吉見俊哉のレビュー一覧

  • 都市のドラマトゥルギー

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     自分とほとんど同年代。たぶん同じ大学。

     吉見さんが30歳の時に書いた、明治大正時代の浅草と銀座、戦後の新宿と渋谷の都市の変化を扱った、社会学的論文。

     随分、難しい文体で書く人だなと思う。それと、都市計画のようにどうやって都市をつくっていくかという視点よりは、その都市で活動していた人たちが、どういう気持ちでその都市に集ってきているのかを外部から描写している感じだと思う。

     浅草と新宿のカオスでなんとなく感じられる共同体意識、それに対して、銀座と渋谷の未来志向、新しもの好きというくくりも、納得感あり。

     また、明治時代に政府が主導で行った勧業博覧会の記述も意外性があった。

     だが、

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    2012年10月09日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    '70s以降をポスト戦後と位置づけ、そこに表面化している諸々の問題を敷衍しながら、日本というネイションとしての共同体の解体の進行を仄めかす。

    個別に、入れ替わり立ち替わり俎上に上がってくるような直近の社会的問題、例えば公害や凶悪犯罪、開発の失敗等々を、一冊のうちに見取り図的にまとめたという点では良書。また、「昭和を知らない」平成生まれ世代が昭和後期を知るための格好の一冊とも言える。とかく、われわれ平成生まれ≒ゆとり世代は「常識知らず」と言われるが、それは昭和のあらゆる重大事を体験していない以上、昭和の「常識」を共有していないのは当たり前なのだ。ゆえにこの本を読んで知っておくのもいい

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    2012年09月25日
  • 「声」の資本主義

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    電話・ラジオ・蓄音機。単なる「情報伝達」装置ではない。かつて存在していなかった新たな空間に「声」を伝えるメディア装置。想定外の使用法がスタンダードと化した時、あらたなメディア装置が起動する。そんなこんなを想像するのにいい刺激になりました。

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    2012年06月16日
  • 大学とは何か

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    ネタバレ

    最初は非常に難しい(とわたしは感じた)昔の海外の大学の出来かたやいまの日本の基礎になった帝国大学のできかたなどについて非常に学問的に解説している。

    戦後の大学改革について、筆者は「たくさんの分野を結びつけるのが真の教養主義」と言っていて、現在の日本の大学のもとになった部分を痛烈に批評している。つまり「大学は真の大学の体をなしてないのではないか?」ということを読み取った。
    大学紛争と最近の大学改革についても言及している。

    それでも大学は必要、でももっと頑張らなきゃね、という筆者の言葉には、もっと頑張らなきゃなと思わせてくれる。大学に関わる中級者向けかな。

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    2012年03月19日
  • 大学とは何か

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    ネタバレ

    岩波書店でこのタイトル。
    しかも著者は教育学者ではない。
    興味津々で読んだ。

    目次だけ見ると「大学の歴史を振り返るのか」と思われたが、「メディアとしての大学」の視点があるため、これまで知らなかった大学像が立体的に浮かびあがってくる。

    ・キリスト教は、日本の大学システムの形成期と転換期の二度にわたり、ペリー提督やマッカーサー元帥以上に大きな役割を果たした (P186)

    ・(国立大の法人化について) 財務構造にすでに劇的な変化が生じているのに比べ、組織運営のあり方があまり変化していないように見える最大の理由は事務組織や職員の意識と能力が新しい体制に追いついていない点にある (P23

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    2012年01月15日
  • 大学とは何か

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    限られた紙幅のなかで大学の起源と変遷の歴史がコンパクトに概観された上で、深い洞察と重たい問題提起がなされている。「未来に向けて命がけの跳躍をしなければならない」(p239)との言葉には痺れた。大学関係者必読の書。

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    2012年01月04日
  • 大学とは何か

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    読むのに時間がかかりましたが大変勉強になる一冊でした。
    大学4年である今更になって、もっと早くこの本に出会いたかったと思います。(もっとも、出版自体今年ですが)

    なぜ大学に来たのか、なぜ今いる大学を選んだのか、なぜ今いる学部を選んだのか。
    そもそも、なぜ大学はあるのか、大学とは何なのか。
    そういったことを考えさせられます。
    大学生必読の書だと思います。

