☆3(付箋12枚/P270→割合4.44)
・あるとき先生に、「もう少しきちんと仏教学の勉強をしたいので、サンスクリット語を勉強したい」と言ったら、工藤先生はこう言われました。「あなた、お金と時間がありますか」って。「えっ、先生、どういうことですか」と聞くと、「まずサンスクリット語はお金がかかります。辞書と教科書が必要で、辞書は英語、日本語、ドイツ語とフランス語のものも買ったほうがいいでしょう。全部そろえると30万円ぐらいかかりますね」と言われたんです。それから、「時間はどれぐらいかかりますか」と聞くと、「あなたは、ラテン語、ギリシャ語を勉強しましたか」「はい、大学で基本的な文法書は終えました」「どれぐらいの時間がかかりましたか」「二年ぐらいかかりました」「どれくらい勉強しましたか」「講義は週一回でしたけれども、一週間に四日間はラテン語の勉強を三時間ぐらいしました」「そのペースですと、サンスクリット語だったら三年から四年かかりますね。中途半端にやっても意味がありません」と言われました。
私は今でも工藤先生に感謝しています。外務省に入ってから思ったんですが、語学というのは、非常に時間とお金がかかるものなんで、中途半端にサンスクリット語をやっていたら、私は時間をずいぶん無駄にして、結局、物にならないで損をしてしまったと思うんです。
・「私はね、9・11のテロをきっかけに、仏教徒としての決意が強まったんです。あれはキリスト教とイスラム教の一神教同士の戦いで、あれを乗り越えるには、もう一回仏教の多神論的な価値を見直さなければならないと思います。一神教は砂漠の産物で、多神論は森の産物でしょう。砂漠のように何もないところだと、一なる神、天なる神の存在が論理的になりたつだろうけれど、森の中にはいろいろな動植物が共存しているから、神はたくさんいると感じられる」―梅原猛
これは居酒屋での一杯やりながらの議論だったらいいのかもしれませんが、現実の国際政治や我々が直面している危機を考える上では、極めて危険な発想です。…本来、一神教というのは寛容なんです。神様と自分との関係において自分だけが救われればいいと考えているわけですから。
・「アラブの春」というものが起きたときに、シリアは、チュニジアやリビアやエジプトのような状態にはならない。もっと大変なことが起きるんです。
エジプトでも混乱が起きたけれども、そこにはムスリム同胞団というイスラーム原始主義系の組織があります。シリアにもかつてはムスリム同胞団があったのですが、ムスリム同胞団にいる人間を2万人皆殺しにしたんです。2000万人余りのシリアの人口比で言えば、2万人はかなりの規模です。
要するに今、シリアには反体制的な団体は皆無なんです。ですから、シリアのアサド政権が崩壊すると、完全な権力の空白が生じて、そこからアナーキーな状態になるでしょう。そこに恐らくイランが影響力を伸ばしてくる。シリアの今の政権が核爆弾を持つことになったら、国内の反対派を弾圧するために核兵器を平気で使うでしょう。一回でも核爆弾が地域紛争で使われるようになると、今度は、それは世界のあちこちに波及するでしょう。
要するにイランの核開発をストップさせないと、広島、長崎以来、戦争で核兵器が使われかねないという状況が、近未来に起きる可能性があります。これには相当の蓋然性があります。ですから、世界は今、イランの問題でこれほど深刻に神経を尖らせているのです。
・イランには統一政府というものが存在しません。一番目の政府と言えるのは、ハメネイ最高指導者によって支配されている聖職者たちのグループです。実は、この聖職者たちは大変な利権を持っています。石油や、ピスタチオやキャビアといった商品の会社を経営しています。一番の金持ちは、元大統領のラフサンジャニさんの一族です。これに対抗しているのがアフマディネジャド前大統領でした。
2012年1月の半ばに大統領の報道官が逮捕されて、禁固一年になりました。どういう罪かというと、最高指導者を記者会見で侮辱したという罪です。一方、大統領の方は、腐敗、汚職追及ということで、聖職者たちを逮捕したり、裁判にかけたりしています。大変な権力闘争が行われているわけです。
