朝比奈あすかのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「次は女の子を産むわ」と宣言して、産み分けに躍起になる妻、違和感を覚えながら異を唱えられない夫。様々な葛藤を経て夫婦がたどり着いた先は・・・「憧れの女の子」を含む5つの短編。
とにかくどの作品も良くできている。
それぞれに微妙なテーマを扱いながら決して重すぎず、心に引っ掛かりを残すもののラストは小さな希望があって読後は決して悪くない。
「ある男女をとりまく風家」では絶妙な叙述トリックにまんまとしてやられ、「リボン」では人との関わり方の難しさをしみじみと感じ、「わたくしたちの境目は」ではがんで妻を亡くした夫の後悔の念を思い泣いた。
5つの作品はそれぞれに違う年齢、境遇の男女の機微をうまく描い -
Posted by ブクログ
共通しているのは女性の視点でつづられている、そして同じ職業を持っている、というくらいで、6編の短編それぞれにかなり色が異なる小説集でした。
ひとつひとつで作品の色そのものを変え、リアルに寄り添った話と非日常をまとった話も自在に描かれた、ジャンル分けしづらくもある、かなり中身の濃い一冊だと思いました。
女性の甘酸っぱい心理を鮮やかに描いた「初恋」、徐々に狂いがうすらうすらと見えてくる「譲治のために」、アンモラルでつやめいたひとときが独特の「メアリーとセッツ」、コミカルにリアルに待ったの利かない育児事情と官能小説を描く日常を描く「官能小説家の一日」等…、淡々とした文章から描かれる話はどれも独特の -
Posted by ブクログ
女手一つで娘の奈保子を育てた花江。その奈保子が出産のため里帰りしていた。かつて奈保子には弟がいたが、不慮の事故で亡くなっていた。過去の大きな喪失と、静かに向き合って生きてきた母娘の慟哭を、切なく繊細に描いた表題作。他に、幼稚園で他の子供とうまくやっていけない息子に苛立ち、人間関係に追いつめられていく母の孤独が胸に迫る「ちいさな甲羅」も収録。
3歳の息子を事故で失った母親の悲しみ、苦しみ。
6歳の息子に苛々して、幼い相手に理不尽な物言いをして苛めてしまう母親の悔い、苦しみ。
似た立場にいる私にとっては、リアルで痛かった。
読むのが苦しかった。
表題作、息子を助けてやれなかった、言葉の遅い息子