吉見俊哉のレビュー一覧

  • 「文系学部廃止」の衝撃

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    昨年話題になった「文系学部廃止」と言うタイトルに興味を持って手にとってみた。文系学部廃止自体に関する内容は第1章のみで、大部分はその背景の解説。実際には文科省通知は「廃止」などとは言っていないし、通知の内容はずいぶん前から既に発表されていた内容であるし、世の中を騒がせたのは不勉強なマスコミとそれに乗っかった知識人であるのが実態なんだが、なぜその様な騒ぎとなったのかその背後にある本質、この20年間の大学を取り巻く状況についての解説と分析が非常に参考になる。大学の現状とその危機感は本書に書かれている通りだと思う。文系の著者としては「文系は役に立たないけど価値がある」というのではなく、「文系は(長期

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    2016年10月04日
  • 「文系学部廃止」の衝撃

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    東京大学の吉見副学長による『大学とは何か』の続編。タイトルの「「文系学部廃止」の衝撃」以上に読みごたえがあった(2015年の“騒ぎ”はマスコミの不勉強と煽り)。
    「大学は、国に奉仕する機関ではない(p64)、人類的な普遍性に奉仕する(p66)」
    「国・文科省に大学危機の打開で中核的な先導役となれる力がもはやない(p134)」
    あとがきでは「今日の大学は、一般に思われている以上に劣化している(p151)」と述べられている。
    自分なりに「大学を再定義」しながら、コトにあたっていこう。

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    2016年08月14日
  • 「文系学部廃止」の衝撃

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    もとより国立大学の成り立ちが理系中心の教育をする場であり、産業の推進に親和性のある経済学等の社会科学系があとに続き、次いで教員養成が続き、人文系の分野はそういう文脈で並べられると、数値としての成果が出しにくい。今回の通知は決して文系学部廃止をうたっている訳ではなく、大学が社会への貢献や成果を要求されたときに、文系学部が何を持ってその結果を示すのか、そもそも結果とは何かを繰り下げていった本でした。今や大学は何をするところか、その価値について、世間一般からも地位をおとしめられている危機感を感じる中で、著者の授業「アタック・ミー」など、結局のところ、まだまだ大学は個人の教員の努力と工夫で魅力を高めて

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    2016年04月10日
  • 「文系学部廃止」の衝撃

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    たとえが用いられていて一読してわかりやすいと思うのだが、たとえに止まってしまうと具体的に実際の社会でどうしていくべきかということを見失ってしまいがちになる。
    素晴らしい教育の実践を行っている事例を大学から広く発信していくことが大切ではないかと思う。大学自身による積極的な広報を進めていただきたい。

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    2016年03月12日
  • 「文系学部廃止」の衝撃

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    第2章までは論の切れ味の鋭さに感心するとともに非常に勉強になった。しかし3章のナメクジウオと宮本武蔵の例えはわかりにくく、少し無理があるように感じた。文系学部の価値創造性に着目した論点は非常に納得できるものであったが、これを実証できるかが、大きな課題であり、理系ではこの力が備わらないかは疑問である。

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    2016年02月21日
  • 天皇とアメリカ

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    天皇は英語では昔はpopeだった。
    「天皇」という名称自体、幕末に至るまでほぼ900年にわたって使われてはいなかった。「院」と呼ばれた。1840年に没した光格天皇において、初めて「天皇」号が復活。1925年、政府は過去の「院」をすべて「天皇」とすると決定。廃仏毀釈の際、全国の小さな神社を統廃合することが進められ、20万から12万に激減。国家にとって不都合な伝統はつぶされていった。
    森有礼は、キリスト教の思想を浴びた影響で、神と個というキリスト教的関係を「天皇と臣民」という国家的な関係に置き換えていった。
    マッカーサーは天皇をキリスト教にしたかったが、GHQ諜報局長エリオット・ソープに反対された

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    2016年01月02日
  • 大学とは何か

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    骨太な大学の歴史。世界と日本に大きく分けられるが、特に日本の歴史がリアルだ。自由に問いを発する大学の存在は稀有。それを制度的、財政的な、裏付けを持って、長期的な計画を立てることが必須。

