下倉亮一のレビュー一覧

  • 三日間の隔絶 下

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    上巻から続く。
    変装したホフマンはアルバニアに行き、グレーンス警部はストックホルム市警の中のスパイを探し出す。
    ホフマンのパートは今作もあっさりめだが、グレーンス警部のパートが重い。犯人…と言うべきか、少なくとも「過去の捜査記録やホフマンに関する機密文書などを警察署から盗み出してホフマンを脅していた犯人」「一家惨殺事件の容疑者たちを次々と射殺していた犯人」は非常に意外な人物だった。
    結末も非常に哀しい。

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    2025年04月13日
  • 山の王(下)

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    上巻とは全然違う展開
    物語は誰がいい奴なのか敵なのか
    最後まで気を揉ませます。
    幼なじみのマーティンヒルだけは 信じられる相手
    マーティンの信じてるミィーは 本当に信じられる相手か?
    警官も信じられない
    マーティンはミィーとともに スミラの閉じ込められてる洞窟に向かう
    この辺から 一気に物語が進みます。
    マーティンはスミラを逃す時に撃たれます。
    アスカーは マーティンが眠らないように 子供の時 父親となにがあったかを 初めて話します。
    初めて話すことで アスカーのこころも解放されたのだと思う。
    キチガイの父親ですねえ!
    一件落着して ホッとした時 電話がなる。
    父さんだよ!
    あーあーあ こういう人は死なないらしい。

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    2024年12月03日
  • 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル

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    ネタバレ

    ニコラスのみが救い。
    ニコラスとセリーネの掛け合いが読んでて心地よかった。
    ラスト30ページぐらいは、ヴァネッサと一体化しすぎて殺されそうだと思うくらい、ジャスミナに一体化しすぎて窒息するかと思うくらい、ハラハラしてのめり込んだ。
    次作も、前作も読みたいけど、日本で翻訳されていないのかも…。

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    2024年06月25日
  • 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル

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    超絶★5 スウェーデンで発生した女性殺害事件の背景に何があるのか、憐憫と憤怒と怨恨と… #黒い錠剤

    ■あらすじ
    スウェーデンの首都ストックホルムで女性が殺害された。一番の動機がある容疑者は、刑務所に服役中の身であったが、事件当時は仮釈放で出所をしていたのだ。主人公である女性刑事ヴァネッサが捜査を進めていくが、彼は犯人ではないという女性が現れる。警察内部で捜査方針が混沌とする中、さらなる殺害事件が発生してしまい…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    超絶★5 この本はもっと話題になって欲しいなぁ~

    ただ事件の描写や背景がドギツイので、不愉快な気分になる人もいるかもしれません。しかしそこが一番の魅力なので、ぜひ毒を飲む覚悟で読み進めてください。

    本作は事件を中心に大勢の視点で物語が進行する群像劇です。しかもテンポよく次々場面展開していくので止まらなくなるんですよ。いやーおもろい。登場人物が多くて困惑しがちですが、そんな時は何度も何度も人物表を見ましょうね。(めくりやすいように、人物表ページに大きめの付箋を付けときましょう)

    群像劇はいかに人が魅力的かが大事なんですが、これがしっかり書けてるのよ。主人公の女性刑事ヴァネッサなんて、超クールなんよ。真のしっかりしたギャルよろしく鬼美人で色気抜群。頭も切れて行動力もあるし腕っぷしも強い。でも、時折見せる背中が寂しい。

    新聞記者のジャスミナも勇気がある女性だし、元軍人のニコラスと少女セリーヌの関係性なんて何度胸がキュンキュンしたか。
    忘れちゃいけないホームレスの男女。様々な人生を経て劣悪な環境にまで落ちた二人のエピソードなんてもうっ…
    そうそう、犯罪者や悪者もしっかり描けてますよ。久しぶりにこんなハッキリとしたクズを見ましたよ。クズofクズですね。

    彼ら人物像もそうなんですが、なによりひとつひとつの場面で、しっかり情念が突き刺さってくるんですよ。強い単語が使われているだけでなく、センテンスの塊として厚みがありまくり。

