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密室状況で見つかった女性の死体と、警視正爆殺事件。二つの事件の関係とは? ショーン自身の物語も大きく動く〈ショーン・ダフィ〉シリーズ最新作。
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Posted by ブクログ
ノワールの系譜を正当に継ぐのが、このエイドリアン・マッキンティだとぼくは固く信じている。リズミカルに並べられる名詞の山。体言止めで綴られる小気味よい文体。舞台は、ジャック・ヒギンズの作品でもおなじみのテロの嵐吹き荒れる80年代の北アイルランド、ベルファストとその近郊。 主人公は、すっかりお馴染...続きを読むみになったいい味の一匹狼、汚れた街をゆくショーン・ダフィ。頑固で、タフで、それでいて弱くて、心優しい詩人で、デカダンスな酒呑みで、頭が切れる上に、ピアノも上手い、古いレコードのマニアである。シリーズ作品のタイトルはすべて、酔いどれピアノ弾き語りの天才トム・ウェイツの曲名からなっている。 信頼できる常連キャラである相棒クラビーに、新人ローソンを加えた三輪体制となって、本作で迎えるは『アイル・ビー・ゴーン』に続く密室殺人事件。舞台は、お馴染みのキャリックファーガスと、その古城。しかも物語のスタートは、驚くべきゲストをベルファストに迎える。モハメド・アリ! 彼をガードするチャンスを得たショーンは舞い上がる。サービス満点の虚実織り交ぜたプロットをも運ぶマッキンティのペンの冴えは想像力を暴走させては、ますます加速する。 エルロイのようだ。エルロイを師と仰ぐ馳星周のようでもある。リズミカルで、踊るような文体。リズムは緩急を変え、読者を世界の果て、閉ざされた時代へといざなってゆく。ある種の酩酊感を自覚させられる読書感覚。 それでいながら本格推理的トリックにもこだわる。今回は、同じ刑事が、二度も密室殺人に出くわす確率への疑問を、主人公ショーン自身があり得ない確率と意識してやまない。二重三重の罠への疑惑。標的はショーンであるのかもしれない。ショーンの懐疑にはきちんと決着がつく。いつもながらの練りに練られたプロット。 当時の国際事情。南北に分かれたアイルランドのそれぞれに違う法律という罠。フィンランドからの異邦人たち。過去からの使者。ショーンの捜査に引っかかる様々なファクター。さらに少年たちの収容施設の存在と、収容者たちの性被害疑惑が事件に引っかかってくる。史実、事実に絡ませた題材を取り込んでいる。作品の厚み。世界との繋がり。アイルランド史という深海に下ろされた作品という名の錨のようだ。 ショーンにとっては、彼のプライベイト・ストーリーでサンドイッチされた作品であるという点も、注目すべきである。粋な構成。心を打つリズム。やはり最後まで音楽性豊かな作品であるかのような。次作への焦がれるような期待に心が焼かれる。不良青年のような風貌の作者と、不良そのものである刑事ショーン。 本書は、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペーパーバック賞受賞作。本格ミステリの謎解きをノワールの闇で包み込んで仕上げた唯一無二の世界観と言える本シリーズ。つくづく、はまったら抜けられない世界。この個性をいつまでも!
「ショーン・ダフィ」シリーズ第5弾。80年代の北アイルランドの暴動や紛争のなか古城で起きた事件を追うダフィたち。ひとつの事件から大きく広がっていく展開や上手く進まない捜査と警察小説の面白さがたっぷりあるけれど個人的にはダフィの魅力的な造形が一番の楽しみでもある。北アイルランドの情勢、車の下に爆弾がな...続きを読むいことを確認するような日々。シリーズを通して、ダフィを通して描かれるこれらの日々と警察小説、ミステリーとしての魅力が存分に楽しめる。これまでのシリーズの中でも上位にくる面白さだと思う。
(⌐■-■)とにかくリズムがあって読みやすいね。オチはこういうのもアリ。 ⊂|⊃ [ಠ_ಠ]翻訳も上手いぽいな。
〈ショーン・ダフィ〉シリーズ第5作。本作は、読書やドラマや映画が好きなら、割と見慣れた背景かもしれない。児童売春の闇である。だが、それと密室ものの融合、さらにダフィの私生活の劇的な移り変わり、相変わらずの殺伐としたアイルランド、こう言った要素が組み合わさり、手垢のついたテーマな割に、既視感なく楽しめ...続きを読むた。ダフィの語りも魅力的で、平凡な日常さえなぜかのめり込んでしまう。また、ダフィが激しく傷つきながらも前へ進む、その活力に勇気がもらえる。御都合主義とも言える展開もあるが、語りの巧さであまり気にならなかった。
