アンデシュルースルンドのレビュー一覧

  • 三分間の空隙【くうげき】 下

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    グレーンス警部という人物は、ストックホルム警察の現役捜査員では最年長というような年代で、一緒に居て愉しいというタイプでもない偏屈な男であり、事故で植物状態になった妻が長く施設に在って、その妻が亡くなってという複雑な個人の事情も在るのだが、執念深く捜査に取組む非常に老練で辣腕の刑事である。少し不思議な人物という感じがしないでもない。現場に出る、私用で出るという以外は、自宅アパートか警察本部の自室に居ると言われているような変わり者なのだが、勘と“押し”で事件関係者に迫って、事件を解決に導く手腕はなかなかに見応えが在り、シリーズで描かれる「社会の闇」にも関わる、見た目以上に重大な真相に肉薄するのである。
    下巻は目が離せない展開が続く。
    グレーンス警部はコロンビア現地や米国を密かに訪ね、独特な“押し”で関係者と色々と話し合いながら、ウィルソン警視正が何とかしようとしているホフマンの事案に取組む。
    グレーンス警部はホフマンを間接的に知っていた。スウェーデンでの荒稼ぎを目論むポーランドのマフィアへの対策に係る潜入捜査作戦でホフマンが活動していて、刑務所内で事件が発生してしまった時、グレーンス警部は警官隊の指揮を命じられて現場に入ったのだった。ホフマンを射殺せよという話しになったのだが、射殺は果たせなかった。やがて、ホフマンが脱出したらしいということはグレーンス警部も把握はしていた。
    そういう縁が在るホフマンを、グレーンス警部は何とか支援しようとする。ホフマンの側は、「処刑リスト」から逃れるべく、独自にクラウズ下院議長の一件に尽力しながら、何とかグレーンス警部と共に脱出を図ろうとした。グレーンス警部は、スウェーデンでホフマンが積み残している問題の軟着陸を思案する。
    こういうようなことでダイナミックに展開する物語で夢中になってしまった。これまでのシリーズ作品とは、少し色合いが異なるかもしれない。が、凄く面白い!!

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    2023年09月04日
  • 三日間の隔絶 下

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    ネタバレ

    う~ん。読ませるなあという読後感。
    ジリジリと迫るリミット。意表を突く展開。
    時系列のズレがやられた。冷静に考えればそうなんだけど読んでる時には気が付かない。
    大変な状況なんだけどホフマンとグレーンズ警部の協力体制が嬉しい。
    ホフマンの子供たちとグレーンズ警部の交流が微笑ましい。もうホフマンを平穏に過ごさせてあげたいところだが、シリーズの次回作があることがわかっているので気の毒にも思う。

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    2023年08月03日
  • 三年間の陥穽 上

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     グレーンス警部シリーズはついに終章を迎えつつあるのだろうか? そんな心配が胸を駆け巡る。それほど、しっかりと主人公の現在の日々、そして彼が過去に残した禍根から響いてくる痛みが、のっけから描かれてゆくからだ。亡き妻と、彼女が胎内に抱きかかえていた生まれなかった娘。グレーンス警部が毎夜、警察署の個室のコーデュロイのソファの上に身を横たえながら心に彷徨わせる孤独。帰って来ない家族への想い。

     本書では、傷つけられる子供たちというテーマが描かれる。聞いたこともないほど残酷な性被害を受ける、少年少女たちの存在が浮き彫りにされる。子供たちを犠牲にして自らの歓びや商売に結びつける鬼畜の如き親たち。彼らを結びつける悪魔のネットワークの存在。グレーンスが亡き妻の墓参りの後で出会ったのは、行方不明のままの娘のための空っぽの墓に花を捧げる女性だった。

     そしてその出会いにシンクロするかのように、行方不明の娘を三年間待ったという夫婦が、娘の捜索を諦め、その死を認め葬儀を行うことになったという報道を、グレーンス警部は耳にした。何故? 何故? 何故? グレーンスの頭の中で鳴り響く疑問が、その行方不明の娘の葬儀に、執拗に待ったをかける。行方不明の娘の双子の少年もまた、グレーンスに、彼女は生きていると思うと告げる。双子特有の直感のようなもの?

     この物語の導入部は、警察が認めてしまう捜査終了に抗い、個の力で子供たちを性の奴隷として商品化する悪のネットワークを暴こうと決意するグレーンスのある意味、心の物語だ。相変わらずテーマは重く、そして世界レベルでもある。

     もう金輪際潜入捜査はやらないはずのピート・ホフマンは、またもグレーンスの訪問を受ける。否、ピート個人ではなく、ホフマン一家がである。敢えて家族をも巻き込んでのグレーンスの説得に、ピートは暴力の形で激しい怒りをぶつけるが、何と妻がピートを説き伏せる。許し難い犯罪ネットワークをぶっ潰すよう要請するグレーンスのためではなく、失踪した娘とその母たちのために。

     前半は、この状況の構築だけで、ぐいぐい読まされる。後半は、お馴染みのダブル主人公のうち、ピートの潜入シーンが例によって核心部となるが、彼自体の命も脅かされるほどの敵方の慎重さと疑い深さに、我らが主人公は、シリーズ最大の危機を迎える。

