作品一覧 2023/11/07更新 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル 試し読み フォロー 減量の正解 試し読み フォロー 三年間の陥穽 試し読み フォロー スティーグ・ラーソン最後の事件 試し読み フォロー つけ狙う者 試し読み フォロー 三日間の隔絶 試し読み フォロー 1~6件目 / 6件<<<1・・・・・・・・・>>> 下倉亮一の作品をすべて見る
ユーザーレビュー 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル パスカルエングマン / 清水由貴子 / 下倉亮一 超絶★5 スウェーデンで発生した女性殺害事件の背景に何があるのか、憐憫と憤怒と怨恨と… #黒い錠剤 ■あらすじ スウェーデンの首都ストックホルムで女性が殺害された。一番の動機がある容疑者は、刑務所に服役中の身であったが、事件当時は仮釈放で出所をしていたのだ。主人公である女性刑事ヴァネッサが捜査を進...続きを読むめていくが、彼は犯人ではないという女性が現れる。警察内部で捜査方針が混沌とする中、さらなる殺害事件が発生してしまい… ■きっと読みたくなるレビュー 超絶★5 この本はもっと話題になって欲しいなぁ~ ただ事件の描写や背景がドギツイので、不愉快な気分になる人もいるかもしれません。しかしそこが一番の魅力なので、ぜひ毒を飲む覚悟で読み進めてください。 本作は事件を中心に大勢の視点で物語が進行する群像劇です。しかもテンポよく次々場面展開していくので止まらなくなるんですよ。いやーおもろい。登場人物が多くて困惑しがちですが、そんな時は何度も何度も人物表を見ましょうね。(めくりやすいように、人物表ページに大きめの付箋を付けときましょう) 群像劇はいかに人が魅力的かが大事なんですが、これがしっかり書けてるのよ。主人公の女性刑事ヴァネッサなんて、超クールなんよ。真のしっかりしたギャルよろしく鬼美人で色気抜群。頭も切れて行動力もあるし腕っぷしも強い。でも、時折見せる背中が寂しい。 新聞記者のジャスミナも勇気がある女性だし、元軍人のニコラスと少女セリーヌの関係性なんて何度胸がキュンキュンしたか。 忘れちゃいけないホームレスの男女。様々な人生を経て劣悪な環境にまで落ちた二人のエピソードなんてもうっ… そうそう、犯罪者や悪者もしっかり描けてますよ。久しぶりにこんなハッキリとしたクズを見ましたよ。クズofクズですね。 彼ら人物像もそうなんですが、なによりひとつひとつの場面で、しっかり情念が突き刺さってくるんですよ。強い単語が使われているだけでなく、センテンスの塊として厚みがありまくり。 本作メイン一番の謎解きは動機、そして犯人とそれぞれの結末。後半まで、まるで見当もついていなかったのですが、徐々に真相が見えてくると…こわっ 私には全く考えられない動機。ただ現代の優しいふりをした厳しい世の中を見てみると、なんとなく理解できてしまう。欧米で発生した事件は、数年後に日本で発生すると言いますが、本当にやめてね。 ■ぜっさん推しポイント それにしても本書のタイトル「黒い錠剤」ですか、なるほど… そして章ごとの導入に挟まれる一文の意味が分かった時、マジ怖かった。日本に住んでると平和ぼけしちゃいますね、海外ミステリーを読むといつも勉強になることばかりです。 そういえば昔、サンボマスターが主題歌を歌っていたドラマがあったなぁ。みんなに手を差し伸べてあげられる、優しい世の中になって欲しいですね。世界はそれを愛と呼ぶのでしょう。 Posted by ブクログ 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル パスカルエングマン / 清水由貴子 / 下倉亮一 強烈な劇薬のような作品が登場。1986年の若手作家だが、スウェーデンの警察小説らしく実際に起こった事件をモデルにした社会的に無視し難い特別なテーマを題材にしたショッキングとも言える作品である。章立てが短く猫の眼のように切り替わる視点が最初はとっつきにくいが、徐々に数多い登場人物たちの個性が際立っ...続きを読むてきて、それぞれがこの作品中で果たす役割がページを進めるにつれ明らかになってゆく頃には、一気読みできるほどの酩酊感と疾走感で脳がいっぱいの読書を体験できるのではないかと思う。 