【感想・ネタバレ】地下道の少女のレビュー

あらすじ

冬の朝、43人の子供が市内に突然現れた。ほぼ同時に、病院の地下で女性の死体が発見される。〈ガラスの鍵〉賞受賞シリーズ最新刊

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Posted by ブクログ

スウェーデンの名前が最初よくわからなかったけど、4冊目ともなると慣れて、人物名を聞いてパッと人物像が浮かぶようになった。ハッピーエンドとか、まったく考えてないラストは、お前ならどうすると問いを投げられた気がして落ち着かない。というかさー、子供捨てる?お金の価値が人より高いんだろうねー
そういう考えに染まらないように。グレーンス警部には幸せになってほしいと毎回思う。95

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2024年10月24日

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ネタバレ

表向きにはいないということになっているスウェーデンのストリートチルドレン。だけど現実に地下にたくさん存在している。誰からも探してもらえない人がいるということ。子どももいるということ。ひとつの殺人と43人の子どもが路上に置き去りにされる事件。このふたつの事件の捜査から地下へと続き、スウェーデンや近隣でのストリートチルドレンの問題が表面化していく。グレーンスの癇癪や独断で動く捜査や一匹狼なところは相変わらずで、でもシリーズのなかで重要な位置になりそうな今作。大きな社会問題とグレーンス個人の問題を抱え苛立ちが募る。このシリーズは重い問題を扱っていて読み心地がいいとは言えないけれど読むことをやめれない。

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2019年03月06日

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 現実に即して書こうと意図した作品には、すっきりした終わりはない。小説題材となる現実を、普遍的な形として世界の記憶に留めようと意図する作家は、読者が求める単純化に応えることは容易にはできない。何故なら現実が抱える問題は、今もなお解決を見ることなく、ずっとそこにあり続けるものであるからだ。だからこそ、この種の作品はどこかで必要とされ、そして誰かに読まれる時を待つ。

 これは子供たちの物語だ。家族に捨てられたり、家族から逃げ出したり。ストリート・チルドレン。北欧では冬を越すためにシェルターや施設に逃げ込む者、連れ戻される者もいる。しかし帰りたくない、逃げ続けたい子供たちの一部は、何と地下道に居住している。地下道で火をおこし暖を取り、暗闇の中で何年も生きる子供たちと、共存する初老の世捨人たち。福祉国家として名を馳せるスウェーデン。そんな国でも公営機関はその種の人々の存在を認めようとせず、見た目の数字だけを誇りに虚像の上に座り込んでいる。

 どこかの国と同じだ。日常的に虐待を受けている少女が、学校や児童相談所に自らの危険を顧みず訴えたにも関わらず、最も危険な家族のもとへ帰されてしまった今年初頭の事件。他人事でしかない問題を、書類という形で右から左へ送るしか能のない公職という実態。逃げ出すべき地下道を見出すことなく、父親に殺されてしまった少女。まだまだ発見されぬこの手の事件がこの国にはもうないと誰に言えよう。日本にも家庭から追い出されたり逃げ出したりしてストリート・チルドレンとなった子供たちが皆無だと誰に言えよう。日本の都市の地下道にも少女たちが隠れ住んでいないと誰い言えよう。

 そうした事件の一方で、ルーマニアから来たバスがストックホルムの街で、ある冬の朝、43人の薬物中毒の子供たちを放り出した。これも真実の出来事。作家はこれに脚色を施し物語の一方に加える。

 シリーズならではの三人の刑事の書き分けも見事だ。60歳を間近にしたエーヴェルト・グレーンス。頑固者を通り越し、もはや偏執狂のサイコパスの領域にありそうなヴェテラン刑事。アンニの病状の変化にぐらつく中でめった刺しにされた女性の殺人事件を追う。妻と息子との生活と刑事としての職務の間のバランスを取り切れていないかに見えるデリカシー溢れる刑事スヴェン・スンドクヴィストは本書ではその人間味をひときわ光らせてみせる。さらに新米捜査官なのにエーヴェルトのお眼鏡にかなった有能な女性刑事マリアナ・ヘルマンソンはルーマニア移民の子として、街頭に捨てられたルーマニア孤児43人の事件を独りで追う。

