樋口明雄のレビュー一覧
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いきなり怖すぎるやろー
しかもこんな冒頭からヤバい状況。この気持ちを引きずりながら読まなきゃいけないなんて、そんな殺生な....と思って読み始めたが、話の展開が早くてあれよあれよという間に読み進められてしまう。
ガチガチの山岳小説ではない。どっぷりと自然を礼賛し触れ合う自然小説ではない。警察モノ、国家機密を扱うサスペンスものでもない。
でも、それらの要素をみな取り込んで、一編の小説として良いぐらいに成立させているのは、やはり小説家の腕前なのだろうか。
そして、それはやはり、山麓に住み、山に登り、川に遊ぶリアルアウトドアズマンである作者ならではの作品なのだろう。
一気に読んでしまったので、冒頭のヤバすぎる状況は無事回収され、安心して本を閉じることができた。
面白かった。
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Posted by ブクログ
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「南アルプス山岳救助隊K-9」
シリーズの著者による、感動の人間讃歌!
ライフ・イズ・ワンダフル!
65歳。退職後に残された人生には絶望しかなかった。
しかしこの山小屋だけは、彼を優しく受け入れてくれた。
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インスタで見つけて気になっていた一冊です。
書店で見つけて、
表紙が綺麗で夏にぴったりかもと思い手に取りました。
主人公の里村は65歳で勤めていた会社を定年退職。
仕事一筋、これからは家族の時間をと思い帰宅すると…待っていたのは離婚届。
娘の美紀のアドバイスを受け、
仕事を探し始め、行き着いた先は…山小屋。
登山は全く未経験の私でも楽しめました。
普段見ない、とても綺麗な言葉(蒼穹や錦繍や白虹など)がたくさん出てきていいな、と思いました。
自分の居場所を見つけること。
そこに集っている人たちも、
みんな何かを抱えて生きてること。
どんな人にも山は平等。
山の厳しさや美しさが、
読みやすい文章で表現されていて、
読後も爽やかな一冊でした。 -
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田舎暮らしの大変さへの理解はあると思っていたが、猟師、電気柵、井戸水、放射能汚染された薪という問題は想像を超える角度と影響度で恐れ入った。
田舎を一緒くたには出来ないが、土地がどこであれ別の形で大変な問題にぶち当たるのだろう。
宮崎の美々津に住む知人や、山山口で知り合った移住者からも似た話を聞いていたし、梨の都留に住む恩人からもつい最近大変だったというエピソードを聞いているので場所や時代が変わっても苦労は変わらないというのは本当のようだ。
都会的で自由主義で個人主義な生活スタイルのままでは壁に当たるというのは大前提で、その上で地方ならでは、田舎ならでは、持ち家ならではの問題に翻弄されるのを覚悟する必要はある。
私は八丈島で青春時代を過ごしていて、当時は自然豊かで人柄も良く最高な土地だと思っていたが、後になって父に聞くと、地元の人は恐い人が多いと話していたし、大人になった今、地元で働く友人に聞けば、安定して稼げて時間も作れる仕事が全くない、と苦労している。
子供目線と大人の目線では、同じ田舎でも全く異なった世界が見えるようだ。
都会生活で得られるものは、利便性、新しい情報や人や仕事と出会えるチャンス、それに数字だ。
いわば、ゴールが大きくなる。一方でそこまでのプロセスは過酷、ないし空虚になりがち。
一方で地方生活では逆転して、プロセスに「生」を感じる、本能的な精神的満足感を得られやすいのに対し、ゴールの絶対値は低くなり、また重視もされなくなる。
過酷な目前の生活に奮闘するために地域というチームで戦う必要があり、それが故に連帯が稠密になる。そんな中では協調性、安定性が重視され、遠いゴールを見る余裕はない。
自分のタイプが、都会向きなのか田舎向きなのか。それは、自分がどのポイントにアドレナリンを感じるのか、またはそもそもアドレナリンを感じたいのか否かによって変わってきそうだ。
