あらすじ
強制売春の被害者が起こした思いもよらぬ事件。グレーンス警部が直面する北欧の闇とは? スウェーデン警察小説シリーズ第二作。
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Posted by ブクログ
スウェーデンの作家アンデシュ・ルースルンドとベリエ・ヘルストレムの共著の長篇ミステリ作品『ボックス21(原題:Box 21)』を読みました。
アンデシュ・ルースルンドとベリエ・ヘルストレムの共著は6年前に読んだ『三秒間の死角』以来なので久し振りですね。
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暴行事件の「被害者」が取った不可解な行動。病院に立てこもった彼女の目的とは――?
〈このミステリーがすごい! 第一位〉の『熊と踊れ』著者が、大反響の『制裁』に続けて放つ、北欧警察小説の真骨頂!
リトアニア人娼婦のリディアは斡旋業者から激しい暴行を受け、病院へと搬送された。
意識を取り戻した彼女は突如思いがけない行動に出る。
医師を人質に取り、地階の遺体安置所に立てこもったのだ。
同院内で薬物依存患者の殺人事件を捜査していたグレーンス警部は、現場で指揮を執ることになるが……。
果たしてリディアの目的は? そして事件の深部に秘められた、あまりにも重い真相とは何か? 大反響の北欧ミステリ〈グレーンス警部〉シリーズ第二弾
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本作品はストックホルム市警のエーヴェルト・グレーンス警部とスヴェン・スンドクヴィスト警部補が活躍するシリーズの第2
作……2005年(平成17年)に発表された作品です、、、
本シリーズを読むのは、第1作の『制裁』、第3作の『死刑囚』、第5作の『三秒間の死角』に続き4作品目……重いんですけど、本作も物語として愉しめました。
強制売春の被害者が起こした思いもよらぬ事件……グレーンス警部が直面する北欧の闇とは? スウェーデン警察小説シリーズ第2作。
冷夏のストックホルム、アパートの一室で鞭で打たれた意識を失った売春婦リディア・グラヤウスカスが発見される……同じ日、ヘロイン依存症の男ヒルディング・オルデウスが覚醒剤に洗剤を混ぜて売りマフィアの怒りを買うことに、、、
翌日、ふたりの軌跡がストックホルム南病院で交わる……恥辱を晴らそうとするリディア、恥辱で薬を忘れようとするヒルディング、そして残虐な暴行殺人事件と、医師を人質に取った立て籠もり事件が同時に起こる というサスペンスフルな展開なのですが、旧ソ連や東欧からの女性の人身売買・強制売春や麻薬中毒、目撃者の証言を覆い隠すための暴力や脅迫等の社会問題、社会の病理がリアルに描かれており、テーマとしてはとても重たい作品でしたね。
印象的だったのは衝撃的な結末……読みながら「もしかして」という予感はあったのですが、まさかと思っていた不幸な予感が的中しちゃいました、、、
ハッピーエンドで終わらないところにリアリズムを感じましたねー エーヴェルト・グレーンス警部やスヴェン・スンドクヴィスト警部補の決断については、賛否両論意見が分かれる部分だと思います……この展開に驚き、憤りを感じつつ、これが現実なのかなー とも感じました。
本シリーズ、他の作品もぜひぜひ読みたいです。
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スウェーデンの警察小説シリーズ第2弾。
今作もグレーンス警部はボヤキまくりの怒鳴りまくりで、挙げ句の果てに証拠品を私情に駆られて破棄してしまうし、かなりのダメっぷり。
人身売買屋に騙されてリトアニアからスウェーデンに連れてこられて売春をさせられている女性が、入院した病院で人質を取って立てこもるというストーリー。
グレーンス警部をはじめストックホルム市警察所属の登場人物のダメっぷりは全く褒められたものではないということはともかく、小説としてはテンポ良い展開にグイグイ引き込まれて読み進められる。
Posted by ブクログ
「制裁」以上に、夢中になって読んだ。
満員電車に乗るのが全く苦にならないほど。
なんだったら、この本が読めるから電車に乗るのが待ち遠しかったほど。
恋人(だったのか?本当に)に裏切られ、船内で殴られた瞬間に希望が粉々に打ち砕かれ、自分の身体が自分のものではないと思いながら、絶望の日々を過ごすリディアを思うと、胸が締め付けられる。
リディアの命とプライドを賭けた立て篭もり、真実が白日の元に晒されて欲しかった。
彼女の心が壊れることと引き換えに保持していた「ボックス21」、このタイトルにも胸打たれる。