 二つの事件で、親に捨てられ、薬漬けにされ、精神や肉体を侵された子供たちが多く登場したり、刑事たちがそれを目撃したりする。多くの悲劇が背景にあるのにそれに眼を背ける国の中で、小説が何をできるのかを証明しつつ、絶妙のストーリーテリングで現在と三日前からの過去を往還しつつ、読み始めたら止まらないスピード感と面白さ。今に始まったことではないが、ラストシーンでの驚愕のどんでん返し。暗い題材に眼を向けながらも、飽くまでエンターテインメントとしての王道を行く、本シリーズの価値、健在なり!

 付記:同様の恐怖を感じさせられた作品として、香納諒一作品『絵里奈の消滅』を紹介しておきたい。ある少女の生死自体が社会に痕跡を残さないという事件を題材にしており、ハードボイルド・エンターテインメントとしても秀逸である。

 蛇足:本書で設定されている現在は偶然ぼくの誕生日の一日である(1月9日)。勝手ながら個人的な運命を感じた次第。最近、ぼくは運命というものを心の片隅で感じ始めているように思います。

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2019年03月02日

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ヒステリーおじさんグレーンスシリーズ4弾。
スウェーデンの病院とかの地下には地下通路につながる扉があるってどういうこと?戦争時代の防空壕的なものかな。
家庭のトラブルで家出した少女たちがこういう地下で生活したり、よその国から親のいない子が大型トラックで来て捨てられたり、北欧5か国ってそれほどいい国じゃないね~世界見渡してもどの国も一長一短あるよね~みたいな視野を手に入れられます。

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2025年11月07日

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 今回もスウェーデンの社会問題を深く掘り下げた作品であり、罪を犯した人間・罪を重ねる社会問題の原因を追い求めようとする者たちの話ではあるが、、、何にも増して、グレーンス警部の人生が切ない!ミステリーというよりも、彼が抱える〝喪失感”が大き過ぎて、人生小説として読んでしまう。切ない(泣)切なくてたまらない(泣)

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2025年10月09日

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ネタバレ

ストックホルム市警シリーズ第4弾。
このシリーズはグレーンス警部たちの活躍ぶりを楽しむものではなく、「(スウェーデンの)社会はこんな問題を抱えていますよね」と提起するもので、今回のテーマはストリートチルドレン。
家出した少女が、自分を探しに来た母親を刺し殺し、その死体を遺棄しに行く時に母の死体へ唾を吐く…というシーンは、読んでいて非常に胸が痛む。
ルーマニアからバスで運ばれてきた43人の子供がストックホルム市内で置き去りにされるという集団捨て子事件も並行して発生し、その顛末も痛ましいが、グレーンス警部のプライベートにも前作から一変して不幸が訪れたり、もうお腹いっぱいと言うか、さすがに詰め込み過ぎかなと感じた。

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2025年02月02日

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今回も社会問題を含んだ話。
グレーンス警部辛いなー。けど情緒不安定過ぎて仲間も辛いよなー。
最近読んだミステリも移民を大量にトラックで運ぶ話があったけど、ヨーロッパではよくある社会問題なのか。

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2021年11月26日

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うーん。

このシリーズはいつもそうなんですが、ハッピーエンディングではないです。北欧の曇り空のような、重い結末です。この作品もそうです。

興味深かったのは、ストックホルムの地下世界ですね。米ソ冷戦華やかなるころに整備されたものだと思うんですが、地下には軍用のトンネルまで整備されているんですね。寒い北欧なので地下で行動できるのは有用ですが、それだけではなく、核戦争の事も想定しての事だと思います。