     いつも思うのは、この作者の現代的なテーマの確かさと重さ、そして構図のしたたかさである。本書も、スピード感のある描写と共に、心の揺らぎや、状況の不安定感が全編を包むことで、全編、絶え間ない緊張が走り続けるものである。読者側の感情に訴えかけてくる人間性という救いが作品の中に見え隠れしなければ、あまりに過酷な物語として生理的にも受け付けられないテーマですらある。

     それでもグレーンス警部に関わる深い人間描写と、ピート・ホフマンという人間の運命性とを梃子のように使い分け、作品全体に強烈な力学を加えてゆくその小説作法は、いつもどの作品でも極めて素晴らしい上に、現代的な情報小説の側面も持ち、なおかつ時代と世界への警鐘を忘れない骨太の作品ともなっている。それがこのシリーズのいつもながらの特徴なのである。

     構成はこの上なく素晴らしく、プロローグで偶然に出会う忘れ難き名無しの女性との出会いのシーンが、ラストシーンに置いてグレーンス警部の心の中の状況として奇妙な響きを持つようなエンディングとなってゆく。一種不思議な感覚で終わるこのラストシーンもまた、この手練の作家の持つ魅力なのだ、と言って良い気がする。

     一気読み必須の語り口と、作者の健在ぶりを間近に見てしまうと、この先のグレーンス警部やピート・ホフマンとの再会がますます楽しみになる。そんな興奮冷めやらぬ読後を、ぼくはいま、多少の微熱とともに持て余しているのだと思う。

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    2023年07月16日
  • 三年間の陥穽 下

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     グレーンス警部シリーズはついに終章を迎えつつあるのだろうか? そんな心配が胸を駆け巡る。それほど、しっかりと主人公の現在の日々、そして彼が過去に残した禍根から響いてくる痛みが、のっけから描かれてゆくからだ。亡き妻と、彼女が胎内に抱きかかえていた生まれなかった娘。グレーンス警部が毎夜、警察署の個室のコーデュロイのソファの上に身を横たえながら心に彷徨わせる孤独。帰って来ない家族への想い。

     本書では、傷つけられる子供たちというテーマが描かれる。聞いたこともないほど残酷な性被害を受ける、少年少女たちの存在が浮き彫りにされる。子供たちを犠牲にして自らの歓びや商売に結びつける鬼畜の如き親たち。彼らを結びつける悪魔のネットワークの存在。グレーンスが亡き妻の墓参りの後で出会ったのは、行方不明のままの娘のための空っぽの墓に花を捧げる女性だった。

     そしてその出会いにシンクロするかのように、行方不明の娘を三年間待ったという夫婦が、娘の捜索を諦め、その死を認め葬儀を行うことになったという報道を、グレーンス警部は耳にした。何故? 何故? 何故? グレーンスの頭の中で鳴り響く疑問が、その行方不明の娘の葬儀に、執拗に待ったをかける。行方不明の娘の双子の少年もまた、グレーンスに、彼女は生きていると思うと告げる。双子特有の直感のようなもの?

     この物語の導入部は、警察が認めてしまう捜査終了に抗い、個の力で子供たちを性の奴隷として商品化する悪のネットワークを暴こうと決意するグレーンスのある意味、心の物語だ。相変わらずテーマは重く、そして世界レベルでもある。

     もう金輪際潜入捜査はやらないはずのピート・ホフマンは、またもグレーンスの訪問を受ける。否、ピート個人ではなく、ホフマン一家がである。敢えて家族をも巻き込んでのグレーンスの説得に、ピートは暴力の形で激しい怒りをぶつけるが、何と妻がピートを説き伏せる。許し難い犯罪ネットワークをぶっ潰すよう要請するグレーンスのためではなく、失踪した娘とその母たちのために。

     前半は、この状況の構築だけで、ぐいぐい読まされる。後半は、お馴染みのダブル主人公のうち、ピートの潜入シーンが例によって核心部となるが、彼自体の命も脅かされるほどの敵方の慎重さと疑い深さに、我らが主人公は、シリーズ最大の危機を迎える。

     いつも思うのは、この作者の現代的なテーマの確かさと重さ、そして構図のしたたかさである。本書も、スピード感のある描写と共に、心の揺らぎや、状況の不安定感が全編を包むことで、全編、絶え間ない緊張が走り続けるものである。読者側の感情に訴えかけてくる人間性という救いが作品の中に見え隠れしなければ、あまりに過酷な物語として生理的にも受け付けられないテーマですらある。

     それでもグレーンス警部に関わる深い人間描写と、ピート・ホフマンという人間の運命性とを梃子のように使い分け、作品全体に強烈な力学を加えてゆくその小説作法は、いつもどの作品でも極めて素晴らしい上に、現代的な情報小説の側面も持ち、なおかつ時代と世界への警鐘を忘れない骨太の作品ともなっている。それがこのシリーズのいつもながらの特徴なのである。

     構成はこの上なく素晴らしく、プロローグで偶然に出会う忘れ難き名無しの女性との出会いのシーンが、ラストシーンに置いてグレーンス警部の心の中の状況として奇妙な響きを持つようなエンディングとなってゆく。一種不思議な感覚で終わるこのラストシーンもまた、この手練の作家の持つ魅力なのだ、と言って良い気がする。

