無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
1961年11月20日、オランダ領ニューギニア沖(当時)でそれは
起きた。オランダ人の人類学者とアメリカ人の青年が乗ったボートの
エンジンに不具合が発生した。
同乗していた現地案内人は助けを求める為に陸地を目指して
泳いで行ってしまった。残されたふたりはボート内で待機して
いたが、アメリカ人青年は案内人の帰還を待ち切れずに空き缶を
浮き輪代わりにして海へ飛び込んだ。
彼の姿が確認されたのはこれが最後であり、後々、衝撃的なニュース
となって世界を駆け巡った。
何故なら、行方不明になったアメリカ人青年は世界の大富豪である
ロックフェラー一族の一員であったからだ。
マイケル・ロックフェラー。父親はニューヨーク知事であり、後に
はアメリカ副大統領となった。その後継者であるマイケルは、所謂
「プリミティブ・アート」に魅せられ、その収集の為に現地を訪れて
いた先での事故だった。
ロックフェラー家の公式発表では海難事故とされているが、この
行方不明事件には長らく不穏な噂が絶えなかった。
マイケルが収集していたのは、ニューギニアの未開の地に暮らす
アスマット族の人々の生活用品だったからだ。
アスマット族は「首狩り族」と言われ、人喰いをすると言われる
人々である。
著者は当時の資料に当たり、現地の言葉を習得し、現地を訪問し、
限られた期間ではあるがアスマット族と生活を共にして、何故、
マイケルは「喰われたのか」を理解しようとする。
アスマット族を理解しようとする著者には好感を持つ。それと同じ
感情を、失踪当時のマイケルは持ち合わせていたのか?が気になる
のだよね。
アスマット族が神聖な儀式に使用していた柱さえ、僅かな対価で
手に入れているのだから。そこに、恵まれた出自から来る「驕り」
があったのではないだろうか。
勿論、それだけがマイケルがアスマット族に殺害された理由には
ならないだろう。マイケルが現地に赴いたタイミングも悪かった。
他部族との戦いがあり、オランダ人宣教師との衝突もあったのだ
から。
カニバリズムはタブーである。よく、「人喰い」をテーマにした
書籍などに書かれていることだが、それさえも文明に頼って生きる
世界の人々の風習・文化の軽視なのではないかと思う。
とか書くと「人の命をなんだと思っているんだ」と怒る人もいるの
だろうな。
「未開の部族」と呼ぶことさえ、文明世界の驕りだと思ってしまう
のだよね。
本書はそんなことまで考えさせてくれる良書である。
Posted by ブクログ
【暴虐なる神秘】ニューギニアの熱帯で美術品の収集に務めていたロックフェラー家の御曹司・マイケル。原始的な美に惹かれた彼を最終的に待ち受けていたものは、突然の死と、現地人に「喰われてしまう」という衝撃的な最期であった。1961年に起きた実際の事件を取材するとともに、その裏に横たわる文化人類学的な深淵を覗き込んだ作品です。。著者は、「ナショナル・ジオグラフィック・トラベラー」の編集者でもあるカール・ホフマン。訳者は、小説作品の翻訳も手がける古屋美登里。原題は、『Savage Harvest: A Tale of Cannibals, Colonialism and Michael Rockefeller's Tragic Quest for Primitive Art』。
タイトルから「トンデモ本」を想像する方も多いかと思うのですが、実際は卓越したノンフィクション作品であると同時に、フィールドワークに基づく一級の文化人類学的な作品でもあるという類稀なる一冊。「え、この話はそっちに行くの?」という展開の連続に驚かされると同時に、その先に行き着いた光景に文字通り息を呑む読書体験を味わうことができるかと思います。
〜ウィム・ファン・デ・ワールとマイケル・ロックフェラーのような人々は、アスマット文化を探し、集め、写真に撮り、アスマットと共に旅をし、村の深部まで行くことができた。互いの世界と、実際には見えない世界の次元の違いを知らないままで。〜
ラストは全身から思わず力が抜けるほどの衝撃でした☆5つ
Posted by ブクログ
小中学生の頃に愛読していた「ポケットムー」シリーズの「世界謎の10大事件」という巻に、確か"秘境に消えたロックフェラー"というサブタイトルで収蔵されていたと記憶している。
以来、これまでにこの失踪事件を扱った記事や書籍は何度か読んだが、当時のオランダ政府やインドネシア政府にアメリカ政府、そしてもちろん現場となったパプアニューギニアの政治的関係や立場を分析し、さらにはロックフェラー家と美術品収集の因縁にまで踏み込んで詳細に報告したものに接するのは初めてだ。
マイケル・ロックフェラーが辿った命運については、本書の序盤でいきなり結論めいた描写が生々しく綴られるが、そのショッキングな推察がどうやら事実だったらしい、と読み進むごとに納得感が増してくるような。
我々にとって身近ないわゆる"文明社会"から遠いところで生活しているコミュニティに関するルポタージュを読むといつも、彼らにとって"個"の概念はひたすら薄く、また生と死の距離が極めて近いことに驚くわけだが、今回もまたその例外ではなかった。
Posted by ブクログ
マイケル・ロックフェラー失踪事件の事すら知らなかったが、未解決事件には興味がある。軽い気持ちで読んでみた。
著者がたどり着いた真相はいきなり冒頭で明かされる。それは丹念に当時の記録や関係者の証言を辿れば、「事実」としては浮かび上がる。しかし、この本の本質はそれが「なぜ」行われたかであり、そもそも我々が「プリミティブ」「未開」と呼ぶ人びとをどう捉えていたのか、分かろうとしていたのかという問いに繋がる。
殺人、ましてカニバリズムはこの現代社会、この文明に生まれた我々にとっては常識を超えた行為であり、犯罪である。しかし、その思考とは全く異なる思考、文化、文明で生きてきた人びとが確実に存在する。
そういう人びとを、西洋文明はある種「救おう」としてきた。同化させようとしてきた。「理解する」のではなく「同じ」にしようとしたのだと感じる。正しさ、誤り。今日のグローバル社会というものにおいてどのように「文化」が違う者と向き合うか、を考えさせられた。
失踪したマイケル・ロックフェラーは素晴らしい一面を持っていた。しかし、自分が求める「プリミティブ・アート」にある精神と向き合うことがなかった。
最終章に至り、アスマットと「暮らす」ことを選んだ著者の選択。おそらく「向き合う」ことの最終形である。相手と真に語らうには、相手と向き合うしかないのだ。それは別に相手が誰であれ同じ筈だ。しかしそれには困難さも伴う。理解する、の何と難しいことか...。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
ビジネス・実用
ビジネス・実用
ビジネス・実用
小説・文芸