樋口明雄のレビュー一覧
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同月にK-9シリーズを2冊も読めるとは、ファン冥利に尽きる。
本書は8話からなる短編集。どの短編も読み終えるのが惜しいという気持ちが拭えない。
なかでも第6話『COLD WAR』は、スリルとサスペンスに満ち、印象深い。
冬山訓練とパトロールに当たっていた星野夏実と神崎静奈は、北岳バットレスの壁面ぎりぎりに飛ぶ米軍機に出会う。一度ならず二度目の低空飛行では雪崩を引き起こし、登山者が巻き込まれる。
夏実たちの必死な捜索で彼らを助け出すが、軍用機の低空飛行は以前から問題となっていたようだ。
深町隊員の「つまり・・・戦後80年となろうというのに、依然として、この国の空は米軍のものということなんだ」との -
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1年に1冊のペースで発表され、刊行されるのが待ち焦がれるこのシリーズ。何と今回は、光文社文庫でも続けて刊行されるとのことで、ファンにとっては何ともうれしい話である。
今回は、山岳救助隊に新しいメンバーが加わるが、彼は協調性がなく、隊員に不満が募る。隊員間の関係がどうなるのか、興味の募るところ。
「まったく、どうしてどいつもこいつも、”北岳”なのよ」との静奈の嘆き(笑)の通り、またしても犯罪者が北岳に。
二人で谷川岳登攀中に滑落し一人が死亡、残った一人が婚約者とともに北岳に。生き残った男がザイルを切ったのではとのではとの疑いを持つ、死亡した男の妹が彼らを追って北岳に。
一方で夏実は、母親に置き去 -
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なるほど。著者のあとがきを読んで初めて合点がいった。
天空の犬K-9シリーズの新作は8篇からなる短編集。
一つ一つの作品が、短編ではなく長編として書かれても違和感がないほどに内容が濃い。
ページ数が膨らめば、シリーズとして何作品かにできるほどの面白さ。ひとつ一つの作品を堪能し、これなんで短編なんだろうと考えていたら、あとがきに小説誌に連載された作品を集めたものとあり、初めて合点がいったというわけ。
山岳小説とはいえ、警察小説でもあるという性格上、そこには犯罪があり、犯人が出てくる。
しかし、犯罪事件を解決してよかったねという話ではなく、物語の結末に優しさがあった。
八ヶ岳の自然がベースにあ -
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北朝鮮にクーデターが勃発し、難を逃れた政府軍が屋久島に上陸し全島武装制圧するという、近未来的冒険小説。
彼らは、キムジョンウンの解放と亡命を日本政府に要求する。日本を通じアメリカに圧力をかけるための戦略。
島民を虐殺し、警察署を爆破し、さらに核爆弾を爆発させると脅す北朝鮮軍。
山岳救助隊員の高津夕季と山岳ガイドの狩野哲也たちが、「奇跡はまた起きるさ・・・ここは神の島だからな」との思いを胸に、北朝鮮軍の精鋭たちを相手に、生き残りをかけて戦いを挑み、山野を駆け巡る。
しかし、この一連の事態には、その裏に国際的な謀略が。
政府内のスパイが浮かび上がり、それにアメリカCIAの関わりも。
終息に向かうな -
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南アルプス山岳救助隊K-9シリーズ。
北岳で星野夏実は、記憶を喪失している青年を救助する。赤石岳に登っていたはずだと証言する彼を、甲府の実家へ届ける。
その頃、甲府では猟奇的な連続女性殺人事件が発生。
犯人は誰なのか?記憶喪失の彼と、殺人事件は関係あるのか?
彼に疑惑が深まる中、彼の妹と彼女の友達たちが北岳山行を計画する。彼女の危険を予感する彼が強引に同行し、そして・・・
殺人事件の犯人は?というミステリーに、山での超常現象を絡ませているが、多少消化不良の感がなきにしもあらずというところ。
確かに、山で不可思議な現象や怪異譚がみられることがあるだろうが、少なくとも小説上では殺人事件のリアルさと -
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樋口明雄『還らざる聖域』ハルキ文庫。
久し振りに正統派の日本の冒険小説を堪能した。屋久島を舞台にした山岳アクション小説なのだが、複雑な国際情勢も関係して来るのだから、さらに面白い。
如何せん、登場人物の設定が今一つはっきりとせず、そこがマイナスポイント。
早々と登場した山岳救助隊員の高津夕季が主人公かと思ったら、事あるごとに泣いてばかりで使い物にならず。代わって主人公役に名乗り出たのは山岳ガイドの狩野哲也なのだが、北朝鮮軍の特殊部隊の女性隊員ハン・ユリに比べると物足りなさを感じた。
北朝鮮で内戦が勃発し、世界に緊張が走る中、北朝鮮の航空機2機が日本の領空に侵入し、スクランブルした日本 -
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「水はカネのあるところへ流れる」と巻頭に綴られるとおり、水をテーマとした社会派エンターテイメント。
天然水が蛇口から出る八ヶ岳山麓に移住し、レストランを経営している主人公の秋津俊介。しかしある日突然水が出なくなる異変が。
解決を図るべく、管理会社や地下水を大量取水する飲料メーカーへと奔走するが、対応は平行線のまま。
埒があかない状況に、遭遇した市長選で新人候補に望みを託し選挙スタッフとして活動する。
選挙小説になるかと思いきや、新人候補にも何やら胡散臭い背景があり、予測の付かない方向へ。
水というものが、当たり前のように手に入る現代日本では、水が有限だという事実に、我々はなかなか気がつかない。 -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの8冊目。
読む順番がバラバラになってしまっているのだけれど、シリーズとしてはこの前に読んだ「白い標的」の次の巻ということで良いのかな?
今回は冒頭から怒涛&波乱の展開。
静奈が出場した空手大会を皮切りに、最近出没しているシェパードばかり狙う賊と遭遇してのカーチェイスと見せ場が続く。
ここまででも結構凄いと思っていたがなんのなんの。今度はバロンが捕らわれ再び激しいチェイスと格闘劇、挙句に犯人一味と間違われた静奈が警察から追われるはめに。
くう~っ、なんと言うこと…、一旦本を閉じて心を鎮めないと次に進めないくらい苦しい展開。遂に捕まってしまっても手錠のまま -
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最近は1年に1冊のペースで刊行され、それが待ち望まれるシリーズの一つ。
今回は中編が2篇で、『南アルプス山岳救助隊Kー9』が2倍楽しめるかのよう(笑)。
相変わらず、彼ら彼女たちの活躍は、南アルプス北岳の描写とともに爽快で、このシリーズ病みつきになる。
『リタイア』では、『風の渓』でのヒロイン安西友梨香が再登場する。
己の仕事に真摯に取り組む救助隊たちに涙腺が刺激される『孤高の果て』では、警視庁阿佐ヶ谷署の大柴刑事が活躍する。これもシリーズものならではの楽しみだろう。
山岳救助隊の星野夏実と神崎静奈、この二人の恋の行方も気になるシリーズでもある。