泉鏡花のレビュー一覧
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読みにくい。文章が古めかしいのも、あまり使わない漢字を使うのも、核心にあまり触れない描き方も、何度も読み返してなんとなくしかわからない本だった。
胸の手術を麻酔なしで受けると言い張る夫人と、執刀医の高峰に特別の感情があった、と言うことなのか???
9年前に小石川植物園ですれ違って、手術室で再会。で、次のページで2人とも死んだとあるけど。
夫人がそこまでして秘密にしたかったことが今でもピンときていない。心の中はどうあれ、実際はただ一度すれ違っただけじゃない。不貞でもないと思うのだけれど。
ただ夫人が心配したように、麻酔手術の後に暴れたりする「せん妄」という状態は実際にある。
三国志の関羽雲長が麻酔なしで怪我の治療をしていた話に触れられていたのは面白かった。 -
Posted by ブクログ
どこかで読んだような気もするのだけど、読み直してみて特に記憶が刺激されたわけでもないから、初読だったのかもしれない。美しい絵と、いつの間にか引き込まれている鏡花の文章。絵もあいまり、金沢で鏡花関連の場所を巡った時の記憶が蘇ってくる。
…石のごつごつした狭い小路が、霞みながら一条煙のように、ぼっと黄昏れて行く。
"ぼっと黄昏れる"という表現にすでにぞわなでだし笑。
…巳巳巳巳、巳の年月の揃った若い女の生肝で治る
冒頭近くで「ああああ我が影」など連呼されている表現が、この「みみみみ」に繋げるためだとわかる。巳年、巳月(4月)、巳の日、巳の刻生まれの若い女…蛇を連想するだけでぞわだし、巳と言う漢字が5つもつながっているのを見ると、視覚的にもくるものがある笑。
そして最後の「振返ると、白浜一面、早や乾いた蒸気の裡に、透なく打った細い杭と見るばかり、幾百条とも知れない、おなじような蛇が、おなじような状して、おなじように、揃って一尺ほどずつ、砂の中から鎌首を擡げて、一斉に空を仰いだのであった。その畝る時、歯か、鱗か、コツ、コツ、コツ、カタカタカタと鳴って響いた。」と言う鏡花ぽい終わり方にぞくっとして、絵の迫力に息を呑んで終わる。 -
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泉鏡花文学忌、鏡花忌
また読んでしまった外科室
青空文庫で読んだ2年ほど前のレビューを転記
上 で、手術室の場景が描かれる。美しいであろう伯爵夫人が、手術にあたり、麻酔を頑なに拒む。遂に、麻酔をせず、執刀が始まる。彼女は、昏睡の中での、うわ言を恐れていたのだ。
医師のメスを、自らの胸に突き、最期に秘密を囁く。医師も彼女を追う様に死す。
下 で、夫人と医師が若かりし頃、すれ違い、互いに、その一瞬で惹かれあっていた過去が描かれる。
9年前のただ一度のすれ違い
米澤氏の『儚い羊たちの祝宴』の「身内に不幸がありまして」の作中に出てきて、寄り道読書。
今回は、“うわ言”がポイントでしょうか。
外科室という題名でも、空想が膨らむ。手術台の上の伯爵夫人が、きっぱりと美しい。気丈な彼女の儚い想い。当時としては、サディスティックな表現部分もあり、記憶に残る。
1992年吉永小百合主演中村玉三郎監督映画化
予告動画だけ見たけれど 小百合様の美しき事
ホノジロトヲジさんの絵は印象的だけれど
やっぱり古典的なものが好きかも
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Posted by ブクログ
文豪6名の最後を飾った作品を集めたもの。同じような趣旨で、デビュー作代表作を集めた「文豪誕生」も読んで出版社の策にとても共感している。