     一気読み必須の語り口と、作者の健在ぶりを間近に見てしまうと、この先のグレーンス警部やピート・ホフマンとの再会がますます楽しみになる。そんな興奮冷めやらぬ読後を、ぼくはいま、多少の微熱とともに持て余しているのだと思う。

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    2023年07月16日
  • 三年間の陥穽 上

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    「何やら面白そう…」という小説に出くわし、以前に愉しんでいたシリーズの最近作であることが判れば「是非!」と手にしてみたくなる。
    スウェーデンの小説の翻訳だ。ストックホルム警察のグレーンス警部が活躍するシリーズである。
    本作は、個人的な色々な事情を抱えながらも、過ぎる程に熱心に仕事に入り込んでいる頑固な老警部―本作では60歳代に入っていて、ストックホルム警察本部の最年長グループのようになっている…―のエーヴェルト・グレーンスが事件に向き合うのだが、グレーンスが頼みにしている、現場潜入要員のピート・ホフマンの活躍も痛快だ。物語は大まかに、グレーンスの視点で綴られる部分とホフマンの視点で綴られる部分から成っている。
    物語の冒頭、グレーンス警部は墓地に在る。他界した妻の墓参りで、色々と想い巡らせている。
    シリーズを通してこの妻の件が出て来る。事故で頭を負傷して、意識が無い状態で長く生きていたが、終に心停止で死亡ということになって埋葬されたという経過だった。
    墓地の何時も腰を下ろしているベンチで、グレーンス警部は不思議な女性に出くわした。女性は幼い娘を失ったと言う。娘は駐車場で車から連れ去られ、行方不明となり、3年経った頃に“死亡認定”したのだということだった。墓地には「空の棺桶」を埋葬したのだと語った。
    グレーンス警部はこの出来事が引っ掛かり、出くわした女性の娘が行方不明になったという日に、別な4歳の幼い少女がショッピングモールで姿を消して行方不明になったという件が在ることを知った。少女が何処かで存命なら7歳になっている筈だ。
    やがてグレーンス警部は3年前の事件を担当している警部補に事情を訪ね、娘が行方不明になったという一家を訪ね、間もなく“死亡認定”をするということ、未だ妹が居ると信じ続ける双子の兄のためにもそうして区切りとしたいとする両親の話しを聴く。それでも探すべきではないかと、グレーンス警部は両親と揉める。
    こうした一連の様子の中、グレーンス警部の様子が少しおかしいと感じた警部補は上司の部長に進言し、結果として部長はグレーンス警部に長期休暇取得を厳命した。
    暫く休暇の日々を過ごすグレース警部だが、オフィスに忍び込んで、帰らずに眠ってしまうことも多いオフィスのソファ―シリーズでは、深夜や早朝にこのオフィスに据えたソファに在るグレーンス警部という場面が多く在る…―で考え事をしていれば、他部署の知り合いの捜査員から情報が寄せられた。行方不明から“死亡認定”となった幼女の件でグレーンス警部が揉めた経過を知っていた捜査員が寄せたのは、ネット上に出ていた、幼女が身に着けていたという「青い蝶の着いた髪留め」が写った写真だった。これは母親の手作りということで、本人の所持品である可能性が非常に高いと見受けられた。行方不明の少女の足跡とも言える。
    こうしてグレース警部は、幼い子どもを弄ぶ、虐待をするというような小児性愛という傾向の者達が在って、色々な国々に在る「同好」の者達のグループが色々と在るということを知る。
    やがて「青い蝶の着いた髪留め」が写った写真の出処を辿り、グレーンス警部は隣国デンマークのコペンハーゲン近郊に在る警察署に至る。小児性愛グループの問題に懸命に取組む、IT関係担当の女性捜査員が仕事をしている場所を訪ねたのである。
    上巻ではグレーンス警部が事案に出くわし、大変な事件で、許されざる罪を犯している者を逮捕してグループを壊滅させなければならないと挑戦を始める。他方で、永年の疲労や、個人的な悩みを余りにも長く抱えて精神状態が好くないかもしれないと、心配する職場関係者に仕事の現場から遠ざけられてしまっている。それでも動かずには居られない訳だ。

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    2023年07月13日
  • ボックス21

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    ネタバレ

    グレーンス刑事シリーズ第二弾。
    相変わらず重く、苦しく、辛い、だけどずっと読んでいたい。そんなザ・北欧小説という感じ。

    売春斡旋業者から大怪我を負いながらも逃げ出した女が、病院の死体安置所に人質を取って立て篭もる。要求はグレーンス刑事の親友と話をすること。なぜ人身売買により他国から売られた女が、立てこもり事件を起こすのか。一方、グレーンス刑事の恋人が脳に障害を持つきっかけとなった事故。その事故を誘引した犯罪者が刑期を終え出所することに。。。

    今作も2部構成。売春婦リディアが起こした立て篭もり事件の顛末と、そのことで明らかとなったある真相をめぐる二人の刑事の苦悩が描かれる。

    真相については途中でなんとなく察することができる。ラストについても同様。ただ、物語の構成が素晴らしく、読んでいても全く飽きがこない。
    救いはなく。希望も叩き折られる。だけど、素晴らしい小説。