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    2011年10月21日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    ▼戦後は1945年に始まり、1989年は冷戦の終わりだった。確かにそれも一つの歴史認識である。
    ▼しかし、いわゆる「失われた時代」は1990年の幕開けとともに始まったのだろうか。答えは否である。少なくともそのきっかけはそれよりも前にあったハズである。それが、本書で言うところのポスト戦後社会、つまり1970年代(後半)に遡るというわけだ。
    ▼ちなみに現在GDP世界第2位となった中国だが、その生活水準はと言えば、平均的には70年代の日本程度らしい。この事実をもって「日本もまだまだ」と、傷口を舐めあおうとするのではない。原発、反原発、そしてその補填(ほてん)という議論は盛んにされるが、誰がその分の電

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    2011年09月19日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    東京大学大学院情報学環教授・吉見俊哉(社会学)による岩波日本近現代史シリーズの第9巻。

    【構成】
    はじめに
    第1章 左翼の終わり
     1 あさま山荘事件と1970年代
     2 「運動」する大衆の終わり
     3 ベ平連とウーマンリブ、反復帰論
    第2章 豊かさの幻影のなかへ
     1 高度経済成長の頂点で
     2 消費社会と都市の若者たち
     3 重厚長大から軽薄短小へ
    第3章 家族は溶解したか
     1 変容する日本人の意識
     2 郊外化と核家族の閉塞
     3 虚構の世界へ
    第4章 地域開発が遺したもの
     1 反公害から環境保護へ
     2 地域開発とリゾート開発の結末
     3 農村崩壊と地域自治への模

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    2011年06月20日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    吉見先生による現代史。1972年あさま山荘事件を日本における(自己反省的な)「左翼運動の終わり」と位置付け、その後の高度成長時代、グローバル金融の波に対応できなかった角栄の列島改造とバブル崩壊、グローバル化と新自由主義への傾倒あたりを「ポスト戦後」と称して記述する。

    現在の民主党政権が押し進めている節操なきグローバル化も、個人レベル、地域レベル、国家レベルで進む「日本」という主体の解体も、現代史を通してみると歴史の必然のような気がしてくるから不思議だ。

    いままで現代史を勉強する機会がまったくなかったので、非常に面白く読んだ。まだ歴史の評価が定まっていない部分もあるので、歴史というよりは評論

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    2010年03月21日
  • 東京裏返し 都心・再開発編

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    歴史的視点で、都市の点を線にし、裏返す楽しさ、深み。
    街歩きのヒントを沢山頂きました。

    中規模河川が都市の動脈、用水や上水が都市の静脈、
    小規模河川は都市の毛細血管(本田創)
    高台 江戸時代の大名屋敷、堤清二の買い漁り
    低地 曲がりくねった道 庶民


    三田用水
    東禅寺 高輪 初代駐日英国大使オールコック
    三田小山町 開発で瀕死

    蟹川 新宿
    西向天神社 安藤昇
    百人町 革命家 孫文、北一輝、幸徳秋水
    梅屋庄吉 
    王城ビル 歌舞伎町
    戸山公園 731部隊


    軍隊の街、渋谷三軒茶屋 青山六本木赤坂
    日本陸軍の遺構だらけ
    軍都→占領軍→オリンピック

    下北沢 補助54号
    東京世田谷韓国会館

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    2025年08月17日
  • アメリカ・イン・ジャパン ハーバード講義録

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    アメリカと日本の関係をアメリカ側から、日本側から見た歴史を、国民性や風俗などを政治と絡めて語っている。
    切り口は面白いが、これは、そういう切り口で語られたものとして読まないといけないと思う。ペリー来航に関してもそれまでのポルトガルやオランダとの関係やイエズス会の宣教師との関係もあるわけで。
    その辺りの他の国との関係性がわかっていてのこの本の解釈にしないと、またこの本も一面的なものになってしまうだろうと思う。そしてもはやアメリカは世界に播種しているので、そのことも念頭に入れなければならないと思う。

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    2025年08月03日
  • 大学は何処へ 未来への設計

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    客観的に日本の教育制度と大学の位置付けを再考できる機会となった。小中高、高専、短大、大学、大学院。また年齢と教育制度が絡みついてしまっている日本社会の課題を感じるところ。

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    2025年05月25日
  • さらば東大 越境する知識人の半世紀

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    食べていく手段があるなら、人は後付けの権威主義的序列に加わらなくても生きていける。それが農地や店舗を持つ昔ながらの三ちゃん企業や三ちゃん農業だが、少なくとも、都市型の権威は関係ない。しかし、土地に縛り付けられる分、村社会や家族のヒエラルキーに対しては、より硬直的に組み込まれている。どちらが良いか。

