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米軍基地と古い城下町が共存する地方都市、岩国。フェンスの向こうをファントムが飛び立ち、でっかい入道雲が青空にわき上がっていたあの夏。中学二年のモリケンこと森木健一は、幼なじみのノッポ、ムラマサ、転校生のミッキーとともに、ある小さな冒険をしようとしていた。それは彼らが大人になるための通過儀礼だった──。
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Posted by ブクログ
4.8 もうとっくに跡形も無くなっていると思っていた。 けれども、痕跡すら無くなっていたハズのその傷に触れられたら、やっぱり血が出て来て驚いた・・ 秘密基地で繰り広げられるおバカな日常・・ エロ本やクラスの女子への狂騒と照れ隠しには、声を上げて笑った。(ただし自分の感覚では小学校6年位だったな) ...続きを読む 所々に流れる昭和の名曲達には思わずハミング。 そして・・上関のキャンプである。 すっかり暗くなった空の下で焚く、拾い集めた流木での焚火。 食事を終え、する事が無くなってボーっと見つめる火床の描写が余りにもリアルな為、何十年も前の砂浜に意識が飛んで、その煙の匂いや明滅する熾を前にして涙が出ていた。 オサゲが隣で微笑むのが、また涙が出るほど嬉しくて切ない。 (僕等に無かったのはテントとオサゲ・・キャンプというより野宿やった。笑) ノッポが言う・・ 「俺らやっぱし、いつまでも子供でいられんのじゃのう」 「ああやって傷ついたり、血を流したり、泣いたりして、少しずつ大人になっていくんと違うかのう」 思えば、 自分の人生で初めて「慟哭」という名の感情の在りようを経験したのも、友の死だった。 本当の意味の「喪失」の想像を絶する残酷さも。 ◯森木健一(モリケン)・・小説家を夢見る中二。ノッポ、ムラマサ、ミッキーの三人といつも秘密の基地でたむろす。イジメに遭う幼馴染・陽子に想いを寄せるが救う勇気が出ない。 ◯北山登(ノッポ)・・モリケンの親友。マンガ家を目指す。父譲りのミノルタで写真を撮りまくる。漢気があふれる奴。 ◯村尾将人(ムラマサ)・・母子家庭に育ち、破天荒な困った奴。中学生にしてアル中。拾ったバイクを器用に再生する。 ◯幹本靖弘(ミッキー)・・東京から転校してきた垢抜けた男子。兄から貰ったギターでボブ・ディランを弾く。クラスで唯一ボウズでない。 ◯松浦陽子(オサゲ)・・四人のクラスの女子。 イジメを受け登校拒否に。モリケンの訪問をキッカケに立ち直る。 やがて・・
日本経済が高度成長から安定期へと向かう1970年代、米軍基地がある山口県岩国市で、将来の夢をもった中学生の主人公と、その友達が織りなす淡い交友関係を地元の山口弁で書かれた作品です。恋あり、イジメあり、思春期の中学生が惹きおこしがちな社会的問題を織り交ぜ、読者をハラハラドキドキさせます。ラストシーンで...続きを読むは、涙無くして読めないという作者の卓越した筆致力に感銘します。是非、一読してみて下さい。
樋口明雄『風に吹かれて』ハルキ文庫。 文庫書き下ろし。著者の出身地である山口県岩国市を舞台にした傑作青春小説。舞台に加え、描かれている年代から考えても著者自らの体験をベースにした自伝的作品であると推測される。著者とは年代が近いこともあり、描かれている年代の流行や文化に懐かしさを覚えた。 物語は1...続きを読む973年の夏から始まり、2018年の夏で幕を閉じる。あくまでも物語の中心は1973年で、2018年は著者のあとがきなような感じである。1973年の夏に中学2年生のモリケンこと森木健一が幼なじみのノッポ、ムラマサ、転校生のミッキーラと繰り広げる小さな冒険。山と川と海、秘密基地、友情に喧嘩に恋に冒険と、400ページ余りの作品の中には中学時代に誰もが味わった喜怒哀楽の全てが詰まっている。 タイトルの『風に吹かれて』は作中にも度々登場するボブ・ディランの名曲から。
スタンドバイミーっぽい話好きなので楽しみにしていましたが、予想以上に心打たれてしまって、読み終わった時胸苦しい気持ちになりました。 時は1970年代、山口県は岩国。米軍基地のある街で、少年少女たちの成長を追う物語で、なんだかんだ色々な人たちが書いている題材と何ら変わらないのに、どれもこれも胸をぐさぐ...続きを読むさ刺してくるのかなあ。そういうお年頃になったという事なのでしょうか。 小説家を目指す主人公モリケン、漫画家を目指すノッポ、エキセントリックなムラマサ、ミュージシャンを目指す転校生ミッキー。中学校2年生という多感な時期を駆け抜ける1年間が濃密でとても眩しいです。トラブルも山盛り有るけれど、信じられる友達がいるっていうのは本当に羨ましい。 読み終わる頃、失われた自分の時間を思い返して胸がちくちくします。彼らが40年の年を経たように、僕らも過去を過ぎ去って今に立っています。別に昔に戻りたい事なんて一切ないのですが、それでも胸が疼く事は変わりないですね。思えば遠くに来たもんだと思う本です。
樋口明雄氏の自伝的小説。 1960年生まれの氏と私は一つ違い。 同じく基地の街で生まれ育ち、川に遊びに行き、海まで自転車で出かけていった。 樋口氏の中学生の夏の思い出と、私の夏の思い出が完全にオーバーラップしてしまった。 中学生時代から小説家を目指した彼は、今や売れっ子作家。私は普通のおっさん。 で...続きを読むも、あの夏の思い出は多分同じものであり、私たちは同じ時間を過ごした。
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