下倉亮一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。
迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。
しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。
それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。
さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。
犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。
本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。
グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。
しかし、どのように?
この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。 -
Posted by ブクログ
グレーンス警部と潜入捜査員ピートとのW主人公シリーズは当初三部作のはずだった、と思う。三秒間、三分間、三時間で終了するはずだったこのシリーズは、さらに三日間、三年間と続くようで、今回は四作目の「三日間」の物語だ。何はともあれ、作者も多くの読者同様、このダブル主人公シリーズを終えるに忍びない状況となっているに違いない。
迷惑なのは、長年潜入捜査を強いられているピート・ホフマンとその家族だろう。これまでいくつもの死地を潜り抜け、その都度、肉体的・精神的な負担を異常にかけられてきたピートと、そのとばっちりを受けっぱなしの家族に、いい加減平和と幸福をもたらしてほしい気持ちは読者心理の中でも上昇を続けんばかりなのである。
しかし、やはり飛びついてしまう。やはり続編が有難いのだ。ホフマン家には申し訳ないが、またしても息を飲むようなピンチとそこからの脱出を試みて頂きたいのだ。本当に申し訳ないことなのだが。
それはそれとしてグレーンス警部はそもそもが単独シリーズ主人公でもある。この極めて個性的で癖のある、全然格好良くない上、私邸にも帰らず警察署の私室で寝泊まりしているというワーカホリック。頑固で変化を拒まず、年下の上司にも扱いづらく思われている我らがヒーロー。そのグレーンス警部も定年退職まで残すところ一年を切っている状況。
さらに今回の事件はグレーンス警部の心に巣食っている未解決事件の一つに端を発する。17年前、4人の家族が銃殺され、5歳の誕生日を迎えたばかりの少女が死体の遺された部屋で三日間取り残されていた。異常かつ過酷すぎる事件である。当初、ぼくはこの過去の三日間が、タイトルのそれなのかと思っていたが、タイトルの三日間はしっかりと現在のホフマンに対し約束通り与えられることになるのでご安心を。分刻みの時計がネジを巻かれる例の場面はこのシリーズの最大の楽しみである。それでも少女の三日間にも何らかの意味があるかどうか。それはそれで読んでみてのお楽しみ。
犯罪組織の標的となった者たち。彼らが守られる、あるいは彼ら自身で自分たちを守る手段とは、一体何なのだろう。潜入捜査官であるピートは、職務の都度、別の人間になり替わって、犯罪組織の壊滅に貢献してきた人間である。絶対にその正体を知られてはいけない存在。
本書では犯罪者側にピート・ホフマンの正体と家族の情報が漏洩してしまう。家族を隠そうと翻弄するピートばかりか家族情報までが、まるで彼らを翻弄するかのように洩れてゆく。これまでになかった絶体絶命の危機を招いている原因は何なのだろうか? 警察機関内部の敵を疑わざるを得ないという、これ以上ない緊迫した状況のなかで本書は進行する。絶え間ない緊張と、その重圧。
グレーンスの過去の事件の上に、ホフマン一家が現在捉えられている危機とがどう交錯するのかわからないまま、物語はそれぞれに二つの重戦車の如く進んでゆき、思いがけぬラストに繋がる。いつものストーリーテリングが何よりも素晴らしく、その語り口が凝りに凝った仕掛けを支え続けている。タイムリミット型エンターテインメントであると同時に、17年前の家族斬殺事件の意味も明らかになってゆくだろう。
しかし、どのように?
この終始クリフハンガー的状況を、けれん味たっぷりに描く唯一無二の語り口。是非とも手に取って味わって頂きたいと思う。 -
Posted by ブクログ
アンデシュ・ルースルンド『三日間の隔絶 下』ハヤカワ文庫。
グレーンス警部シリーズの第9作。そして、シリーズ内シリーズのグレーンス警部&潜入捜査官ピート・ホフマン・シリーズの第4作。
かつて、北欧ミステリーというと登場人物の名前を覚えるのに苦戦したのだが、本作はサクサクと読める。それは本作が非常に面白いからなのだと思う。
いよいよグレーンス警部とホフマンは事件の核心へと向かう。鍵を握るのは17年前に一人だけ生き残った少女なのか。グレーンス警部の上司、信じていた同僚が事件に関与しているのか……
余りにも悲しい結末。
グレーンス警部とピート・ホフマンが各々が抱える事件と問題を解決するために協力する。グレーンス警部がホフマンを脅迫する相手を特定するために警察への潜入捜査を行い、ホフマンは17年前の銃殺事件の容疑者を次々銃殺する犯人を探し出すことに。期限は僅か三日間。
突然始まる17年前に一人だけ生き残った少女の物語。当時、ザナ・リーライという名前だった少女は証人保護プログラムによりハンナ・オールソンという名前を与えられた。ザナは家族と自分が巻き込まれた忌まわしい過去を取り戻そうとするが……
本体価格1,400円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
