武藤陽生のレビュー一覧
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ショーン・ダフィのシリーズ第三作。難事件を解決する腕は誰もが認めるものの、独断専行の行動によってお偉いさんたちの覚えが悪く、仕事も資格も取り上げられ、自らを追い込まれることが多い主人公。IRAによって荒廃した1980年代前半の北アイルランドの不穏な情勢を背景に、サバイバリストのように自分の規範で行動する故に、警察ミステリと言うよりもノワールの面が強く感じさせられる点はとても魅力である。
本書では、お偉いさんから組織を放り出されたショーンが、前作では名無しで謎の女性として登場していたケイトなど現場畑の指揮官の求めに応じて、脱獄したIRAのリーダーでありかつての親友でもあったダーモット・マッカンを追うという設定。
何の情報もなく行方をくらましているダーモットが何を企んでいるのか、そしてそれを阻止するには? という国家的課題にショーンは挑むのだが、元妻の血縁者の未解決事件を解決すればダーモットの行方を教えようという条件を出されて、ショーンは不可解な密室殺人に挑むことになる。
ノワールの中に本格ミステリが入れ子構造で入り込んだ、世にも珍しいジャンルまたがりの意欲作品として知られるのが本書である。密室ミステリで名高い島田荘司の巻末解説も含め、全体がフルサービス・エンターテインメントとなっているお買い得の一冊と言ってよい。
本格ミステリとかトリックとかそういったものは中学時代までで卒業してしまい、むしろ毛嫌いしているくらいのぼくにこの本が楽しめるかどうか果たして疑問であったのだが、前二作からの流れを踏襲したハードな展開を前面に出した、過激でワイルドな展開の中で、密室殺人の謎ときは材料の一部でしかなく、それにこだわるあまり人間を軽視するトリック重視傾向の本格ミステリにありがちな軟弱性など、この作品にはこれっぽっちも見られなかった。さすがに北アイルランドの荒々しい自然と、危険極まりない政治情勢を背景に、単独で闘い抜く若きタフな警察官ノワールは、本格ミステリとのバランスをも上手く牛耳れているのだ。
シリーズを順に読んでゆくと主人公を取り巻く脇役たちも魅力的だが、異動・転居・死亡・出国などにより出入りが激しく、一刻も眼が離せない落ち着きのなさは、この時代の北アイルランド情勢をそのまま反映させているかに見える。いくつも喜劇や悲劇にもさわってゆくので、シリーズ読者はそういう人間的かつ現実的側面からも、主人公ショーンの心の移り様を、深く味わってゆくことができる。
そういった書き込みの深さ、繊細さも、主人公の読み聴きする文学や音楽とあいまって読書子の多様な要望に応えていると思う。一作毎に複雑精緻な世界の深みを増してゆく世界背景と、その中を生きるショーンという人間の複雑極まる想いの行方を想像しつつ、次作を待ち焦がれたくなる良質の一作がここにある。 -
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第四次産業革命と言われる時代へ「既存企業の戦い方」という具体的書名に惹かれて。デジタル化するか、しないか、という設問はもはや存在しなくてデジタル化が当たり前である時、恐る恐るプロジェクト立てているような会社のリーダーにとって厳しい厳しいお話です。でも産業のための産業と考えるのではなくて、カスタマーファーストで考えるとこうなるよな、という真っ当なお話でもあります。コストバリューとエクスペリメントバリューとプラットフォームバリュー、そしてその組み合わせというビジネスモデルもわかりやすい。その上で、ナップスターに代表されるバリューバンパイアという破壊者の存在や、そのあと登場するアップルのコンピテンシーであるバリューベイカンシーというチャンスも納得です。でも一番響いたのは「プラニングは無意味」「必要なのはアジリティ」という指摘。今までプロトタイピングとか言って、やらやないよりはやった方がいいレベルとは違う行動の力を持てるかどうか?これが日本の組織に一番難しいかも。