    本作メイン一番の謎解きは動機、そして犯人とそれぞれの結末。後半まで、まるで見当もついていなかったのですが、徐々に真相が見えてくると…こわっ

    私には全く考えられない動機。ただ現代の優しいふりをした厳しい世の中を見てみると、なんとなく理解できてしまう。欧米で発生した事件は、数年後に日本で発生すると言いますが、本当にやめてね。

    ■ぜっさん推しポイント
    それにしても本書のタイトル「黒い錠剤」ですか、なるほど… そして章ごとの導入に挟まれる一文の意味が分かった時、マジ怖かった。日本に住んでると平和ぼけしちゃいますね、海外ミステリーを読むといつも勉強になることばかりです。

    そういえば昔、サンボマスターが主題歌を歌っていたドラマがあったなぁ。みんなに手を差し伸べてあげられる、優しい世の中になって欲しいですね。世界はそれを愛と呼ぶのでしょう。

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    2024年02月20日
  • 黒い錠剤 スウェーデン国家警察ファイル

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      強烈な劇薬のような作品が登場。1986年の若手作家だが、スウェーデンの警察小説らしく実際に起こった事件をモデルにした社会的に無視し難い特別なテーマを題材にしたショッキングとも言える作品である。章立てが短く猫の眼のように切り替わる視点が最初はとっつきにくいが、徐々に数多い登場人物たちの個性が際立ってきて、それぞれがこの作品中で果たす役割がページを進めるにつれ明らかになってゆく頃には、一気読みできるほどの酩酊感と疾走感で脳がいっぱいの読書を体験できるのではないかと思う。

     聴き慣れないであろうスウェーデンの名前の登場人物たちだが、主たるキャラクターは女性捜査官ヴァネッサとその友人で元軍人、本書では組織には所属していないが腕っぷしではとても頼りになるニコラス。またジャーナリストのグループも本書では重要な役を果たす。

     そして市井の人々がなぜか描かれるが彼らがどう関係してくるのかは、ページを進めるにつれ明らかになってゆく。主に事件の加害者たちだったり、被害者であったり、証人や目撃者であったりもするが、刑務所の様子や、女性関係で何かと物議をかもすTV司会者など、随所の軋轢が断片的に登場することにより、真相は多くのオブラートにくるまれてとてもわかりにくくなっている。ミスリードたっぷりの迷路のような作品とも言える。

     各人が各所で小さなエピソードを積み上げてゆくような描写によるいわば群像小説と呼べる一面もある。いわばエド・マクベインの87分署のようなイメージである。そういえばスウェーデン版『87分署』と言えば、シューヴァル&ヴァールーのマルティン・ベック・シリーズであった。デンマーク版87分署とは言い切れぬものの『特捜部Q』などデンマーク版北欧ミステリの警察シリーズとしてぼくは今も楽しんでいる。本書もまた、未だ一作の邦訳ではあるが、スウェーデン・ミステリのお家芸のような作品である。

     ただ、本書のテーマは少々掴みにくい。親しみにくいとも言えるテーマである。そのテーマは<インセル>。女性と関係が持てぬばかりか女性から蔑視され女性に近づけない人生を送るうちに女性という性そのものを激しく憎んでゆく男性の存在であるらしいことが読み進むにつれわかってゆくが、彼らがグループ化して女性に対する銃撃など、見過ごせぬ重犯罪が実際にスウェーデンでは発生しているらしい。女性という性だけを対象にした無差別犯罪である。日本では考えにくいが、個別にはこうしたサイキックとも思える性差別犯罪は認定されないだけであって発生していないとは断言し難い。

     本書では上記のテーマであるが、作品毎にこうした社会的テーマを扱いながら警察組織やジャーナリズムなどを主としたレギュラー・キャラクターを軸に本シリーズは本国では人気シリーズ化しているのだと言う。作者は1980年代生まれの若手作家と見えるがジャーナリズム出身者ということもあり、活気ある記者たちが捜査キャラたちとは別の動きで現場に登場し、さらには事件被害者ともダブルリンクしてゆくなど、誰がいつどこで巻き込まれるかわからぬ一大犯罪迷路のような作品にも見える。