アンデシュ・ルースルンド『三日間の隔絶 上』ハヤカワ文庫。
グレーンス警部シリーズの第9作。そして、シリーズ内シリーズのグレーンス警部&潜入捜査官ピート・ホフマン・シリーズ、『三秒間の死角』『三秒間の空隙』『三時間の導線』に続く第4作。2017年にコンビを組んでいたベリエ・ヘルストレムの急逝により、前作に続き、アンデシュ・ルースルンドの単独名義で書かれた作品。
タイトルが三秒間、三時間、三日間と次第に時間軸が長くなっている。次は三年間かな。
警察組織の何者かが、17年前にグレーンス警部が関わった事件を目覚めさせ、やはり警察組織の深部にいると思われる謎の人物が引退した潜入捜査官のピート・ホフマンを再び火中に飛び込ませようとする。二人を動かすのは同一人物なのか……
非常にリーダビリティが高い北欧ミステリー小説。
衝撃の場面から物語は始まる。5歳になったばかりの少女を残し、一家4人全員が銃殺された事件。少女を保護したのはグレーンス警部。
それから17年後。一家惨殺の起きた家に何者かが侵入する事件が発生し、グレーンス警部が現場に赴くと家の床に奇妙な穴が開いていて何かを持ち去った形跡を発見する。グレーンス警部が17年前の事件の捜査資料を確認すると何故か少女に関する資料が消えていた。そして、17年前と同じ銃殺事件が発生し、事件は新たな展開を見せる。
一方、潜入捜査官を引退し、家族と平穏な暮らしを送っていたピート・ホフマンに彼の正体を知るという謎の人物から脅迫状が届き、ホフマンに市場に出回っていない武器を使ってギャングを襲撃しろという命令が下る。家族の命を守るため、再び火中に飛び込むホフマンだったが……
この先、グレーンス警部とピート・ホフマンがどのように関係していくのか。
上巻の終盤の驚愕と怒濤の展開に下巻へと誘われる。徹夜してでも読みたいと思うのだが……
本体価格1,400円
★★★★★ -
購入済み
新しい視点
挫折を繰り返してきた人に読んでもらいたい。太っている自分をはじめて肯定してもらえた。自分と向き合う事、避けていたなと感じたし、自分も自分に自信を持てずに生きてきたと思った。もう一度よく読み直して自分に合う方法を読んでトライしてみようと思いました。
-
Posted by ブクログ
ラーシュ・ケプレル『つけ狙う者(下)』扶桑社ミステリー。
下巻。なかなか読めない連続殺人鬼・汚れた牧師の正体。主人公は次々と考えられない程の窮地に陥る予測不能の展開。よもや主人公が犯人ではないかと疑いたくなるようなプロット。文句なく面白い。
被害者をストーキングし、被害者のプライベートを撮影した映像を警察に送り付けて、残虐に殺害するという犯人の凶行は止まらない。
精神科医のエリック・マリア・バルクは9年前に精神鑑定を行い、殺人事件の犯人として医療刑務所の精神病棟に送致された牧師のロッキー・クルケルンドが無実であったことに気付く。ヨーナ・リンナと共に真犯人の汚れた牧師の正体を追うエリックは、一連の連続殺人事件の犯人として警察から追跡されることに……
ヨーナ・リンナ・シリーズはこれでお仕舞いなのだろうか。
本体価格1,000円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
ラーシュ・ケプレル『つけ狙う者(上)』扶桑社ミステリー。
ヨーナ・リンナ・シリーズの第5作。前作の『砂男』からの続きが描かれる。
扶桑社ミステリーに勢いがあった頃を思い出すような凄く面白いミステリーだ。
全くもって犯行動機不明な卑劣な殺人鬼の犯行が描かれるのだが、主人公のヨーナ・リンナはなかなか姿を見せない。もしかしたら、ヨーナは過去の記憶としてしか描かれないかと思っていると、再び卑劣な犯罪の前に姿を表す。
ストックホルムの国家警察のヨーナ・リンナ警部が失踪後に彼の後任になったの臨月間近のマルゴット・シルヴェルマンは独身女性を盗撮した挙げ句に残虐な手段で殺害する殺人鬼を追っていた。犯人は盗撮した映像を警察に送り付ける大胆な行動を取るが、決定的な証拠は見付からず、泥沼にはまっていた……
二人目が殺害された後に警察は精神科医のエリック・マリア・バルクに協力を仰ぐ。
本体価格1,000円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
ホフマンの妻であるソフィアも、過去に性的な虐待を受けた過去があるのか…でも今後それが語られることは無さそうではあるが。
今作は、小児愛集団の最後の1人の正体がかなり意外な人物だった。
スウェーデン人がスウェーデン語で話し、デンマーク人がデンマーク語で話し、それで会話が成り立つのか?と疑問だったが、スウェーデン語とデンマーク語(とノルウェー語)は文脈次第で通じることがあるという程度には似ているそうで、これまた新たな発見だった。
もう「3」シリーズは本書「3年間」で終わりかと思いきや、続作も本国では刊行済みのようで、どんなタイトルになるか楽しみ…ではなくて、ますます老いが進んだグレーンス警部の体調と、ホフマンを再び引っ張り出すことができるのかという2点が心配。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2024年に読みたい本リストの本だったが、ギリギリセーフ。来年はもっと余裕を持って読みたい。
今回はぺドフィリア(小児性愛者)の犯罪組織が舞台。こういう人たちへの嫌悪感をものすごく感じたし共感もした。前作でもう潜入は最後と言いながらも続編が出たからにはやるんだろうなー、3年も?としたら酷すぎると思っていましたがそんな長さでなくてよかった。潜入の場面がやはり読み応えがありました。不本意ながらもその状況に生きている実感を得ているホフマンもいましたね。
最後の最後に判明した黒幕の正体は衝撃的でした。グレーンズが墓地で出会った女性は幻覚ってこと?それもすごい。次回作も楽しみだが邦題はどうなるのか?