佐藤優のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ本書は、A級戦犯として裁かれた、大川周明の『米英東亜侵略史』
をそのまま掲載し、佐藤氏の解説を付けたものである。
筆者は、本書を通して、戦争へ行かざるを得ない大義名分があったという。そこには大川周明の主張が「論理的」「実証的」に説明されるという。
筆者によれば、ここには大川なりのリアリストかつ道義的な見方があるという。アメリカの中国での門戸開放、領土保全など普遍主義を掲げつつ帝国主義政策を講じ、あからさまに日本の権益に対する邪魔をするという偽善的振る舞いに対し、大川は東西で「棲み分けの論理」を適用しアジアでは日本が欧米植民地からの「解放」を通して、アジアという「小世界」を確立する為に「外科手 -
Posted by ブクログ
「ユダの福音書」の解説が興味深かった。何十年後かにこの福音書が解読され、いままでの敵味方を区別して世界を闘いに導く一元主義ではなく、多元的寛容の下に世界が共存共栄していく考え方が、実は本来のキリストの教えなのだという説が提示されるという、そのときが本当に待ち遠しい。「ラスプーチン南朝を訪ねる」では後醍醐天皇の墓ががある吉野山、日本の精神的な象徴の場所であるという。奈良はそそここで霊的なものを感じる地域、腑に落ちる。
全体に宗教のこと、歴史のこと、ロシアのこと、今までの教科書的な羅列された理解ではなく、一つ一つが有機的関連性を持って動いているのだという、歴史のダイナミズム、そして本を読むことの醍 -
Posted by ブクログ
インテリジェンス(諜報)とは行間に隠されている情報をつかみ取って行く作業だそうである。書かれている文章の行間を読み取って行く為にはその国、土地の風土、歴史、宗教等幅広い知識が必要とされるのだろう。著者は同志社神学部であったのでキリスト教については専門なのであろうが、その他についてもその知識の深さにはいつも驚かされる。この本は著者が関係した歴代の首相やロシアの政治家についても多く書かれているが、私が個人的に興味を引かれたのはキリスト教に関する「不良少年「イエス・キリスト」」、「二十一世紀最大の発見「ユダの福音書」」等である。これまでも西洋の文化を知るにはその根底にあるキリスト教についての知識がな
-
Posted by ブクログ
個人的には、佐藤優という人はどうにも信用しきれないところがあるというか、やはり刑事事件の被告が起訴中に文筆活動をしているという構図には、幾ばくかの胡散臭さを感じざるを得ない。というよりも、敢えてそういう風に突き放した姿勢に徹しなければ、容易くシンパにされてしまいそうな自分に危うさを覚える。読んでいて何より感じるのは、彼のインテリジェンスのプロフェッショナルとしての資質である。右翼とも左翼とも真面目で建設的な議論が出来るのも、それに由来するのだろう。ただ、残念なことに、彼の議論の全容を理解するには、私の知識は浅薄過ぎた。もっと勉強しなきゃなんないなぁ。☆3つなのは、読者の知性が不足しているために