     最後の銃撃シーンが派手過ぎるきらいはあるが、そのうち映画化やドラマ化も有りかと思わせる過激さとスケール感に満ちていながら、現実に起きた事件に材を取っているところなど如何にも北欧ミステリらしい。一作目も続編もこれから邦訳される可能性があるならば、是非読みたい。そんな注目すべき作家の一人が登場してくれた本書である。

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    2024年01月18日
  • 三日間の隔絶 下

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    スウェーデンの小説の翻訳である。ストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズだ。加えて、潜入捜査員のピート・ホフマンも登場する。「ダブル主人公」というような体裁でもあるのだが、そういう体裁としては4作品目ということになる。
    「警察の最高機密が漏洩?」という事態に思い至ったグレーンス警部と、潜入捜査員として活動した経過が在る凄腕のピート・ホフマンは問題の解決に向けて共闘する。やや遠い過去の事件がグレーンス警部の眼前に現れ、謎の脅迫者と向き合うホフマンの活動により、過去の事件の「裏」が引き寄せられる。そして「そう来たか?」という意外な結末が待っている。
    こういう経緯で進む上下巻の物語だが、本当に一気に読み進めてしまった。過去のシリーズの中でも、本作は殊更に面白い。「機密の漏洩?」という事態で慎重であると同時に、大胆にグレーンス警部が動き、推論を巡らせる。他方で腕利きのホフマンは、事態の核心に着実に迫る。そして明かされる意外な結論である。
    或る意味では「最もこのシリーズらしい」という魅力が溢れる作品かもしれない。かなり夢中になった。

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    2023年09月25日
  • 三日間の隔絶 上

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    実際にスウェーデンを含む欧州諸国で問題になっている事柄に題材を求めながら、(スウェーデンの首都である)ストックホルムで執念の捜査を展開する大ベテランの警部と、息詰まる現場の闘いを勝ち抜く腕利きの工作員的な潜入捜査員との「ダブル主人公」というような体裁は、なかなかに読み応えが在る。本作は、その「ダブル主人公」の双方が、互いに助け合うべく各々の活動を展開して行くというようなことになって行く。
    上巻の冒頭は「過去」という短い纏まりから起こる。
    5歳の誕生日を祝ってもらったばかりであるという女児が「ハッピーバースデー」の歌を歌ってはしゃぎ、アパートの室内で飛び跳ねている。アパートの中には兄、姉、父母が在るのだが、彼らは一様に全く動かない。そういう中で女児は飛び跳ねてはしゃいでいる。
    アパートの前に人が集まっている。子どもが騒ぐ声がして、妙な臭いが漂い、何やら異様であると近隣住民が通報し、警察が駆け付けていた。警察関係者の先頭に立っていたのはエーヴェルト・グレーンス警部だった。とりあえずアパートに踏み込むことを決したグレーンス警部は、その室内で父母と兄、姉が殺害された状態で、遺体が在るアパートで飛び跳ねてはしゃぐ女児を発見した。「一家惨殺事件」として、グレーンス警部を始めとする警察関係者は捜査に着手するのだが、グレーンス警部は発見された5歳の女児を保護し、里親に託すことが叶うように奔走した。
    そして「現在」という本編が始まる。
    グレーンス警部を訪ねて来た捜査員が古い書類を持って話をする。住居不法侵入と見受けられる事案で通報を受けて捜査をしていたが、嘗て事件が在った現場に相当し、古い書類に「何か在れば伝えられたい」とグレーンス警部の名を添えたメモが在ったのだという。グレーンス警部は、一課が殺害されてしまった中に取り残された5歳の女児を保護した17年前の件を思い出した。
    グレーンス警部は、その17年前の一件を振り返ろうと、そして女児のその後に纏わることを知ろうと古い書類を閲覧しようとするのだが、異変に気付く。旧い書類が如何いう訳か無い。何者かが持ち去った、盗んだとしか考えられない状況だ。そうなると益々この件が気になってしまう。
    グレーンス警部がこの女児の件、一家惨殺の件を調べ始めて、動き回ろうとしていた時、考え事をしていた何時ものカフェにエリック・ウィルソン部長が「やはりここに居ましたね」と現れる。そして発生した殺人事件の捜査を是非担当して欲しいと言い出した。グレーンス警部は断ろうとするが、ウィルソン部長は是非にと強く言う。一家惨殺の時と同じような具合に銃で撃たれていて、死亡したのは一家惨殺事件で被疑者として捜査線上に浮かんで、結局逮捕に至らなかった人物だったのだ。グレーンス警部はこの件に取組み始める。
    他方、ピート・ホフマンである。潜入捜査員として様々な活動に従事した経過が在るホフマンだが、ストックホルムで落ち着き、妻、2人の息子、生まれた娘と家族で平穏に暮らしていた。警備会社を営み、順調に業務を進めてもいた。そのホフマンは謎の脅迫者に悩まされ始めた。ホフマンを潜入捜査員として最初に運用したウィルソン部長が当時綴った極秘書類が盗まれたか、勝手に写し取られたと見受けられ、ホフマンの正体を方々に明らかにしてしまう、また家族に危害を加えると脅し、要求する行動を取らせようとする。その行動とは、武器密売組織が新しい武器を売り出す宣伝のために、組織犯罪に殴り込んで壊滅的打撃を与えるということを求めるものであった。
    警察の機密が漏洩しているらしいという状況下、ホフマンはグレーンス警部に接触する。そして2人の共闘が始まるのだ。