    都市の根本にあるのは移動性で、ムラは基本的に閉じた共同体。そのようなムラから飛び出したり、はじき出されたりした商人や職人たちのネットワークのハブとして都市が発達し、それが、西洋中世都市の基本モデルだと吉見はいう。

    同様に大学も都市モデルで、教師や学生は移動を基本とした弱い立場であるはずだが、しか

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    2025年02月15日
  • 敗者としての東京 ──巨大都市の「隠れた地層」を読む

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    「ちくま」の連載をとりまとめたものなので、必ずしも論旨が一貫しているとは言えない。江戸・東京の敗者としての歴史を鈴木理生等によって概述。
    ・彰義隊の怨念は抑圧されたのに対し、清水次郎長は敗者である天田愚庵「東海遊侠傳」で、東京の貧民窟は敗者のジャーナリストが語る。
    ・敗者が抹殺されず複層していく。ファミリーヒストリ(曾祖父山田興松(水中化の発明・教育・実業家)、祖母(離婚後木挽町で旅館、いとこ叔父安藤昇)でミクロ史を記述するが、敗者としての東京との関係は複層。
    ・鶴見俊舗の敗北への拘り(限界芸術論など)
    ・敗者は勝者の文化を部分的にとりいれつつ根幹的な精神世界を保持してきた。

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    2024年07月25日
  • 大学は何処へ 未来への設計

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    個々の大学ではなく、日本の大学制度を俯瞰的に論じた本。

    お説ごもっともな部分もあるのだが、大学生が総じて優秀で、人間は老いても知的好奇心が衰えず勤勉である事が前提となっている。

    東大で学び、東大で教鞭を取ってきた筆者のキャリアならばそう考えるのも無理はないかも知れないけれど、誰もが何度も学び直してセカンドキャリア、サードキャリアを構築できるわけではないし、構築したいわけでもない。

    筆者が憂えているのは『エリート教育』の未来であって、その設計図の中に日本の大半の大学は含まれていない。いや、そもそも“日本の大学“は『大学』ですらなく、似て非なるものと断じている。

    氏が夢見る、21世紀版にリ

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    2025年04月03日
  • トランプのアメリカに住む

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    なんだか、またトランプの時代がやってきそうな気配を感じ、読んでみた。

    第1章の「ポスト真実」のところは、あ〜、こんな世界だったなとある種の吐き気を感じつつ、またこうなるのかと嫌な気分にある。が、その背景にある力についてもわかってくる感じ。

    だが、2章以降は必ずしもトランプと直結するわけでもなく、ハーバードの教育システムの話しやなぜか1990年代にメキシコに住んだ時の体験記などがあって、ややバラバラ感は感じる。

    でも、ここのトピックの切り込みは面白いし、全体としての読後感としては、トランプというより、今のアメリカで進んでいる分断、そしてそれを進めている力が、なんとなく浮かび上がるような感じ

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    2024年01月24日
  • シリーズ日本近現代史 9 ポスト戦後社会

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    1970年代〜
    読み手側の問題で面白い所、そうでない所にバラつき。
    世相、沖縄、政治には興味を持てるが、労働組合の再編などは難しく感じた。

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    2023年05月09日
  • 平成史講義

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    2019年2月に出版された「平成史」の本。

    「令和」は、2019年5月からなので、厳密には「平成」は終わってないうちにこういう本がでるのもなんか変だが、令和5年になっても、「平成」とはなんだったのかを考えるための必要な新たな資料が公開されたりするわけでもないから、これはこれで良いのかもしれない。

    ということは、この本は歴史というより、社会学的に30年くらいの時代の変化を読み取っていくというアプローチが中心になる。

    テーマごとに著者が分かれる編著で、しかもテーマが現在進行中のものも多いので、全体としての統一感は少ないが、なるほどそんなこともあったな、とか、あれとこれはそう繋がっていたのかと

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    2023年05月03日
  • 大学とは何か

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    世界(欧米)の大学の歴史と日本の大学の歴史。それぞれに国家や宗教,産業,民衆との関係が表れる。
    日本の学校制度(大学)も始めから今のような仕組みではない。江戸時代→明治維新→産業殖産・富国強兵→世界大戦→アメリカ占領→学生運動→人口動態に合わせた対応→グローバル(米国)スタンダードへの表面的追随→?
    本書は大学とは何かについて大学教育に関わる人が知っておくコモンセンスかも。

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    2023年03月21日