朝比奈あすかのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
受験シーズン到来ですね。受験生の皆さんに「桜咲く」の吉報が届くよう祈念いたします!
本作は、2019年に刊行されると、多数の難関中学入試の国語問題として出題され、話題となったそう‥‥。小・中学生に限らず、若い方やその親御さん世代の方にも読んでいただきたい一冊です。
6年3組が舞台で各章が独立し、主人公(4人)が変わります。いずれもクラスで中心的な存在ではなく、その周辺の子たちです。それぞれが、自分の居場所・立ち位置に悩む展開が主軸となっています。
同調や群れる安心感、悩み、大人への態度や反感等、微妙な心情がリアルに描かれています。
共感や反感をもちながら、決して楽しい読書ではなくても、人間関係について自分の考えを深められる気がします。
子どもの繊細で複雑な心情は、大人でも理解や判断・対応が難しいのに、子どもたち自身は本作をどう考えるんでしょうか? 入試問題の出題意図は不明ですが、異性や立場の異なる人の気持ちを考えられる人に、という願いがあるんでしょうかね。
クラスで疎外されている子が2人います。彼らは「空気を読めない」のではなく「空気を読まない」数少ない子たちでした。恵まれない家庭環境でも、優しく感受性のあるこの2人の存在が、救いであり希望と思えました。特別篇にもよく表れています。
エピローグでは、教師となった子が当時を客観視し、今の心境と決意を語っています。これも物語へ深みを与え、希望につながっている気がしました。
人との関わりで大切なことを考えさせ、気付かせてくれる物語でした。 -
Posted by ブクログ
初めましての作者さん。
「心をえぐる衝撃」と煽り帯だが、どうせ言うほど衝撃でもないんでしょ?と思いつつ、結局気になって選んでしまった。
不思議な書き出しから始まっていきなり面食らう。
その後も淡々と話が進むのだが、妙に引き込まれてぐい読み。
急展開があってからは、なんとも言えん感情で読み終えた。
いつも通り帯がハードルを上げたが、これは確かに衝撃だ。
人によっては読まない方がいいかも。
面白いという言葉が不適切になる気もする。
詳細に描かれていない部分もあるので、スッキリしないけど、終わり方はこれでいいと思う。
そうでないと救われない。
やめたからには、幸せな未来を掴んでほしいもんです。
なかなか感想が難しい作品でした。
有意義な読書タイムをありがとうございました
この読後感を噛み締めつつ
腐った人間、絶滅しないかなぁ。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ2年ぶりに再読。2年前は読んでいてふーんとしか思わなかったけど、今は色々と思うことがいっぱいあるかも。沖田先生は教師として公平にかけるし、とにかく厳しくやればいい、いつでも私が正しいみたいな感じで怖い。絶対にこういう人が担任は嫌ですねー。出畑くんは勘がいい。島倉先生はこの本で唯一成長する人だな。
あえてはじめと終わりが学校に直接的に関わらない人なんだなーと思う。
澪はすごく賢い。こういう子が令和には求められると思うな。小学生時代ピラミッドはやったことあるけどタワーはないなぁ。ここまで伝統になっていたらなんかやりたくないかも。伝統的な人間タワーで団結しましたっていうのが気持ち悪いんだよなぁ。いいところは残しつつどんどん時代に合わないところは変えるべきだから澪みたいな子は貴重。 -
Posted by ブクログ
この切り取り方は長めの短編なんだろうな。村上春樹の『風の歌を聞け』の似たような長さの作品が群像の新人賞デビューだったのを思い出す。
言葉の選び方など、すでに作家として十分完成されているのを感じ、その後の活躍を予感させる作品であるのと同時に、「憂鬱な」という題名そのものの、痛いくらいの追い詰められ感のある作品でもあった。
作者はどんな思いでこの作品を書いたのだろうと思って、インタビューを探すと『作家の読書道』で彼女がそれまでの人生を読書経験とともに語っている文章を見つけた。
夫の仕事でアメリカ・シカゴに渡り、しばらく自分自身の仕事や小説を書くことからも離れていて、日本に戻った時に再就職。でも次の子の妊娠で再び仕事を辞めるということになって、というタイミングだったらしい。そのもやもやした気持ちを小説にぶつけて、ご自身はそれが癒しになってすっきりしたと書かれていた。
なるほど。
自分で自分にあたえてきた強いプレッシャーを自己分析し、主人公が親の前で泣くことで自分の心を解放する、そんな物語だったんだろうなと思う。
ただそこまで読者にすっきりさせるような作品ではなく、もやもやをまだ抱えながらもう一押しがんばらなきゃというところで、あえて終わる作品だったのだろうと感じた。 -
Posted by ブクログ
