吉見俊哉のレビュー一覧
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平成時代(吉見俊哉/岩波新書)
回顧録ではなくグローバル化とネット社会化という変容の中で、失敗としての平成を分析。人口縮減、経済停滞、社会の分断、政治の空回り。世界を俯瞰しながら著者はこの困難は70年代からの結果とし、ご破産には決してならないと断言。令和への指針ともなる良書と思います。
以下、詳細な内容です。
著者は本書を「失敗の時代」の検証書と位置づけ、「失敗」と「ショック」の視点から平成を読み解きます。平成という元号に時代性を認めつつ、それが単に天皇の在位による区分ではなく、冷戦終結からグローバル化・ネット社会化へと揺れる世界史的転換期と重なることに意味を見出しています。
1. 経 -
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1854年、日本人にとっての黒船来航はアメリカから見ればペリー提督の大遠征であった。その歴史的画期以降の日本と米国のさまざまな事象に焦点を当て、「非対称なクラインの壷」のごとき日米関係に迫る本書は、ハーバード大学でおこなわれた講義をもとに書き下ろされた一書。以下、各章のタイトルを見るだけでも面白そうな講義内容が伝わってくるが、個人的には第3講、第7講、第8講が面白かった。とくに第8講で指摘されているように戦後すぐの最大のインバウンド顧客は米兵だったとの指摘(pp.230-231)の阿部純一郎氏の研究(「<銃後>のツーリズム」『年報社会学論集』31号、2018年)を引いての指摘ははっとさせられた
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都市を発展史観で捉えるのではなく、幾重もの重層的な歴史であるととらえる点がユニークである。本書によれば東京は徳川政権、薩長連合、米軍に敗れてきた歴史があるという。筆者の述べていることだが、この3度にとどまらず、常に勝者と敗者とが生まれているのが都市である。
出版社の雑誌に連載されていたものを一本化したものらしく、やや大部の本書の真ん中には筆者の一族の歴史にかかわる具体的な話が挟まっている。この部分を読んでいる時は脇道にそれた感じがして、少々不愉快になった。
だが、彼らは忘れられた起業家であり、経営が破綻した企業主であり、やくざであり、そのほかいわゆる「勝者」とは言えない人々である。そうし -
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素人にもわかりやすくて面白く読めた。江戸幕府が作り上げた江戸の街を、明治に薩摩藩長州藩が東京として作り直し、関東大震災と大戦を経て、東京の街は道路中心主義の資本主義的再開発によって再構築されていく。そこでは、徳川将軍の墓を増上寺の暗所に押しやった芝プリンスホテルの開発や、戦後の経済難に苦難する華族から大規模な所有地を買い上げ分譲開発していった資本家の歩み、渋谷川の彩を取り戻す試みなど、様々な見所があった。読み進めながら、この筆者の知識量に衝撃を受けたのだが、東大の副学長も歴任された社会学者の先生だったことを知り、納得させられた。森ビル、東急等の「高く、早く、強い」東京を目指す再開発と、しなやか
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日本の中のアメリカ、
アメリカの属州ではないかと思うことが様々ある中で、アメリカの独立戦争、西部開拓の歴史、ペリーの浦賀来訪、アメリカの捕鯨活動の基地の必要性、などから、現在までの原子力の平和利用、アメリカ軍基地を巡る、様々な問題、星条旗に対するアメリカ人のナショナリズム、自由の女神、(お台場に行った時に、なんでここに自由の女神があるのだろうか?)と思ったことを思い出した。
ディズニーランドが日本を包み込む、多くの人がディズニーランドに憧れ、アメリカの文化が日本の文化を包み込むことに喜びを感じる。日本人、ドジャースとカブスの開幕戦が東京ドームで行われることに熱狂する多くの日本人の様子をテレビで -
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筆者が2018年春学期にハーバード大学教養学部の東アジア言語文明学科で行った講義をまとめた本です。
1000円ちょっとでハーバード大学の講義を読めるのはお得過ぎます。