    ボックス21とは何か。題名もとても秀逸。

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    2023年06月08日
  • 三年間の陥穽 下

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    こういうテーマの方が本領発揮してると思う。めちゃ読みやすくなってきてるし。

    (分冊する必要性を全く感じない、改行と余白が鬼畜すぎる)

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    2023年05月31日
  • 三年間の陥穽 下

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    久々に超弩級の胸糞で、度々瞬間的に手を止めたくなりますが、それでもやはり読ませる筆致には流石という言葉しか出てきません。
    グレーンスとホフマンのブロマンスものとして読まないと心が持たない面も。そのくらい過去に例がないくらいの胸糞です。心して読んで下さい。

    でも電話の声を聞いただけで状態を察する感じ等、ブロマンスものとしても拍車がかかってきましたよ!
    本作は今までのレギュラーメンバーの登場が少ない分より一層な感じがしますね。
    いやはやこりゃあどちらかが死ぬまでシリーズ続いちゃうでしょうね。
    タイトルの三シリーズは邦訳で続いてるだけですが、ここは訳者の腕の見せ所ですね。そこも楽しみ!!

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    2023年05月30日
  • 三日間の隔絶 下

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    2023.05.23
    文句なしの傑作。
    海外ミステリに二の足を踏んでいる人にもオススメ。
    理由は読みやすいし、どんどん読み進めたくなる切迫感にあふれているから。

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    2023年05月23日
  • 三日間の隔絶 下

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    めちゃめちゃ面白かった。
    これを待ってたよ。三分間、三時間とパッとしなかったんだけど待ってた甲斐があったな。
    まったく読めない展開。あらゆるところに仕掛けられた謎。繰り返されるどんでん返し。いったい真犯人は誰なんだ。先生、もうページを繰る手を止められませんっ!!

    解説の人も前2作は無かったものの如く書いてたから気持ちは同じだったんだな。
    しかし次は一気に三年!!?
    どうなることやら。。。

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    2023年04月25日
  • 制裁

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    スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の共著の長篇ミステリ作品『制裁(原題:Odjuret)』を読みました。

    「ステファン・トゥンベリ」との共著『熊と踊れ』に続き「アンデシュ・ルースルンド」作品です… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    北欧ミステリ最高の警察小説〈グレーンス警部〉シリーズ第一作

    凶悪な殺人犯が護送中に脱走した。
    市警のベテラン「グレーンス警部」は懸命にその行方を追う。
    一方テレビの報道を見た作家「フレドリック」は凄まじい衝撃を受けていた。
    見覚えがある。
    この犯人は今日、愛娘の通う保育園にいた。彼は祈るように我が子のもとへと急ぐが……。
    悲劇は繰り返されてしまうのか?
    北欧ミステリ最高の「ガラスの鍵」賞を受賞した人気シリーズ第1作。
    著者本人による改稿を反映した決定版。
    -----------------------

    本作品はストックホルム市警の「エーヴェルト・グレーンス警部」と「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」が活躍するシリーズの第1作… 2004年(平成16年)に発表された作品で「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」のミステリ作家デビュー作です、、、

    フィクション作品なんですが、ノンフィクション作品だと言われても納得感のあるくらいの現実感と緊迫感を兼ね備えた作品で、しかも、単なるミステリ作品に留まらず、司法制度や刑務所の問題点を鋭くえぐり出す社会派小説に仕上がっており、特に中盤以降は胸を締めつけられるような感覚を覚えながら、ページを捲る指を止めれない… そんな印象深い作品でした。


    4年前に二人の女児を凄惨な手口で暴行・惨殺した罪で服役していた囚人「ベルント・ルンド」が護送中に逃走… 再び幼い少女が犠牲となる可能性があり、ストックホルム市警は総力を挙げて行方を追う、、、

    ベテランの「エーヴェルト・グレーンス警部」も相棒の「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」とともに捜査に加わる… そんな中、五歳の娘「マリー」を保育園に送り届けた作家の「フレドリック・ステファンソン」は、保育園の門の前のベンチにどこかで見覚えがある男がじっと座っているのを目撃していた。

    その後、テレビで「ルンド」が逃走した報道を見た「フレドリック」は凄まじい衝撃を受ける… 愛娘の通う保育園の前にいたのは「ルンド」だったのだ、、、

    「フレドリック」は我が子のもとへ急ぐが、悲劇は繰り返されてしまう… 失意のどん底に放り込まれた「フレドリック」だったが、「ルンド」が更なる犯行に及ぶ可能性が高いことを知り、新たな犠牲者が出ることを防ぐため義父の遺品である狩猟用ライフルを手にして、「ルンド」が出没すると思われる保育園へ向かう。

    そして、「フレドリック」はターゲットの幼児を狙う「ルンド」を発見… 保育園を警備していた警察官には一言も声をかけないまま、「フレドリック」はライフルの引鉄を引く、、、

