吉見俊哉のレビュー一覧
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リンダ・グラットンの「LIFE SHIFT」を読んでからずっと、100年生活に「学び」をもう一度、組み込みたい(はやりのリカレント教育?)という気持ちがむくむく沸き上がっている自分にとっては、タイミンググッドな新書でした。一方で大学人というインナーサークルからの大学改革についての分析なので、悔恨、逡巡、もやもや満載です。章立てが序章「大学の第二の死とは何かーコロナ・パンデミックのなかで」第一章「大学はもう疲れ果てているー疲弊の根源を遡る」第二章「どれほどボタンの掛け違いを重ねてきたのかー歴史の中に埋め込まれていた現在」第三章「キャンパスは本当に必要なのかーオンライン化の先へ」第四章「九月入学は
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アメリカの現状を細かに解説した読み応えのある好著だ.ライシャワー パラダイムの論考、非軍事的ナショナリズム/デモクラシー/日米安保体制を軸に戦後の日米関係の基礎を築いた由.「ハミルトン」が大好評なのは聞いていたが、就任前のペンス副大統領へのブーイングは面白い.菅総理へのブーイングはあるかな.TVドラマで復活版「ロザンヌ」でロザンヌ・バーが不適切なtweetで一夜にして首になった話も楽しめた.大学教育でハーバード大学のシラバスの素晴らしさとTA(Teaching Assistant)との連携が、密度の高い講義を創り出しているとの考察は多くの大学人に知らせるべきだと感じた.「日本のなかのアメリカ」
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【本来ならば未来への道程が見通せなくなったときには、その未来への自らの構想力を改めて鍛え上げなければならない。それは、それまで当たり前と思われていることを問い直し、既存の安易な解決法を拒絶して、困難でも未来につながる道を選ぶ跳躍力を必要とする。これが、日本社会には存在しなかった】(文中より引用)
平成とはいったいどういった時代であったのかを、政治や経済、教育や外交といった多角的な側面から分析した作品。著者は、東京大学大学院情報学環教授を務める吉見俊哉他。
豊富なデータとともに、平成への一つの見方を提供してくれる一冊。一つの時代の輪郭を大まかになぞるのではなく、その時代を構成する様々な要素ご -
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日本の平成30年は失敗の歴史だった。のっけから強烈なメッセージを発する著者。そして、その失敗の具体例があげられる。
グローバル社会、ネット社会に乗り遅れた日本企業たち。特に金融や家電業界では縮小、倒産が連鎖した。政治の世界では政権交代を繰り返しつつも、結局は与党一極集中と極端なポピュリズムだけが生き残った。さらに大企業と正社員に富が集中し、拡大する格差社会とそれに伴う少子化。そして、2つの大震災。
こうしてながめてみると、たしかに平成はろくでもない時代だった。が、それなら平成後のネクスト安倍政権や東京オリンピック、消費増税などに希望があるのかと問われると、心もとない。
批判的な眼で見れば -
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【一九八九年から二〇一九年までの「平成」の三〇年間は、一言でいえば「失敗の時代」だった】(文中より引用)
タイトルずばり,平成とはいかなる時代だったのかを詳述した作品。特にその時代の「失敗」に焦点を当て,ポスト平成に求められるものとは何かにつき検討を重ねていきます。著者は,『トランプのアメリカに住む』等の著作で知られる吉見俊哉。
かなり厳しい平成評であるため,著者があとがきで記しているように読んでいてかなり気分が重くなりました。しかしその厳しさ故に勉強となる教訓についても多く触れられており,平成以後を考える上で大変参考になる一冊だと思います。
平成本は数多く発売されていますが☆5つ -
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【エキサイティングな都市社会論】
・きっかけ
都市論の名著ということで東京史のおさらいもと思って積読状態に。
・要約
東京の盛り場の形成と変遷を、そこに集まる人々による「上演」という視点で背後にある空間形成戦略と社会構造から読み解く。