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    2023年09月25日
  • 三日間の隔絶 下

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    ネタバレ

    う~ん。読ませるなあという読後感。
    ジリジリと迫るリミット。意表を突く展開。
    時系列のズレがやられた。冷静に考えればそうなんだけど読んでる時には気が付かない。
    大変な状況なんだけどホフマンとグレーンズ警部の協力体制が嬉しい。
    ホフマンの子供たちとグレーンズ警部の交流が微笑ましい。もうホフマンを平穏に過ごさせてあげたいところだが、シリーズの次回作があることがわかっているので気の毒にも思う。

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    2023年08月03日
  • 三年間の陥穽 上

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     グレーンス警部シリーズはついに終章を迎えつつあるのだろうか? そんな心配が胸を駆け巡る。それほど、しっかりと主人公の現在の日々、そして彼が過去に残した禍根から響いてくる痛みが、のっけから描かれてゆくからだ。亡き妻と、彼女が胎内に抱きかかえていた生まれなかった娘。グレーンス警部が毎夜、警察署の個室のコーデュロイのソファの上に身を横たえながら心に彷徨わせる孤独。帰って来ない家族への想い。

     本書では、傷つけられる子供たちというテーマが描かれる。聞いたこともないほど残酷な性被害を受ける、少年少女たちの存在が浮き彫りにされる。子供たちを犠牲にして自らの歓びや商売に結びつける鬼畜の如き親たち。彼らを結びつける悪魔のネットワークの存在。グレーンスが亡き妻の墓参りの後で出会ったのは、行方不明のままの娘のための空っぽの墓に花を捧げる女性だった。

     そしてその出会いにシンクロするかのように、行方不明の娘を三年間待ったという夫婦が、娘の捜索を諦め、その死を認め葬儀を行うことになったという報道を、グレーンス警部は耳にした。何故? 何故? 何故? グレーンスの頭の中で鳴り響く疑問が、その行方不明の娘の葬儀に、執拗に待ったをかける。行方不明の娘の双子の少年もまた、グレーンスに、彼女は生きていると思うと告げる。双子特有の直感のようなもの?

