古屋美登里のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
699ページの読み応えのある重い本(実物の重さも内容も)だった。
働き盛りの親が揃っていて大家族のホームレスが大都会にいる事がまず知らなかった。そして里子にもなる事。
親の生活を知ると「自己責任」「親が悪かった」と一言でなりそうだ。そうなるから著者はこれを書いたと言う。
社会と家族の生活は密接に関わっている。埋もれて見えないけど、社会の中に確実にいる存在。アメリカの子の5人に1人は貧困と言われる。日本は6人に1人。見えない。私の周りの子は皆、家も食べものもSwitchも持っている。こんなに情報社会と言われているのに見ようとしないと見えないものが沢山ある。殆どはそうで。見たいものと見させられているものだけで溢れている。見なければならないものはその中からかき分けて取りに行かないとダメな時代な事を痛感した。 -
Posted by ブクログ
今でこそ日本ではホームレスが少数派だが、それこそ戦後間もない頃は、皆、戦争で家も家族もなくして、二重の意味でホームレスだった。少数派、といいつつ、派遣年越し村など、生活困窮者への支援はその時々にて行われた。また、最近では、ヤングケアラーという言葉がようよう一般的になり、核家族化が進み、まだ大人になっていない子供が、本来保護者たる親を支援して、学習や生活に支障が出るという問題も表面化してきている。
アメリカは日本よりも国土が広く、更に民族も入り乱れている。更にアメリカは自主独立の精神がより尊ばれ、日本のような国民皆保険といった医療保障制度がない。多くは、雇用主が補償するあるいは個人で購入する民間医療保険に加入している。よって、世界最高と言われるアメリカの医療を、貧しい人は受けることができない。“貧しい人”のカテゴリに入るのは、概ね黒人である。
少女ダサニは、ヤングケアラーだ。祖母、母と義父がいたが、祖母は亡くなり、両親は窃盗や薬の常習犯だ。両親の不在時、長女の彼女が妹や弟の世話に追われ、自分の時間を持てない。当然勉強が疎かになる。それでも頭脳明晰で運動神経も抜群な彼女に、全寮制のハーシースクールへの転校という、ビッグチャンスがもたらされる。貧困の悪循環から抜け出す道が見えはじめたが、家族とは離れる。ケアしてくれる親がわりを失った家族と、生活様式や言葉の端々に、いわゆる白人らしさを身に着けていくダサニの間はぎくしゃくし始める。一方、家族は不備のある貧困支援制度や機能不全の児童保護システムに翻弄され、崩壊寸前に追い込まれる。本来、大人達がケアして、ダサニは自分の本分たる勉強に集中し、貧困から抜け出す道を探さなければならない。しかし、愛する家族だからこそ、切り捨てることはできない。自分だけが幸福でいいのだろうか?という考えに至ってしまい、せっかく順風満帆だった学校生活に暗雲がさす。
本当は、家族全体を、いや、社会全体をごっそり“改善”できればいい。正解はわかっているが、財源はどこも苦しく、配分先は吟味される。個々を見てケアするという細かいことはできない。そんな問題ありの両親とは、悪影響を断ち切るためにも引き離した方が手っ取り早いと他人は思うかもしれないが、無理やり家族を引き裂くことになる。日本においては、虐待を繰り返す母から引き離した方がいい、という例がニュースなどで報じられており、必ずしも家族一緒にいることが幸福とは限らない。親切な他者の方が、子供の未来のためになる場合もある。大切なのは、当事者たる子供の意見をないがしろにしないことだ。見えない存在でいた彼等を見出し、助ける時にも、目の前にいる子供を見ずに、決めてはいけない。
2022年・ピュリツァー賞受賞作。 -
Posted by ブクログ
ずっと、気になっていた本です
アフガニスタンという国を、私はよく知りません
この本はフィクションだけれども、フィクションではないのでしょう
海外文学を読むと、日本との文化や考え方の違いに大いに驚きます
日本ではあり得ない、でもそれは他国ではまかり通るのです
日本の小説も、当たり前のように時代に合わせて変化しています
だからここに書かれていることは、フィクションだけれども、かなりの事実が含まれているのでしょう
読むのが辛かったものもあります
その中に、ほんの少しの希望を持てたものもあります
今のアフガニスタンで権利を奪われている女性たちへ私たちができることは何もないかもしれない
代わりになることなんて、もってのほか
何もできなくても、この本は読んでよかったと思います
わたしのペンは鳥の翼
この本は、わたしたちが思ってはならない思いを、夢見てはならない夢を伝えるものになるでしょう
思ってはいけないことなんてない
見てはならない夢なんてない -
Posted by ブクログ
「作家紹介」のない本を初めて読んだ。
作家の名前や経歴を明かすことがいかに危険であるか!アフガニスタンという国の状況、そこに住む女性たちが何を思い何を求めているのか・・
知りたいと思い手に取った。
タリバンが復権する前に書かれた、女性作家18人によるアンソロジー。
アフガニスタンのダリー語とパシュトー語から英訳されたものを、翻訳家の古屋美登里さんが日本語に訳された本。沢山の人々の手を介して生まれた一冊なので大切に読ませて貰った。
"抑圧"を受ける女性たちの日常が見えるようで何度も読む手が止まった。
「八番目の娘」
今回こそ息子を授けてほしい!と絶食する私は妊娠8ヶ月。キッチンで倒れてしまい病院に運ばれる。生まれた娘を抱いて婚家に戻ると、中から歌声や賑やかな楽器の音が聞こえてきて…
男の子を産めない私に義母と義姉、そして夫からの酷い仕打ち。怒りはついに沸点に達して…
言葉を失くす物語だった。
「遅番」
国営ラジオ・テレビ局本部で働くニュースキャスターのサンガ。化粧をする間も飛んでくるロケット弾を避け、今夜もスタジオに向かう。仕事を辞めたら食べていけない! 爆発音、悲鳴、救急車のサイレン…死と隣り合わせの日常がリアルに綴られる。
「世界一美しい唇」
結婚式場に潜り込んだムスカは「神は偉大なり!」と叫びながら、花嫁と花婿の立つところめがけて自分の身を投じた。
たった6頁の文章にヒリヒリと痛みを感じた。
夢を手放さないで!と伝える「花」
「親が決めた相手と結婚させる。女性に教育は必要ない…と言うこの国の人たちは文字が読めない。私たちに必要なのは本であり、教師なのです」
抗議デモの後、学校が攻撃され友だちが死んだ…
「学校に行って自分の思うように生きろ」ネークバットに言った父親の言葉が彼女をどんなに勇気づけたことだろう。