【感想・ネタバレ】人間タワーのレビュー

あらすじ

二者択一を迫られる世界でもがく小学生。胸を衝く物語!

桜丘小学校の運動会で毎年六年生が挑んできた組体操「人間タワー」。
しかし危険性が取りざたされ中止に!?
強硬なタワー推進派の珠愛月先生、
冷めた目で反対を主張する文武両道な男子・青木、
誰もが納得する道を探ろうとする同級生の澪……
教師、児童、親、様々な人物の思いが交錯し、胸を打つラストが訪れる!

運動会の花形「人間タワー」の是非をめぐるノンストップ群像劇。

※この電子書籍は2017年10月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

小学校の組体操でトリを飾る「人間タワー」について、様々な人物の視点から描いた群像劇。
各章でメインの人物は変わるものの深い人物描写、心理描写で読み応えは抜群。それぞれみんな人間タワーについて思いを持っているし、それに正解も不正解もないのだと考えさせられる。
ラストも良くスッキリした読後感も得られる。


「全員の心をひとつに、というのはおとなたちが描く絵空事だ。心がひとつではないのだから。百人の心は百あり、きっとひとつにはなりえない。運動会を待ち焦がれる子もやり過ごしたい子もいる。楽しむ子も怯える子もいる。」

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2025年03月30日

Posted by ブクログ

表紙絵が紅白帽を被った体操服の子供たち…もう懐かしい風景だなあ。

この小説は小学校の運動会でよく目にした組体操の最後のほうにある、人間タワー(僕の学校では、やぐらと言っていた)をめぐる様々な人の視点で描かれたもの。

そんな人間タワーをめぐる様々な事情…あぶないからやめるべきと言う父兄。団結力や信頼感など友情を育むという意味でやるべきと言う熱血教師。上に登るか、下の土台をやるかで悩む子供の気持ち。子供の頃は考えることも無かったが、確かに僕の時代にもいろいろ問題があったのだろうなあ。

最終話では運動会で人間タワーを子供たちがつくる描写があり、いろんな人の様々な思いが交錯しながら、損得なしに子供たちが一生懸命に取り組むさまが読み取れ、目頭を熱くしました。

素敵な小説でした。

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2025年03月24日

Posted by ブクログ

組体操のタワーをモチーフに、子供、親、教師、近所の施設に住む老人、卒業生からの視点や、そのそれぞれの人の人生まで掘り下げた作品。
やはり朝比奈あすかさんは人間の深い部分の心理描写が上手くて、先に読み進めたくてどんどん読んでしまう。
いろいろな考え方があり、多様性が求められる今の世の中だから昔のようにはいかないこと、その中でどうすれば他の人間と関わりながら生きていけるのか。
人間タワーを題材にしながら、今の世の中に全てに対してそ問いかけている、素晴らしい作品だったと思う。

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2024年07月01日

Posted by ブクログ

とある小学校での「人間タワー」、その演目を背景に繰り広げられる様々な人たちの"人間"らしいやりとり、「伝統を守るって?」「誰かのために耐えるって?それって美談?」という時代の変わり目を問う子どもたちと大人たちとのやり取りがさらにリアリティを増していたように思う。危険だから、意味を感じないからという理由だけ(それすらネットに広がっている誰かの意見を安く引用しただけ)で、物事をやめることには何も生まない。「じゃあ、どうするのか」を今作の中で、きっと描かれていない子どもたちと大人たちとのやりとりのように、真剣に向き合っていくことが歴史を作るということなのではないだろうか。

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2025年10月30日

Posted by ブクログ

運動会の「人間タワー」をめぐって、色んな登場人物の心境がかかれており、とても読み応えのある作品だった。
読み終わった後は爽快な気持ちになった。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

朝比奈さんらしく少し毒のある話かなと読み始めたが、意外とスッキリ爽やかな読後感。
人間タワーをめぐる様々な人たちの想い。
最後に出した結論。
いろいろな思いを持った人がどんな結論を導き出すのか・・
最後まで面白かったです。

