樋口明雄のレビュー一覧
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樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 遥かなる蒼峰』徳間文庫。
文庫書き下ろし。
今回は南アルプスが舞台ではなく、アメリカのヨセミテ国立公園からキングス・キャニオン国立公園、セコイア国立公園が舞台となる。
このシリーズは毎回、想定外の事件が描かれ、山岳救助隊のメンバーと山岳救助犬が事件へと果敢に挑むのだ。今回は北岳白根御池小屋のアメリカ人スタッフ、ニック・ハロウェイと神崎静奈の2人がジョン・ミューア・トレイルを走破しながら、大きな事件を解決する。
一気読みだった。何時もながら面白い。
何時も陽気な北岳白根御池小屋のアメリカ人スタッフのニック・ハロウェイは、最近、何故か落ち込んでいた -
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樋口明雄『宇宙に願いを』ヤマケイ文庫。
『風に吹かれて』に続く、樋口明雄の自伝的青春小説。3編の短編を収録。
この歳になると、こういう短編を読むと涙腺が緩み、自分の過去にも思いを馳せてしまう。あの時、こうしていれば良かったと後悔ばかりが先に立つ。
『幻夏』。
ノスタルジックな快作。読みながら、自分の中学校時代の友人はどうしているだろう、昨年末に亡くなった父親とももっと話をしたかったなど、様々な過去への思いが湧き出した。自分の場合は過去への後悔の方が多いのは、そういう人生を送ってきたからだろうか。
前作にも登場したモリケンこと森木健一も65歳となり、作家を生業としていた。ある日、中学 -
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山と人の物語。
定年退職の日に妻から離婚届を突きつけられた里村乙彦は、絶望の中で酒に溺れるが、娘の助言で再起を決意。南アルプス北岳の山小屋で、管理人親子やスタッフと共に過酷な環境の中で新たな人生を歩み始める。
山っていいなあと思える作品。
山で働いてる人が素敵なのか、山で働くから素敵になるのか。
私的には山で働こうとなる人には何かしらに思いがあるような印象で、その抱えた思いでプラスに働くかマイナスに働くのかで、その人が決まる。 山の力でプラスに変えた人(山で働く人たちの力も含め)が、素敵な人になるのでは無いか。
何はともあれ、北岳の景色を笑う描写が素敵すぎる。山を登る。身としては登山に -
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樋口明雄『太陽を背にうけて』角川文庫。
仕事一筋で家庭を顧みなかったことから、定年を機に妻に離婚され、酒に溺れた男性が再起を決意し、南アルプス北岳の山小屋で働きながら人生の再生を果たすという物語である。タイトルの『太陽を背にうけて』はジョン・デンバーの名曲から。
読後には、昔の日本映画を観終えた時のような清々しい気持ちになる素晴らしい小説だった。主人公の65歳の里村乙彦と年齢が近いこともあり、身につまされる思いで読んだことも一因であろう。
『南アルプス山岳救助隊K-9』シリーズの星野夏実と江草恭男隊長も登場する。
ファミレスの経営会社の管理職を勤め上げた65歳の里村乙彦は、妻との老後の -
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樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 愛と名誉のためでなく』光文社文庫。
今度は光文社文庫から初のシリーズ刊行。2ヶ月連続刊行のシリーズ第14作。今回は短編8編収録。
いずれの短編も、山での様々な人びとの想いや人生、生命を削るような山岳救助の過酷さが迫力を持って描かれる。短編と言えど十二分に長編並みの読み応えがあるのだ。これは一重に樋口明雄の山への強い想いと筆力のなせる技であろう。相変わらず、素晴らしい作品だった。
『第一話 孤老の山』。老人が道迷いで崖から滑落した老人が山岳救助隊の星野夏美と山岳救助犬のメイによって無事救助されるシーンには思わず涙した。極めて単純なストーリーなのだが、 -
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樋口明雄『赤い垂壁 南アルプス山岳救助隊K-9』徳間文庫。
シリーズ第13弾。文庫書き下ろし。今月8月にはシリーズ第14弾の『愛と名誉のためでなく 南アルプス山岳救助隊K-9』が光文社文庫から刊行されるようだ。
南アルプス山岳救助隊の星野夏実と神崎静奈の2人のヒロインとボーダー・コリーのメイ、ジャーマン・シェパードのバロンの2頭の山岳救助犬を中心に北岳で展開される様々な人びとの人間ドラマと様々な事件の行方が描かれる。
相変わらず、安定安心の面白さだ。まさか、このシリーズがこれほど長く刊行されるとは思わなかった。
南アルプス山岳救助隊では新人研修が行われていた。候補生の桐原健也は抜群の体 -
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ネタバレ山小屋を管理している人たちの苦労やアルバイトの子たちのマナーなど小屋を運営する人達それぞれ考え方が違う分規律を守って働いてもらっている、だったりゆるかったり、面白く読める。