ペリーが日本に「遠征」した頃からの日本がアメリカとどのように関わってきたのかを講義しています。
幕末、明治、大正、大戦前、大戦後それぞれの時代でいろいろと知らなかったことが書いてあって面白かったです。
アメリカは西へ西へと開拓(侵略)していって、日本にたどり着いたとか、
明治の頃のアメリカの宣教師の人たちがいろいろな大学の元になっているとか、ほんとうにいろいろあって面白かったです。 -
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昨年度、東大を退官した吉見俊哉が2009年に出版した岩波新書です。なんで15年前の本を手にしたのか…はい、古本屋さんでめちゃ安かったからです。それが大当たり!シリーズ日本近現代史⑨と書かれていますが、この一冊、今の自分にとっては社会を見るためのコンパクトな俯瞰図になりました。年齢を重ねることのいいことは、あの時の出来事が歴史の中での意味が理解出来るようになることだと思っています。点が線になる感じ…本書によって視点をドローンのように上げて、さらに線が面になる感覚を得ました。自分の個人史が社会史とか経済史とか産業史とかに重なる感じです。この本が書かれた後に、東日本大震災を始めとする大地震に見舞われ
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大学は死んでいる吉見俊哉☆☆☆
現代の大学論・改革論の基礎を網羅している、著者の見識の深さ素晴らしい
されど日本社会は、少子化・財政逼迫の中で争われ、中期ビジョンの実行のための取組は為されにくい
1.大学の環境変化
①18歳人口激減②グローバル競争激化③Digital革命の社会構造変化
91年大学設置基準の大綱化
大学院の劣化 教養教育の弱体化
「カレッジ」大学の基本
生活共同体(旧制高校) 帰属の単位→エリートの育成
2.大学改革の機運
①日本社会にとって大学の重要性が高まる
②従来の大学教育には問題があった
③科目数の多さ15科目
米国は5つゼミのごとく 2冊読破/毎週→ハード -
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大学の系譜的解説。実は大学も多義的なことが理解できた。かなり中身が厚いので再読の価値あり。一応世界史、メディア、リベラルアーツの軸があるらしい。
①中世大学
欧州経済圏の中の自由都市に流浪の知識集団が定着したのが始まり。ボローニャに代表されるように法学(医学)が優越するが、アリストテレスのイスラム再輸入で神学(学芸諸学)のパリも発展。しかし托鉢修道会の浸透と宗教・領主による分割で大学が硬直し衰退。
②国民国家による再発見
専門学校・アカデミー(実学研究)・印刷革命による出版(知識人網)産業の中、独でカントの「理性と有用性の峻別(哲学の理性の自由)」と共にフンボルトのナショナリズムを背景とした主 -
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日本の「大学」が劣化している。その一番の原因は、国民の無関心、誤解、保守的思考…。
結局のところ「大学」を真に改革するには、日本の社会自体を改革しないといけない。しかし世間は社会の改革に乗り気ではない。だから日本の「大学」は、経済とともに国際競争から取り残されていく。
そもそも、「大学とは何か」から始めなければ、改革は「ボタンの掛け違い」のまま悪化の位置図をたどる。それを歴史的経緯と並べて示したのが本書である。
これを読んだ読者は、では何をすれば今日の窮地を改善させることができるのだろう…ただただ、途方に暮れてしまう。
だが本書にはヒントもある。社会人も再び「大学」という場で学ぶ -
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大学の歴史を俯瞰して、大学とは何か、という問いに迫る。
大学は中世ヨーロッパに端を発し、都市を基盤にして発展する。
しかし、16世紀以降に印刷技術が発展し、越境的な知のネットワークを構築する。大学はこれに取って代わられる。
19世紀になると、ナショナリズムを背景に研究と教育の一致という理念をかかげた国民国家型の大学が誕生する。翻って日本では、明治維新期に分野を先導する各国の学者を呼び、ひたすらに学知を移植する。そして戦後の複線化されていた高等教育機関の大学への一元化、大学紛争の混錬、文科省の大綱化、大学院重点化、国立大学法人化の施策について触れる。
これらを踏まえ、大学とは何かといことを考える