聴き慣れないであろうスウェーデンの名前の登場人物たちだが、主たるキャラクターは女性捜査官ヴァネッサとその友人で元軍人、本書では組織には所属していないが腕っぷしではとても頼りになるニコラス。またジャーナリストのグループも本書では重要な役を果たす。 そして市井の人々がなぜか描かれるが彼らがどう関係してくるのかは、ページを進めるにつれ明らかになってゆく。主に事件の加害者たちだったり、被害者であったり、証人や目撃者であったりもするが、刑務所の様子や、女性関係で何かと物議をかもすTV司会者など、随所の軋轢が断片的に登場することにより、真相は多くのオブラートにくるまれてとてもわかりにくくなっている。ミスリードたっぷりの迷路のような作品とも言える。 各人が各所で小さなエピソードを積み上げてゆくような描写によるいわば群像小説と呼べる一面もある。いわばエド・マクベインの87分署のようなイメージである。そういえばスウェーデン版『87分署』と言えば、シューヴァル&ヴァールーのマルティン・ベック・シリーズであった。デンマーク版87分署とは言い切れぬものの『特捜部Q』などデンマーク版北欧ミステリの警察シリーズとしてぼくは今も楽しんでいる。本書もまた、未だ一作の邦訳ではあるが、スウェーデン・ミステリのお家芸のような作品である。 ただ、本書のテーマは少々掴みにくい。親しみにくいとも言えるテーマである。そのテーマは<インセル>。女性と関係が持てぬばかりか女性から蔑視され女性に近づけない人生を送るうちに女性という性そのものを激しく憎んでゆく男性の存在であるらしいことが読み進むにつれわかってゆくが、彼らがグループ化して女性に対する銃撃など、見過ごせぬ重犯罪が実際にスウェーデンでは発生しているらしい。女性という性だけを対象にした無差別犯罪である。日本では考えにくいが、個別にはこうしたサイキックとも思える性差別犯罪は認定されないだけであって発生していないとは断言し難い。 本書では上記のテーマであるが、作品毎にこうした社会的テーマを扱いながら警察組織やジャーナリズムなどを主としたレギュラー・キャラクターを軸に本シリーズは本国では人気シリーズ化しているのだと言う。作者は1980年代生まれの若手作家と見えるがジャーナリズム出身者ということもあり、活気ある記者たちが捜査キャラたちとは別の動きで現場に登場し、さらには事件被害者ともダブルリンクしてゆくなど、誰がいつどこで巻き込まれるかわからぬ一大犯罪迷路のような作品にも見える。 最後の銃撃シーンが派手過ぎるきらいはあるが、そのうち映画化やドラマ化も有りかと思わせる過激さとスケール感に満ちていながら、現実に起きた事件に材を取っているところなど如何にも北欧ミステリらしい。一作目も続編もこれから邦訳される可能性があるならば、是非読みたい。そんな注目すべき作家の一人が登場してくれた本書である。 Posted by ブクログ 三日間の隔絶 上 アンデシュ ルースルンド / 井上舞 / 下倉亮一 実際にスウェーデンを含む欧州諸国で問題になっている事柄に題材を求めながら、(スウェーデンの首都である)ストックホルムで執念の捜査を展開する大ベテランの警部と、息詰まる現場の闘いを勝ち抜く腕利きの工作員的な潜入捜査員との「ダブル主人公」というような体裁は、なかなかに読み応えが在る。本作は、その「ダブル...続きを読む主人公」の双方が、互いに助け合うべく各々の活動を展開して行くというようなことになって行く。 上巻の冒頭は「過去」という短い纏まりから起こる。 5歳の誕生日を祝ってもらったばかりであるという女児が「ハッピーバースデー」の歌を歌ってはしゃぎ、アパートの室内で飛び跳ねている。アパートの中には兄、姉、父母が在るのだが、彼らは一様に全く動かない。そういう中で女児は飛び跳ねてはしゃいでいる。 アパートの前に人が集まっている。子どもが騒ぐ声がして、妙な臭いが漂い、何やら異様であると近隣住民が通報し、警察が駆け付けていた。警察関係者の先頭に立っていたのはエーヴェルト・グレーンス警部だった。とりあえずアパートに踏み込むことを決したグレーンス警部は、その室内で父母と兄、姉が殺害された状態で、遺体が在るアパートで飛び跳ねてはしゃぐ女児を発見した。