ベリエ・ヘルストレムの一覧
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ユーザーレビュー
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スウェーデンの作品の翻訳である。本作はストックホルム警察のエーヴェルト・グレーンス警部が活躍するシリーズの一冊ということになる。シリーズの途中から、凄腕の潜入捜査員であるピート・ホフマンが登場している。作品はグレーンス警部が主要視点人物になる部分、ホフマンが主要視点人物になる部分、その他の作中人物達
...続きを読むが主要視点人物になる部分が織り交じって展開する。本作もその形が踏襲されており、ホフマンの部分とグレーンス警部の部分とが織り交じるようになって行く。
本作の上巻ではこのグレーンス警部の出番は少し少ない。
物語はコロンビアの様子から起こる。ストリートに生きる少年の様子が描かれる序章の後に本編が始まる。エル・メスティーゾと呼ばれる、コカインを方々に売るようなことをしているゲリラ組織の幹部の傍に、ボディーガードでもある側近の欧州人の姿が在る。「スウェーデン人」という意味のエル・スエコという通り名で知られ、北欧の何処かの国の出身らしいが詳しい素性は判らない。このエル・スエコという人物の正体がピート・ホフマンだ。
スウェーデンを出国したホフマンは、ストックホルム警察の犯罪捜査部長であるエリック・ウィルソン警視正が国際研修で知り合った米国DEA(麻薬取締局)のスー・マスターソン長官の仕事を請けることになった。コロンビアの麻薬組織の情報を潜入捜査員として伝え、大規模な麻薬取引を阻み、コカインを精製するプラントを攻撃する手引きをしているのである。
そういう他方、米国ではティモシー・クラウズ下院議長が、麻薬撲滅作戦を推し進めていた。クラウズ下院議長は麻薬に溺れてしまった娘を喪った経過が在る。他界した時に娘は24歳で、そういう悲劇の根を絶つべく、クラウズ下院議長は麻薬対策に努力し、コロンビアに展開した対策部隊の現場視察にも積極に出掛ける程に入れ込んでいた。
そんな或る日、「問題」は生じた。現地視察をしていたクラウズ下院議長が誘拐されてしまい、生死不明になってしまった。米国政府は、トランプの13枚のカードに見立て、コカインを方々に売るようなことをしているゲリラ組織の幹部の名を挙げ、順次彼らを抹殺すると宣言した。その13枚のカードに見立てたリストに「エル・スエコ」が入っていた。
米国のスー・マスターソン長官から報せを受けたエリック・ウィルソン警視正は驚き、何とかしたいと思う。そんな事案に取組もうとしていた時、酔っ払いとの揉め事が拗れて拘置所に入れられてしまったグレーンス警部を、上司として貰い受けるようにという妙な話しが生じる。グレーンス警部を貰い受けたウィルソン警視正は、グレーンス警部に頼むことにした。「エル・スエコ」ことホフマンの支援をである。
Posted by ブクログ
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グレーンス警部という人物は、ストックホルム警察の現役捜査員では最年長というような年代で、一緒に居て愉しいというタイプでもない偏屈な男であり、事故で植物状態になった妻が長く施設に在って、その妻が亡くなってという複雑な個人の事情も在るのだが、執念深く捜査に取組む非常に老練で辣腕の刑事である。少し不思議な
...続きを読む人物という感じがしないでもない。現場に出る、私用で出るという以外は、自宅アパートか警察本部の自室に居ると言われているような変わり者なのだが、勘と“押し”で事件関係者に迫って、事件を解決に導く手腕はなかなかに見応えが在り、シリーズで描かれる「社会の闇」にも関わる、見た目以上に重大な真相に肉薄するのである。
下巻は目が離せない展開が続く。
グレーンス警部はコロンビア現地や米国を密かに訪ね、独特な“押し”で関係者と色々と話し合いながら、ウィルソン警視正が何とかしようとしているホフマンの事案に取組む。
グレーンス警部はホフマンを間接的に知っていた。スウェーデンでの荒稼ぎを目論むポーランドのマフィアへの対策に係る潜入捜査作戦でホフマンが活動していて、刑務所内で事件が発生してしまった時、グレーンス警部は警官隊の指揮を命じられて現場に入ったのだった。ホフマンを射殺せよという話しになったのだが、射殺は果たせなかった。やがて、ホフマンが脱出したらしいということはグレーンス警部も把握はしていた。
そういう縁が在るホフマンを、グレーンス警部は何とか支援しようとする。ホフマンの側は、「処刑リスト」から逃れるべく、独自にクラウズ下院議長の一件に尽力しながら、何とかグレーンス警部と共に脱出を図ろうとした。グレーンス警部は、スウェーデンでホフマンが積み残している問題の軟着陸を思案する。
こういうようなことでダイナミックに展開する物語で夢中になってしまった。これまでのシリーズ作品とは、少し色合いが異なるかもしれない。が、凄く面白い!!