しかもこの売春斡旋はフィクションではない。
こんなに辛すぎる思いをする女性は、この世にただの1人もいてほしくない。
そしてラスト3行の衝撃。
「だからコイツやって言ってたやん」と誰にともなく独り言。分かってはいたもののやはり衝撃。
Posted by ブクログ
グレーンス刑事シリーズ第二弾。
相変わらず重く、苦しく、辛い、だけどずっと読んでいたい。そんなザ・北欧小説という感じ。
売春斡旋業者から大怪我を負いながらも逃げ出した女が、病院の死体安置所に人質を取って立て篭もる。要求はグレーンス刑事の親友と話をすること。なぜ人身売買により他国から売られた女が、立てこもり事件を起こすのか。一方、グレーンス刑事の恋人が脳に障害を持つきっかけとなった事故。その事故を誘引した犯罪者が刑期を終え出所することに。。。
今作も2部構成。売春婦リディアが起こした立て篭もり事件の顛末と、そのことで明らかとなったある真相をめぐる二人の刑事の苦悩が描かれる。
真相については途中でなんとなく察することができる。ラストについても同様。ただ、物語の構成が素晴らしく、読んでいても全く飽きがこない。
救いはなく。希望も叩き折られる。だけど、素晴らしい小説。
ボックス21とは何か。題名もとても秀逸。
Posted by ブクログ
【ネタバレ】
不愉快な結末、予想を覆す…と煽っているものの、想定の範疇のラスト、主人公たちの不実…、こう書くと駄作極まりない作品のようだが、小説としてはオモロいのである。
主人公だから、有能な警察官だから、過去の不幸と戦い正義を貫こうとする人物だから…といってその人物の行動すべてが正しいわけではないのである。
その人物が義や仁や情に基づいて行動したとしても、それが万人にとっての義や仁や情に当てはまらないこともままあるのである。
「不愉快な話」=「面白くない作品」
多くの場合この指標は成り立つのだが、この作品はイコールではないと証明している。不愉快だがオモロい。憤りはすごく感じるが読ませる。だからこその☆5つである。
しかし、この2人(エーヴェルトとスヴェン)は、この後、どの面下げて警察官をやっていくのだろう。不愉快ながら楽しみである。
Posted by ブクログ
これと似た現実が世界にはいくらでもあるんだと思うと、作者には、愚かな警官2人の代わりに現実を綴ってくれてありがとう、という気持ち。
リディアとアレナの声を胸に刻む。二度とこんな事が起こらないように、とリディアが命をかけた翌日に新しい2人。あり得ないけどこういうことはきっと今も起こっている。有能な警部でもこういうことをし得る、ということも作者のメッセージの1つ。
Posted by ブクログ
いま流行りの?北欧の警察小説。北欧物の英米物との違いは、主人公がやたら泥臭い事。英米物にも泥臭い主人公はいるにはいるが、北欧物の場合、警察官と言う職業を感じさせないほど、ものすごく泥臭い。そしてもう一つ北欧物の特徴(?)は、なんとなく漂うその“暗さ”。暗いのは、北欧の気候を反映しているんですかね?そのの泥臭さと、暗さで、なんとも言えない全体的な雰囲気が形作られている。
そしてこの作品、最後の2行が衝撃的。頭のどこかで、そうなることをうっすらと感じてはいたんですが、文字にして読んでみると、ものすごく衝撃的です。いやぁ、なんだかな。
Posted by ブクログ
「制裁」の刑事達が登場するシリーズ二作目
前回同様、読み終えた時の
現実の問題を突きつけられた重みが凄い。
前回のあとがきにもあったように、物語はフィクションではあるが、モデルになった人。事件事象は存在している事実。
そして日本でも同様の問題がある事実。
ラストの終わり方は途中で予想が出来たけど
「そうであって欲しくない」という
思いのまま読み進めて、嫌な汗をかいていたら
放り投げられてしまった。
登場人物紹介の並び順が、刑事達をメインにしていないあたりがにくい。
過激な方法で目撃者から証言を得ようとするベテラン刑事に、汚れ仕事をさせていると自覚していながらも自分では一歩踏み出せないパートナー
彼にも決断しなくてはならない場面が回ってくるあたりが好き。
Posted by ブクログ
最後の3行に、、、帯の煽りは期待せず読んでいた。
最初から最後まで重苦しく、緊張感ある展開。それでいて読みやすく、一気に読める。
破綻もなく、最後まで一気に持っていかれた。
女である身としては、なんども繰り返される苦しい描写がなんとも辛かった。
そして、最後の3行には、、、、久しぶりに心底驚き、その余韻に浸りました。1作目も読もうと思います。
Posted by ブクログ
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム『ボックス21』ハヤカワ文庫。