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多くの企業においてデジタル化が至上命題とされ、既存企業がスタートアップを始めとするディスラプターの脅威を感じつつある中、シスコとIMDの優れた研究者らが、既存企業がどのようにそうした脅威に対抗していけばよいのかを、戦略論としてまとめた一冊。個人的な感覚にはなるが、マイケル・ポーターの「競争の戦略」を、”デジタル時代における競争の戦略とは何か?”という観点で書き起こしたら、このような本になるのではないか、というくらい、刺激的。
本書では学術的な研究メソッドに基づき、以下のような概念の定義がなされる。
・デジタル化が顧客にどのようなバリューを提供するかの観点から、デジタルのビジネスモデルは「コストバリュー」、「エクスペリエンスバリュー」、「プラットフォームバリュー」3つに類型化される。また、重要なのはこの3つを複合的に併せ持つことで、より企業としての競争力を高めることができるという点にある
・そうしたバリューを武器にして、市場はヴァンパイアのように荒らされる場合もあれば、逆に荒らされることによって一時的にかもしれないが、新たなホワイトスペースとしての市場が見つかる可能性もある
・そのリスクと機会に対して、既存企業は「収穫/破壊/撤退/拠点」という4つの対抗戦略を取り得る
・その対抗戦略を実行するために、既存企業は、3つの能力を身に付ける必要がある。「行動と状況を早いスピードで察知するハイパーアウェアネス」、「情報に基づく高度な意思決定力」、「動的/柔軟なリソース配分に基づく迅速な実行力」である。
本書が優れているのは、巷で騒がれるようなスタートアップを始めとするディスラプターそのものに目を奪われるのではなく、ディスラプションという事象自体に注目して、その事象・環境の中で、どう戦うか、という点に意識をシフトさせるべき、という点を明言している点にある。過去のディスラプターがそうであったように、特定のディスラプターが未来永劫に持続する保障はない(特にディスラプターの中には、法・規則を軽視しがちなプレーヤーがいるが、そうしたプレーヤーが長続きしないことは歴史が証明している)。だとしても、一度引き起こされたディスラプションは止めることができないのも事実である。MP3とナップスターの登場によって、音楽市場がかくも無残に破壊されたように。 -
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毎年恒例、プーチン大統領が国民の質問に丁寧に答えてくれる
よという茶番劇…じゃなかった、TVショーが今年もロシアで放送
された。
そこに登場したのが誰あろう、エドワード・スノーデン氏である。
そう、アメリカ政府の情報監視活動を暴露した、元NSA(米国
国家安全保障局)の元職員だ。
アメリカ政府による監視活動んいついて述べた後、ロシアも
同じような監視活動をしているのかというのがスノーデン氏
からの質問だった。
プーチン閣下曰く「情報収集に関しては法律を順守して行って
いるが、アメリカみたいに豊富な予算し、技術的能力もないさ」。
あぁ…元KGBがこんな答えですよ。なんたる茶番。
さて、本書である。ある日、著者は1通のメールを受け取る。署名
には「キンキナトゥス」。古代ローマで独裁官に指名されながらも、
反乱軍を鎮圧したのちに独裁官をあっさりと返上して、平民に
戻った伝説の人物。
このメールの差出人こそ、エドワード・スノーデン氏である。
本書は大きく3つのパートに分かれている。第1パートは著者と
スノーデン氏との接触から、スノーデン氏が持ち出した秘密文書
をいかにして公開するか。スクープを掲載することになった英紙
「ガーディアン」との駆け引き。
第2パートは実際にスノーデン氏が著者に託した文書の一部を
掲載し、どんな監視方法が取られていたかを詳しく解説している。
そして、第3パートは報道後のアメリカ大手メディアの反応と、
著者が考える報道の役割である。
アメリカ政府の世界規模の監視活動の内容も、報道当時と同様、
ショッキングだ。だが、それ以上に衝撃だったのはアメリカの大手
メディアが行ったスノーデン氏及び著者に対するネガティブキャン
ペーンだ。
ペンタゴン・ペーパーズやウォーターゲート事件を報道したアメリカ
のメディアは、いつから政府の提灯持ちへと変身したのか。
9.11後、アメリカは「テロが起きたらどーするんだよ」と国民の恐怖
を煽り、愛国者法などという悪法を通して来た。NSAはアメリカ人に
対する監視活動は行わないと約束していたが、それさえもテロの