Posted by ブクログ
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グレーンス刑事シリーズ第二弾。
相変わらず重く、苦しく、辛い、だけどずっと読んでいたい。そんなザ・北欧小説という感じ。
売春斡旋業者から大怪我を負いながらも逃げ出した女が、病院の死体安置所に人質を取って立て篭もる。要求はグレーンス刑事の親友と話をすること。なぜ人身売買により他国から売られた女が、立
...続きを読むてこもり事件を起こすのか。一方、グレーンス刑事の恋人が脳に障害を持つきっかけとなった事故。その事故を誘引した犯罪者が刑期を終え出所することに。。。
今作も2部構成。売春婦リディアが起こした立て篭もり事件の顛末と、そのことで明らかとなったある真相をめぐる二人の刑事の苦悩が描かれる。
真相については途中でなんとなく察することができる。ラストについても同様。ただ、物語の構成が素晴らしく、読んでいても全く飽きがこない。
救いはなく。希望も叩き折られる。だけど、素晴らしい小説。
ボックス21とは何か。題名もとても秀逸。
Posted by ブクログ
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スウェーデン作家「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の共著の長篇ミステリ作品『制裁(原題:Odjuret)』を読みました。
「ステファン・トゥンベリ」との共著『熊と踊れ』に続き「アンデシュ・ルースルンド」作品です… 北欧ミステリが続いています。
-----story------
...続きを読む-------
北欧ミステリ最高の警察小説〈グレーンス警部〉シリーズ第一作
凶悪な殺人犯が護送中に脱走した。
市警のベテラン「グレーンス警部」は懸命にその行方を追う。
一方テレビの報道を見た作家「フレドリック」は凄まじい衝撃を受けていた。
見覚えがある。
この犯人は今日、愛娘の通う保育園にいた。彼は祈るように我が子のもとへと急ぐが……。
悲劇は繰り返されてしまうのか?
北欧ミステリ最高の「ガラスの鍵」賞を受賞した人気シリーズ第1作。
著者本人による改稿を反映した決定版。
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本作品はストックホルム市警の「エーヴェルト・グレーンス警部」と「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」が活躍するシリーズの第1作… 2004年(平成16年)に発表された作品で「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」のミステリ作家デビュー作です、、、
フィクション作品なんですが、ノンフィクション作品だと言われても納得感のあるくらいの現実感と緊迫感を兼ね備えた作品で、しかも、単なるミステリ作品に留まらず、司法制度や刑務所の問題点を鋭くえぐり出す社会派小説に仕上がっており、特に中盤以降は胸を締めつけられるような感覚を覚えながら、ページを捲る指を止めれない… そんな印象深い作品でした。
4年前に二人の女児を凄惨な手口で暴行・惨殺した罪で服役していた囚人「ベルント・ルンド」が護送中に逃走… 再び幼い少女が犠牲となる可能性があり、ストックホルム市警は総力を挙げて行方を追う、、、
ベテランの「エーヴェルト・グレーンス警部」も相棒の「スヴェン・スンドクヴィスト警部補」とともに捜査に加わる… そんな中、五歳の娘「マリー」を保育園に送り届けた作家の「フレドリック・ステファンソン」は、保育園の門の前のベンチにどこかで見覚えがある男がじっと座っているのを目撃していた。
その後、テレビで「ルンド」が逃走した報道を見た「フレドリック」は凄まじい衝撃を受ける… 愛娘の通う保育園の前にいたのは「ルンド」だったのだ、、、
「フレドリック」は我が子のもとへ急ぐが、悲劇は繰り返されてしまう… 失意のどん底に放り込まれた「フレドリック」だったが、「ルンド」が更なる犯行に及ぶ可能性が高いことを知り、新たな犠牲者が出ることを防ぐため義父の遺品である狩猟用ライフルを手にして、「ルンド」が出没すると思われる保育園へ向かう。
そして、「フレドリック」はターゲットの幼児を狙う「ルンド」を発見… 保育園を警備していた警察官には一言も声をかけないまま、「フレドリック」はライフルの引鉄を引く、、、
「フレドリック」の行動は、マスコミによって大々的に喧伝され一部の人々からは英雄視され、世間から注目される、
娘を失った悲しみをともにする人々、
理由は何であれ、人殺しは人殺しでしかない、と考える人々、
