吉見俊哉のレビュー一覧
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「ちくま」の連載をとりまとめたものなので、必ずしも論旨が一貫しているとは言えない。江戸・東京の敗者としての歴史を鈴木理生等によって概述。
・彰義隊の怨念は抑圧されたのに対し、清水次郎長は敗者である天田愚庵「東海遊侠傳」で、東京の貧民窟は敗者のジャーナリストが語る。
・敗者が抹殺されず複層していく。ファミリーヒストリ(曾祖父山田興松(水中化の発明・教育・実業家)、祖母(離婚後木挽町で旅館、いとこ叔父安藤昇)でミクロ史を記述するが、敗者としての東京との関係は複層。
・鶴見俊舗の敗北への拘り(限界芸術論など)
・敗者は勝者の文化を部分的にとりいれつつ根幹的な精神世界を保持してきた。 -
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個々の大学ではなく、日本の大学制度を俯瞰的に論じた本。
お説ごもっともな部分もあるのだが、大学生が総じて優秀で、人間は老いても知的好奇心が衰えず勤勉である事が前提となっている。
東大で学び、東大で教鞭を取ってきた筆者のキャリアならばそう考えるのも無理はないかも知れないけれど、誰もが何度も学び直してセカンドキャリア、サードキャリアを構築できるわけではないし、構築したいわけでもない。
筆者が憂えているのは『エリート教育』の未来であって、その設計図の中に日本の大半の大学は含まれていない。いや、そもそも“日本の大学“は『大学』ですらなく、似て非なるものと断じている。
氏が夢見る、21世紀版にリ -
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なんだか、またトランプの時代がやってきそうな気配を感じ、読んでみた。
第1章の「ポスト真実」のところは、あ〜、こんな世界だったなとある種の吐き気を感じつつ、またこうなるのかと嫌な気分にある。が、その背景にある力についてもわかってくる感じ。
だが、2章以降は必ずしもトランプと直結するわけでもなく、ハーバードの教育システムの話しやなぜか1990年代にメキシコに住んだ時の体験記などがあって、ややバラバラ感は感じる。
でも、ここのトピックの切り込みは面白いし、全体としての読後感としては、トランプというより、今のアメリカで進んでいる分断、そしてそれを進めている力が、なんとなく浮かび上がるような感じ -
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2019年2月に出版された「平成史」の本。
「令和」は、2019年5月からなので、厳密には「平成」は終わってないうちにこういう本がでるのもなんか変だが、令和5年になっても、「平成」とはなんだったのかを考えるための必要な新たな資料が公開されたりするわけでもないから、これはこれで良いのかもしれない。
ということは、この本は歴史というより、社会学的に30年くらいの時代の変化を読み取っていくというアプローチが中心になる。
テーマごとに著者が分かれる編著で、しかもテーマが現在進行中のものも多いので、全体としての統一感は少ないが、なるほどそんなこともあったな、とか、あれとこれはそう繋がっていたのかと -
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2015年にメディアを騒がせた「文系学部廃止」の報道を受けて、その報道の誤りの背後にある、「文系は役に立たない」という常識そのものに対する問いなおしをおこなうとともに、これからの大学のありかたについての提言をおこなっている本です。
著者は大学史を簡単にたどり、「リベラル・アーツ」や「教養」、さらに現代の大学においてしばしば言及される「コンピテンス」などの概念が、どのような経緯によって生まれてきたのかということを明らかにするとともに、人類的な普遍性に奉仕し、普遍的な価値を追求することが大学のほんらいの使命であることが確認されています。そのうえで、目的合理性とは異なる、人類的な普遍性をもつ価値そ -
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■企業経営の手法を大学運営に移入しようとしたことで、マネジメントが重要だという思想に主力教員が振り回されて時間を磨り潰しており、研究も教育も下降線だ。