上京者のアイデンティティと未来性という軸から語る。
・感想
いわゆる衒学的なきらいはあったが、関心分野だったので知的な興奮を覚えながら一気に読める。
社会学的なアプローチとして、先人の議論の援用と膨大な資料による論証の作法は参考になる。
都市空間を舞台とし、人々を演者ととらえ、さらにメディアの視点も交えつつ、丁寧に出来事をたどっていく作業。修論がベースとい -
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ネタバレ著者がハーバード大学で教えるためにアメリカはマサチューセッツ州ケンブリッジに滞在した、2017年9月から2018年7月までの間の滞在記である。時はトランプ大統領の就任1年目から2年目にあたる。当初の滞在目的は「あくまでハーバードの教育システムを内部に入り、それがどのように廻っているかを体験」することであったが、トランプ政権誕生で事情が変わった。この書もハーバードの教育システムにも触れるが、アメリカで次々と発生した「ポスト真実」「ラストベルト」「人種差別」「セクハラ」「銃乱射」といった問題に向き合い、アメリカの今を映し出すルポとなっている。
興味深かったのは、ハーバード大学を扱った第3章、ラスト -
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中世のボローニア、パリ大学に始まり、イギリスのオックスブリッジ、そして19世紀のドイツでナポレオンの仏に押される中で、知の先進国としてのフンベルト大学の隆盛、そして20世紀はジョンズ・ホプキンス大学から米国の時代に。中世から近代にかけて大学が衰退し、近代知のパラダイムが浮上した時代があった!大学が学問的想像力を失い、古臭い機関に成り下がった時代があった!デカルト、パスカルスピノザなどが大学と縁があったのか!との指摘は興味深いものがある。日本の大学がドイツのフンベルト型大学をモデルに帝国大学を導入したとのこと。森有礼の理想、そして戦後は南原繁の考え方とプロテスタンティズムが日本の大学の方向性決定
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ネタバレ大学を「コミュニケーションメディア(=媒介)」の一種と捉え、大学再定義を試みる。しかし、大学は「何々である」という普遍的な定義ではない。中世の都市、活版印刷(出版)の出現、近世の国民国家の出現と共に大学の定義は揺らいできた。ネットの出現により、メディアとしての大学の位相も劇的に変化しつつある。現在の最も大きな位相の変化は「国民国家の退潮」である。そして、国民国家の中で設立された旧制大学(特に帝国大学)モデルは、大きな転換が求められている。そのキーワードは「マネジメント力」であるようだ。
教育面でのマネジメント力の強化のキーワードは、「リベラルアーツ」である。従来の「教養」とは異なる、「リベラ -
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『大学とは何か』が大学論の基礎文献ならば、この本は現代日本への応用編。キャッチーなタイトルに反して、中味の射程は深い。前半の報道とその反応をめぐる浅薄さは痛快。学問の有用性を問い直す中で、文化にとって根源的な遊戯性の指摘で締めたことが印象的だった。
・大学には、学生や保護者への説明責任が大学にはあるのですが、説明責任を負うことと奉仕することは違います。
・「教養」は国民国家的な概念。グローバル教養は形容矛盾。
・イギリスでは「カレッジ」とは学寮のことで、学生が所属する大学の基本単位。日本でいえば学部。米国では「大学院」と「高校」にはさまれた「学部レベル」の教育課程を意味する。
・「教養」がど -
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「あとがき」まで読んで、優れた一書であることを痛感。戦後の事件やイベントを巡る解釈や視点じたいが大変、興味深い。しかし、最後の方になって、だからそれがなに?という疑問がふつふつと沸いてきた中で、あとがきで、ガツンと気合いを入れられた感じがした。歴史の脱構築である。
・べへいれんのシングルイシュー主義。
・<未来>を準拠点にして現在を位置づけることは、近代社会の根幹をなす価値意識。これがなくなりつつある。『現代日本人の意識構造」から
・この30年間で地方農村でも社会関係が「都市化」され、全人格的なつきあいは厭われるようになっていった。
・石原慎太郎による環境行政の後退。
・六ヶ所村は満州、樺太