    「フレドリック」の行動は、マスコミによって大々的に喧伝され一部の人々からは英雄視され、世間から注目される、

    娘を失った悲しみをともにする人々、

    理由は何であれ、人殺しは人殺しでしかない、と考える人々、

    社会が始末できなかった人間を始末して、社会を守った、その勇気をたたえる人々、

    復讐を目的とした殺人であったことは明らかだ、だから見せしめのためにも長期刑にすべきだと考える人々、

    あらゆる人々の目が「フレドリック」に向けられる。

    さらに、地方裁判所で正当防衛による無罪判決が下されたことに刺激を受けた大衆は、画一的且つ曖昧な正義への使命感に昂揚・熱狂する。

    性犯罪者への強い憎しみが渦巻く地域で、それぞれが駆り立てられるようにして起こした行動が、思わぬ結果を招く… 国家体制・機能への不信と憤りをもった人々は、警察を無視した性犯罪者狩りを始め、私刑はエスカレート、制御不能となる、、、

    或る瞬間を堺に、異常へと変わる日常… 極めて粗暴な制裁が下層社会までまかり通り、悪夢のような憎しみの連鎖が展開される。

    そんな中、地方裁判所で一旦、無罪の判決を受けた「フレドリック」だったが、検察側の控訴により控訴裁判所で再審が行われ懲役十年の判決を受ける… そして、「フレドリック」は、入所したアスプソース刑務所で幼児性愛者と誤解され、そこにも悲劇が、、、

    犯人逮捕後の、殺人者をどう裁くかという罪と罰の命題に焦点があてられた作品でしたね… 犯人逮捕で一件落着ではなく、社会的な影響も含めて、罪に値する罰に何が相応しいかということを考えさせられた作品でした。

    原題の『Odjuret』って、直訳すると『怪物』 『野獣』という意味なんだそうです‥ 一見、怪物は凶悪犯で更生の見込みのない殺人者「ベルント・ルンド」であることは明らかなのですが、、、

    物語が進むにつれて、怪物は他の人々にもとりついているように見えるんですよね… 他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら、そうすべきなのか? 人の生命の価値を、同じ人間が決めてしまうことは、果たして許されるのか? それが許されるとき、怪物が生まれるのではないか? 考えても、考えても、答えの出ない難しい命題だと感じました。


    読んでいて苦しくなる… 胸を締めつけられるような感覚が離れない作品でしたが、、、

    それでも、「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の作品を次も読みたいと思います。




    以下、主な登場人物です。

    「フレドリック・ステファンソン」
     作家

    「マリー」
     フレドリックの娘

    「アグネス」
     フレドリックの元妻。マリーの母親

    「ミカエラ・スヴァルツ」
     フレドリックの恋人。保育園職員

    「ダヴィッド・ルンドグレーン」
     マリーの友人

    「レベッカ」
     フレドリックの知人。牧師

    「ベルント・ルンド」
     アスプソース刑務所に服役中の連続殺人犯

    「レナート・オスカーション」
     アスプソース刑務所の性犯罪者専用区画長

    「スティーグ・リンドグレーン(リルマーセン)」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ヒルディング・オルデウス」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ヨッフム・ラング」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ドラガン」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「スコーネ」
     アスプソース刑務所の一般区画の囚人

    「ホーカン・アクセルソン」
     性犯罪者

    「ラーシュ・オーゲスタム」
     検察官

    「クリスティーナ・ビヨルンソン」
     弁護士

    「シャーロット・ヴァン・バルヴァス」
     判事

    「ルードヴィッグ・エルフォシュ」
     法医学者

    「ベングト・セーデルルンド」
     タルバッカ村の建設業者

    「ヨーラン」
     ベングトの隣人

    「エーヴェルト・グレーンス」
     ストックホルム市警警部

    「スヴェン・スンドクヴィスト」
     ストックホルム市警警部補
     

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    2023年03月11日
  • 熊と踊れ 下

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    スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ステファン・トゥンベリ」の共著の長篇ミステリ作品『熊と踊れ(原題:Bjorndansen、英題:The Father)』を読みました。
    「アーナルデュル・インドリダソン」、「ジョー・ネスボ」、「レイフ・GW・ペーション」の作品に続き、北欧ミステリです。

    -----story-------------
    ハヤカワ・ミステリ文庫創刊40周年記念作品

    〈上〉
    凶暴な父によって崩壊した家庭で育った「レオ」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三人の兄弟。
    独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。
    その目的とは、史上例のない銀行強盗計画を決行することだった――。
    連続する容赦無い襲撃。
    市警の「ブロンクス警部」は、事件解決に執念を燃やすが……。
    はたして勝つのは兄弟か、警察か。
    スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。
    最高熱度の北欧ミステリ。

    〈下〉
    緻密かつ大胆な犯行で警察を翻弄し、次々と銀行を襲撃していく「レオ」たち。
    その暴力の扱い方は少年時代に父から学んだものだった。
    かつて彼らに何がおこったのか。
    そして今、父は何を思うのか――。
    過去と現在から語られる"家族"の物語は、轟く銃声と悲しみの叫びを伴って一気に結末へと突き進む。
    スウェーデン最高の人気を誇り、北欧ミステリの頂点「ガラスの鍵」賞を受賞した鬼才が、圧倒的なリアリティで描く渾身の大作
    -----------------------

