アンデシュルースルンドのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
スウェーデンの作家アンデシュ・ルースルンドとベリエ・ヘルストレムの共著の長篇ミステリ作品『ボックス21(原題:Box 21)』を読みました。
アンデシュ・ルースルンドとベリエ・ヘルストレムの共著は6年前に読んだ『三秒間の死角』以来なので久し振りですね。
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暴行事件の「被害者」が取った不可解な行動。病院に立てこもった彼女の目的とは――?
〈このミステリーがすごい! 第一位〉の『熊と踊れ』著者が、大反響の『制裁』に続けて放つ、北欧警察小説の真骨頂!
リトアニア人娼婦のリディアは斡旋業者から激しい暴行を受け、病院へと搬送された。
意識を取り戻した彼女 -
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Posted by ブクログ
複数の少女を暴行・殺害した犯人が投獄された後に脱獄し、逃走中にさらに少女を殺害。
ところが、その少女の父親が犯人を射殺してしまう。
父親は殺人罪で逮捕されて裁判にかけられるが、その結末は…というクライムノベル。
ストックホルム市警のグレーンス警部が主人公というシリーズの第1作目ということだが、「名推理で犯人を追い詰める」というミステリ小説的な人物ではなく、悪態をついてばかりの頑固者で感情移入はしがたい。
むしろ本書の主人公は犯人を射殺した父親と服役囚たち。
父親は有罪か無罪か、有罪なら量刑はどれくらいか…ということを考えさせられる内容であり、やるせない結末も含めて非常に印象深い読書体験だった。 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ「制裁」以上に、夢中になって読んだ。
満員電車に乗るのが全く苦にならないほど。
なんだったら、この本が読めるから電車に乗るのが待ち遠しかったほど。
恋人(だったのか?本当に)に裏切られ、船内で殴られた瞬間に希望が粉々に打ち砕かれ、自分の身体が自分のものではないと思いながら、絶望の日々を過ごすリディアを思うと、胸が締め付けられる。
リディアの命とプライドを賭けた立て篭もり、真実が白日の元に晒されて欲しかった。
彼女の心が壊れることと引き換えに保持していた「ボックス21」、このタイトルにも胸打たれる。
しかもこの売春斡旋はフィクションではない。
こんなに辛すぎる思いをする女性は、この世にただの -
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ネタバレグレーンス警部シリーズ第三弾。
今作も重く苦しく辛い。
暴行で逮捕した男の身元を探ると、アメリカで6年前に死んだ死刑囚と同一人物の可能性が出てきた。大国との政治的な駆け引きの中、死んだと思われていた死刑囚と向き合うグレーンス警部。。。
一作目、二作目と同じく、救いもなく、希望もなく。だけどこんなにも辛い話なのに読むのが止められない。今作ではグレーンス警部のプライベートな側面もちょっと見えてきて、いつもの取っ付きづらさは薄いか。政治的な要素もありつつ、この死刑囚が真実を語っているのかどうかを怪しませる構成となっている。
刑事がスパッと事件を解決するわけではないのでカタルシスはないかもしれな -
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スウェーデンの小説の翻訳である。ストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズだ。加えて、潜入捜査員のピート・ホフマンも登場する。「ダブル主人公」というような体裁でもあるのだが、そういう体裁としては4作品目ということになる。
「警察の最高機密が漏洩?」という事態に思い至ったグレーンス警部と、潜入捜査員として活動した経過が在る凄腕のピート・ホフマンは問題の解決に向けて共闘する。やや遠い過去の事件がグレーンス警部の眼前に現れ、謎の脅迫者と向き合うホフマンの活動により、過去の事件の「裏」が引き寄せられる。そして「そう来たか?」という意外な結末が待っている。
こういう経緯で進む上下 -
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実際にスウェーデンを含む欧州諸国で問題になっている事柄に題材を求めながら、(スウェーデンの首都である)ストックホルムで執念の捜査を展開する大ベテランの警部と、息詰まる現場の闘いを勝ち抜く腕利きの工作員的な潜入捜査員との「ダブル主人公」というような体裁は、なかなかに読み応えが在る。本作は、その「ダブル主人公」の双方が、互いに助け合うべく各々の活動を展開して行くというようなことになって行く。
上巻の冒頭は「過去」という短い纏まりから起こる。
5歳の誕生日を祝ってもらったばかりであるという女児が「ハッピーバースデー」の歌を歌ってはしゃぎ、アパートの室内で飛び跳ねている。アパートの中には兄、姉、父母が -
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スウェーデンの小説の翻訳だが、夢中になった。
上巻は、大量の死者が発生していた件を巡り、グレーンス警部が事件関係者を何としても逮捕すると熱いモノを滾らせ、手段を択ばないと、あのピート・ホフマンに協力を依頼するというようなことになる。
下巻は、ホフマンの活躍でもたらされた情報、スヴェンとヘルマンソンの調査と分析とで“敵”の様子が見え、緊迫した「戦い」が展開する。そしてグレーンス警部は意外な黒幕に辿り着き、対峙して行くことになる。
執念深く、強い押し出しで関係者に切込むグレーンス警部は、本作では事案に携わる人達と心を開き合うというような場面が在る。そして仕事一筋の老刑事が、「許せん!」と熱いモノを -
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本作は、ストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズで、凄腕の潜入捜査員のピート・ホフマンが登場するようになって「ダブル主人公」というような感じになってから3作目ということになる。
エーヴェルト・グレーンス警部は現役最年長の捜査員という感じで活動している。短気で怒りっぽく頑固で、押しが強く、執念深く事件を追う、やや付き合い悪い感じの男だ。他方で、妻が事故で動けず、話すことも出来ない状態になって長く施設に収容されていて、その妻を喪ったという経過の在る孤独を抱えているような男でもある。或いは、私生活での孤独の他方に、職務に精励することだけを生き甲斐にしていたような面も在る。こ -
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スウェーデンの作品の翻訳である。本作はストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズの一冊ということになる。シリーズの途中から、凄腕の潜入捜査員であるピート・ホフマンが登場している。作品はグレーンス警部が主要視点人物になる部分、ホフマンが主要視点人物になる部分、その他の作中人物達が主要視点人物になる部分が織り交じって展開する。本作もその形が踏襲されており、ホフマンの部分とグレーンス警部の部分とが織り交じるようになって行く。
本作の上巻ではこのグレーンス警部の出番は少し少ない。
物語はコロンビアの様子から起こる。ストリートに生きる少年の様子が描かれる序章の後に本編が始まる。エ -
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グレーンス警部という人物は、ストックホルム警察の現役捜査員では最年長というような年代で、一緒に居て愉しいというタイプでもない偏屈な男であり、事故で植物状態になった妻が長く施設に在って、その妻が亡くなってという複雑な個人の事情も在るのだが、執念深く捜査に取組む非常に老練で辣腕の刑事である。少し不思議な人物という感じがしないでもない。現場に出る、私用で出るという以外は、自宅アパートか警察本部の自室に居ると言われているような変わり者なのだが、勘と“押し”で事件関係者に迫って、事件を解決に導く手腕はなかなかに見応えが在り、シリーズで描かれる「社会の闇」にも関わる、見た目以上に重大な真相に肉薄するのであ