佐藤優のレビュー一覧
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著者が外交官としてソ連で過ごした日々を振り返りつつ、国家の崩壊という大事件に関わった人びとの姿を生き生きと描き出した本です。
前半は、ベルジャーエフやブルガーコフといった「道標派」の思想家を研究しているサーシャという人物との交流が語られています。ソ連の崩壊を予想するサーシャは、バルト三国の独立運動に身を投じ、やがてラトビアで排他的な民族主義の動きが高まってくるとモスクワに戻り、ロシア・キリスト教民主運動という政党を立ち上げることになります。
その後、著者の交流範囲も広まり、アントニオ猪木氏を通じてヤナーエフ副大統領やイリイン共産党第二初期などの守旧派の人物とのつながりを得て、1991年8月のクーデタ未遂事件の渦中での彼らの動きがつぶさに語られることになります。
最後に、ソ連崩壊後にサーシャと再会し、彼の申し出た金銭の無心を断ったエピソードが置かれています。
「もし、サーシャの物語を中心に書き進めていったならば、ソ連崩壊よりも、どの時代においても、鋭敏な危機意識をもち、この世界と人間の双方を変容することを試みるが、挫折を繰り返すロシア知識人について書くことになったと思う。しかし、そのような良心的知識人の世界ではなく、良心を殺し、政治ゲームに入っていった人々の世界を私は描きたかった」と、「文庫版あとがき」の中で述べられていますが、個人的にはサーシャにまつわるエピソードが強く印象に残りました。 -
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元外交官で、キリスト教神学やマルクス主義に造詣の深い著者による、人物論集です。
著者が深く関わった鈴木宗男氏をはじめ、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗らの歴代総理大臣、さらにロシアの要人たち、さらに、ラスプーチンやゾルゲ、有末精三といった、過去のインテリジェンスに関わった人たちの人物像が分析されています。
そのほか、カール・バルト、ティリッヒ、蓑田胸喜といった思想家たちの紹介もありますが、基本的には、政治家たちの駆け引きの現場レポートのような内容になっています。個人的には、キリスト教神学、マルクス主義、ナショナリズムを三位一体として捉える著者の思想の方に関心があったので、少しもの足りないという気がしました。 -
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理論編と実践編に分かれており、理論編では、マルクス経済学者の宇野弘蔵の理論を見なおすことで、現代の国家や資本主義が直面している問題を解決することがめざされています。
新自由主義はアメリカ流の啓蒙主義であると、著者は規定しています。それも、ロマン主義との対決をくぐり抜けてきたヨーロッパとは違う、すれっからしの啓蒙主義であり、そこでは自由を妨げるものは徹底的に排除されることになります。著者はこうした新自由主義を克服するための手がかりを、宇野経済学に求めようとします。
商品にとって第一義的な意味を持つのは(交換)価値、すなわちカネになることであり、資本家はカネさえ儲けることができればいいと考えます。しかし、使用価値がなければ商品は売れません。つまり、「他人のための使用価値」に対する配慮が必要となります。ここに、商品経済の「外」へとつながる回路があると著者は見ています。
ただし、この「外」という言葉は、ポストモダン的な意味ではなく、疎外論的な意味で使われているように思えるところがあり、そこに少し引っかかってしまいます。本書の議論には、人間が作った資本主義という制度が人間を離れて自立し、逆に人間を支配するという意味での疎外を克服するという下図が描かれているのではないかと思われるのです。なお、哲学者の廣松渉は疎外論を批判して、人間精神と制度を対置する近代的な二元論の構図から一歩も抜け出ていないことを指摘し、関係の第一義性の立場に立って、関係が「物象化」されるメカニズムを解き明そうとしました。しかし著者の議論は、あくまで疎外論的な発想に寄り添い、商品経済の論理に巻き込まれないアソシエーションとしての「国家」に至るまでの道筋を示そうとしているように思えます。
なお、実践編は著者が発表した時評を集めたものです。 -
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「交渉術」というタイトルですが、一般の読者に役立つ交渉テクニックを紹介した本ではありません。元外務官で、インテリジェンスの現場の最前線に経っていた佐藤優さんが、主に体験談を通して、外交における交渉の実態を論じています。
前半は、カネ、セックス、アルコールなども駆使する交渉術の実態について、詳しく述べられています。後半は、主に北方領土をめぐって、小渕、橋本、森内閣のもとで、エリツィンやプーチンらとの折衝に当たってきた著者の体験を振り返り、当時日本とロシアとの間でどのような駆け引きがおこなわれてきたのかを明らかにしています。
巻末には、東日本大震災の際に、著者がインテリジェンスの観点から政府に対して呼びかけた提言について触れられています。 -
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なんて紛らわしいタイトルのつけ方だ(笑 まず内容よりそこに著者のしたたかさを感じてしまうわけで。論理的思考をつけるために歴史を通して鍛え上げるワークブックのようなもの。この通りに取り組めば本当に頭の働き方が変わってくると思う。本を1章丸ごと暗記すると脳の使える容量が増えるというのは面白い。やってみたいなあ(根性があれば)
・自分なりの視座を持つことが大切
・『イギリスの歴史/帝国の衝撃』(明石書店)課題図書扱いとする。英国内において新帝国主義時代の今を生き抜く術を記した本。
・脳の記憶容量を大きく変える丸暗記の勧め
前述図書 第9章を日英ver 1か月かけて覚える。ブロックごとに暗記し、キーワードをメモしてその通りでなくても良いので自分の言葉でうまく組み立てられるか確認を都度すれば一生忘れない -
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著者のいう「ズルさ」とは、社会で生き抜く「賢さ」のことだ。
この世は必ずしも公平には作られていない。また、組織の中で勝ち残っていかなければならないにも関わらず、組織の中でうまくやっていかなければならないという、矛盾した状況にある。
そんな中でよりよく生きていくには、教養と知恵を蓄えることにより直観力を磨く。ビジネスという経済的合理性を求める場以外に、地域、趣味、ボランティアなど仕事以外の場で信頼しあえる誠実な人間関係を築く。複数の価値観を持つことにより、どんな状況にも対応できるしなやかさを持つ。それが、著者の勧める処世術である。
外交官という、文化も利害関係も異なる二つの国の関係を取り持つ経験をした著者による、実例をふんだんに盛り込んだ啓発書。参考になった。 -
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最近の佐藤優の著作は質が落ちているように感じる。
「ヘーゲルは、『偉人は他人を満足させようとするものではなく、自分の満足をねらいとします』と断言する。脂ぎった顔をして、自分の利益しか考えない政治家、社長、編集長などのような人が偉人で、歴史の中で理念を推し進めていくことができると、ヘーゲルは本気で思っている」
とあるが、これには賛同できない。
「ヘーゲルは、偉人の人生について、『かれらはおだやかな満足を得ることがなく、生涯が労働と辛苦のつらなりであり、内面は情熱が吹きあれている。目的が実現されると、豆の莢にすぎないかれらは地面におちてしまう』という突き放した見方を示している。ヘーゲル個人としては、自己中心的な偉人と友だちになりたいと思っていないのであろう」
とあるが、これも納得できない。
時代を変えるような偉人は、他人のためというより、自己実現欲求に突き動かされて、自分のために行動し続けた人である。しかし、どんな偉人でも最後は一人の人間として死ぬのであり、ヘーゲルはそのことを「豆の莢にすぎないかれら」と表現したのではないかと思う。