ショーン・ダフィシリーズ第5巻 4→3→1→2→5というめちゃくちゃな読み方をしたせいで時系列がめちゃくちゃだ しかも直前のはずの4巻はうっすら忘れけけている 当たり前だこのヤロウ! もう二度とシリーズものをこんな読み方しないと誓う このレビューをご覧になった方にはぜひともこの愚かで哀れな男の行い...続きを読むを教訓として活かして頂きたい さて本編だ 毎回触れているかもしれないがこのシリーズの土台となっているのは1980年代の北アイルランドにおける悲しみと憎しみの連鎖に他ならない つまり警官であるダフィが出かける前に必ず実行する車の下に爆弾が仕掛けられていなか確認するルーチンに象徴される時代背景ということになる そして主人公ダフィはなぜそんな時代にありながら「正義」を諦めないのか? 実はダフィは「勝利」したことがないという非常に稀有な主人公だ あの時代に警察官が「勝利」することはほぼあり得ないと言ってもいいのだろう しかしダフィは諦めない、なぜならばエイドリアン・マッキンティが「正義」を諦めないでほしいと願っているからではないだろうか 決してダフィの身に「勝利」が訪れないとしても、「正義は勝つ」がおとぎ話の世界にしか存在しない絵空事だとしても 諦めない人たちが増えることできっと未来が変わるはずだとマッキンティは信じているのではないだろうか
ミステリ作家・阿津川辰海による詳細なるシリーズ解説がすべて言い尽くしている。(ウィキによると十冊以上ものミステリ作品の解説を書き、読書日記を月二回もWeb連載しているらしい。)
北アイルランドにある古城の中庭で女性の転落死体が発見された。事件当時の現場は、城門は固く閉ざされ、城壁を乗り越えない限りは中に入ることは出来ない完全な密室状態だった。さらに、事件の捜査に臨むショーン・ダフィの元に警察高官が爆殺されたという連絡が入る。彼はIRAの手によって殺されたというが……。 シ...続きを読むリーズ第5作。パズラーだけでなく、警察小説、ハードボイルド、国際謀略ものなど、いろいろな要素がてんこ盛り。次回作も楽しみ。
王立アルスター警察警部補・刑事<ショーン・ダフィ>シリーズの第5作。前作までを読んでいないのだが、阿津川辰海氏の「これまでの最高傑作と称するにふさわしい一品である」とのオビ文を見て読んでみることにした。 舞台となるのは、1980年代の北アイルランド。アイランド共和軍(IRA)による爆弾テロ事件...続きを読むが多発していた北アイルランド紛争の時代だったことは記憶にあるが、その時代。主人公ショーン・ダフィは愛車のBMVに乗るときに必ず車底に爆弾がないかどうか確認するのも、正にこの時代ならではのこと。 大きな筋としては、北アイルランドにある古城の中庭で女性記者の転落死体が発見されたが、現場は、城門は固く閉ざされており、ある時間以降は人の出入りができない密室状態だった。果たしてその死は自殺か、事故死か、はたまた殺人か?さらに警察幹部が車に仕掛けられた爆弾により爆殺されてしまった、IRAの犯行と思われたのだが……というもの。 モハメド・アリの北アイルランド訪問に伴う警備、工場視察に来たフィンランド企業の幹部被害の窃盗事件、そこから殺人事件捜査へと、次々に駆り出されるダフィ。 現場での綿密な捜査活動が描かれ、また北アイルランド、イギリス、フィンランドとダフィたちの捜査は国境を越えて行われる。そしてダフィ自身の私生活を巡って新たな出来事も、と実に盛りだくさんな内容。 600頁近くのボリュームがあるが、キビキビした訳文のためか、厚さをあまり感じずに読み進めることができた。
あい。 今回も文句なし。 阿津川辰海さんの解説に挙げられている(主に警察)小説もマイベスト級に好きなものばかりで、いかにこのシリーズがわたしのどストライクであるかを再確認した次第。 今回ローソンが大活躍。クラビーは控えめ。 次作が本当に楽しみ。
ショーン・ダフィシリーズ五作目。 車に乗り込むたびに、爆弾を仕掛けられていないことを確認するために、 車の下を覗き込むダフィ。 とうとう、車に爆弾を仕掛けられた。 カウンセリングを受けるように、休みをとらされる。 しかし、IRAの爆弾と、 友だと思っていた男に裏切られるのと、 どちらが精神的ショッ...続きを読むクが大きいのだろう。 フィンランドからの電話会社の一行が工場用地の視察が訪れる。 同行していた経済誌の女性記者が観光スポットでもある古城で、 転落死した。 城は密室状態で、ダフィは刑事人生二度目の密室事件を捜査することになる。 その最中、警視正がIRAの爆弾で殺される…。 まさか、被害者の飼っていた猫をロンドンから飛行機で連れて帰り、 ダフィが飼うことになるとは思わなかった。 それに、家を出て行った若い恋人が、 妊娠して戻ってくることも。 部下のローソンが優秀なせいか、 前より読みやすくて面白かった。 フィンランドでの雪の中の対決も、 キャリックファーガスの雨の中の対決も、 緊迫感よりも期待感が勝っていた。
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