黒木あるじのレビュー一覧
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一応、「家」にまつわる怪談、ということになるのかな。(読んでいる最中それが強く意識されるという感じでもないのだけど。)
全体的にはきちんとそれぞれ「作品」になっているので、素人っぽいノリで集めた聞き書き怪談、みたいな雰囲気ではなく、しっかり読み応えがあるものが多かった。
ただ、なんというか、「物件」と冠されたタイトルと内容とはちょっとズレがあるように思う。「怖い家」くらいの方が適当なんじゃないだろうか。あんまり、不動産としての物件にまつわる怪という方向性ではないので、いわゆる事故物件怪談みたいなのを期待していると「およ?」となるかも。
個人的に印象に残ったのは、福澤徹三『旧居の記憶』、黒木あるじ『牢家』、平山夢明『るるろいの家』あたりだろうか。
『旧居の記憶』は、大きな山場のある話というよりも、文章とその時代背景から浮かび上がる全体の雰囲気に独特のグロテスクさとノスタルジックな空気感があって、妙につらつらと惹き込まれるように読み進めてしまう。
『牢家』は、黒木さんらしいといえばそれまでなのだけど、地方に伝わる民間伝承や土俗的な風習を現実とからめてエンターテイメントに仕上げた感じ。
『ろろるいの家』は、純粋に怖い話。どこかで聞いたことのあるような設定が色んな角度から登場して、最初は「あれ?この設定、どこかで…」と思って怖いというよりは「きたきた!」と楽しみながら読んでいる感じなのだけど、トータルでいうと楽しいというよりジワジワと怖くなっていく。
秋の夜長に楽しませてもらった。 -
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2021年7冊目は、黒木あるじのプロレス小説、第2弾。
「強く激しく逞しく」をモットーとするプロレス団体、ネオ・ジパング。その練習生、梶本誠は、プロレスに、強さに悩み、「くだらねえ」と思いながらの練習の日々を続けていた。そんなある日、ネオ・ジパングの創始者であり、代表取締役でもある《リングの皇帝》カイザー牙井から直々に、素性不明のフリーレスラー、サーモン多摩川の付き人を命じられる。サーモン多摩川、彼はコミックレスラー然とした、ネオ・ジパングのスタイルに不似合いな選手であった。
まづは、今作を手にした多くの方は、前作『掃除屋』を気に入った方か、プロレスファンのどちらかではないだろうか。自分は、確実に前者。
前作の路線的なものは、踏襲しつつも、ハードボイルド的部分は大きく後退。サーモン多摩川のキャラも相まって、クライマックス前までは、コミカル寄りの仕上がり。
そして、梶本の悩みの中身的部分は、前作でもちょいちょい見られたが、今作では、クライマックスで一つの結論には至る。しかし、ソレも少し弱い印象。
前作の、女医、奈良に匹敵するキャラの不在。クライマックスが、またもプロレスvs総合格闘技(今作では、厳密にはプロレスなんだけど)的になったこと。個人的には、色々と詰め込み過ぎ感あり。全体的エンターテイメント性は、前作を越えられていない印象。などが★★★☆☆評価の理由(コレを機会に『掃除屋』は★★★★☆評価に修正)。
次作(スピンオフでもイイ)では、ヤンキーマスクvs梶本誠のタイトルマッチを描いてくれないかなぁ?!壮絶なフロントスープレックスの打ち合い。もちろん、ヤンキーマスクのセコンドは、ピューマ藤戸とジンギス・ミカン。梶本誠のセコンドは、サーモン多摩川と根津達彦。 -
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ワインのコルクが開いた時のような心地よい感触が掌に伝わった直後 差し出されたブーケは、一本残らずプラスチック製の造花だった。イミテーション・フラワー。鮮やかな偽物。華やかな嘘。つまり_プロレスラー。これは〈掃除屋(クリーナー)〉への依頼状だ。「選手を始末して欲しい」という依頼の合図だ。 「ビクトル式だ!腕ひしぎ逆十字固めだ!」最前列のマニアとおぼしき客から解説じみた声があがる。心のなかで「ご名答」と呟いた。しっかり極まれば肘が伸びて壊れる危険な技だ。 俺は、この嗜虐的な女医に毎度浴びせられる言葉のマシンガンが嫌いではなかった。手加減の無さがやけに心地良く、猛者と試合をしているような錯覚に陥ってしまう。もしかしたら技を受ける仕事故の、マゾヒスティックな職業病なのかもしれない。 薬を処方すると言質を取ったからには 口調はいつもの傲岸不遜なトーンに戻っている ヘッドロックはバッグドロップで返すのがセオリーだからな 「検査中にゲップしちゃうと、発泡剤を飲み直さなくてはいけないんですけどね。今のはギリギリセーフ。カウント2.9です」 朋友の愛娘がいっそう強い口調で繰り返す 理恵は滔々と諳んじていく 「おい坊主、勘違いすんなよ。レスラーは"生きる覚悟"で闘うんだ。客は特攻隊や討死を観にきてるんじゃない。善玉のがむしゃらさ、悪玉のしたたかさを見たいんだ。生き伸びる難しさと、それでも生き抜く逞しさを見たいんだ。これだけは覚えておけ。試合を〈死合〉にするな。お互いの生き様をぶつけ合う〈志合〉に変えろ」 そんな青色吐息の運営が当たり前のインディー界隈において 言葉の機銃掃射で心が蜂の巣にされてしまう 大動脈瘤の破裂 木戸修 藤原喜明 古舘伊知郎 和田京平
