古屋美登里のレビュー一覧

  • だれか、わたしを助けて

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    筆者の誠実な人柄や観察眼が伝わってくる前書きから始まる短編集。

    「極寒の町」が素晴らしかった…厳しくも美しい自然と主人公の葛藤に胸が痛くなる。

    この本だけでなく個人的に最近思うのが、「自分を救えるのは自分しかいない」ということ。
    でもタイトルのように「だれか」に救いを求めてしまうし、場合によってはだれかを救いたいとも思ってしまう。
    何度もこの堂々巡りをしてしまう。だからこそ私には読書が必要なんだろう。

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    2026年10月01日
  • 月の番人

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    無人の月の寂寥がホントで、地球の賑わいがウソみたい(谷川俊太郎)静寂が、だんだんさみしくなくなっていくのがいい。

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    2026年09月24日
  • だれか、わたしを助けて

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    全編よかった。ずっと曇り空だけど頑張って目を凝らせば光が差しているのが見える、的な感じ。陰鬱さの中にも確かな希望があって、だけど希望があるからって幸せになれるとは限らないよね、みたいなテンションで紡がれる十二編。

    特に好きなのは「ヘラジカを食べてくれ」「神を畏れるがごとく我を畏れよ」「心臓と大血管の損傷」かなあ。

    染みたのは「極寒の町」「だれか、わたしを助けて」「バンコクにいると」かなあ。

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    2026年08月17日
  • 劇場の子 イーディス・ハラー 下

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    ネタバレ

    ケアリーのダークでグロテスクなファンタジーの性格が特出しており、下巻は一気に物語が動いていくが、語り尽くせない圧倒的な面白さがあり良い読書体験だった。上下巻に亘りケアリーのイラストが冴えているが、特に後半はあまりパラパラしないほうが吉。注釈は各章の最後に置かれているが此の方がよい。アイアマンガー3部作も良かったが、個人的には本作が好み。ストーリーとしては善悪構図としてしっかり主人公と幽霊の子供たちの目的が果たされ、読後のカタルシスもしっかりあるが甘くない。ダークファンタジーのゆえんがここにある。おすすめ。

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    2026年08月17日
  • 劇場の子 イーディス・ハラー 上

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    ネタバレ

    劇場経営の由緒ある家系において、劇場から通路に出ることを許されない、通路に出たら劇場が崩壊するという呪いをかけられた13歳の少女の話。大好きな父が継母を迎えるところで劇場の運命が大きく変わる.じめじめとした背景構成はいかにもケアリーのファンタジーらしい陰が出ていて、不思議な世界に引き込まれる。上巻は物語の背景や多彩な登場人物がしっかり描かれるのでやや忍耐がいるが、下巻の展開には必要なので、じっくり読むべし。

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    2026年08月17日
  • だれか、わたしを助けて

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     訳者の言葉、素晴らしい読書体験とは過言ではなかった。一つ目の話を読んだだけで、ここに登録するのを止められなかったので、書き残しておく。これから残り11篇もあると思うともう…
     読み終わってしまった。12番目のお話までじっくりと味わい深い。再読必至、本棚の一等地に据えておくべき本でしょう。

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    2026年08月13日
  • 誰にも見えない子ども――アメリカの大都市で生きるホームレスの少女の記録

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    699ページの読み応えのある重い本(実物の重さも内容も)だった。

    働き盛りの親が揃っていて大家族のホームレスが大都会にいる事がまず知らなかった。そして里子にもなる事。
    親の生活を知ると「自己責任」「親が悪かった」と一言でなりそうだ。そうなるから著者はこれを書いたと言う。

    社会と家族の生活は密接に関わっている。埋もれて見えないけど、社会の中に確実にいる存在。アメリカの子の5人に1人は貧困と言われる。日本は6人に1人。見えない。私の周りの子は皆、家も食べものもSwitchも持っている。こんなに情報社会と言われているのに見ようとしないと見えないものが沢山ある。殆どはそうで。見たいものと見させられているものだけで溢れている。見なければならないものはその中からかき分けて取りに行かないとダメな時代な事を痛感した。

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    2026年06月24日
  • 誰にも見えない子ども――アメリカの大都市で生きるホームレスの少女の記録

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    想像を超える展開と、結末でした。ハッピーエンドではないけれど、雑草のように逞しく生きる主人公と家族のこれからのストーリーにエールを送りたい。
    10年後、彼女たちがどうなっているのか、著者に続きを追ってほしい。

    #2026上半期ベスト

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    2026年06月01日
  • 書くことのメディア史――AIは人間の言語能力に何をもたらすのか

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    AIで書くことについて説明した文章である。最初の方は、語学特に西洋の言語歴史についてであるので、日本の学生にはあまり興味がわかないかもしれない。後半になってくると書くこととAIについての筆者の調査が入る、といってもアルファベット中心で英語とイタリア語、フランス語での綴りであるが、少しは興味が持てるかもしれない。
     日本語でAIと書くことについての書籍が出版されることを望む。