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2025年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2年ぶりに再読。2年前は読んでいてふーんとしか思わなかったけど、今は色々と思うことがいっぱいあるかも。沖田先生は教師として公平にかけるし、とにかく厳しくやればいい、いつでも私が正しいみたいな感じで怖い。絶対にこういう人が担任は嫌ですねー。出畑くんは勘がいい。島倉先生はこの本で唯一成長する人だな。
えてはじめと終わりが学校に直接的に関わらない人なんだなーと思う。
澪はすごく賢い。こういう子が令和には求められると思うな。小学生時代ピラミッドはやったことあるけどタワーはないなぁ。ここまで伝統になっていたらなんかやりたくないかも。伝統的な人間タワーで団結しましたっていうのが気持ち悪いんだよなぁ。いいところは残しつつどんどん時代に合わないところは変えるべきだから澪みたいな子は貴重。

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2023年05月11日

Posted by ブクログ

朝比奈さんは、学校を中心にその周囲を描くのがとても上手いと感じる。
よくある出来事、人間だからこそ大きな何かは起こらないけれど、自分の今までのことを思い出すきっかけになってくれる。

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2023年04月13日

Posted by ブクログ

二つの小学校合併の象徴として、六年生全員で造る『人間タワー』。運動会の伝統となり、保護者のみならず地域の住民にも楽しみにしている人は多い。しかし、組体操が危険視される風潮の中、昨年は失敗に終わってしまった。
今年はどうするべきか。保護者、教員、そして当の児童たち。様々な意見に分かれる中、出された結論とは・・・。

賛成するにも反対するにもそれぞれの理由があり、どちらにも納得できるし反論する気持ちにもなる。実際に参加する子どもたちだってそうだ。上に乗る子、下で支える子、それぞれの立場で言い分がある。
私は運動は全然ダメなので、団体競技など嫌を通り越して恐怖でしかないけれど、観る分には団体競技の方が熱くなる気がするのは何故なんだろうか。
こういったことに正解はないと思う。当人たちが納得していればそれでいい。外部が、特に風潮なんて分からないモノが批判するのだけは間違っていると思う。

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2022年05月07日

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人間が関わって出来ることについて、関わるひとそれぞれの視点で書かれた内容。
他者に見える自分と自分がわかっている自分のギャップ。何歳になっても人間の本質は変わらない。
人間関係の中で日々不具合はあるが、向き合ってやっていくことで小さな幸せや達成感が得られることがある。そんな積み重ねが人生を豊かにする。が人間の一生は有限。日々を大切に終わりも豊かにありたいと感じた。

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2022年03月11日

Posted by ブクログ

朝比奈 あすかさんの長編小説。

タイトルから今時のカースト制がテーマかと想像していましたが
タイトルそのままに、小学校で行われる組体操「人間タワー」を描いた連作集でした。

読み始めの地味な印象から一転、どんどん惹きつけられ途中から夢中になって読みました。

一時、その危険性が取り上げられた組体操ですが、本作では親や教師、そして組体操の上に立つ子供、下で支える子供達の本音などが丁寧な人物描写で描かれています。

「人間タワー」が実施されるのか、無くなってしまうのか、
もし実施される事になったらどんな形で行われる事になるのか、結末が気になり、そしてそこに辿り着くまでの、それぞれの子供達、大人の感情の揺れや思いに寄り添ったり共感したりしながら読み進めました。

全6話で構成されており、一見独立した短編の様でありながら、登場人物が他の章でリンクしていたり、人間タワー=登場人物の連携と上手く掛けられています。

テーマ自体も新鮮で初めての感覚を味わえ、読み応えのある作品でした。
ひとつだけ残念なのはあの形になるまでの過程を読者の想像に委ねられたのかも知れませんが最終話の一つ前で1話増やして描いて欲しい気もしました。

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2021年09月04日

Posted by ブクログ

特老ホームのおじいちゃん、教師、生徒、卒業生…と、次々と視点が変わりながらの展開。
学校伝統で楽しみにしている人も多い“人間タワー”に対するそれぞれの思い。視点が違うと見える景色も全然違ったものになる。
憧れ、期待、不安、焦り、葛藤…
年齢も立場も全然違うのに、どの視点も心理描写がとても丁寧でリアリティがありました。
小学生独特の世界の描き方が絶妙。