     この物語の導入部は、警察が認めてしまう捜査終了に抗い、個の力で子供たちを性の奴隷として商品化する悪のネットワークを暴こうと決意するグレーンスのある意味、心の物語だ。相変わらずテーマは重く、そして世界レベルでもある。

     もう金輪際潜入捜査はやらないはずのピート・ホフマンは、またもグレーンスの訪問を受ける。否、ピート個人ではなく、ホフマン一家がである。敢えて家族をも巻き込んでのグレーンスの説得に、ピートは暴力の形で激しい怒りをぶつけるが、何と妻がピートを説き伏せる。許し難い犯罪ネットワークをぶっ潰すよう要請するグレーンスのためではなく、失踪した娘とその母たちのために。

     前半は、この状況の構築だけで、ぐいぐい読まされる。後半は、お馴染みのダブル主人公のうち、ピートの潜入シーンが例によって核心部となるが、彼自体の命も脅かされるほどの敵方の慎重さと疑い深さに、我らが主人公は、シリーズ最大の危機を迎える。

     いつも思うのは、この作者の現代的なテーマの確かさと重さ、そして構図のしたたかさである。本書も、スピード感のある描写と共に、心の揺らぎや、状況の不安定感が全編を包むことで、全編、絶え間ない緊張が走り続けるものである。読者側の感情に訴えかけてくる人間性という救いが作品の中に見え隠れしなければ、あまりに過酷な物語として生理的にも受け付けられないテーマですらある。

     それでもグレーンス警部に関わる深い人間描写と、ピート・ホフマンという人間の運命性とを梃子のように使い分け、作品全体に強烈な力学を加えてゆくその小説作法は、いつもどの作品でも極めて素晴らしい上に、現代的な情報小説の側面も持ち、なおかつ時代と世界への警鐘を忘れない骨太の作品ともなっている。それがこのシリーズのいつもながらの特徴なのである。

     構成はこの上なく素晴らしく、プロローグで偶然に出会う忘れ難き名無しの女性との出会いのシーンが、ラストシーンに置いてグレーンス警部の心の中の状況として奇妙な響きを持つようなエンディングとなってゆく。一種不思議な感覚で終わるこのラストシーンもまた、この手練の作家の持つ魅力なのだ、と言って良い気がする。

     一気読み必須の語り口と、作者の健在ぶりを間近に見てしまうと、この先のグレーンス警部やピート・ホフマンとの再会がますます楽しみになる。そんな興奮冷めやらぬ読後を、ぼくはいま、多少の微熱とともに持て余しているのだと思う。

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    2023年07月16日
  • 三年間の陥穽 下

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     グレーンス警部シリーズはついに終章を迎えつつあるのだろうか? そんな心配が胸を駆け巡る。それほど、しっかりと主人公の現在の日々、そして彼が過去に残した禍根から響いてくる痛みが、のっけから描かれてゆくからだ。亡き妻と、彼女が胎内に抱きかかえていた生まれなかった娘。グレーンス警部が毎夜、警察署の個室のコーデュロイのソファの上に身を横たえながら心に彷徨わせる孤独。帰って来ない家族への想い。

     本書では、傷つけられる子供たちというテーマが描かれる。聞いたこともないほど残酷な性被害を受ける、少年少女たちの存在が浮き彫りにされる。子供たちを犠牲にして自らの歓びや商売に結びつける鬼畜の如き親たち。彼らを結びつける悪魔のネットワークの存在。グレーンスが亡き妻の墓参りの後で出会ったのは、行方不明のままの娘のための空っぽの墓に花を捧げる女性だった。

     そしてその出会いにシンクロするかのように、行方不明の娘を三年間待ったという夫婦が、娘の捜索を諦め、その死を認め葬儀を行うことになったという報道を、グレーンス警部は耳にした。何故? 何故? 何故? グレーンスの頭の中で鳴り響く疑問が、その行方不明の娘の葬儀に、執拗に待ったをかける。行方不明の娘の双子の少年もまた、グレーンスに、彼女は生きていると思うと告げる。双子特有の直感のようなもの?