我が家でいえば、私と妻が対照的で、それが都市タイプ、田舎タイプで対立する。
妻が競争好きで、しのぎを削り合って自分を極限まで高めることを好み、最前線に身を置くことを楽しむ。そして興味のある人としかつるもうとしない。興味のないことや人に費やす時間は10分でも耐えられないという。
他方私は競争嫌いで、土、緑、空気、様々な人や動物や植物と触れることを好む。無機質な環境、広告、煙草の煙がストレスで、周りに音を立てないように気を遣うことが苦しい。ITを生業としているためか、その反動でオーガニックで生々しくて泥臭く野性的な環境を心身が求める。
以前青梅で畑仕事を手伝った時や、最近近所の夏祭りを手伝った時の充実感には幸福を感じた。
お互いがそれぞれ100%都市向き、田舎向きとは言えないが、生活プロセスの”楽しめる度”が高い環境は、夫婦ですらおそらく異なる。(結局は私が折れて渋々都内に住んでいるわけだが。)
著者が何年も移住先の町で近隣住民に挨拶を返してもらえなかったのが、10~20年経過してようやく打ち解けたというのは、世代が変わったのが一つの要因じゃないだろうか。
歳月を経て比較的頑なな高齢者が退場し、一方で自分が接してきた若い人たちが表舞台に立つようになった。そうした新陳代謝は無関係ではないと思う。
山梨や長野は、都内にアクセスしやすいというメリットがあり、移住者が少なくない。別荘地、旅行地としても人気がある。そんな環境は、比較的住民意識の近代化・現代化が、例えば東北、北陸、山陰などと比べれば柔軟であると想像する。
田舎には新しい風が必要だと思うし、一方で田舎の特色や伝統、それ以前の、その土地での生きる術、そういったものを移住者や旅行者は尊重することは欠かせない。
著者は、その双方の結節点を体験を以て発信できるキーパーソンだろう。
今後、限界集落のメンテナンスや地方の創生は、国防や、都市への一極集中による歪みの軽減という意味で軽視できない。
著者の知見とその発信は、もっと価値を持ってよいはずだ。 -
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著者自身の故郷・山口県岩国市を舞台にした短篇集。収録された三作のうち表題作だけ主人公が異なるが、初恋についてのモノローグですぐにわかる通り、どの作品も著者を通して繋がっている。様々な映画が引用される。表題作は、映画館が物語の舞台のひとつなのであたり前だが、他の作品にも、洋画・邦画のあんな作品やこんな作品の要素がちらつく。そもそも、表紙からしてそうだ。でも、映画だけではない。この短編集には、広島、つまり原爆の残像が根っこにある。そして米軍基地。映画も含め、一九七〇年代に、日本から、過去の記憶と傷跡を引きずりつつ、でも仰ぎ見ていた、かつてはたしかに存在した、キラキラして輝いていた(でもその裏側には多くの矛盾と犠牲を抱えていた)アメリカが、背後にどっしりと構えている。
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お久し振りに<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズ、12冊目。
今回は山岳救助隊と救助犬のレスキュー活動の日々を描く8つの短編集。
「孤老の山」「愛子とアイコ」「銀嶺の彼方に」
最初の3話は要救助者の捜索・救助の話が中心になり、怪我したり亡くなったりしている人も出てくるので、どれもよい話だが、いささかしんみりした話が続く。
ここまでは、まあ水準。
「影なき男」「愛と名誉のためでなく」
ここから、過去にも登場した山梨県警や南アルプス署の刑事たちが登場するミステリー仕立ての話が続く。
とりわけ、場面切換えがスピーディーで長編をギュッと凝縮したような展開の第4話が良かった。
いつもは見上げるだけのバットレスだが、第5話ではそこを登攀する場面が出てくるのが珍しく、その描写だけでホーッと息つく緊張感あり。
「COLD WAR」
雪崩に巻き込まれたカップルの救助に、間一髪で間に合うと分かっていてもハラハラ。戦闘機も恐れぬ〈はやて〉の操縦士の心意気に胸がすく。