脅威の名の下、なし崩しになった。
アメリカ政府が言うように、テロを未然に防ぐ為に必要であるので
あれば、ボストンマラソンでの爆破テロは未然に防げたはずだった
のではないか。
日本でも特定秘密保護法案が出来、国家安全保障会議が誕生
した。将来、アメリカと同じことをしないとは言い切れない。
他人事ではない。こうしてネット上に、ああだこうだと書いてる
ことが、どこかで秘密の目に監視されているのだから。キャー。
尚、アメリカがドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していた
との報道があった後、「安部首相の携帯電話は大丈夫」と官房
長官が胸を張って断言していた。
それって…盗聴に値しない人物ってことですけど。 -
一般市民に対する集団監視とは?
一般市民に対する盗聴、盗撮の拡大による実害は、最近ネット上で散見する『集団ストーカー』というものにも関係しているのでは?と思っています。この本でのスノーデンファイル序文には次の文章が記載されています。 『・・・社会から爪弾きにされた若者が 軽微な違反を犯し、世界最大の監獄制度の中で耐え難い結果に苛まれようと、私たちは社会全体として見て見ぬふりを決め込んでいます・・・』 そして2014年、NBCニュースで のスノーデンのインタビューでは『・・・he called it ,could get inside your thought process・・・』と言っています。
また例えばウィキリークスにある文章『 エネルギー武器(DEW)、神経作用兵器、そし て100通りの組織的ストーカーの拷問とその乱用についての要約 』ウィキリークスサイト (http://wikileaks.org/gifiles/docs/ 16/16811_fw_impeach_these_criminals_please_with_100 _attached_torture.html) ここでは、世界各国のターゲットにされた被害者の情報が載っており、またこのようなことは恐ろしいことですが、日本でも行われていると思います。なぜその兵器の情報がメディアから出てこないのか法整備はされないのか疑問です。 技術的なことではアメリカの特許 である脳活動監視についての研究(2000年4月.A.Mardirossian博士、US Patent 6011991 )など他の特許も色々あり、(1994年 Donald York神経学、Thomas Jensen 言語学)両博士による脳波による言語変換を成功させている例もあり、信憑性はあるのではないかと思っています。
『集団ストーカー』の問題は権力に対する邪魔者を排除すること、また大衆を動かす心理技術的な洗練(コインテルプロなど)という意味で、別の問題としてみえる,原発の不利な情報をもみ消す力、平和活動に対しての圧力など源は同じところから来ているのではないか?と思います。それはつまるところ、真実の情報が一般にはなかなかおりてこず、権力者の都合の良い情報しかもらえないということに尽きると思います。 -
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政府による通信の無差別監視。実際に行われていたという話には暗澹とした気持ちになります。しかもアメリカがやるとなれば世界的な影響があります。インターネットのインフラも、人気のあるサービスもアメリカに集中しているわけですし。
スノーデンは日本のNSAにデルの社員として派遣されていた時に、機密情報のリークへの気持ちを強くして行ったようですが、日本で何を見たのかがきになります。「それまでより高次元の監視上の機密」「無人機によって殺される運命にある人々の監視映像を見たこともあります」等記述はありましたが。
この本では当然触れられていませんが、日本政府がこの件をどう捉えているのか、今後どういうスタンスで行くつもりなのかも気になるところです。 -
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米国のインターネット盗聴を暴露したスノーデン。その情報を得て発表した記者グリーンウォルドによる、事の顛末とその影響を描いたノンフィクション。ロシアに逃れたスノーデンは、米国政府の引き渡し要請や国防観点からの非難があり、いまだ進行中の案件である。情報を渡していた米IT業界の各社についても、秘密情報の保持という点で信用を落としており、これまでのように無条件に信頼を得れらる存在ではなくなっているようだ。