     この物語の導入部は、警察が認めてしまう捜査終了に抗い、個の力で子供たちを性の奴隷として商品化する悪のネットワークを暴こうと決意するグレーンスのある意味、心の物語だ。相変わらずテーマは重く、そして世界レベルでもある。

     もう金輪際潜入捜査はやらないはずのピート・ホフマンは、またもグレーンスの訪問を受ける。否、ピート個人ではなく、ホフマン一家がである。敢えて家族をも巻き込んでのグレーンスの説得に、ピートは暴力の形で激しい怒りをぶつけるが、何と妻がピートを説き伏せる。許し難い犯罪ネットワークをぶっ潰すよう要請するグレーンスのためではなく、失踪した娘とその母たちのために。

     前半は、この状況の構築だけで、ぐいぐい読まされる。後半は、お馴染みのダブル主人公のうち、ピートの潜入シーンが例によって核心部となるが、彼自体の命も脅かされるほどの敵方の慎重さと疑い深さに、我らが主人公は、シリーズ最大の危機を迎える。

     いつも思うのは、この作者の現代的なテーマの確かさと重さ、そして構図のしたたかさである。本書も、スピード感のある描写と共に、心の揺らぎや、状況の不安定感が全編を包むことで、全編、絶え間ない緊張が走り続けるものである。読者側の感情に訴えかけてくる人間性という救いが作品の中に見え隠れしなければ、あまりに過酷な物語として生理的にも受け付けられないテーマですらある。

     それでもグレーンス警部に関わる深い人間描写と、ピート・ホフマンという人間の運命性とを梃子のように使い分け、作品全体に強烈な力学を加えてゆくその小説作法は、いつもどの作品でも極めて素晴らしい上に、現代的な情報小説の側面も持ち、なおかつ時代と世界への警鐘を忘れない骨太の作品ともなっている。それがこのシリーズのいつもながらの特徴なのである。

     構成はこの上なく素晴らしく、プロローグで偶然に出会う忘れ難き名無しの女性との出会いのシーンが、ラストシーンに置いてグレーンス警部の心の中の状況として奇妙な響きを持つようなエンディングとなってゆく。一種不思議な感覚で終わるこのラストシーンもまた、この手練の作家の持つ魅力なのだ、と言って良い気がする。

     一気読み必須の語り口と、作者の健在ぶりを間近に見てしまうと、この先のグレーンス警部やピート・ホフマンとの再会がますます楽しみになる。そんな興奮冷めやらぬ読後を、ぼくはいま、多少の微熱とともに持て余しているのだと思う。

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    2023年07月16日
  • 三年間の陥穽 上

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    「何やら面白そう…」という小説に出くわし、以前に愉しんでいたシリーズの最近作であることが判れば「是非!」と手にしてみたくなる。
    スウェーデンの小説の翻訳だ。ストックホルム警察のグレーンス警部が活躍するシリーズである。
    本作は、個人的な色々な事情を抱えながらも、過ぎる程に熱心に仕事に入り込んでいる頑固な老警部―本作では60歳代に入っていて、ストックホルム警察本部の最年長グループのようになっている…―のエーヴェルト・グレーンスが事件に向き合うのだが、グレーンスが頼みにしている、現場潜入要員のピート・ホフマンの活躍も痛快だ。物語は大まかに、グレーンスの視点で綴られる部分とホフマンの視点で綴られる部分から成っている。
    物語の冒頭、グレーンス警部は墓地に在る。他界した妻の墓参りで、色々と想い巡らせている。
    シリーズを通してこの妻の件が出て来る。事故で頭を負傷して、意識が無い状態で長く生きていたが、終に心停止で死亡ということになって埋葬されたという経過だった。
    墓地の何時も腰を下ろしているベンチで、グレーンス警部は不思議な女性に出くわした。女性は幼い娘を失ったと言う。娘は駐車場で車から連れ去られ、行方不明となり、3年経った頃に“死亡認定”したのだということだった。墓地には「空の棺桶」を埋葬したのだと語った。
    グレーンス警部はこの出来事が引っ掛かり、出くわした女性の娘が行方不明になったという日に、別な4歳の幼い少女がショッピングモールで姿を消して行方不明になったという件が在ることを知った。少女が何処かで存命なら7歳になっている筈だ。
    やがてグレーンス警部は3年前の事件を担当している警部補に事情を訪ね、娘が行方不明になったという一家を訪ね、間もなく“死亡認定”をするということ、未だ妹が居ると信じ続ける双子の兄のためにもそうして区切りとしたいとする両親の話しを聴く。それでも探すべきではないかと、グレーンス警部は両親と揉める。
    こうした一連の様子の中、グレーンス警部の様子が少しおかしいと感じた警部補は上司の部長に進言し、結果として部長はグレーンス警部に長期休暇取得を厳命した。
    暫く休暇の日々を過ごすグレース警部だが、オフィスに忍び込んで、帰らずに眠ってしまうことも多いオフィスのソファ―シリーズでは、深夜や早朝にこのオフィスに据えたソファに在るグレーンス警部という場面が多く在る…―で考え事をしていれば、他部署の知り合いの捜査員から情報が寄せられた。行方不明から“死亡認定”となった幼女の件でグレーンス警部が揉めた経過を知っていた捜査員が寄せたのは、ネット上に出ていた、幼女が身に着けていたという「青い蝶の着いた髪留め」が写った写真だった。これは母親の手作りということで、本人の所持品である可能性が非常に高いと見受けられた。行方不明の少女の足跡とも言える。
    こうしてグレース警部は、幼い子どもを弄ぶ、虐待をするというような小児性愛という傾向の者達が在って、色々な国々に在る「同好」の者達のグループが色々と在るということを知る。
    やがて「青い蝶の着いた髪留め」が写った写真の出処を辿り、グレーンス警部は隣国デンマークのコペンハーゲン近郊に在る警察署に至る。小児性愛グループの問題に懸命に取組む、IT関係担当の女性捜査員が仕事をしている場所を訪ねたのである。
    上巻ではグレーンス警部が事案に出くわし、大変な事件で、許されざる罪を犯している者を逮捕してグループを壊滅させなければならないと挑戦を始める。他方で、永年の疲労や、個人的な悩みを余りにも長く抱えて精神状態が好くないかもしれないと、心配する職場関係者に仕事の現場から遠ざけられてしまっている。それでも動かずには居られない訳だ。