救助劇とは別に、低空飛行する米軍機の姿には、かつての戦争や日米安保条約に頼るこの国の課題、今世界で起こっている紛争が思い起こされる。
敗戦から80年、いまだ戦後が続いており、また新たな“戦前”が訪れているかもしれないという作者の懸念や世界のどこにあっても戦争が起こってはならないという作者の思いが強く伝わってくる。
「南アルプスの山賊」
これは静奈との一騎打ちかと思えば肩透かし、さればメイが飛びかかるにはナタが怖いぞと思ったらそれもなく、活劇を期待したのであの結末にはやや脱力。
「両俣奇譚」
山岳救助隊が一瞬しか出てこない異色作。
追う者の執念と追われる者の諦観が織りなす奇妙な関係に山小屋を管理する女性と猫が絡んで味わい深い話になった。 -
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酒がやめられない。
酒は身体を害することはわかっている。
そして、私の身体は酒に起因する障害を起こしており、当然医者にも酒はとめられている。結局、酒で身体を害して死ぬことになっても、まあ仕方ないかと思っている。
天空の犬シリーズの作者、アウトドアで、酒を書かせたら底抜けの大好きな作家、樋口明雄氏の新刊は「断酒本」。
断酒本といっても、健康のために飲みすぎに注意しましょうという本ではない。
本書の三分の二は、今まで筆者が歩んできた暴飲、壮絶な酒飲み人生の振り返り。
いや、すごいは。
筆者の作品に「武装酒場」という、壮絶な酒飲みたちを描いたものがある。
それは、ほとんど実話をベースにしていたという驚き。
そして、町飲みをやめて、放浪の旅に出て、八ヶ岳の麓に移住してからも続く壮絶な酒飲み人生。
その筆者が、ある日突然酒をやめた。第三部は酒をやめて、酒から解放された意義が書かれている。
酒を飲むことが、結局ストレスになってしまっているという事実からの解放。
酒をやめることの意義は伝わってきた。
自分の人生に未来があると思っていたら、私も酒をやめようと思ったかもしれない。
未来にとっては、断酒はメリットがあると、私も思った。 -
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同月にK-9シリーズを2冊も読めるとは、ファン冥利に尽きる。
本書は8話からなる短編集。どの短編も読み終えるのが惜しいという気持ちが拭えない。
なかでも第6話『COLD WAR』は、スリルとサスペンスに満ち、印象深い。
冬山訓練とパトロールに当たっていた星野夏実と神崎静奈は、北岳バットレスの壁面ぎりぎりに飛ぶ米軍機に出会う。一度ならず二度目の低空飛行では雪崩を引き起こし、登山者が巻き込まれる。
夏実たちの必死な捜索で彼らを助け出すが、軍用機の低空飛行は以前から問題となっていたようだ。
深町隊員の「つまり・・・戦後80年となろうというのに、依然として、この国の空は米軍のものということなんだ」との言葉に、夏実たちとともに唖然とする。
江草隊長も、昭和31年の『経済白書』に”もはや戦後ではない”と書かれているがそんなことはない、今も戦後は続いているし、また新たな”戦前”が訪れているのかもしれない、と確信する。
「本当に終わったのだろうか、あの戦争は・・・」と、江草隊長がつぶやく言葉は、心に留めておかなければならないだろう。 -
Posted by ブクログ
1年に1冊のペースで発表され、刊行されるのが待ち焦がれるこのシリーズ。何と今回は、光文社文庫でも続けて刊行されるとのことで、ファンにとっては何ともうれしい話である。
今回は、山岳救助隊に新しいメンバーが加わるが、彼は協調性がなく、隊員に不満が募る。隊員間の関係がどうなるのか、興味の募るところ。
「まったく、どうしてどいつもこいつも、”北岳”なのよ」との静奈の嘆き(笑)の通り、またしても犯罪者が北岳に。
二人で谷川岳登攀中に滑落し一人が死亡、残った一人が婚約者とともに北岳に。生き残った男がザイルを切ったのではとのではとの疑いを持つ、死亡した男の妹が彼らを追って北岳に。
一方で夏実は、母親に置き去りにされ白池御池のキャンプ地に佇む少年を見つける。
母親は離婚しており、同居している愛人と北岳頂上へ向かったとか。その男は少年にDVをしており、過去に犯罪者の疑いも。
それぞれの人物たちが北岳で交錯するが、いつも変わらぬ夏実と静奈たちの活躍に胸のすく思いが今回も。