あらすじ
蛇口をひねれば天然水! そんな環境で暮らそうと秋津俊介は八ヶ岳南麓に移住した。病気がちだった息子も元気になり、開業したレストランの経営も順調だったが、ある日突然、井戸に異変が起こり、やがて水が出なくなってしまう。問題を解決しようと奔走するうち、秋津は“水”という自然からの贈り物の本当の価値に気づく――。骨太の社会派エンタテインメント!
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Posted by ブクログ
「水はカネのあるところへ流れる」と巻頭に綴られるとおり、水をテーマとした社会派エンターテイメント。
天然水が蛇口から出る八ヶ岳山麓に移住し、レストランを経営している主人公の秋津俊介。しかしある日突然水が出なくなる異変が。
解決を図るべく、管理会社や地下水を大量取水する飲料メーカーへと奔走するが、対応は平行線のまま。
埒があかない状況に、遭遇した市長選で新人候補に望みを託し選挙スタッフとして活動する。
選挙小説になるかと思いきや、新人候補にも何やら胡散臭い背景があり、予測の付かない方向へ。
水というものが、当たり前のように手に入る現代日本では、水が有限だという事実に、我々はなかなか気がつかない。
しかし、この地の天然水を狙っている外国企業は数多ある(なかでも中国企業が群を抜いているとか)と、堤未果著『日本が売られる』のなかで警鐘されていた。
樋口明雄のこの小説も、そういった事態への警告の書ともいえるだろう。
さらに現在の山林行政について、林業に携わる男の言葉で語らせる。
「水源涵養だったら広葉樹林にするべきなんだよ。今の時期みてぇに秋の落葉で林床に枯葉がいっぱい溜まる。それが自然のダムになって雨水を蓄える。それが地下に染み込んで地下水になる。それがこったら荒れた人工林じゃ、何の意味もねえだな。雨が降ったら降っただけ斜面を流れるだけだ。そのうち木の根っこが露出して、地盤が緩む。テレビのニュースでやっとる大雨のときの土砂崩れは、たいていこんな荒れた人工林の斜面だ」
南アルプス山麓に居を構える著者だからこそ書ける作品といっていい。
Posted by ブクログ
八ヶ岳南麓に住む秋津さん。井戸から汲み上げる水は天然水。ある日突然その水に異常がおきやがて出なくなる。ずっと出なければ命にかかわる。
何故だ?どうすればいい? 水 みず ………
~エピグラフ~
―― 水はカネのあるところへ流れる
『世界が水を奪い合う日・日本が水を奪われる日』
橋本淳司・著より
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八ヶ岳山麓に暮らしている秋津。蛇口からは天然水が出てくる環境だった。
ところがある日突然水が出なくなってしまう。水を取り戻そうと奔走するお話。
普段、水が出るのが当たり前だと思って暮らしているが、それはとても尊くて贅沢なことだと再認識させられた。
Posted by ブクログ
樋口明雄『サイレント・ブルー』光文社文庫。
珍しい地下水問題をテーマにした社会派小説。
水と空気はタダという日本の常識は覆されつつある。山を荒らせば、良い水を得ることが出来なくなり、二酸化炭素排出や大気汚染は世界規模で問題になっている。
環境問題を描いたチャレンジャブルな小説である点は評価できるが、腹落ちするような結末ではないのが残念。
家族と共に八ヶ岳南麓に移住して来た秋津俊介は別荘地のログハウスでレストランを開業する。病気がちの息子も元気になり、レストラン経営も順調だったが、ある日、別荘地の井戸に異変が起きる。
井戸の水が茶色く濁り、その後、水位が下がり、水が出なくなったのだ。井戸に異変が起きた頃、地元の水企業が近くで大規模なボーリングで取水を開始していた。
しかし、企業側は井戸が枯れた原因と企業の取水とに因果関係は無いと主張する。
本体価格860円
★★★