二つの小学校合併の象徴として、六年生全員で造る『人間タワー』。運動会の伝統となり、保護者のみならず地域の住民にも楽しみにしている人は多い。しかし、組体操が危険視される風潮の中、昨年は失敗に終わってしまった。
今年はどうするべきか。保護者、教員、そして当の児童たち。様々な意見に分かれる中、出された結論とは・・・。
賛成するにも反対するにもそれぞれの理由があり、どちらにも納得できるし反論する気持ちにもなる。実際に参加する子どもたちだってそうだ。上に乗る子、下で支える子、それぞれの立場で言い分がある。
私は運動は全然ダメなので、団体競技など嫌を通り越して恐怖でしかないけれど、観る分には団体競技の方が熱くなる気がするのは何故なんだろうか。
こういったことに正解はないと思う。当人たちが納得していればそれでいい。外部が、特に風潮なんて分からないモノが批判するのだけは間違っていると思う。 -
Posted by ブクログ
単なるスクールカーストではなく、中学生や思春期特有の承認欲求や自意識の強さをぎゅっと凝縮させてた特濃ジュースのような描写に感嘆。
清子がいった学校は教師も生徒も底意地悪すぎて過激と思うけど、たしかに似たような感情というのは自分の学生時代にもあって恥ずかしく苦々しい読み心地だった。
私は女子校だったけどそれでも外見からくるカーストというものはたしかに感じていた。そしてそれは、上にいる人には空気のようなもので、下から見ないと心に残らないものだと思う。
後半4分の1くらいで急展開するけど、少しその過程への描写が粗くて感情移入はできなかった。でも、どんなに正論だとしても「された側」じゃない人にはわからない理屈というか、理解はできてもわかるわけないものがあるんだなというのは胸に刺さった。
端々に心当たりがあって黒歴史をいろいろ思い出させられたから読み返したくはないけど、あの頃を黒歴史という言葉で消化できる私は幸せなのかなと思う。 -
Posted by ブクログ
全女子が共感できるやつではないかなと思った。
十歳の章も二十歳の章も身に覚えがありすぎて胸が痛くなったな。
男子の世界でもまた何かしらあるのだと思うけど、女子はもっと複雑で小学生であっても打算とか色々な思惑が絡まりあって人間関係がめんどくさいことになる。
もっとシンプルになればいいのにね。
野々花はすごく自由だけど、やはり容姿という武器があるからできた行動もあるだろう。
阿佐は色んなことを考えて損得で友達を選んでるフシがあったけど、野々花と咲には本音が言えるようになるといいなと思う。
咲は小学生の頃は変人と言われてかなり不思議ちゃんだったけど20歳になったら色んなことを俯瞰して見ていてこれが大人になることだなと思った。
ジェンダーレスとかLGBTQとかはやっぱり一部でしかなくて「女」と「男」って枠組みに入れられて勝手に役割を押し付けられちゃう部分もあるし、本当に生きづらい世の中だなと。
でも3人がそれぞれ悩んで消化して自分らしく生きられたらいいなと爽やかな気持ちで読み終わりました。 -
Posted by ブクログ
朝比奈 あすかさんの長編小説。
タイトルから今時のカースト制がテーマかと想像していましたが
タイトルそのままに、小学校で行われる組体操「人間タワー」を描いた連作集でした。
読み始めの地味な印象から一転、どんどん惹きつけられ途中から夢中になって読みました。
一時、その危険性が取り上げられた組体操ですが、本作では親や教師、そして組体操の上に立つ子供、下で支える子供達の本音などが丁寧な人物描写で描かれています。
「人間タワー」が実施されるのか、無くなってしまうのか、
もし実施される事になったらどんな形で行われる事になるのか、結末が気になり、そしてそこに辿り着くまでの、それぞれの子供達、大人の感情の揺れや思いに寄り添ったり共感したりしながら読み進めました。
全6話で構成されており、一見独立した短編の様でありながら、登場人物が他の章でリンクしていたり、人間タワー=登場人物の連携と上手く掛けられています。
テーマ自体も新鮮で初めての感覚を味わえ、読み応えのある作品でした。
ひとつだけ残念なのはあの形になるまでの過程を読者の想像に委ねられたのかも知れませんが最終話の一つ前で1話増やして描いて欲しい気もしました。 -
Posted by ブクログ
特老ホームのおじいちゃん、教師、生徒、卒業生…と、次々と視点が変わりながらの展開。
学校伝統で楽しみにしている人も多い“人間タワー”に対するそれぞれの思い。視点が違うと見える景色も全然違ったものになる。
憧れ、期待、不安、焦り、葛藤…
年齢も立場も全然違うのに、どの視点も心理描写がとても丁寧でリアリティがありました。
小学生独特の世界の描き方が絶妙。
小学生の組体操が今身近にある人は、特に感情移入せずにはいられない作品だと思います。
『一人のおとなが一人のこどもの人生を、突然大きく拓くことがある。ささやかな敬意が、想像もできないほど一人を救う。』