・アラブの春を「フェイスブック革命」というのは間違っています。フェイスブックを読んでいる層は、いわゆる市民層で、識字率が高く、新聞をきちんと読める一握りの層なんです。フェイスブックだけでは大きな運動にはなりません。字を読むことができないような大衆が繰り出してくるには、アルジャジーラやアルアラビーアといった衛星放送が重要になってきます。しかし、エジプトやチュニジアやリビアのときと、バーレーンに対するアルジャジーラやアルアラビーアの対応は全く異なっています。その対応の違いが、それが実際に政権転覆に至るかどうかという結果の違いにつながってくると見ています。
・弾道ミサイルは一度大気圏を出ますから、遠くに飛ばすことができます。このとき、多少ずれても大きな影響を与えたいというのであれば、核弾頭をつけないと意味がありません。ですから、長距離弾道ミサイルをつくるということは、核攻撃を前提にしているということになります。
ソ連が崩壊する過程で、このミサイル技術のノウハウを持っている科学者たち、技術者たちがイランや北朝鮮に流出するのを防ぐために、モスクワに国際科学技術センターをつくって、みんなにお金を配りました。それから、民営化用の研究プロジェクトもたくさんつくりました。そうやって、ロシアから核技術が流出しないようにしたんです。これには、ロシアとカザフスタンとタジキスタンとキルギスが参加したので、こういった国からは深刻な流出がありませんでした。しかし、ウクライナはこれに参加しなかったんです。だからウクライナから流出が起きたんです。
・「反ユダヤ主義は、個々の人間や社会制度や国家体制がもつ欠陥を映す鏡である。ユダヤ人の何を非難しているのかを聞けば、その人自身がどのような点で責められるべきかを言うことができる。」―グロスマン
・ソ連の体制では加害者と被害者が錯綜します。もと秘密警察の職員が逮捕される。そして、新しく入ってきた政治犯にこう言うんです。「令状の出される者は有罪であり、令状は誰に対しても出せる。どの人間にも令状をもらう権利がある。生涯にわたって他人に令状を出してきた人間だってそうだ。御用が済めばお払い箱なのさ」と。
…こういう構造を見抜くときに必要なのは、ぶれることのない何らかの「場」です。これは、キリスト教、ユダヤ教、イスラーム教、仏教、それぞれ違います。
・キリスト教における最大の難問は、神様は正しいのなら、なぜこの世の中に悪があるのかという問題です。これを神義論と言います。あるいは、神様が正しいということを弁解するので弁神論とも言います。これには二つの系統の考え方がありあmす。
一つ目は、悪というのはそれ自体で自立していない。悪は善の欠如だという考え方です。
…これとは全く別の考え方があります。この考え方によれば、悪は自立して存在する。しかし、神にその責任はない。
・私は原発問題に関しては、おそらく日本の有職者の中では圧倒的少数派です。要するに、脱原発というのは近い将来にはできないと考えています。それは、戦争を完全に回避することができないのと同じことだと。そこで考えるのは、為政者、あるいは原発を運営している人たちに白紙委任状を与えないようにするためにはどうするべきかということになります。
…こういう発想でないと、逆に現実に全く影響を与えることができなくなってしまいます。
・国家を考えるときに、実は、基本になるのは中間団体の問題です。それは民主主義の問題でもあります。
・重要なのは、定住に至るときに、必ず宗教が生まれるということです。たとえば今のニューギニアの狩猟採集をする人たちが定住しない理由は二つあります。まずお手洗いです。
…もう一つは、死者の問題です。死ぬと人間は腐って骨になっていきます。さっきまで生きていた人間が動かなくなる。死は恐ろしいものです。自分たちの住むすぐそばに死体があっては怖くて仕方がありません。ですから死体のないところへ逃げていく。定住革命以前の移動する人たちは、死の問題と直接向き合わずに済みます。裏返すと、定住すると、死の問題と向き合わなければならなくなります。そこから宗教が生まれたり、宗教に対する考え方が精緻になっていくわけです。