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    2015年11月04日
  • 大学とは何か

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    大学の誕生と死、その再生と移植、増殖といった世界史的な把握により、大学とは何か、あるべき大学とはいかなるものか、を考察している。また、コミュニケーション・メディアとしての大学という場を考えるところや、リベラルアーツと専門知の関係についての新しい認識の地平を提供するところに本書の特色がある。
    大学の歴史を世界史的に振り返ることにより、本書では、「中世的大学モデル」、国民国家を基盤とした「近代的大学モデル」、「帝国大学モデル」、近代的大学モデルから派生した「アメリカの大学モデル」といった大学の理念型を抽出する。そのうえで、国民国家の退潮が進む現代においては、国境を越えた普遍性への指向を持ち、横断的

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    2015年06月27日
  • 大学とは何か

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    ネタバレ

    中世の大学の起源から、フンボルト型大学、帝国大学、戦後型大学と、その設置形態、目的、理念の変化をたどる。現代の大学がいくつかの改革を経てなお、70年代に提起された問題に完全に答えられていない、という指摘に頷かされる。

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    2014年03月16日
  • 都市のドラマトゥルギー

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    本書は社会学者吉見俊哉の代表的著作の一つであり、近年における盛り場研究の新たな潮流を創ったものとしても知られる。本書がまとめられたことによって、それまで場所としての機能面に着目されることの多かった盛り場研究において、それを「こと」として捉える流れが生じるようになった。論理は綿密かつ重厚である。筆者はあとがきで本書についての不足点を指摘するが、それを差し引いてもこの研究の価値が減じられることはないだろう。この本が世に出た際、筆者はまだ30歳程度の若手研究者であった。現在は東京大学で副学長を務めておられるということだが、研究成果を考慮すれば、それも当然かもしれない。
    予備知識が必要とされる箇所も多

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    2014年02月27日
  • 大学とは何か

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    新書を読んで、知的好奇心を味わいたい人には
    ぜひ読んでもらいたい作品です。

    僕自信、新書を読んで久しぶりに興奮しました。

    「大学」の歴史的な変遷を丁寧に辿りつつ、
    いま現在抱える問題、その未来像まで語られた本書。

    いわゆる「大学問題」自体はメディアを通じて得る程度の知識しかない
    僕のような人間でも分かりやすく、かつ面白く読みました。

    特に、中性以降、存在意義を見失ってゆく大学が
    近代国家成立とともに価値を見いだされ、復活してゆくくだりや、
    大学の没落と新しいメディアの誕生の関係性などの部分が
    とても印象に残ってます。

    また、僕はこれまで、なんとなく今自分達の目の前にある
    大学のスタイ

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    2012年10月19日
  • 都市のドラマトゥルギー

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     自分とほとんど同年代。たぶん同じ大学。

     吉見さんが30歳の時に書いた、明治大正時代の浅草と銀座、戦後の新宿と渋谷の都市の変化を扱った、社会学的論文。

     随分、難しい文体で書く人だなと思う。それと、都市計画のようにどうやって都市をつくっていくかという視点よりは、その都市で活動していた人たちが、どういう気持ちでその都市に集ってきているのかを外部から描写している感じだと思う。

     浅草と新宿のカオスでなんとなく感じられる共同体意識、それに対して、銀座と渋谷の未来志向、新しもの好きというくくりも、納得感あり。

     また、明治時代に政府が主導で行った勧業博覧会の記述も意外性があった。

     だが、

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    2012年10月09日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    '70s以降をポスト戦後と位置づけ、そこに表面化している諸々の問題を敷衍しながら、日本というネイションとしての共同体の解体の進行を仄めかす。

    個別に、入れ替わり立ち替わり俎上に上がってくるような直近の社会的問題、例えば公害や凶悪犯罪、開発の失敗等々を、一冊のうちに見取り図的にまとめたという点では良書。また、「昭和を知らない」平成生まれ世代が昭和後期を知るための格好の一冊とも言える。とかく、われわれ平成生まれ≒ゆとり世代は「常識知らず」と言われるが、それは昭和のあらゆる重大事を体験していない以上、昭和の「常識」を共有していないのは当たり前なのだ。ゆえにこの本を読んで知っておくのもいい

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    2012年09月25日
  • 「声」の資本主義

