朝比奈あすかのレビュー一覧
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ネタバレ後輩に勧められるまで知らない作家さんだったけど、面白かった!
収録されていた2編を別物として読んでいたら、話がつながっていたことが分かったときはえらく興奮した。そういえば1編目の男の子の苗字が三沢で、2編目でミツハルという名前が出てきたとき、三沢光晴かよ!と笑ってしまったのだが、本当にそこがつながるなんて思いもしなかった(笑)
一人の視点からはすべてを見ることはできない。三沢はおじいちゃんやばんちゃん、そして富士川の別の顔(=自分が思い込んでいたのとは違う面)を知って救われただろうか。いや、後悔したかもしれない。それでも知らないよりは良かったように思う。2編目で読者はひとつの真相と、梢とばんちゃんの別の顔も知る。他人の人格をこうだと決めつけることって本当にできないと思った。だから面白いのかな。難しいけど。 -
Posted by ブクログ
何気なく手に取って何気なく読み始め、あっという間に読み終わった。読みやすいというのもあるけど、どこか自分にシンクロするところもあったのがあっという間に読めたわけなのかも。
東大を出て、同じ東大卒で弁護士の夫との結婚を機に仕事をやめ、再就職の気もなく失業保険をもらっている凛子。不自由だと言えば非難されそうな状況にあるのに、無頼で不遜な言動はこじらせ女子的。特に、夫の雄介に対するつれなさ、わがままさときたら……。雄介ときたら、よくもまあこんな凛子を妻にし、今も機嫌をとったりなだめたりしながらそれでも好きでいられるもんだと思ってしまう。そのくらい雄介は屈託なくいいやつで、自分の知っている雄介を彷彿とさせる。だからこそ、こじらせ凛子に自分を重ねてしまう(っていうか、自分は別に東大卒じゃないけどね)。
後半で凛子が抱える心の傷が明らかになってくる。そのあたりから凛子に対するシンクロ性は薄れるぶん、同情的になる自分。「ハスビーン」とはhas beenであり、かつては何者かだったけど今はもう終わってしまった残念なやつを指すのだとか。
著者はこの作品で群像新人賞を受賞。それを知れば初々しい感じもするけれど、小説としての構成や舞台設定はなかなか。かつての同塾生・熊沢くんや姑・れい子さん、さえない(と凛子が思っている)両親やハローワークの職員など人物設定も生きている。解説(吉田伸子)も解説らしくてよかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレファミレス「エンジェルズ」で働く契約社員の真由子。
お客様に楽しい食事のひとときを過ごしてもらいたいという
精神で毎日一生懸命に働く真由子。
新しく入ってきた店長の十亀の傲慢さと幼稚ぶりに辟易しながらも
バイトの子たちとの交流、幼少期に蒸発してしまった母、
プロポーズしてきた売れない放送作家の太田、
働く息がぴったりだったトキちゃん
常連客だったおしゃけさまの切ない未来。
十亀の性格の悪さ=やっぱり癖のあるヤバイ奴
そのまんま!!笑
P159で面白いことが書いてあった。
善か悪で判断するのではなくて
守るものが増えてくると、だんだんと
楽か面倒かで物事を判断してしまう。
楽っていうのはサボるんじゃなくて
いかに一生懸命に楽をするのか。
いかに目をつぶって過ごせるか。
だけどそれじゃあ、信じるべきものの為に戦えなくなる。
すらすら読める。)^o^( -
Posted by ブクログ
高校卒業以来ずっとファミレスで働き続ける真由子。アルバイトから契約社員にはしてもらったものの、無理解な上司やクセのある大学生バイトたちがたくさんの職場は、なかなか良いようにばかりは回らない。そして朝食をよく食べにくるお爺さんの様子が変わり出してから、彼女も少し、変わり出すことになる…
普通に真面目でテキパキしている真由子だけれど、そのうちには大きな虚がある…というとありがちなようなのですが、そのぽっかりとした「抜けている」感じが少し心配になるような危ういバランスを感じさせます。
そんな彼女がファミレスで起こった事件や人とのつながりを経て少しずつ変わっていく様子には、ほっとするものがありました。ありがとう、という言葉は何度行っても言い足りないことはない。そういうふうに何かで聞いたことがありますが、そうだなあと。相手を思い遣ることって、さりげなくて結局は「ありがとう」に集約されるなあ、と思ったりしました。
ただほっこりしていたお爺さんが、変わっていく様子は、なんとも切なくありましたが…
嫌味な上司がそれなりの報い(というかなんというか)を受けたのだけはちょっと胸がすっとしました…。
読み込めば真由子の境遇の辛さとか、重い側面もありますが、基本的には明るいトーンのお話で、楽しんで読むことができました。「自画像」からつづいてこちらを読みましたので、ずいぶんほっとしたのでした…。