「一家惨殺事件」として、グレーンス警部を始めとする警察関係者は捜査に着手するのだが、グレーンス警部は発見された5歳の女児を保護し、里親に託すことが叶うように奔走した。 そして「現在」という本編が始まる。 グレーンス警部を訪ねて来た捜査員が古い書類を持って話をする。住居不法侵入と見受けられる事案で通報を受けて捜査をしていたが、嘗て事件が在った現場に相当し、古い書類に「何か在れば伝えられたい」とグレーンス警部の名を添えたメモが在ったのだという。グレーンス警部は、一課が殺害されてしまった中に取り残された5歳の女児を保護した17年前の件を思い出した。 グレーンス警部は、その17年前の一件を振り返ろうと、そして女児のその後に纏わることを知ろうと古い書類を閲覧しようとするのだが、異変に気付く。旧い書類が如何いう訳か無い。何者かが持ち去った、盗んだとしか考えられない状況だ。そうなると益々この件が気になってしまう。 グレーンス警部がこの女児の件、一家惨殺の件を調べ始めて、動き回ろうとしていた時、考え事をしていた何時ものカフェにエリック・ウィルソン部長が「やはりここに居ましたね」と現れる。そして発生した殺人事件の捜査を是非担当して欲しいと言い出した。グレーンス警部は断ろうとするが、ウィルソン部長は是非にと強く言う。一家惨殺の時と同じような具合に銃で撃たれていて、死亡したのは一家惨殺事件で被疑者として捜査線上に浮かんで、結局逮捕に至らなかった人物だったのだ。グレーンス警部はこの件に取組み始める。 他方、ピート・ホフマンである。潜入捜査員として様々な活動に従事した経過が在るホフマンだが、ストックホルムで落ち着き、妻、2人の息子、生まれた娘と家族で平穏に暮らしていた。警備会社を営み、順調に業務を進めてもいた。そのホフマンは謎の脅迫者に悩まされ始めた。ホフマンを潜入捜査員として最初に運用したウィルソン部長が当時綴った極秘書類が盗まれたか、勝手に写し取られたと見受けられ、ホフマンの正体を方々に明らかにしてしまう、また家族に危害を加えると脅し、要求する行動を取らせようとする。その行動とは、武器密売組織が新しい武器を売り出す宣伝のために、組織犯罪に殴り込んで壊滅的打撃を与えるということを求めるものであった。 警察の機密が漏洩しているらしいという状況下、ホフマンはグレーンス警部に接触する。そして2人の共闘が始まるのだ。 Posted by ブクログ 三日間の隔絶 下 アンデシュ ルースルンド / 井上舞 / 下倉亮一 スウェーデンの小説の翻訳である。ストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズだ。加えて、潜入捜査員のピート・ホフマンも登場する。「ダブル主人公」というような体裁でもあるのだが、そういう体裁としては4作品目ということになる。 「警察の最高機密が漏洩?」という事態に思い至ったグレー...続きを読むンス警部と、潜入捜査員として活動した経過が在る凄腕のピート・ホフマンは問題の解決に向けて共闘する。やや遠い過去の事件がグレーンス警部の眼前に現れ、謎の脅迫者と向き合うホフマンの活動により、過去の事件の「裏」が引き寄せられる。そして「そう来たか?」という意外な結末が待っている。 こういう経緯で進む上下巻の物語だが、本当に一気に読み進めてしまった。過去のシリーズの中でも、本作は殊更に面白い。「機密の漏洩?」という事態で慎重であると同時に、大胆にグレーンス警部が動き、推論を巡らせる。他方で腕利きのホフマンは、事態の核心に着実に迫る。そして明かされる意外な結論である。 或る意味では「最もこのシリーズらしい」という魅力が溢れる作品かもしれない。かなり夢中になった。 Posted by ブクログ 三日間の隔絶 下 アンデシュ ルースルンド / 井上舞 / 下倉亮一 う~ん。読ませるなあという読後感。 ジリジリと迫るリミット。意表を突く展開。 時系列のズレがやられた。冷静に考えればそうなんだけど読んでる時には気が付かない。 大変な状況なんだけどホフマンとグレーンズ警部の協力体制が嬉しい。 ホフマンの子供たちとグレーンズ警部の交流が微笑ましい。もうホフマンを平穏に...続きを読む過ごさせてあげたいところだが、シリーズの次回作があることがわかっているので気の毒にも思う。 Posted by ブクログ 下倉亮一のレビューをもっと見る