北欧社会の闇を描いた警察小説の傑作。ランダムハウス講談社より刊行されたグレーンス警部シリーズ第2作が復刊。本作のラスト3行の衝撃はフィリップ・マーゴリンの『黒い薔薇』にも優るとも劣らない。
売春斡旋業者から激しい暴行を受け、病院に搬送されたリトアニア人娼婦のリディアが取った思いも寄らぬ行動は事件の真相へと…
ランダムハウス講談社版で既読であるのだが、これから刊行されるであろう未訳作品に期待を込めての再読。
Posted by ブクログ
グレーンス警部シリーズ第二作。リトアニアから騙されて売られた売春婦が、病院の遺体安置所に人質とともに立てこもる。社会に対する怒りや悲しみに満ち、気持ちを揺さぶられる小説だ。
北欧ミステリー独特の暗さや残酷さ、濃厚な人間模様も味わって読んでほしい。
Posted by ブクログ
シリーズ最初から再読している最中、もちろんタイトルだけで内容を思い出すのは無理なのだが読み始めると記憶がよみがえって二度目ならではの細部の読みも深くなる。それにしても2作目は後味の悪さがどんよりと立ち込めて気持ちが悪い。後でこれも決着がつくのだろうか、楽しみに読み進めたい。
Posted by ブクログ
続きが気になって一気読み。
胸糞悪い終わり方は小説ならではなのかな。。。
テレビドラマでは味わえない喪失感。
読み終えて少し立ってから気づいた。
レーナは夫が死んだ翌日に、新しい少女の仕入れに出向いているのでは。。。
Posted by ブクログ
エーヴェルト警部シリーズの2作目。
北欧社会に蔓延る闇を主に話が進み、結末は…。
嫌な読後感だけれど、物語が、世界全体に蔓延る闇を描いているようで、気持ちに突き刺さるものがある。
北欧社会の社会が抱える闇は、東欧諸国にもつながり、そして、日本にも蔓延っている…。
世界全体の問題。
シリーズ3作目を読むつもりだが、エーヴェルト、スヴェンともに、心に深い傷をもったまま、仕事をしていくことになるのか…。
Posted by ブクログ
東欧における女性の人身売買問題は西欧だけでなく、日本も大きなマーケットの一つのようだ。
騙して借金させ、異国の地でその返済のために毎日十数人との売春を行う。
その重いテーマを単なる犯罪ミステリーとして描くのではなく、「恥」として登場人物たちの気持ちの中に深い自責の念を呼び起こす。ラストも秀逸。
Posted by ブクログ
元服役囚ベリエ・ヘルストレムと作家アンデシュ・ルースルンドの描く事件は、現在のスウェーデンでの深刻な病理を浮き彫りにする。
フィクションでありながら、現実の社会の闇でもある人身売買と強制売春の悲しい事件に取り組むグレーンス警部もまた、時代が生み出したかのようなモンスター級の犯罪者によって引き起こされた、やるせない過去を抱えながら生きている。
彼の過去と、それを引きずりながらの痛々しいまでの現在の生活が、シリーズの中で徐々に明かされていくほどに、読み手の切なさは増していく。
不完全燃焼のような今回の事件の終わり方。この先のシリーズの中で、解決の展開を見せるのか?!
Posted by ブクログ
北欧ミステリらしさはあるものの、この展開はどうなんだろう?しかし、1人の人間が何においても間違わず正しいというのは読み手の私がそう思い込んでいるんだろう等々様々な思いが去来。
「恥」がテーマになってるようだけど、私から見たらそれは「恥」とは思わなかったりして、「恥」の範疇は人によって違うぞと。作者が「恥」とか社会問題に気をとらわれすぎて、物語が少しブレているような気もする。あとグレーンス警部って前からこんなヒステリーおじさんだったかな?
いろんな?マークが浮かんでくるので、次の「死刑囚」も読もうと思う。
Posted by ブクログ
エーベルト・グレーンス警部シリーズ第二作。
もはや苦行だ。
相変わらず苛烈な暴力の描写に、
正義の無力さ、人生の虚しさの熱帯雨林をかき分けて前進するような苦行。
その行程の果てにあるものは、
心洗われる大瀑布でもなければ、
失われた古代遺跡でもない。
前作で登場した囚人が刑務所から出所して話ははじまるが、
そこに外国から騙されて連れてこられた売春婦たちがからんでくる。
酷い暴力の被害者の彼女が、銃と爆弾を持って立てこもった目的はなにか。
グレーンス警部と囚人の因縁が明らかになり、
自分の恋人に重傷を負わせ人生を破壊したその犯罪者を、
傷害からくる事故死を殺人の罪で追い込むのはまだ良いとして、
亡くなった刑事仲間の犯罪を隠蔽するのは納得できない。
著者という現地の案内人に連れられ、
蚊やヒルに襲われ夜に怯えながら進んだ
密林の奥にあったのは、
馬をも飲み込む底無し沼だった。
人の心の闇という名の。
いや、ここが終着点ではないのかもしれない。
救いは次の作品にあるのかも。