古屋美登里のレビュー一覧
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ネタバレものすごく良かった。
苦しく、悔しく、やるせない。衝撃と絶望。総じて漂う女性の不自由さ。社会通念の呪縛。そして、沸々と湧き起こる怒り。
産後病院から戻ると、男の子が産まれないからという理由で夫が新しい妻との宴を開いている「八番目の娘」、セクハラに文句を言ったら給与未払いで解雇された「共通言語」、暴力を振るう姉の夫を殺めた弟と彼をかばい有罪となった先生の物語「ダーウードのD」。
一方で、希望や清々しさを感じる作品には心救われた。
タダでバスに乗せてくれた運転手さんの優しさが沁みる「冬の黒い烏」、女性のリーダーシップと女性たちが力を合わせて団結力の強さを輝かせる「アジャ」、心ときめく赤いブー -
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著者は、登山家でロッククライマー。1924年にエベレスト初登頂を目指したイギリスの登山家マロリーとアーヴィンの足跡をたどりながら、アーヴィンの遺品を探索するためにエベレストを目指したノンフィクション。 自身のエベレスト体験と過去の挑戦者たちの歴史、登頂した人、還らなかった人たちの話、エベレストの登山環境、現代の登山など様々な事例を紹介しながら、著者自身の体験、エベレスト登山について考察しており大変面白く読めた。
以前、エベレスト登頂を目指した栗城さんを追ったノンフィクションを読んだが、この本を読むと準備を怠らない経験豊富な登山家であっても、不運に見舞われることもあるし、観光ツアーで登る人、名声 -
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長距離移動を伴う泊まりがけの仕事が入ったので旅のお供にと購入。いつものことだけど亜紀書房の海外ノンフィクションはハズレがない。
本書は登山家である著者が「1924年にエヴェレスト山頂付近で消息を絶ったひとりの若きイギリス人登山家の遺体を捜索する」というナショジオのドキュメンタリー制作(2019年)に参加したときの顛末をつぶさに記したもの。
膨大な資料をもとに、1924年のイギリス登山隊の苦戦の様子と、2019年の自らの旅程や現代のエヴェレストを取り巻くさまざまな事情・問題を自由自在に行き来して描く巧みな構成に舌を巻く。
そして真に迫る筆致でぐいぐい読ませる。タフな一冊。 -
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1961年11月20日、オランダ領ニューギニア沖(当時)でそれは
起きた。オランダ人の人類学者とアメリカ人の青年が乗ったボートの
エンジンに不具合が発生した。
同乗していた現地案内人は助けを求める為に陸地を目指して
泳いで行ってしまった。残されたふたりはボート内で待機して
いたが、アメリカ人青年は案内人の帰還を待ち切れずに空き缶を
浮き輪代わりにして海へ飛び込んだ。
彼の姿が確認されたのはこれが最後であり、後々、衝撃的なニュース
となって世界を駆け巡った。
何故なら、行方不明になったアメリカ人青年は世界の大富豪である
ロックフェラー一族の一員であったからだ。
マイケル・ロックフェラー。 -
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どんな感想を書いたところで、本書に書かれている現実に比べればあまりに軽薄なものになってしまう。読んでいてどれもこれも非常に厳しい話で、読み進めるのが辛い。「私の中のあなた」以来の辛さだと感じた。
にわか雨が降るように爆弾が落ちてくる。あっけなく人が亡くなる。それも子供が。
生まれた性別が異なるだけで人とは思えない扱いを受ける。
どうしてこうなってしまうのだろう。
それでも、一人でも多くの人に現地の状況を知ってもらい、寄付なりなんなりできることを行動に移してもらえるよう、微力でも書かねばならないと思う。
日本でも、形は違えど本質的に同じような問題は現在もなおある。それらも併せて頭に置いてお -
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アフガニスタン(以下、アフガン)の女性作家18名による23篇の作品が収められている。
紛争などによって疎外された現地の作家を発掘するプロジェクト〈アントールド〉により集められ、更に英語圏の読者に読んでもらうべく現地の翻訳者が英訳。アフガンの人々によって彼女達のペンは翼へと姿を変え、世界中に羽ばたいたのである。
装丁・タイトルに惹かれて手に取ったが、想像以上に意義のあるもので本を持つ手に力が入った。
「みなさんの心を引き裂くような文章も本書にはあります」
「思わず息を殺してしまうような文章も記されています」
こんな文言がまえがきにあったら、その先は覚悟を決めて読んでいくしかないだろう。(どうし -
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2017年10月、「ニューヨーク・タイムズ」紙が「ハリウッドの大物プロデューサーによる性的暴行」を報道した。これをきっかけに、性暴力の告発運動である「#MeToo」が巻き起こり、アメリカに留まらず世界的ムーブメントへと発展した。女性たちはソーシャル・メディアに#MeTooタグを付け、次々と過去に受けた性被害を告白していった。「#MeToo」運動は「自分が発言することが(誰かの)行動に繋がる」という、価値観の転換を促した。
ハリウッドの敏腕プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン。「人を出世させる力」を持つワインスタインは、グウィネス・パルトロー、マット・デイモンなど数々の若手俳優をスター -
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7/5の夜。
仕事で遅くなって1時間も取れず。そんな中手に取ったのが、トム・ゴールド『月の番人』。絵本です。
本を開いた瞬間に、芳しいインクの香り。月が舞台で、空に広がる宇宙と散りばめられた星が目に飛び込んでくる。月で警官をつとめる主人公は、閑散とした街と、どんどん去っていく住民を見送る側にいる。コンビニが無人化し、住居ユニットがどんどん減っていき、主人公も耐えきれなくなりとうとう異動を願い出るが、受け入れられない。そんなとき、テイクアウト専門の無人ドーナツ屋がドーナツカフェに改装されることを知る。
遅れてやってきた者の取り残された感触。警官という職業を考えれば、住人が最後の一人になってでも -
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ロンドンの蝋人形館の創始者として有名なマダム・タッソー。
フランスで生きた若い頃の波乱の人生を描きます。
マダム・タッソーが描いたことになっている、筆者の絵も魅力的。
マリーは可愛いとは言えない特徴のある顔の、小柄な女の子。
早く両親を亡くし、ひたすら働き続けます。
医師のクルティウス先生のところに住み込み、蝋で人体のリアルなパーツを作る手伝いもしました。
やがてパリに出た医師は、蝋人形で評判をとります。
大家である未亡人は癖が強い人物で、マリーを嫌い冷たく当たりますが、最後には態度を軟化させるのが意外な展開でちょっとほっこりしました。
ベルサイユ宮殿でルイ16世の妹と親しくなったマリー。 -
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ネタバレ1761年、スイスの小さな村で生まれたマリーは、父を亡くし町の医師クルティウス博士の家で母と共に働くことに。だが、人馴れしない博士の仕事とは病院から運ばれてきた遺体の型を取り、蠟で標本を作ることだった。クルティウスの弟子となり型取りの技術を身につけたマリーの運命は、舞台が革命前夜のパリに移ってから大きく動き始める。ロンドンの蝋人形館で有名なマダム・タッソー(本名マリー・グロショルツ)の前半生にスポットをあて、イマジネーションを駆使して個性豊かな人びととの出会いと別れを描いた自伝風歴史小説。作者本人による挿絵付き。
マダム・タッソーの来歴をぜんぜん知らなかったので驚く展開のたびにWikiを開