泉鏡花のレビュー一覧
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お前の罪じゃ無い、世の中の罪だ
(田山花袋「断流」より)
人生の不条理・社会の闇と真正面に向き合い描かれた「悲惨小説(深刻小説)」または「観念小説」と呼ばれる作品のアンソロジー。あまり聞き慣れぬ作家の、大手出版社の文庫本レーベルにもなかなかラインアップされない作品をたくさん味わえる貴重な一冊だと思う。
川上眉山「大さかずき」
泉 鏡花「夜行巡査」
前田曙山「蝗売り」
田山花袋「断流」
北田薄氷「乳母」
広津柳浪「亀さん」
徳田秋声「藪こうじ」
小栗風葉「寝白粉」
江見水蔭「女房殺し」
樋口一葉「にごりえ」
性別、生まれ、家庭の経済状況……。収録 -
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まず装画が怪しげで綺麗!いわゆるジャケ買い
あとタイトル『疵の迷楼』別世界へと誘い込まれるような魅惑的な感じに加え、名だたる文豪たちの作品に興味を引かれてしまう。
まだ、このとき耽美という言葉の意味を理解していなかった。ただ「美しい」くらいにしかとらえていなかったので読んでみたら本当の意味を思い知らされ、常軌を逸した世界への入り口だった。
なかなか普通の感覚では理解、共感し難い作品ばかり。どの作品も何かに心を奪われていたり、病的にのめり込んでいたりと現実からかけ離れていて危うい空気が漂っている。
抗いがたい好奇心や欲望、まるで[パンドラの箱]を開けてしまったようなそんな感じだ。
収録されて -
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ネタバレ『外科室』
画師「予」が、親友の医学士・高峰が執刀する手術に立ち会う場面から始まります。患者は貴族階級の伯爵夫人。手術直前、夫人は麻酔を拒否します。理由は「麻酔で譫言(うわごと)を漏らし、秘めた想いが知られてしまうのが怖いから」。
周囲の反対を押し切り、夫人は麻酔なしでの手術を望み、高峰はそれに応じます。手術が進む中、夫人は突然高峰の手を握り、「あなたは、私を知りますまい」と言いながら、自らの胸をメスで切り裂きます。
高峰は「忘れません」と答え、夫人は微笑みながら息を引き取ります。
物語の後半では、9年前に高峰と「予」が植物園で偶然見かけた美しい令嬢の回想が描かれます。その令嬢こそが伯 -
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舞台の台本のような本だった。
少し見慣れない単語が出てくるので、辞書を引き引き読んだ。結構面白い。
夜叉ケ池という池の麓から帰ってこない晃を訪ねて学円が村にくる。晃は百合という女性と暮らしていて、村で鐘をつく仕事をしているのだと言う。代々、鐘を1日に三度鳴らさねば、村が山津波で滅ぶのだと言う。
村人たちは信じていないものも多いが、先代の爺さんはやり遂げる。この鐘本当に効果があり、魑魅魍魎の世界が描かれたときも「鐘が鳴っているから」と村を滅ぼせない。
ただここの村人は最悪で、旱が来たら「村1番の美女を裸にして牛の背に乗せて夜叉ケ池まで運び、そこで男たちが宴会をする」という行事をやる。もちろん美女 -
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「高野聖」
久しぶりに読んだ。
学生の時以来だと思う。
泉鏡花の文章は本当に美しいな、と感じた。
私の知識不足で、わかりにくい言葉もあったけれど、情景がありありと浮かんできた。
ヒルのくだりや、動物に変えられてしまうあたりもよく覚えていた。
話の終わり方もすっきりしていて、細部にわたって美的感覚と潔さを感じることができた。
「女客」
言葉が難しくて所々わかりにくいところがあったけれど、謹さんとお民さんの想いを伝えあう言葉が熱を帯びてくる様子が生々しく感じられた。
子どもの奇妙に言い当てる言葉で、一気に現実の道に引き戻される空気感も、絶妙だった。
中盤から最後への流れが、うまいと感じた。
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Posted by ブクログ
読みにくい。文章が古めかしいのも、あまり使わない漢字を使うのも、核心にあまり触れない描き方も、何度も読み返してなんとなくしかわからない本だった。
胸の手術を麻酔なしで受けると言い張る夫人と、執刀医の高峰に特別の感情があった、と言うことなのか???
9年前に小石川植物園ですれ違って、手術室で再会。で、次のページで2人とも死んだとあるけど。
夫人がそこまでして秘密にしたかったことが今でもピンときていない。心の中はどうあれ、実際はただ一度すれ違っただけじゃない。不貞でもないと思うのだけれど。
ただ夫人が心配したように、麻酔手術の後に暴れたりする「せん妄」という状態は実際にある。
三国志の関羽雲長が麻 -
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Posted by ブクログ
どこかで読んだような気もするのだけど、読み直してみて特に記憶が刺激されたわけでもないから、初読だったのかもしれない。美しい絵と、いつの間にか引き込まれている鏡花の文章。絵もあいまり、金沢で鏡花関連の場所を巡った時の記憶が蘇ってくる。
…石のごつごつした狭い小路が、霞みながら一条煙のように、ぼっと黄昏れて行く。
"ぼっと黄昏れる"という表現にすでにぞわなでだし笑。
…巳巳巳巳、巳の年月の揃った若い女の生肝で治る
冒頭近くで「ああああ我が影」など連呼されている表現が、この「みみみみ」に繋げるためだとわかる。巳年、巳月(4月)、巳の日、巳の刻生まれの若い女…蛇を連想するだけで -