朝比奈あすかのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
娘の夏休みの読書感想文用に。
その前に私が気になっていて読んでみました。
大人が分かっているようで分からない子供の世界をこっそり覗いているような気分になりました。その単純なようで複雑な、幼稚なようで残酷な、私も昔々に少なからず感じてきたザワザワを見せられているようでドキドキしました。そこに登場する親や先生という様々な大人の存在もまた、今の自分を照らし出されているようで落ち着かない気持ちに。手助けすべき場面、口を出す場面とそれをグッと堪えなきゃいけない場面の判断は常に難しい。
子供にとっての学校という場所はとても限られた小さいコミュニティだけど、子供たちにとってはそこが全てになりがち。
その中で -
Posted by ブクログ
ネタバレ2年ぶりに再読。2年前は読んでいてふーんとしか思わなかったけど、今は色々と思うことがいっぱいあるかも。沖田先生は教師として公平にかけるし、とにかく厳しくやればいい、いつでも私が正しいみたいな感じで怖い。絶対にこういう人が担任は嫌ですねー。出畑くんは勘がいい。島倉先生はこの本で唯一成長する人だな。
あえてはじめと終わりが学校に直接的に関わらない人なんだなーと思う。
澪はすごく賢い。こういう子が令和には求められると思うな。小学生時代ピラミッドはやったことあるけどタワーはないなぁ。ここまで伝統になっていたらなんかやりたくないかも。伝統的な人間タワーで団結しましたっていうのが気持ち悪いんだよなぁ。いい -
Posted by ブクログ
この切り取り方は長めの短編なんだろうな。村上春樹の『風の歌を聞け』の似たような長さの作品が群像の新人賞デビューだったのを思い出す。
言葉の選び方など、すでに作家として十分完成されているのを感じ、その後の活躍を予感させる作品であるのと同時に、「憂鬱な」という題名そのものの、痛いくらいの追い詰められ感のある作品でもあった。
作者はどんな思いでこの作品を書いたのだろうと思って、インタビューを探すと『作家の読書道』で彼女がそれまでの人生を読書経験とともに語っている文章を見つけた。
夫の仕事でアメリカ・シカゴに渡り、しばらく自分自身の仕事や小説を書くことからも離れていて、日本に戻った時に再就職。でも -
-
Posted by ブクログ
二つの小学校合併の象徴として、六年生全員で造る『人間タワー』。運動会の伝統となり、保護者のみならず地域の住民にも楽しみにしている人は多い。しかし、組体操が危険視される風潮の中、昨年は失敗に終わってしまった。
今年はどうするべきか。保護者、教員、そして当の児童たち。様々な意見に分かれる中、出された結論とは・・・。
賛成するにも反対するにもそれぞれの理由があり、どちらにも納得できるし反論する気持ちにもなる。実際に参加する子どもたちだってそうだ。上に乗る子、下で支える子、それぞれの立場で言い分がある。
私は運動は全然ダメなので、団体競技など嫌を通り越して恐怖でしかないけれど、観る分には団体競技の方 -
Posted by ブクログ
単なるスクールカーストではなく、中学生や思春期特有の承認欲求や自意識の強さをぎゅっと凝縮させてた特濃ジュースのような描写に感嘆。
清子がいった学校は教師も生徒も底意地悪すぎて過激と思うけど、たしかに似たような感情というのは自分の学生時代にもあって恥ずかしく苦々しい読み心地だった。
私は女子校だったけどそれでも外見からくるカーストというものはたしかに感じていた。そしてそれは、上にいる人には空気のようなもので、下から見ないと心に残らないものだと思う。
後半4分の1くらいで急展開するけど、少しその過程への描写が粗くて感情移入はできなかった。でも、どんなに正論だとしても「された側」じゃない人にはわから -
Posted by ブクログ
全女子が共感できるやつではないかなと思った。
十歳の章も二十歳の章も身に覚えがありすぎて胸が痛くなったな。
男子の世界でもまた何かしらあるのだと思うけど、女子はもっと複雑で小学生であっても打算とか色々な思惑が絡まりあって人間関係がめんどくさいことになる。
もっとシンプルになればいいのにね。
野々花はすごく自由だけど、やはり容姿という武器があるからできた行動もあるだろう。
阿佐は色んなことを考えて損得で友達を選んでるフシがあったけど、野々花と咲には本音が言えるようになるといいなと思う。
咲は小学生の頃は変人と言われてかなり不思議ちゃんだったけど20歳になったら色んなことを俯瞰して見ていて -
Posted by ブクログ
朝比奈 あすかさんの長編小説。
タイトルから今時のカースト制がテーマかと想像していましたが
タイトルそのままに、小学校で行われる組体操「人間タワー」を描いた連作集でした。
読み始めの地味な印象から一転、どんどん惹きつけられ途中から夢中になって読みました。
一時、その危険性が取り上げられた組体操ですが、本作では親や教師、そして組体操の上に立つ子供、下で支える子供達の本音などが丁寧な人物描写で描かれています。
「人間タワー」が実施されるのか、無くなってしまうのか、
もし実施される事になったらどんな形で行われる事になるのか、結末が気になり、そしてそこに辿り着くまでの、それぞれの子供達、大人の -
Posted by ブクログ
特老ホームのおじいちゃん、教師、生徒、卒業生…と、次々と視点が変わりながらの展開。
学校伝統で楽しみにしている人も多い“人間タワー”に対するそれぞれの思い。視点が違うと見える景色も全然違ったものになる。
憧れ、期待、不安、焦り、葛藤…
年齢も立場も全然違うのに、どの視点も心理描写がとても丁寧でリアリティがありました。
小学生独特の世界の描き方が絶妙。
小学生の組体操が今身近にある人は、特に感情移入せずにはいられない作品だと思います。
『一人のおとなが一人のこどもの人生を、突然大きく拓くことがある。ささやかな敬意が、想像もできないほど一人を救う。』