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    2023年07月13日
  • 三年間の陥穽 下

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    アンデシュ・ルースルンド『三年間の陥穽 下』ハヤカワ文庫。

    グレーンス警部シリーズの第10作。グレーンス警部&ピート・ホフマン物の第5作。スウェーデンの社会派警察ミステリー小説。

    下巻も上巻に劣らずスピーディーな展開が続き、一気読みだった。小児性愛者グループが一網打尽にされ、これでこの悲惨な物語は終わりかと思ったら、まだまだ続きがあり、驚愕の事実が次々と明らかになる。

    久し振りの快作。

    サンフランシスコに到着したピート・ホフマンは小児性愛者の一人、カール・ハンセンに変装し、小児性愛者サークルの謎のリーダーとその仲間と接触する。

    しかし、リーダーに疑われたピートは薬を盛られ、身体の自由を奪われる。絶体絶命のピート……

    危険を察知して現場から逃走したリーダーは、パソコンに保存されたおぞましい犯罪の証拠の隠滅を図る。

    果たして、世界各国に散らばる小児性愛者グループを壊滅することが出来るのか……

    青い蝶の髪飾りの女児は……

    本体価格1,500円
    ★★★★★

    0
    2023年06月05日
  • 三年間の陥穽 上

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    アンデシュ・ルースルンド『三年間の陥穽 上』ハヤカワ文庫。

    グレーンス警部シリーズの第10作。グレーンス警部&ピート・ホフマン物の第5作。スウェーデンの社会派警察ミステリー小説。

    如何なる犯罪をも許さないグレーンス警部の献身的な捜査の描写と無駄の無いスピーディーな展開がリーダビリティを高めている。

    過去に家族もろとも幾多の危険な目に遭って来た憐れなピート・ホフマンはグレーンス警部の懇願により再び危険な潜入捜査を実行することに。

    ある日、10年前に亡くなった妻のアンニの墓を訪れたエーヴェルト・グレーンスは、墓地のベンチで1人の女性に話し掛けられる。女性は空の棺が埋められた娘の墓を訪れたのだと言う。女性の話によると、3年前に目の前で拐われた4歳の娘は警察の懸命の捜査でも発見されずに、既に亡くなったものとして諦めたと言うのだ。