表装は今風というかアニメタッチな文豪が1人、芥川だろうかと想像する。
登場する6名の文豪、初めましての方もいて、読書の門扉が少し開けた気がする。
それでも好きになったかと言うとそこまでではないが、この点が点と合って線になっていくんだろうなと思う。
特に芥川龍之介はこの作品でちょっと興味をもった。そして梶井基次郎は檸檬の他に機会があって良かったと思う。
文豪死すも文豪誕生も、名前は知っているけどそこまでじゃないと言う人にはぴったり。機会があったら読んでみると良いとおススメできるものだ。 -
Posted by ブクログ
幼くして美しい母を失った鏡花の母への思慕の情と、鳥や虫への偏愛を窺わせる『化鳥』、少年のときに家で見た二人の怪しい婦人、それは一体何だったのだろうと振り返る『霰ふる』、自分の心の秘密を譫言で言ってしまうかもしれないからと麻酔を拒んで手術を受ける伯爵夫人を描く『外科室』、当てもなくブラブラしていたときに見た光景に心を奪われていた男が、一気に怪異に見舞われる『高桟敷』、家の庭に来る雀を慈愛をもって可愛がる様子がほほえましい随筆『二三羽―十二三羽』、しかしこれもやはり鏡花、終盤不思議な出来事に出くわすこととなる。家の近くの様子を描写していたかと思いきや、大水により流された古屋敷に巣食っていた大量の蛇が白浜から鎌首を擡げている怪異の様がラストに描かれる『絵本の春』、恥ずかしめを受けお堀に身を投げた零落の工女の墓石を巡る不思議と彼女を悼む人たちの愛憐の情を描いた鏡花最晩年の作『縷紅新草』、そして傑作戯曲『天守物語』。
副詞、接続詞に使われる漢字がひらいているのはちょっと残念だがやむを得ないだろうし、難しい読み方にはルビが付されているので、読むのにそんなに苦労はしないだろうと思う。
各編ともそれほど長いものはないし、怪異幻想の作家、鏡花の入門編としては適当な作品が選択されているのではないだろうか。 -
Posted by ブクログ
鏡花の幻想系戯曲の代表的な作品がほぼ読むことのできるお得な一冊。
冒頭には、登張竹風と共訳したハウプトマンの『沈鐘』が収録。最初の舞台は樅の大森林。山姫ラウランデライン(朗姫)、池の精ニッケルマン(肉蝦魔)、森の精ワルドシュラアト(虞修羅)と登場人物の和訳名も面白い。
名人鋳鐘師ハインリヒは自ら作った鐘を山上に運ぼうとしていたところ谷底へ落下してしまい大怪我を負うが、命を助けてくれた山姫に惹かれてしまう。妻子を捨てて顧みず、彼はまた鐘を作ろうとするが…。終盤の展開がなぜそうなるのか良く分からないまま結末になってしまったのだが、異界の世界と人間界との交わりならぬ交わりを描いた本作を、鏡花が気に入ったというのも納得できる作品だった。
そして『夜叉ケ池』『海神別荘』『天守物語』の傑作3編。中でもやはり天守物語。白鷺上の天守夫人富姫と亀の城の亀姫という異界の住人同士の残酷でいて可愛い遊ぶ姿が一方にあれば、天守夫人と城内の家臣姫川図書之助との恋情が急展開に進む対比の妙が鮮やかな一品。
さらに鏡花晩年の作品『山吹』『多神教』『お忍び』。この中では解説にも触れられているが、三島由紀夫と澁澤龍彦が高く評価したという『山吹』が実に不思議な一品。嫁ぎ先が嫌で逃げてきた奥さんが、お金でも何でもお前の望みを叶えてあげようと捨て鉢になって、たまたま出会った人形使に声をかける。するとその人形使いは、「雨傘を使って体を思い切り打ってくれ」と頼むのだった。何だ、この展開は、と驚いてしまった。奥さんが本当は好きだった人との出会いもあるのだが、思いがけぬ形で幕を閉じる、というもの。
一見古臭くいと思われる鏡花だが、今読んでもとても面白い。また、初めのうちは読みづらく感じるかもしれないが、読み進めていくと、文章のリズムに酔いしれてくる。