社会が始末できなかった人間を始末して、社会を守った、その勇気をたたえる人々、
復讐を目的とした殺人であったことは明らかだ、だから見せしめのためにも長期刑にすべきだと考える人々、
あらゆる人々の目が「フレドリック」に向けられる。
さらに、地方裁判所で正当防衛による無罪判決が下されたことに刺激を受けた大衆は、画一的且つ曖昧な正義への使命感に昂揚・熱狂する。
性犯罪者への強い憎しみが渦巻く地域で、それぞれが駆り立てられるようにして起こした行動が、思わぬ結果を招く… 国家体制・機能への不信と憤りをもった人々は、警察を無視した性犯罪者狩りを始め、私刑はエスカレート、制御不能となる、、、
或る瞬間を堺に、異常へと変わる日常… 極めて粗暴な制裁が下層社会までまかり通り、悪夢のような憎しみの連鎖が展開される。
そんな中、地方裁判所で一旦、無罪の判決を受けた「フレドリック」だったが、検察側の控訴により控訴裁判所で再審が行われ懲役十年の判決を受ける… そして、「フレドリック」は、入所したアスプソース刑務所で幼児性愛者と誤解され、そこにも悲劇が、、、
犯人逮捕後の、殺人者をどう裁くかという罪と罰の命題に焦点があてられた作品でしたね… 犯人逮捕で一件落着ではなく、社会的な影響も含めて、罪に値する罰に何が相応しいかということを考えさせられた作品でした。
原題の『Odjuret』って、直訳すると『怪物』 『野獣』という意味なんだそうです‥ 一見、怪物は凶悪犯で更生の見込みのない殺人者「ベルント・ルンド」であることは明らかなのですが、、、
物語が進むにつれて、怪物は他の人々にもとりついているように見えるんですよね… 他人の命を奪うことで、子どもの命を守れるとしたら、そうすべきなのか? 人の生命の価値を、同じ人間が決めてしまうことは、果たして許されるのか? それが許されるとき、怪物が生まれるのではないか? 考えても、考えても、答えの出ない難しい命題だと感じました。
読んでいて苦しくなる… 胸を締めつけられるような感覚が離れない作品でしたが、、、
それでも、「アンデシュ・ルースルンド」と「ベリエ・ヘルストレム」の作品を次も読みたいと思います。
以下、主な登場人物です。
「フレドリック・ステファンソン」
作家
「マリー」
フレドリックの娘
「アグネス」
フレドリックの元妻。マリーの母親
「ミカエラ・スヴァルツ」
フレドリックの恋人。保育園職員
「ダヴィッド・ルンドグレーン」
マリーの友人
「レベッカ」
フレドリックの知人。牧師
「ベルント・ルンド」
アスプソース刑務所に服役中の連続殺人犯
「レナート・オスカーション」
アスプソース刑務所の性犯罪者専用区画長
「スティーグ・リンドグレーン(リルマーセン)」
アスプソース刑務所の一般区画の囚人
「ヒルディング・オルデウス」
アスプソース刑務所の一般区画の囚人
「ヨッフム・ラング」
アスプソース刑務所の一般区画の囚人
「ドラガン」
アスプソース刑務所の一般区画の囚人
「スコーネ」
アスプソース刑務所の一般区画の囚人
「ホーカン・アクセルソン」
性犯罪者
「ラーシュ・オーゲスタム」
検察官
「クリスティーナ・ビヨルンソン」
弁護士
「シャーロット・ヴァン・バルヴァス」
判事
「ルードヴィッグ・エルフォシュ」
法医学者
「ベングト・セーデルルンド」
タルバッカ村の建設業者
「ヨーラン」
ベングトの隣人
「エーヴェルト・グレーンス」
ストックホルム市警警部
「スヴェン・スンドクヴィスト」
ストックホルム市警警部補
Posted by ブクログ
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アンデシュ・ルースルンドのグレーンス警部シリーズ第1作。初読。
冒頭の残酷描写から始まり、ただただ胸糞悪い展開が続く。読んでいて辛かった。。。鬱々としたストーリーではここ最近では一番かも。これぞ北欧小説だなぁと。
冒頭に脱獄する犯罪者がとんでもない化け物(原題も「怪物」のようなニュアンスらしい)
...続きを読む。あまりにも理解できない、意思の疎通もできない、どうしようもない怪物。その犯罪者に狙われた娘と、その父親の顛末が描かれる。。。と思いきや。中盤以降、全く予想もしていなかった展開に。憎しみの連鎖というか、悪い方向に転がり落ちていくってこういうことだよなと。読み終えて、邦題の「制裁」に納得。
あまりの報われなさと意外な展開は非常に良かった。が、グレーンス警部が全く活躍しない笑。デビュー作らしいので、シリーズ化する考えがなかったのかも。ミステリ要素もほぼないため、その点だけ気になった。
Posted by ブクログ
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