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    ネタバレ

    電話・ラジオ・蓄音機。単なる「情報伝達」装置ではない。かつて存在していなかった新たな空間に「声」を伝えるメディア装置。想定外の使用法がスタンダードと化した時、あらたなメディア装置が起動する。そんなこんなを想像するのにいい刺激になりました。

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    2012年06月16日
  • 大学とは何か

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    ネタバレ

    最初は非常に難しい(とわたしは感じた)昔の海外の大学の出来かたやいまの日本の基礎になった帝国大学のできかたなどについて非常に学問的に解説している。

    戦後の大学改革について、筆者は「たくさんの分野を結びつけるのが真の教養主義」と言っていて、現在の日本の大学のもとになった部分を痛烈に批評している。つまり「大学は真の大学の体をなしてないのではないか?」ということを読み取った。
    大学紛争と最近の大学改革についても言及している。

    それでも大学は必要、でももっと頑張らなきゃね、という筆者の言葉には、もっと頑張らなきゃなと思わせてくれる。大学に関わる中級者向けかな。

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    2012年03月19日
  • 大学とは何か

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    ネタバレ

    岩波書店でこのタイトル。
    しかも著者は教育学者ではない。
    興味津々で読んだ。

    目次だけ見ると「大学の歴史を振り返るのか」と思われたが、「メディアとしての大学」の視点があるため、これまで知らなかった大学像が立体的に浮かびあがってくる。

    ・キリスト教は、日本の大学システムの形成期と転換期の二度にわたり、ペリー提督やマッカーサー元帥以上に大きな役割を果たした (P186)

    ・(国立大の法人化について) 財務構造にすでに劇的な変化が生じているのに比べ、組織運営のあり方があまり変化していないように見える最大の理由は事務組織や職員の意識と能力が新しい体制に追いついていない点にある (P23

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    2012年01月15日
  • 大学とは何か

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    限られた紙幅のなかで大学の起源と変遷の歴史がコンパクトに概観された上で、深い洞察と重たい問題提起がなされている。「未来に向けて命がけの跳躍をしなければならない」(p239)との言葉には痺れた。大学関係者必読の書。

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    2012年01月04日
  • 大学とは何か

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    読むのに時間がかかりましたが大変勉強になる一冊でした。
    大学4年である今更になって、もっと早くこの本に出会いたかったと思います。(もっとも、出版自体今年ですが)

    なぜ大学に来たのか、なぜ今いる大学を選んだのか、なぜ今いる学部を選んだのか。
    そもそも、なぜ大学はあるのか、大学とは何なのか。
    そういったことを考えさせられます。
    大学生必読の書だと思います。

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    2011年10月21日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    ▼戦後は1945年に始まり、1989年は冷戦の終わりだった。確かにそれも一つの歴史認識である。
    ▼しかし、いわゆる「失われた時代」は1990年の幕開けとともに始まったのだろうか。答えは否である。少なくともそのきっかけはそれよりも前にあったハズである。それが、本書で言うところのポスト戦後社会、つまり1970年代(後半)に遡るというわけだ。
    ▼ちなみに現在GDP世界第2位となった中国だが、その生活水準はと言えば、平均的には70年代の日本程度らしい。この事実をもって「日本もまだまだ」と、傷口を舐めあおうとするのではない。原発、反原発、そしてその補填(ほてん)という議論は盛んにされるが、誰がその分の電

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    2011年09月19日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    東京大学大学院情報学環教授・吉見俊哉(社会学)による岩波日本近現代史シリーズの第9巻。

    【構成】
    はじめに
    第1章 左翼の終わり
     1 あさま山荘事件と1970年代
     2 「運動」する大衆の終わり
     3 ベ平連とウーマンリブ、反復帰論
    第2章 豊かさの幻影のなかへ
     1 高度経済成長の頂点で
     2 消費社会と都市の若者たち
     3 重厚長大から軽薄短小へ
    第3章 家族は溶解したか
     1 変容する日本人の意識
     2 郊外化と核家族の閉塞
     3 虚構の世界へ
    第4章 地域開発が遺したもの
     1 反公害から環境保護へ
     2 地域開発とリゾート開発の結末
     3 農村崩壊と地域自治への模

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    2011年06月20日