    1990年代の初頭にスウェーデンを恐怖に陥れた正体不明の強盗団… まるで軍事作戦のような統率の取れた的確な動き、軍用銃を駆使し、ためらわずに発砲する手口は"軍人ギャング"と称された、、、

    彼らは1991年(平成11年)秋から、1993年(平成15年)末までに、軍の武器庫からの略奪を2件、現金輸送車の襲撃を1件(未遂3件)、銀行や郵便局の強盗を9件、さらにはストックホルム中央駅で爆弾事件まで起こした… 警察は、この強盗団の正体を全くつかめなかったが、犯行の計画性、周到性、狂暴性等から、初犯ではないと思われていた。

    ところが一段が逮捕されてみると、その中心となっていたのは20歳前後の三兄弟とその友人たちで、前科もなければ裏社会とのつながりもない若者たちであるとわかった… 前段が長くなりましたが、本作品は、当時スウェーデン公営テレビ記者として現場でこの事件を報道していた「アンデシュ・ルースルンド」と、犯行の中心人物だった三兄弟と実の兄弟である「ステファン・トゥンベリ」が、その一連の事件をモデルに描いたフィクション作品です、、、

    とはいえ、事件に関わっていた当事者たちが描き、事件のあった場所や手口等の大部分が事実に基づいていることから、ノンフィクション作品のようなリアリティや臨場感があり、読んでいるうちに、ぐいぐいと作品の中に惹きつけられていきました… 上下巻で1,100ページ程度の大作でしたが、長くは感じませんでしたね。


    暴力的な父親「イヴァン・ドゥヴニヤック」の影響下で育った「レオ(レオナルド)」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三兄弟… 長兄「レオ」が中心になり、「レオ」の恋人「アンネリー・エリクソン」や幼馴染の青年「ヤスベル」を巻きこんで、壮大な強盗計画を企てる、、、

    ストックホルム防衛管区の動員用武器庫に侵入し、二個中隊分の装備がまかなえるほどの銃や爆薬を盗み出し、これを使って彼らは現金輸送車や銀行を襲い始める… 彼らは20代から10代後半とまだ若いが、リーダーである長兄「レオ」が立てる緻密な計画と冷静な指揮により、強奪は順調に進む。

    事件を捜査し彼らを追う警部「ヨン・ブロンクス」も優秀だが、手を替え品を替える手口で翻弄し、尻尾を掴ませない… だが、首謀者たる「レオ」の欲望と目的は、なかなか満たされない、、、

    予定では、もっと早くに巨額の金を強奪して、人生をやり直すつもりだったのだが、毎回見込みよりも少ない額しか手に入らないのだ… そういうこともあって、犯行グループの中には次第に軋みが生じ、二人の弟が離反する。

    しかし最後の襲撃に執念を募らせる「レオ」は、とうとうある人物をグループに引き入れ、危険な賭けに出る… カリスマ的リーダーの「レオ」、一度決めたら譲らない「フェリックス」、まだ無邪気さが残る「ヴィンセント」、軍隊から抜けた後、尊敬する「レオ」に従い仲間になる「ヤスベル」、強盗や警察側だけでなく犯行現場に居合わせた被害者も含め、登場人物は全員、複雑で多面的な個性を持ち、それぞれに共感しながら読み進める感じでしたね、、、

    犯行に向けて周到に準備を整える場面や、突入し犯行に及ぶ一部始終などの、微に入り細を穿つ描写のリアリティには、ホントに関心しました… 四人の息づかいが感じられ、自分も共犯者のひとりとしてこれから強盗に行くのだと錯覚してしまうような気分に浸れるほどの巧みさでした。


    ミステリというよりは、家族・兄弟の愛憎や絆を描いたヒューマンドラマという印象ですね… 特に、家族を裏切ることの罪深さを説きつつ、妻を激しく暴行してしまう父親「イヴァン」の存在は強烈な印象が残りましたね、、、

    そんな粗暴な父親を憎み拒絶する兄弟ですが、その憎い父から学んだ暴力を有効な道具として使いこなすことで犯行を完璧なものにしようとする「レオ」… 冷静に気持ちをコントロールしようとしますが、他者を屈服させる快感と昂揚により、次第に自らの大きさを勘違いしてしまうんですよね。

    暴力により支配すること、コントロールされることの恐ろしさを改めて感じました、、、

    でも、本作品、次々と犯行を重ねるのですが、「暴力」はあっても「死」がないのは良かったかな… これで多くの命が奪われたら、救いがないですもんね。

    本作品は、続篇が『兄弟の血―熊と踊れⅡ』として刊行されているようです… こちらも読んでみたいですね。


    以下、主な登場人物です。

    「レオ(レオナルド)」
     ドゥヴニヤック家の三兄弟の長男

    「フェリックス」
     ドゥヴニヤック家の三兄弟の次男

    「ヴィンセント」
     ドゥヴニヤック家の三兄弟の三男

    「イヴァン・ドゥヴニヤック」
     三兄弟の父

    「ブリット=マリー・アクセルソン」
     三兄弟の母

    「ヤスベル」
     三兄弟の幼なじみ

    「アンネリー・エリクソン」
     レオの恋人。シングルマザー

    「セバスチャン」
     アンネリーの息子

    「ヨン・ブロンクス」
     ストックホルム市警警部

    「レナート・カールストレム」
     ストックホルム市警警視正

    「サンナ」
     ストックホルム市警鑑識官

    「ガッペ」
     建設業者

    「サム」
     ヨンの兄。服役囚

    0
    2023年03月11日
  • 熊と踊れ 上

    Posted by ブクログ

    スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ステファン・トゥンベリ」の共著の長篇ミステリ作品『熊と踊れ(原題:Bjorndansen、英題:The Father)』を読みました。
    「アーナルデュル・インドリダソン」、「ジョー・ネスボ」、「レイフ・GW・ペーション」の作品に続き、北欧ミステリです。