世界の通信情報を収集するという「PRISM」の存在についてはスノーデン以前から噂にはなっていたものの、自分としては現実のものとも思えずトンデモの類かと思っていた。本書を読み、本当にここまでやっていたのかというのが感想だ。全ての情報を収集するということが、その対象となる量からして現実的とは思えないことと、全てを収集できたとしてその情報量が多すぎてそこから有益な情報を得るのが難しいのではないかと直感的に考えていたからだ。
電話の仕事をしていたらCALEA (Communications Assistance for Law Enforcement Act)対応機能が米国向けでは必須であることは知っていた。司法の許可があれば米国内の全ての通信は傍受可能とするのが目的だ。その思想を敷衍するとすべてのインターネット通信を捕捉しようとするのは当然の帰結なのかもしれない。特に911の後の世論やジャーナリズムは、これをよい機会とする人々によって利用された。
米国ではHuaweiやZTEなどの中国製ネットワーク機器は国家安全保障上のリスクから採用されないということになっている。中国のメーカーは、本当にそういうことをやっているのかもしれないが、自らが外国に対してそのようなことをしているという事実からこそ逆に実行されている政策とも言えるだろう。そこまでやるのか、という観点で見ると、先日のOpenSSLのバグも、彼らが置いたバックドアなのではという噂も現実的になってくる。米国が選定した暗号方式であるAESについても何か裏があるのではとこうなると勘繰りたくなる。日本の通信などは裸になっているのだろうか。
著者は、第4章で政府が監視しているという事実が社会与える影響について論じる。監視の対象になるのは、悪いことを考え、悪いことをしようとしているものであり、われわれはそのために庇護されるのだという考えを非難する。
フーコーが『監獄の誕生』以降で分析した内的監視のメカニズムがまさにすみずみまでその射程に捉えようとしている。人は、自らの自由意志という錯覚をもってその監視社会の中で住むことになる。それは、抑圧的で不可逆的なプロセスであり、自分は悪いことをしていないので、気にならない、という話ではないのだ。
著者は、米国政府だけでなく、唯々諾々として政府の意図に沿う大手ジャーナリズムも批判する。それこそが大きな問題なのかもしれない、と。
物語としても面白いが、事実として知っておくべきが書かれている本。 -
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細かい パラグラフの連続で158までの区切りがあります。このリズムが心地よいので読み進める勢いが増していきます。エージェント17が読者に語りかけるようなスタイルが、最初は馴染めませんでしたが、そのうち気にならなくなりました。
プロフェッショナルな所作が随所に散りばめられており、私の興味を引き付けてくれました。また、登場人物も魅力的で、しばし時を忘れて物語に没頭できる作品です。映画にもなりそう。
現役最強の暗殺者が突如引退した伝説の元暗殺者と対決するアクション小説です。
文庫の帯には、続編『Assassin Eighteen』の翻訳が決まっているとありました。次回作を楽しみにして、過ごしたいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ文庫とは言え550頁もあるので、「疲れた」というのが一番の感想。他にすることがあったとはいえ3日もかかってしまいました。
スパイもので、主人公17は16の殺害を命令されるが、実行しているうちに、17が16を殺す話ではなくて、16に17を殺させる話であることに気がつく。
16も同時に抹殺されることで、土壇場になって、16と17はそのことを目論むハンドラーに向かっていく。
これに女性二人がからまり、ハードアクションが展開する。全編皮肉交じりの口調、描写ににんまりさせらる作品。脚本家とはいえこれがデビュー作とはすごい才能だ。
過去の仕事の紹介などできるだけ簡素にしてもう少し短くてもよかったのではないか。