典型的な帯買い(帯を見て惹かれて買った)した本。そして帯を信じて買ってよかった、と思った本。
「次は女の子を産むわ」と宣言して産み分けに必死になる妻を、言い表せない違和感を持ちながら見つめつつともに暮らす夫が主人公の表題作。その他四編。
全てにおいて、ハッピーエンドではないけれど希望が見えないわけ
...続きを読むでもないラストが秀逸で、独特な読後感だった。
ちくりと胸が痛むけれど、泣きたいのとは違うような。
“普通”な人間なんてこの世の中にはいないのかもしれない。一見何の問題もなく、何の悩みもないように見えても、その実はわからない。
そして“普通の関係”というものもない。
それぞれ個性がある人間同士の関係には、それぞれの進み方があり、それぞれ様々な出来事がある。
危ういバランスながらもうまくいくこともあるし、努力をしてもうまくいかないこともある。
ほんの些細な心理描写や登場人物の言葉が、胸に刺さったり、こういう感情ってあるなぁと思ったり。
いわゆる叙述トリックの物語もあるのだけど、本当に騙された気分ですごく楽しかった。
えっえっ何なに?(戻って読み返す)そういうことか!巧い!一本取られた!みたいな。笑
叙述トリックの小説ってけっこう話題になるから事前に知っちゃってて疑いながら読むパターンが多いけど、まったく知らなくてしかも巧いと本当に楽しいんだと思った。
朝比奈あすかさん。初めて読んだ作家さんだけど、他のもこんなに面白いのだろうか。