小学生の組体操が今身近にある人は、特に感情移入せずにはいられない作品だと思います。

『一人のおとなが一人のこどもの人生を、突然大きく拓くことがある。ささやかな敬意が、想像もできないほど一人を救う。』

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2021年05月15日

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これも独白連作だったか。それぞれ視点が違って面白かったけど、少しパワーは足りない気がした。
塾に通う女の子のパートが一番しっくりきたなぁ。

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2025年11月22日

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 運動会で行われる「人間タワー」を巡り、児童たちや教師、親、地域の老人たちがそれぞれの目線で考えを募らせていく。
 
 伝統や団結や根性論など、時代とともに変化していく学校行事の考え方の中で行われた新しい「人間タワー」。
 「やる」か「やらない」かの2択ではなく「どうすればみんなが納得できるか」を模索していく児童たちの姿が印象的だった。

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2025年11月12日

Posted by ブクログ

タワーの上、下、それぞれの立場の思いがある。大人になってからもずっとタワーを作ってる気がした。上も下もそれぞれ意見があって、そもそもやるやらないという葛藤もあって、期待もあったり、反発があって、みんなが同じ思いではないけれど、結局タワーを作ってる。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

運動会での組体操見せ場の人間タワーについて、様々な視点から描かれている本作。
みんなそれぞれの想いがあってタワーに挑むのだけど、朝比奈あすかさんは子供の感情を言葉にするのがすごく上手いといつも感じる。
そういえば、今の運動会は組体操も騎馬戦もないのが主流だと思うけど、自分はがっつりどちらも経験したなーと色々思い出した。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

小学校運動会での人間タワーをめぐる人々のお話。中でも認知症の老人のパートが、本人の頭にモヤがかかった状態がリアルに文章に描かれていて、薄ら寒い気持ちになった。

そういえば、子どもが通っている小学校でも数年前まで6年生組体操の最後に全員で一つのピラミッドを作っていた。一番上に乗るのは運動神経が良くて小さくて軽い子。うちの子どもは6年生になったら一番上に乗りたいとずっと言っていたが、コロナ禍が始まった年から運動会中止→運動会再開したが縮小で、組体操自体がなくなってしまった。

もし6年生で本当にピラミッドやるってなったら、中学受験もあるし怪我や骨折は絶対に避けたいという気持ちはありつつも、一番上になったら本人も嬉しいし私も誇らしいと思う。ただ一番上ではなく土台だったら、しかも内側で全く見えないパーツになったらどう思っただろう。やらなくていいと思ったんじゃないかと思う。あえて反対はしないかもだけど、無事だけ願う?それとも実際に全員が呼吸を合わせて一つのものを作り上げたら、感動して胸が熱くなるのだろうか。
自分のこどもが参加していない別学年のほうが純粋に感動しそうな気がする。

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2024年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

★3.5
桜丘小学校の運動会で毎年六年生が挑んできた新体操「人間タワー」を巡り、生徒、先生、親達の視点で描かれている。

他人と何かを作り上げるというのは
本当に難しいことだなと、改めて思う。

伝統があり、元々そのコミュニティに属している人達には固定概念が根付いている。
外から入ってきた人には異質に映ることもあるほどに。

伝統を守る。それは誰のために守るのか。

六年生になったらやるもんなんだ、
なんて一喝するのは楽だけど、

自ら望んでいないにも関わらず、
伝統を守る責任を負わされている子ども達に対して
大人たちがすべきことは
そういうものだと決めつけることでも
過去の栄光を語ることでもなく
なぜやるのか、なにを学んで欲しいのか
子どもたちに理解できるように伝えることではないか。
(もちろん憧れている子もいるとは思うが)

学校をテーマにした話だけど、今の自分にも刺さった。
自分の心に生まれた「モヤッ」を無かったことにしてはいけない。考えることを諦めてはいけない。
言葉にして、話し合って、作っていくんだ。

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2022年03月06日

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