    -----story-------------
    ハヤカワ・ミステリ文庫創刊40周年記念作品

    〈上〉
    凶暴な父によって崩壊した家庭で育った「レオ」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三人の兄弟。
    独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。
    その目的とは、史上例のない銀行強盗計画を決行することだった――。
    連続する容赦無い襲撃。
    市警の「ブロンクス警部」は、事件解決に執念を燃やすが……。
    はたして勝つのは兄弟か、警察か。
    スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。
    最高熱度の北欧ミステリ。

    〈下〉
    緻密かつ大胆な犯行で警察を翻弄し、次々と銀行を襲撃していく「レオ」たち。
    その暴力の扱い方は少年時代に父から学んだものだった。
    かつて彼らに何がおこったのか。
    そして今、父は何を思うのか――。
    過去と現在から語られる"家族"の物語は、轟く銃声と悲しみの叫びを伴って一気に結末へと突き進む。
    スウェーデン最高の人気を誇り、北欧ミステリの頂点「ガラスの鍵」賞を受賞した鬼才が、圧倒的なリアリティで描く渾身の大作
    -----------------------

    1990年代の初頭にスウェーデンを恐怖に陥れた正体不明の強盗団… まるで軍事作戦のような統率の取れた的確な動き、軍用銃を駆使し、ためらわずに発砲する手口は"軍人ギャング"と称された、、、

    彼らは1991年(平成11年)秋から、1993年(平成15年)末までに、軍の武器庫からの略奪を2件、現金輸送車の襲撃を1件(未遂3件)、銀行や郵便局の強盗を9件、さらにはストックホルム中央駅で爆弾事件まで起こした… 警察は、この強盗団の正体を全くつかめなかったが、犯行の計画性、周到性、狂暴性等から、初犯ではないと思われていた。

    ところが一段が逮捕されてみると、その中心となっていたのは20歳前後の三兄弟とその友人たちで、前科もなければ裏社会とのつながりもない若者たちであるとわかった… 前段が長くなりましたが、本作品は、当時スウェーデン公営テレビ記者として現場でこの事件を報道していた「アンデシュ・ルースルンド」と、犯行の中心人物だった三兄弟と実の兄弟である「ステファン・トゥンベリ」が、その一連の事件をモデルに描いたフィクション作品です、、、

    とはいえ、事件に関わっていた当事者たちが描き、事件のあった場所や手口等の大部分が事実に基づいていることから、ノンフィクション作品のようなリアリティや臨場感があり、読んでいるうちに、ぐいぐいと作品の中に惹きつけられていきました… 上下巻で1,100ページ程度の大作でしたが、長くは感じませんでしたね。


    暴力的な父親「イヴァン・ドゥヴニヤック」の影響下で育った「レオ(レオナルド)」、「フェリックス」、「ヴィンセント」の三兄弟… 長兄「レオ」が中心になり、「レオ」の恋人「アンネリー・エリクソン」や幼馴染の青年「ヤスベル」を巻きこんで、壮大な強盗計画を企てる、、、

    ストックホルム防衛管区の動員用武器庫に侵入し、二個中隊分の装備がまかなえるほどの銃や爆薬を盗み出し、これを使って彼らは現金輸送車や銀行を襲い始める… 彼らは20代から10代後半とまだ若いが、リーダーである長兄「レオ」が立てる緻密な計画と冷静な指揮により、強奪は順調に進む。

    事件を捜査し彼らを追う警部「ヨン・ブロンクス」も優秀だが、手を替え品を替える手口で翻弄し、尻尾を掴ませない… だが、首謀者たる「レオ」の欲望と目的は、なかなか満たされない、、、

    予定では、もっと早くに巨額の金を強奪して、人生をやり直すつもりだったのだが、毎回見込みよりも少ない額しか手に入らないのだ… そういうこともあって、犯行グループの中には次第に軋みが生じ、二人の弟が離反する。

    しかし最後の襲撃に執念を募らせる「レオ」は、とうとうある人物をグループに引き入れ、危険な賭けに出る… カリスマ的リーダーの「レオ」、一度決めたら譲らない「フェリックス」、まだ無邪気さが残る「ヴィンセント」、軍隊から抜けた後、尊敬する「レオ」に従い仲間になる「ヤスベル」、強盗や警察側だけでなく犯行現場に居合わせた被害者も含め、登場人物は全員、複雑で多面的な個性を持ち、それぞれに共感しながら読み進める感じでしたね、、、