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2019年、19冊目は、実話系怪談で知られる、黒木あるじ。
今回、あらすじは省略いたします。
まづは、プロレスへの興味関心の有無。多少の知識がナイとやはり厳しいかな……。自分も最近のプロレスには、トンと疎くなってしまっています。
中身ですが、プロレス業界の「必殺仕事人」、ピューマ藤戸が主人公。そして五話仕立てで、それぞれに、依頼人と〈清掃物件〉(ターゲット)の関係性、依頼理由や内容を軸としたライトミステリーが仕掛けてあり、各1話づつでも楽しめる。また、大きく全編を通して、主人公とかつてのライバルの関係を軸にしたモノでも読ませていくと言った作り。
さらに、細かく見ると、藤戸の会話センスがイイ。加えて、それ程多くない登場人物のキャラ立ちもイイ。少々下衆だが、気の効いた表現も個人的には好き。その質感は、同じく実話系怪談でも著名な、平山夢明流のハードボイルド系に通じるモノがある。
総じて、黒木あるじの現時点でのエンターテインメントを全部ぶち込んであるような気がする。まぁ、第四話で、バトンきちんと渡ってんのかな?とか、総合のリングでソレ、あり?とかのツッコミ所もいくつかある。さらに、プロレス知らない人には、映像喚起しにくいトコ多いだろぅし。
エンターテインメント作品なので、肩肘張らずに読むのがいい。けっして読みにくいものではない。また、プロレスに造詣がおありなら、モデル探しも楽しいと思う。たいした知識もない自分でも、新館、鷹沢、トルネード・ノブナガ辺りはすぐ、ピンときた。
総合★★★☆☆の評価は、★★★★☆あげていいところを、今後、この上を行って欲しい期待込めてということで……。 -
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怖い話で暑さを吹き飛ばしたい…という動機で手にした本だが、この世のものでない存在の怖さより、人の心の闇がほとほと怖くなってしまった。一番重かったのが『 虐目』。虐めの質が陰湿かつ壮絶なのも絶句だが、虐めのきっかけを作ったのが教師であること、のみならず虐めによって取り返しのつかない大怪我を追った被害者に「問題起こすなら卒業してからにしろ」と脅しをかける。こんな闇が(病み)がこの世には存在していて、ただ普段表向きには見えていないだけ、なのかも、と思うとゾッとする。その被害者の彼の復讐も怖かった。
この本の作者が言ったことではないけど、魔物というものは人の世の、悲しみや恨み、嫉妬、欲望など、ドロドロした闇の負のエネルギーが作り成すものなのではないか?そうとばかり言えないものもあるが。最初から人の世とは違う異界の異獣、異人といわれるもの。だけどそういった存在も、人の闇の部分に巣食っているような気がしないでもない。
怖い話ばかりではなく、なんとなくじーん、と心温まるものもあった。たとえば今はダムのそこに沈んでしまったかつて暮らしていた村、ダムの底から光る狐火が道に迷ったお爺さんを助けた話。日本昔ばなしのようだなぁ。あと、火事になった焼け跡から見つかった(正確には何故か車のシートから見つかった)亡き祖母の自伝本の中の一文が打ちひしがれた作者に生きる力を与えたという『残存』。このエピソードは闇夜に差し込む一筋の光のようにも思えた。
闇に飲み込まれず、光を見失わず、生きていこうではないか…そんな読後感を抱いた。 -
Posted by ブクログ
初めて読む作家さんですけれども…うーん、自分はあんまり怪談とかいうのにピンと来ないタチでして、「へー…実際にそういうことが起きるんダァ…」みたいな、どこか他人事めいた感覚で読み終えてしまったのですけれども…社畜死ね!!
ヽ(・ω・)/ズコー
まあ、でも割と良い暇つぶしにはなったのかな? 登場する怪談話にSNSやらLINEやらが出てきて大分最近の話なんだなぁ…みたいな感慨を覚えました。SNSなどが新聞などにまで躍り出てきて、世の中は電脳社会一色となりつつありますけれども(!)、昔から通じる怪談話の一つや二つ、こんな社会においても発見されるものなんですねぇ…そんなことを思ったのでした。おしまい…。
ヽ(・ω・)/ズコー -
購入済み
怪談は細部に宿る
第76話の必勝法
本が出版された2011年から遡ること30年前、正しくは30年以上前とあるので1970年代の後半でしょうか。世の中に携帯電話はまだ存在しませんでした。自動車電話は開発されていましたが、これは携帯電話とはまったく性質の違うものです。その上、とても一般的とは言えず、電波状況が悪いために使えるエリアはごく少なく、外回りの営業業務に役立つレベルのものは、重くてかさばるショルダーホンの登場を待たねばなりませんでした。
重箱の隅をつついたようなことですが、どんな小さな誤りでも、そこに引っかかると他の作品まで嘘くさく感じられます。佳作が多いだけに非常に残念です。