■専門教育はもちろん必要だが、その前段階としてヒトとしてのポテンシャルを上げる機会となる横断的な学びの経験が大事だ。しかし現在の日本のパンキョウは専門教育に隷属してしまい、主体的な教養教育はできていない。
■コロナで広まったオンラインだが、マス教育をITに載せるだけでは大学自身の自己否定につながるだけ。練りこまれた共通教材はマス・リモートで活用し、より深い専門的な教育は少人数のゼミナール・実験教室方式でなければならない。前者の間は学生は「街に出 -
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●引用、→感想
●渡辺さんの「まちあるき=コンテンツツーリズム」論のポイントは、街歩きが単なる物語の追体験以上のものだという認識です。たとえば彼は、コンテンツツーリズムの原型として「文学散歩」に言及しますが、そこで実践されてきたのは、単なる作品の読者による追体験ではなく、「作品を現実の都市と結びつけ、重ね合わせる」生産的な場の生成でした。そこではまず、「作品との関わりの中で都市の記憶が形作られ、また変容を蒙りつつ、われわれの中に刻み込まれ」ます。しかし、そうした作品を通じた集合的記憶は、その都市を巡る集合的イメージが形作られる基盤ともなり、そうしてメディアのなかの物語は「都市の側にも投げ返さ -
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中世ヨーロッパからの大学の起源から、歴史的な大学の成り立ちや変遷を、その時々の時代背景や多大な影響を与えたキーマンなども含めてしっかりと述べられています。中世はさすがにイメージしづらいですが、後半の明治維新以降の帝大や私大の成り立ちやその後の臨教審・大学審議会を受けての環境変化は興味深く、そして今の大学が抱える問題は簡単なものではないことがあらためてわかりました。
自由を基本原理として、人と人、人と知識の出会いを持続的に媒介するメディアが大学であり、自由の空間を創出し続けなければならない、と述べられています。
大学を取り巻く状況は危機的ですが、それを乗り越えていくこともまた、大学の使命だし、大 -
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ネタバレコロナ禍で、これまで遅々として進まなかった大学のオンライン化は一気に進んだ。ポストコロナ時代の大学はどうあるべきなのか、ということから始まり、大学の歴史から昨今の大学改革の悪影響が語られ、最後は、国民国家の大学ではなく、新しい地球人を育成するような大学に、日本の大学の一握りでもなれるかと問いかけて終わる。
大学改革は研究者にとって一番大事な"時間"が蔑ろにされて、外からの論理、圧力で進められてきた結果、今のような研究力も低下し、多くの博士号取得者が非常勤職に甘んじているという指摘は、予算やポストの再配分だけでなく、「自由な時間」をどのように実現していくか、若手教員のキャリ -
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トランプというある意味で異常な人物が大統領になったということが、著者によればレーガン時代(1980年代)から始まっていた米国の分断化、そしてネットを通してのフェイクニュースが影響を持ち始めていたことの流れの延長線上にある。そのことを理解できた気がする。まともな報道が信じられなくなり、世界に繋がっているはずのネットが実は自分と同様の考え方をする人たちだけに囲まれた「フィルターバブル」に閉ざされた世界であり、その中のニュースが真実であると思い込んでしまう。トランプ自身がそのような中で生きてきたのだと痛感する。ロシアが米大統領選挙に介入したという疑惑に間違いはないことを確信した。これからますますこの
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#大学はもう死んでいる ? #刈谷剛彦 #吉見俊哉 #集英社新書 #読書記録
283ページの新書の中で、日本の大学改革についてから、グローバル人材の定義、日本の大学と知と出版について、日本の大学の成り立ち、難しさ、優位性についてまで、幅広く語られる。
最後は、それまで端端で語られてきたように、オプティミズム。
語られる中で、自分の仕事に結びつけて、考える。それは、大学改革というテーマに関わらず、人の生き方や、考え方や、動き方について。
これが、いわゆる知なのだろうと、文系の学問の意味のものすごい狭ーいけれど、発展的なものなのだろうとも思う。
脳に汗が出るほど考える、思考する日々を、学