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    2026年02月07日
  • 人喰い――ロックフェラー失踪事件

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    残酷さやグロテスクさを押し出すのではなく、カニバリズムにも論理があるということを丁寧に説明する作品。それ故に、自身と異なる道徳や倫理観を持つ異文化への畏れを強く感じた。

    読み終えてみて、コンチキ号漂流記から文化人類学者に憧れた無邪気な自分と、異国の地で世界の捉え方がどこまでも異なることを痛感する自分の両方に再会できた気がした。

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    2025年12月21日
  • アメリカの悪夢

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    現在のアメリカのどうしようもなさが伝わってくる。
    変化していければ楽なことはないだろうけど、自分のなあにある正義がそう変えてくれない。難しい時代になったと思う。ブレントの戸惑いと悲しみに終始共感。

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    2025年11月07日
  • 誰にも見えない子ども――アメリカの大都市で生きるホームレスの少女の記録

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    今でこそ日本ではホームレスが少数派だが、それこそ戦後間もない頃は、皆、戦争で家も家族もなくして、二重の意味でホームレスだった。少数派、といいつつ、派遣年越し村など、生活困窮者への支援はその時々にて行われた。また、最近では、ヤングケアラーという言葉がようよう一般的になり、核家族化が進み、まだ大人になっていない子供が、本来保護者たる親を支援して、学習や生活に支障が出るという問題も表面化してきている。

     アメリカは日本よりも国土が広く、更に民族も入り乱れている。更にアメリカは自主独立の精神がより尊ばれ、日本のような国民皆保険といった医療保障制度がない。多くは、雇用主が補償するあるいは個人で購入する民間医療保険に加入している。よって、世界最高と言われるアメリカの医療を、貧しい人は受けることができない。“貧しい人”のカテゴリに入るのは、概ね黒人である。

     少女ダサニは、ヤングケアラーだ。祖母、母と義父がいたが、祖母は亡くなり、両親は窃盗や薬の常習犯だ。両親の不在時、長女の彼女が妹や弟の世話に追われ、自分の時間を持てない。当然勉強が疎かになる。それでも頭脳明晰で運動神経も抜群な彼女に、全寮制のハーシースクールへの転校という、ビッグチャンスがもたらされる。貧困の悪循環から抜け出す道が見えはじめたが、家族とは離れる。ケアしてくれる親がわりを失った家族と、生活様式や言葉の端々に、いわゆる白人らしさを身に着けていくダサニの間はぎくしゃくし始める。一方、家族は不備のある貧困支援制度や機能不全の児童保護システムに翻弄され、崩壊寸前に追い込まれる。本来、大人達がケアして、ダサニは自分の本分たる勉強に集中し、貧困から抜け出す道を探さなければならない。しかし、愛する家族だからこそ、切り捨てることはできない。自分だけが幸福でいいのだろうか?という考えに至ってしまい、せっかく順風満帆だった学校生活に暗雲がさす。

     本当は、家族全体を、いや、社会全体をごっそり“改善”できればいい。正解はわかっているが、財源はどこも苦しく、配分先は吟味される。個々を見てケアするという細かいことはできない。そんな問題ありの両親とは、悪影響を断ち切るためにも引き離した方が手っ取り早いと他人は思うかもしれないが、無理やり家族を引き裂くことになる。日本においては、虐待を繰り返す母から引き離した方がいい、という例がニュースなどで報じられており、必ずしも家族一緒にいることが幸福とは限らない。親切な他者の方が、子供の未来のためになる場合もある。大切なのは、当事者たる子供の意見をないがしろにしないことだ。見えない存在でいた彼等を見出し、助ける時にも、目の前にいる子供を見ずに、決めてはいけない。

    2022年・ピュリツァー賞受賞作。

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    2025年11月05日
  • 美術泥棒

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    ネタバレ

    ヨーロッパで起こった実際の2人組の泥棒の話。

    あまりにアートを愛し過ぎて
    盗みを働くのだが、

    もう盗むことも中毒になってしまい、

    捕まっても、釈放される度に、また盗んでしまう。

    読んでても後半は悲しくなります。

    ちなみに、アートと窃盗に中毒になっていく表現は官能的で美しくて秀逸です。

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    2025年09月19日
  • 望楼館追想

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    初めてケアリーを読みましたが、冒頭からの掴みと、その後のストーリー展開や物語の順序が巧みだなーと感じました。独特の文体と展開が、長い物語を飽きずに読ませてくれます。巻末の付録が最高です。

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    2025年08月11日
  • わたしのペンは鳥の翼

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    ずっと、気になっていた本です

    アフガニスタンという国を、私はよく知りません
    この本はフィクションだけれども、フィクションではないのでしょう
    海外文学を読むと、日本との文化や考え方の違いに大いに驚きます
    日本ではあり得ない、でもそれは他国ではまかり通るのです

