樋口明雄のレビュー一覧
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甲府市内の宝石店が強盗グループに襲撃された。警備員二名を殺傷し、三億七千万円相当の宝石を強奪した犯人たちは、なぜか冬の北岳へと向かった!追跡する刑事たち、それをバックアップする山岳救助隊の夏実や静奈。そして救助犬二頭。非情な裏切りや、果てなき欲望が渦巻く白い山。その静寂を切り裂いて、一発の銃声が谺したとき―!
このシリーズは断続的に読んでいる。「ブロッケンの悪魔」以来か。登攀シーンや救助シーンは実にスリリング。もっとも冬山登山には縁がありませんが。
「銀嶺の果て」という古い日本映画がある。あちらは銀行強盗三人組が北アルプスに逃げ込む話だったが、関係はないですね。
まだまだ未読の作品が多 -
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文庫帯の「山岳冒険小説の金字塔」は、けっして誇張された讃辞ではない。
山でしか己の生き甲斐を見出せない主人公ロッタ。そして、不幸な過去を持ち、生きるうえでの彼の存在が欠かせない妻の亜希。
彼らと、暴力団と産廃業者の悪行を新聞で暴露したロッタの兄に、魔の手が伸びる。
「純粋無垢にして自由奔放」、正義という言葉を何より信じるロッタ。復讐の念に燃えた彼は、兄と妻の仇を撃つべく、組事務所ですさまじい銃撃戦。
さらに、狼犬シオを従え、豪雪と極寒の南アルプスで、暴力団を相手に、一人サバイバル戦を繰り広げる。
その壮絶な戦いに、頁置く能わずも誇張と言えず、読む手が止まらない。
「古典的西部劇や東映やくざ映画 -
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帯や裏表紙の解説を確かめもせず、最初の頁を開いたとたん、七倉航というなつかしい名前を見つけ、この作品が『約束の地』の続編だと、初めて知った(笑)。
もちろん、単独で読んでも少しも支障はないと言っていい。
『約束…』が、七倉の娘が小学校5年の時の出来事であるのに対し、この春中学生になったという説明から、本書はその2年後の話のようだ。
七倉は、支所長をはずれ一管理官となっており、キャリア丸出しの新支所長が赴任している。さらに、新メンバーとして新人二人が加わる。
そのうちの一人関千晶は、同著者の別シリーズ「山岳救助隊K-9」で活躍する隊員関真輝雄の妹のようだし、県警航空隊のヘリの操縦士たちがチョイ役 -
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星野夏実を中心とした南アルプス山岳救助隊員と救助犬の活躍を描いたシリーズの第3弾。
今作の相手は、人質を盾に北岳山荘に立てこもるテロリスト集団で、スリリングでエキサイティングな一気読みの傑作。
今回メインとなるのは、絶望的な状況の中で、心が折れることなく必死の抵抗をする、北岳山荘のスタッフ松戸颯一郎。
そして、山岳救助隊員の沈着冷静で空手のエキスパート、神崎静奈。彼女の、テロリスト集団との息詰まる格闘対決場面には、読み手の目が縛り付けられてしまう。
このテロリスト集団のリーダーの肉付けをしっかりとしたことで、物語に膨らみを持たせている。
このリーダーの経験した、カンボジアや東日本大震災での出来 -
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南アルプス山麓に居を構える著者ならではの自然描写が、書中様々な場面で詳述される。
読者は、迫真の物語をしばし忘れ、主人公たちとともに八ヶ岳、南アルプス近辺を辿っているかのような寄稿文的臨場感を味わえる。
もちろん、この小説の主題はそんなところではない。
人と動物の棲み分け、人と自然の共生を問う意欲作であり、著者自身の生活体験から紡ぎだされた告発の書でもある。
その思いを、古参猟師に語らせる。
「・・・開発開発で山がどんどん切り崩され、必要もねえ大規模林道をあちこちにこしれえて、森はズタズタに切り裂かれる。人間の暮らしが作り出した有害なものをあちこちに埋めて、土や水は汚染される・・・」
山の怒り -
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エキナカ書店大賞第1位、しかも『南アルプス山岳救助隊』シリーズの作者なら、きっと面白いだろうとの期待にそぐわぬ面白さ。
ネット心中で集まった男女5人組が、少女を助けたばっかりに、やくざに追われ警察には指名手配となる。
生きることに意義を見出した彼らは、逃げるのではなく自ら冤罪を晴らすべく、ただただ走り続ける。
裏にあるのが、強大な政治権力が絡んだ陰謀かと思いきや、破廉恥な行為をめぐる隠蔽工作だったとは・・・
ちょっと、思惑が外れた気がしないでもない。
だが、疾走感あふれ、彼らの奇想天外な活躍に拍手を送りたくなる、楽しさ満載のノンストップアクション小説の傑作。 -
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主人公は、南アルプス山岳救助隊に属するハンドラー。そして、共感覚という特殊な能力を持っている。
そんな彼女の成長物語かと思っていたら、終盤にきて事件性を帯び、俄然警察小説の趣きになって、急展開した。
著者は、南アルプスの山麓に居を構えているとのこと、それだけに山の描写は美しくリアルで、山の魅力はいやがうえにも読者に迫ってくる。(40年ほど前に北岳の頂上に立ったことを思い出させる)
山岳小説と警察小説とを融合した秀逸な作品には、笹本稜平氏の著者が多々あるが、さらに動物小説を加味したのは著者だけであろう。
東日本大震災、原発事故に触れられ、遭難者の死亡の事故等々もあるが、信頼し合う救助犬とハンドラ