと、その地獄から生還した者たちのその後を描く。過去と現在を往来しつつ、次第に伏線が回収されていく結構。それにしても、偏った情報しか与えられず、間違った思想に流されていくさまとか、一部の狂気が圧倒的な犠牲者を生むさまとか、今これを読むと、どうしてもロシアを思い浮かべずにいら...続きを読む
  • トニオ・クレーガー
    トーマス・マンの自伝的小説。若い頃の作品のせいか、自分の小説家という境遇と一般的な人々の乖離という悩み自体が若書きという感じ。文章の端々にベニスに死すや魔の山の萌芽が感じられてその後の作家的な成長を予感させる作品。
  • 国語教師
    思っていたのと、いい意味で全然違っていて、まずは読んで良かったです。新しい作家さんとの出会いを嬉しく思います。
    元恋人同士の男女の再会。男の方が正直最低で、何だこの男という感情を最後までぬぐいさることができなかったです。それにひきかえ女性(マティルダ)のなんと献身的というか最後まで無償の愛を貫いた...続きを読む
  • イエスの意味はイエス、それから…
    旧西ドイツに生まれた著者、カロリン・エムケは、日本ではまだメジャーではないジャーナリストだ。
    現在は議論の場を設けたり、幅広いテーマで著作活動を行なっており、精力的な活動を行なっているという。
    彼女、そして本書に出会えたことは、大変良い出会いであった。

    日々、私には何ができるのだろう、とか、なんと...続きを読む
  • 国語教師
     多層的なテクストの重奏を楽しむのかと思ったら、そこは存外シンブルだった。そのような実験的な作品ではなく、また、ミステリーでもなく、ラブストーリーだった。
  • 国語教師
    文芸ミステリと帯にもあるが、文芸色が強いためか私のミステリ新作探しの網にかからず危うく読み逃してしまうところだった。

    昔の恋人に執着する度合いは男の方が強いらしいが、納得させてくれる内容だった(個人差があります)

    両親、祖父母の人生をたどる中でのさまざまな人びとの家というものへの執着、あり得たは...続きを読む
  • 国語教師
    これは傑作!
    16年ぶりに再開した元恋人の作家と国語教師。交わすメール、会話だけのやりとり、ふたりが互いに語り聞かせる物語、そして過去の追憶など、時系列と文章作法をさまざまに織り交ぜながら話が進むうち、明らかになる事件とその真相。
    筋書きは最終的ににはちょっと甘酸っぱいんだけど、さまざまな文体を駆使...続きを読む
  • 国語教師
    別れた昔の恋人と再会し、過去と現在について語り合っていくうちに、未解決のある事件をめぐる闇が明らかになっていく。典型的なクズ男と不幸体質みたいな女の組み合わせがしんどい。が、Eメールの文面、警察の事情聴取、恋人同士が互いに語り合う「小説」の内容など、様々な文章スタイルを駆使して過去と現在をいったりき...続きを読む
  • 国語教師
    現実(ストーリーの中での)なのか、想像の物語なのか、二人のやりとりが、スリリングでよかった。
    最後のハッピーエンド気味のエピローグも良かったなあ。映画化はしにくそう。
  • 国語教師
    過去に恋人だった男と女が十数年後に偶然(?)出会い過去の感情のすれ違いや事件についてメールのやり取りや語り合いを重ね、そして真実を知ってゆく。
  • なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について
     強制収容所での拷問、戦時中の集団強姦など、悲惨な体験をした被害者たちの話を聞いてきた著者。彼らが「それ」としか呼ぶことができない体験を言葉にしていくことの意義や、その過程で聞き手側に望まれる態度について論じるエッセイ集。後半は、故郷についてや、旅をすることについても語っている。

     印象に残った部...続きを読む
  • 国語教師
    かつて強烈に愛し合った作家と国語教師の再会。
    2人のメールのやり取り、再会してからの会話、それぞれの視点からの回想シーン、さらには二人が作る作品の世界、これらがミラージュのように重なって複雑ながら情感豊かな世界を作り上げる。

    作家の子供の誘拐という事件軸はあるものの、真相当てという意味でのサスペン...続きを読む