VUCA時代の重要なキーワードである「Disrupt」と「Digital Transformation」を融合した、まさに”Disrupt, or to be disrupted, that's the question.”という問いへの回答の一助になる一冊。
デジタルトランスフォーメーションの本質
...続きを読むは、単なるコスト削減ではなく、顧客への提供価値を高めることを目的としている(その上でコストも下がる)。3つのバリューはその方向性を検討する上で重要。
そのために、データドリブンな組織の構築(ビジネスアジリティ)は必須。
カタカナの造語が理解にしにくく、訳が頭に入ってこないの等の欠点はあるものの、デジタルを理解した経営戦略を体系的に学べる。
以下、本書からの学び
【「破壊者」ではなく「破壊の力学」に注目する】
重要なのは「ディスラプター」ではなく、「ディスラプション」。
【デジタル・ディスラプションの破壊力】
デジタル・ディスラプションと従来の競争力学とのちがいは、「変化の速度」と「利害の大きさ」。
業界ごとのデジタル・ディスラプション(p.338、表A4)
製薬業界ではデジタル・ディスラプションの可能性は低いが、影響を免れるというわけではない(パーソナライズ、デジタル・マーケットプレイス等)。
既存企業の強み(資金調達力、ブランド力、顧客基盤)は「規模」頼み。デジタルによって規模は容易に突破可能。ディスラプターは規模の不経済から利益を得ている(小規模の方が良い)。
ディスラプターはバリューチェーンの構築なしにバリューを創出。重要なのは、「バリュー」そのもの。
「自らをディスラプト」は、会社が顧客に価値を提供してきた方法がどれだけ強固かを疑うところからはじめる。
【デジタルが可能にしたビジネスモデル】
デジタル技術が新ビジネスモデルを可能に。
デジタルがもたらす3つの「カスタマーバリュー」
①コストバリュー(p.52、表1):競争におよぼす効果が最も強い。製品・サービスの非物質化。解析を駆使した情報優位、また情報優位による業務最適化。
中間業者として商取引に介入。
②エクスペリエンスバリュー(p.58、表2):製品・サービスをアンバンドルし、安価に提供。
③プラットフォームバリュー(p.66、表3):ネットワーク効果(メトカーフの法則)。
組合せ型ディスラプション:ビジネスモデルが組み合わさり、3つのバリューの破壊的な組合せが顧客にもたらされる。
【バリューバンパイアが市場の利益を飲み干す】
自らの競争優位により市場の売上・利益を縮小させるディスラプター。既存企業のマージンを枯渇、時代遅れの存在にさせる。市場の急激な変化を促進。
大きなイノベーションを経験していない市場では、多くの顧客が既存サービスに不満。
デジタル化可能なあらゆるものがデジタル化される。製品そのものではなく、「チャネルや消費行動のあるステップ」がデジタル化の可能性。
事例:ナップスター(p.91、表4)
顧客はデジタル・ディスラプションには大きな価値があると理解。
デジタル・ディスラプションによって、新たな市場機会生じる。一時的な空白地帯。『ホワイトスペース戦略』参考。
既存企業が3つのバリューを創出し、攻勢にまわれるチャンス。
『ブルーオーシャン戦略』の「市場の境界線」「模倣を防ぐ壁」は無意味に。
事例:アップル(p.111、表5)
【ディスラプターとどう戦うか―4つの対応戦略】
防衛的戦略:収穫戦略、撤退戦略
攻撃的戦略:破壊戦略、拠点戦略
①収穫戦略:ディスラプティブな脅威を遮断。顧客、提携業者、規制機関、世論形成者、資本提供者との関係を利用。法的措置、マーケティング活動、料金引き下げ等。低迷期間中に引き出せるだけのマージンを引き出す。デジタルで効率性を向上。収穫戦略が唯一の対策ではない。(p.124)
②撤退戦略:今の市場から離脱しニッチな市場に逃げる。事業維持コスト>利益 の場合。
③破壊戦略:デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを駆使して3つのバリューの創出に専念。
提供業者としての自らの役割から離れ、顧客の気持ちになって考える。
コストバリューとエクスペリエンスバリューは一般的には相容れない選択肢だが、デジタル・ディスラプターは違う。
④拠点戦略:ディスラプションにおける競争上の利益を維持。
ディスラプションをもたらした企業が最終的な勝者になるとは限らない。
「新設」「買収」「提携」のいずれを採るべきか?
戦略ごとのカスタマーバリューの形態(p.145、図13)
技術コストは指数関数的に減少していく(ムーアの法則)が、既存企業は高い技術コストを負わされている。コスト曲線の自らの立ち位置を「リセット」することが課題。
【アジリティを高める3つの組織能力】
ディスラプターのスピード、柔軟性、有効性に対応できる能力(p.304、図18)
「察知力」「情報に基づく意思決定力」「迅速な実行力」
3つの能力には連続性がある。
時には、ディスラプターのデジタル技術が必要な能力獲得を助けてくれる。
【これまで手に入らなかった情報を集める―ハイパーアウェアネス】
察知力:関連するデータ・洞察を収集し、自社が置かれた環境の変化を察知し、監視する能力。
どんな洞察を得たいか?何を監視するか?そのためにどんなITインフラ・人的資源が必要か?
【解析力を高めてバリューを見抜く―情報にもとづく意思決定力】
情報に基づく意思決定力:データを解析して知見を吸収し、適切な人材を引き込みつつ、一貫して正確な意思決定をするための能力。
良い意思決定ができるかは、良いデータ解析ができるか、社内外の専門家たちが必要なデータにアクセスし、適切な段階で意思決定プロセスに関与できるか。
【リソースとプロセスを動的にする―迅速な実行力】
迅速な実行力:うまくいっていない、時代遅れのアプローチを捨てて迅速かつ効果的に実行する能力。
【いかにして競争力を高めるか】