    署に戻ったグレーンスが女性が語っていた事件について調べると、同じ日にやはり4歳の女児が失踪していたことを知り、愕然とする。

    さらに調べると行方不明となった女児たちはダークウェブサイトを使った小児性愛者の毒牙に掛かった疑いが出て来た。子供の人身売買防止団体に届いた全裸で首に犬のリードを付けられた女児の写真からデンマークの家具会社の従業員が関係していることを掴んだグレーンスはデンマークへと向かう。

    デンマークで明らかになったのはダークネットを使って取引する世界数ヶ国にも及ぶ多くの女児性愛者グループの存在だった。女児性愛者たちを一斉逮捕のためにグレーンス警部は小児性愛者を装い、ダークネット上でリーダーと接触し、再びピート・ホフマンを小児性愛者グループに潜入させることになった。

    そして、ピートは小児性愛者グループのリーダーと接触するためにアメリカへ飛ぶ。

    いざ下巻へ。

    本体価格1,500円
    ★★★★★

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    2023年06月05日
  • 三年間の陥穽 下

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    こういうテーマの方が本領発揮してると思う。めちゃ読みやすくなってきてるし。

    (分冊する必要性を全く感じない、改行と余白が鬼畜すぎる)

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    2023年05月31日
  • 三年間の陥穽 下

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    久々に超弩級の胸糞で、度々瞬間的に手を止めたくなりますが、それでもやはり読ませる筆致には流石という言葉しか出てきません。
    グレーンスとホフマンのブロマンスものとして読まないと心が持たない面も。そのくらい過去に例がないくらいの胸糞です。心して読んで下さい。

    でも電話の声を聞いただけで状態を察する感じ等、ブロマンスものとしても拍車がかかってきましたよ!
    本作は今までのレギュラーメンバーの登場が少ない分より一層な感じがしますね。
    いやはやこりゃあどちらかが死ぬまでシリーズ続いちゃうでしょうね。
    タイトルの三シリーズは邦訳で続いてるだけですが、ここは訳者の腕の見せ所ですね。そこも楽しみ!!

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    2023年05月30日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    2023.05.23
    文句なしの傑作。
    海外ミステリに二の足を踏んでいる人にもオススメ。
    理由は読みやすいし、どんどん読み進めたくなる切迫感にあふれているから。

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    2023年05月23日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    めちゃめちゃ面白かった。
    これを待ってたよ。三分間、三時間とパッとしなかったんだけど待ってた甲斐があったな。
    まったく読めない展開。あらゆるところに仕掛けられた謎。繰り返されるどんでん返し。いったい真犯人は誰なんだ。先生、もうページを繰る手を止められませんっ!!

    解説の人も前2作は無かったものの如く書いてたから気持ちは同じだったんだな。
    しかし次は一気に三年!!?
    どうなることやら。。。

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    2023年04月25日
  • 三日間の隔絶 下

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    潜入捜査官ホフマンが脅される。警察内部情報によってお前のことがわかったと。グレーンス警部には、17年前の未解決事件の容疑者が次々殺されてい件が。2つの件が合わさると途方も無い真相が・・・

    ヤバイほど面白かった。家族を殺すと脅されたホフマンがやらされることなどドキドキさせる伏線多数あり、

    ※自分用ネタバレ

    新人警官アメリアが黒幕だった。アルバニアの彼女の父親が武器商人だった。超高性能の銃を大量に仕入れて売る際に仲間割れして殺された。その復讐だった。

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    2022年08月07日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    ピートホフマンのこのシリーズ、もちろん毎回面白いのだが、ホフマンと家族が危険にさらされ…という展開にやや飽きてきたなと思いながら読み始めた。
    しかし本作は真相の意外性といい、独特ながら魅力的なグレーンスの人柄といい、いつも以上に素晴らしかった。

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    2022年08月05日
  • 三日間の隔絶 下

    Posted by ブクログ

    息つく間も惜しんであっと言う間に読み終えた。グレーンス警部シリーズだが、私はホフマンファン。今作はグレーンス警部とホフマンが手を組んで事件の解決にあたる。両者とホフマンの家族が殺人者と相対する緊迫感半端ない3日間が素晴らしかった。

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    2022年07月09日