    犯行に向けて周到に準備を整える場面や、突入し犯行に及ぶ一部始終などの、微に入り細を穿つ描写のリアリティには、ホントに関心しました… 四人の息づかいが感じられ、自分も共犯者のひとりとしてこれから強盗に行くのだと錯覚してしまうような気分に浸れるほどの巧みさでした。


    ミステリというよりは、家族・兄弟の愛憎や絆を描いたヒューマンドラマという印象ですね… 特に、家族を裏切ることの罪深さを説きつつ、妻を激しく暴行してしまう父親「イヴァン」の存在は強烈な印象が残りましたね、、、

    そんな粗暴な父親を憎み拒絶する兄弟ですが、その憎い父から学んだ暴力を有効な道具として使いこなすことで犯行を完璧なものにしようとする「レオ」… 冷静に気持ちをコントロールしようとしますが、他者を屈服させる快感と昂揚により、次第に自らの大きさを勘違いしてしまうんですよね。

    暴力により支配すること、コントロールされることの恐ろしさを改めて感じました、、、

    でも、本作品、次々と犯行を重ねるのですが、「暴力」はあっても「死」がないのは良かったかな… これで多くの命が奪われたら、救いがないですもんね。

    本作品は、続篇が『兄弟の血―熊と踊れⅡ』として刊行されているようです… こちらも読んでみたいですね。


    以下、主な登場人物です。

    「レオ(レオナルド)」
     ドゥヴニヤック家の三兄弟の長男

    「フェリックス」
     ドゥヴニヤック家の三兄弟の次男

    「ヴィンセント」
     ドゥヴニヤック家の三兄弟の三男

    「イヴァン・ドゥヴニヤック」
     三兄弟の父

    「ブリット=マリー・アクセルソン」
     三兄弟の母

    「ヤスベル」
     三兄弟の幼なじみ

    「アンネリー・エリクソン」
     レオの恋人。シングルマザー

    「セバスチャン」
     アンネリーの息子

    「ヨン・ブロンクス」
     ストックホルム市警警部

    「レナート・カールストレム」
     ストックホルム市警警視正

    「サンナ」
     ストックホルム市警鑑識官

    「ガッペ」
     建設業者

    「サム」
     ヨンの兄。服役囚

    0
    2023年03月11日
  • 熊と踊れ 下

    Posted by ブクログ

    あとがきに一番びっくりした。
    知らずに読めたのは、幸せ。
    未読の方は、あとがきと解説は最後まで取っときましょう(普通か。)。

    0
    2023年03月03日
  • 制裁

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    アンデシュ・ルースルンドのグレーンス警部シリーズ第1作。初読。

    冒頭の残酷描写から始まり、ただただ胸糞悪い展開が続く。読んでいて辛かった。。。鬱々としたストーリーではここ最近では一番かも。これぞ北欧小説だなぁと。

    冒頭に脱獄する犯罪者がとんでもない化け物(原題も「怪物」のようなニュアンスらしい)。あまりにも理解できない、意思の疎通もできない、どうしようもない怪物。その犯罪者に狙われた娘と、その父親の顛末が描かれる。。。と思いきや。中盤以降、全く予想もしていなかった展開に。憎しみの連鎖というか、悪い方向に転がり落ちていくってこういうことだよなと。読み終えて、邦題の「制裁」に納得。

    あまりの報われなさと意外な展開は非常に良かった。が、グレーンス警部が全く活躍しない笑。デビュー作らしいので、シリーズ化する考えがなかったのかも。ミステリ要素もほぼないため、その点だけ気になった。

    0
    2023年02月26日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    潜入捜査官ホフマンが脅される。警察内部情報によってお前のことがわかったと。グレーンス警部には、17年前の未解決事件の容疑者が次々殺されてい件が。2つの件が合わさると途方も無い真相が・・・

    ヤバイほど面白かった。家族を殺すと脅されたホフマンがやらされることなどドキドキさせる伏線多数あり、

    ※自分用ネタバレ

    新人警官アメリアが黒幕だった。アルバニアの彼女の父親が武器商人だった。超高性能の銃を大量に仕入れて売る際に仲間割れして殺された。その復讐だった。

    0
    2022年08月07日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    ピートホフマンのこのシリーズ、もちろん毎回面白いのだが、ホフマンと家族が危険にさらされ…という展開にやや飽きてきたなと思いながら読み始めた。
    しかし本作は真相の意外性といい、独特ながら魅力的なグレーンスの人柄といい、いつも以上に素晴らしかった。

    0
    2022年08月05日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    息つく間も惜しんであっと言う間に読み終えた。グレーンス警部シリーズだが、私はホフマンファン。今作はグレーンス警部とホフマンが手を組んで事件の解決にあたる。両者とホフマンの家族が殺人者と相対する緊迫感半端ない3日間が素晴らしかった。

    0
    2022年07月09日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

     グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。

     迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。

     しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。

     それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。

     さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。

     犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。

     本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。

     グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。

     しかし、どのように?

     この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。

    0
    2022年06月24日
  • 三日間の隔絶 上

    Posted by ブクログ

     グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。

     迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。

     しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。

     それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。

     さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。

     犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。

     本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。

     グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。

     しかし、どのように?

     この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。

    0
    2022年06月24日