    日本の小説も、当たり前のように時代に合わせて変化しています
    だからここに書かれていることは、フィクションだけれども、かなりの事実が含まれているのでしょう

    読むのが辛かったものもあります
    その中に、ほんの少しの希望を持てたものもあります

    今のアフガニスタンで権利を奪われている女性たちへ私たちができることは何もないかもしれない
    代わりになることなんて、もってのほか

    何もできなくても、この本は読んでよかったと思います

    わたしのペンは鳥の翼
    この本は、わたしたちが思ってはならない思いを、夢見てはならない夢を伝えるものになるでしょう

    思ってはいけないことなんてない
    見てはならない夢なんてない

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    2025年06月06日
  • わたしのペンは鳥の翼

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    「作家紹介」のない本を初めて読んだ。
    作家の名前や経歴を明かすことがいかに危険であるか!アフガニスタンという国の状況、そこに住む女性たちが何を思い何を求めているのか・・
    知りたいと思い手に取った。

    タリバンが復権する前に書かれた、女性作家18人によるアンソロジー。
    アフガニスタンのダリー語とパシュトー語から英訳されたものを、翻訳家の古屋美登里さんが日本語に訳された本。沢山の人々の手を介して生まれた一冊なので大切に読ませて貰った。

    "抑圧"を受ける女性たちの日常が見えるようで何度も読む手が止まった。

    「八番目の娘」
    今回こそ息子を授けてほしい!と絶食する私は妊娠8ヶ月。キッチンで倒れてしまい病院に運ばれる。生まれた娘を抱いて婚家に戻ると、中から歌声や賑やかな楽器の音が聞こえてきて…
    男の子を産めない私に義母と義姉、そして夫からの酷い仕打ち。怒りはついに沸点に達して…
    言葉を失くす物語だった。

    「遅番」
    国営ラジオ・テレビ局本部で働くニュースキャスターのサンガ。化粧をする間も飛んでくるロケット弾を避け、今夜もスタジオに向かう。仕事を辞めたら食べていけない! 爆発音、悲鳴、救急車のサイレン…死と隣り合わせの日常がリアルに綴られる。

    「世界一美しい唇」
    結婚式場に潜り込んだムスカは「神は偉大なり!」と叫びながら、花嫁と花婿の立つところめがけて自分の身を投じた。
    たった6頁の文章にヒリヒリと痛みを感じた。

    夢を手放さないで!と伝える「花」
    「親が決めた相手と結婚させる。女性に教育は必要ない…と言うこの国の人たちは文字が読めない。私たちに必要なのは本であり、教師なのです」
    抗議デモの後、学校が攻撃され友だちが死んだ…
    「学校に行って自分の思うように生きろ」ネークバットに言った父親の言葉が彼女をどんなに勇気づけたことだろう。

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    2025年05月12日
  • わたしのペンは鳥の翼

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    日本と全く異なる文化・文脈で書かれているので、最初は読み辛さを感じました。読み終わる頃には日本と同じく自分に選択できない要素によって、家父長制の元で二級市民のように扱われる苦しさにシンパシーを感じました。なぜ戦争状態の国とこの平和と言われる国がこんなに似通っているのか考える人が増えて欲しいと願ってしまうような本でした。

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    2025年01月20日
  • アメリカの悪夢

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    アメリカのジャーナリストのノンフィクションによくある、ドキュメンタリータッチの気取った書きぶりがやや慣れないが、内容は良い。イラクとイスラエルへの派遣経験と近年のアメリカの政治状況が、抑制的ではあるが重ねて語られて、それが説得力を持って迫ってくる。訳者あとがきによれば、これは三部作の最後のもの。前2作も読んでみたくなった。

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    2024年11月30日
  • 肺都

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    ネタバレ

    アイアマンガー三部作の完結編.
    ロンドンに乗り込んだアイアマンガー一族とロンドンとの戦い.
    主人公のクロッドは,結局一族側につくことになるが,許嫁のピナリッピー,途中で拾ったベネディクト(ビナディット),結集(という名前のものです),もう一人の主人公のルーシーも絡み,最後にはビクトリア女王も登場して,三部作は終焉を迎える.最終章の文体が好きだな.クロッドは例の力(元々の能力,ではなく,第三部で身につけた力)をまだ持ってるのだろうか?

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    2024年09月21日
  • わたしのペンは鳥の翼

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    サブタイトルはアフガニスタンの女性作家たち
    基本小説らしい、でもテロが日常の隣りにある日々の暮らしが哀しいほどよくわかる
    でもテロが主題なのは一部で、それも含めて、虐げられた女性たちの絶望と希望(希望があるのが読んでるときの救い)に寄り添い続ける物語

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    2024年09月06日