料理ができる人は仕事の能率がいいし機転が効くと書いてあり料理するのが嫌いで料理をしてくれる旦那さんを募集している自分にとってはやっぱり気が利かないし、周りの状況を把握して動くことができないのは当たり前なんだと料理の大切さを知る。が、やはりやりたくはない。
自分では体験できない分野を知ることは楽しいし仕事の大切さや取り組み方、考え方も改める事ができた時間でした。 -
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樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 さよならの夏』徳間文庫。
安定の面白さ。毎回、手を変え、品を変えて楽しませてくれるシリーズなのだが、今回はシリーズのどの作品とも違う展開とまさかの結末が待ち受ける。何とシリーズ初の連続猟奇殺人事件が描かれるのだ。そればかりか記憶障害で北岳で発見された男が物語の重要な鍵を握るという全く先の読めないストーリー。
果たして、記憶障害で北岳で発見された男と連続猟奇殺人事件がどのように結び付いていくのだろうか。
北岳で登山者の女性を救助した星野夏実が相棒の救助犬メイと帰路に着くと夜空にオーロラのような不思議な光を目撃する。その直後、岩場に佇む若い男性を発見す -
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樋口明雄『北岳山小屋物語』ヤマケイ文庫。
珍しい樋口明雄のノンフィクション。
南アルプス北岳周辺にある5軒の山小屋、白根御池小屋、広河原山荘、北岳山荘、北岳肩の小屋、両俣小屋を取材し、山小屋の日常とその裏側を描いたノンフィクション。
文庫化にあたり、それぞれの山小屋では、経営の変動、管理人、スタッフの異動、小屋の改装や建て直しなどの変化について追加取材、加筆されている。
山小屋に関わる様々な人間のドラマ。山小屋はアルバイト集めから始まり、シーズン前のインフラ整備やルート整備などの開業準備、山小屋の日常的な運営に加えて、さらなる苦労があるようだ。標高3,000メートルという過酷な自然の中 -
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樋口明雄『南アルプス山岳救助隊K-9 それぞれの山』徳間文庫。
山岳冒険警察小説シリーズの第11弾。文庫書き下ろし。南アルプスの北岳を舞台に、山岳救助隊員と相棒の救助犬の活躍を描く『リタイア』と『孤高の果て』の2編を収録。安定、安心の面白さ。シリーズが11作を数えるのも読んでみれば、その理由が自ずと解るというもの。
このシリーズは徳間文庫、ハルキ文庫、新潮文庫、ヤマケイ文庫と4つの文庫レーベルから刊行されており、油断が出来ない。中でも『南アルプス山岳救助隊K-9』のサブタイトルが付かないヤマケイ文庫の『レスキュードッグ・ストーリーズ』には全く意表を突かれた。
『リタイア』。引退を考えるア -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの7冊目。
今回は北岳の警備派出署が閉鎖されている1月に起こったお話。
甲府市内の宝石店を襲撃した強盗犯が拳銃を所持したまま何故か(その理由は読者には分かっているが)北岳へと逃走し、それを追う県警の刑事は南アルプス山岳救助隊に応援を要請。夏実と静奈、2頭の救助犬が選抜される。
と簡単に書いたけど、ここまでに230頁費やし、犯人グループが犯行に至った経緯、逃走・追跡とその挙句の発砲、事件とは関わりのない北岳の中の単独行や学生二人組の登山の様子などがじっくりと描かれる。
場面はパキパキ切り替わっていくし、クライミングの様子には手に汗握り、追跡劇と警官への発 -
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短編はあまり好きじゃないけどこの本は同じテーマだからなのかサクサクと読める。テロを扱った小説より面白かった。
遺書
仕事、人間関係の煩わしさから単独登山に目覚めある日遭難。登山計画を出していなかったため救助される見込みもなくケガをしたため動くこともできない。遺書を離婚した妻に書くがその妻から救助要請がくる。遭難した事で家族を見直すきっかけとなる。
山の嫌われ者
五十六と言うおじいさん。我が強く皆の嫌われ者。北岳56回挑戦の最後の誕生日の日。あと少しで登頂というところでケガをした人に遭遇。歩ける状態ではないが今日、記念となる登頂の日。どっちを取るか。。。救助をとった五十六は次の日登頂し、救助隊は -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの4冊目。今度は新潮になった。
見慣れた北岳周辺の地図ではなくなったと思ったら、今回の舞台は幻の名峰として人気の新羅山(岐阜県のどの辺りにあるか調べたが架空の山だった…)。
やくざの世界から抜けるために誘拐を企てた男女と攫われた少年、彼らを追う組織に雇われたヒットマン、噴火の兆候を感じる火山地質学の大学教授、登山サイトで募集された山岳ツアーの参加者、そして救助犬チームの講演に招かれた夏実と静奈にメイとバロン。
前半は物語の舞台に集まってくる人々が丹念に描かれて、少しじれったくなるくらい。
しかし、舞台が整ってからは一気呵成。山は動き出し、教授は焦り、少年