いやぁ、それにしても、このシリーズ面白いですね。

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2021年03月30日

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舞台はスウェーデン。
読後は少し消化不良気味となった。
複数の話が平行して流れるがどちらも未解決で終わる。
フィクションとノンフィクションが絡み合っていて複雑な社会問題を浮き彫りにしている。

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2020年10月11日

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ネタバレ

エーベルト・グレーンス警部シリーズ第四作。

ルーマニアからバスで運ばれてきた少女たちと
ストックホルムの地下道に住む少女。
二つの国のストリートチルドレンたちの事件は、
驚くことに、全く交わらない。

スェーデンのミステリーは国際的だ。
国境をひらりと超えていく。
橋を渡れば、フェリーに乗れば、
すぐ隣の国に行ける。
EUとなった今では検問もない。
自分が思う「国際的」とは違う気がする。
国をまたいでおこる犯罪に警察は無力だ。
その無力感が、このシリーズの通奏低音なのだろうか。
エーヴェルト警部の恋人も亡くなってしまったし。

教会に少女がたたずむ場面が印象的だった。
クララ教会、行ってみたい。

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2020年07月09日

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圧倒的なリアリズムと構成力。過去と未来を頻繁に行き来しながら、行き着くところは絶望か、それとも希望なのか。
このシリーズの根底に流れる「復讐」をテーマに「貧困」が絡んで、先進国の大都市であるストックホルムの「裏社会」が浮かび上がる。筆者もあとがきで記しているが、部分的には「真実」であるという。
このリアリズムとこの仕事しかないと「命」をかけて人生割り切っているグレースン警部の悲しさが、なんとも言えない読後感となって心の中に残る。

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2020年04月21日

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『制裁』『ボックス21』『死刑囚』に続く 北欧の傑作ミステリ!
強い寒波に震える真冬のストックホルム。バスに乗せられた外国人の子ども43人が、警察本部の近くで置き去りにされる事件が発生した。さらに病院の地下通路では、顔の肉を何カ所も抉られた女性の死体が発見された。グレーンス警部たちはふたつの事件を追い始める。難航する捜査の果てに、やがて浮かび上がる、想像を絶する真実とは? 地下道での生活を強いられる人々の悲劇を鮮烈に描く衝撃作。

シリーズ第四作がいよいよ翻訳で読める。この重苦しさ、たまりません。

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2019年07月15日

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アンデシュ・ルースルンド、ベリエ・ヘルストレム『地下道の少女』ハヤカワ文庫。

北欧の社会派ミステリー。グレーンス警部シリーズの本邦初翻訳作品。

奇妙な事件。真冬のストックホルムでバスに乗せられた43人の外国人の子供が置き去りにされ、病院の地下通路から47ヵ所も刺され、顔面を何ヵ所も抉られた女性遺体が発見される……

事実に基づいた事件を題材にしているらしいが、背景が余り詳しく描かれず、今一つしっくり来なかった。グレーンス警部の奮闘の割には呆気ない幕切れ。

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2019年03月02日

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バスから捨てられた子供たちの事件と地下で暮らす人々は別物だった。なんか最後繋がるのかなと思ってたけど。

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2025年03月31日

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グレーンス警部シリーズ4作目。真冬のストックホルムに43人の子供が置き去りにされる。同時に地下道で起きた殺人事件。チームはそれぞれの事件を追いながら、世の中の理不尽と向かい合う。
北欧ミステリーらしい、重く深いテーマ。普段は気難しく身勝手なグレーンス警部の、弱者に優しさしまなざしも垣間見られる。読後感が良いとは言えないが、心に残る一冊である。

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2024年05月06日

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前半は面白そうだけど読み終えた瞬間は面白くなかったな、と思った。雰囲気は好きだったんだけどミステリや物語としては内容が薄い。
子供のホームレス問題やルーマニアの孤児問題など、そういう事実があることを伝えたかったのかも。

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2023年01月05日

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シリーズものと知らずここから読んでしまい後悔。訳の問題なのか、元々の文体なのか、さくさく読み進められるという感じではないけど、シリーズの頭から読んだらもっとしっくり来たのだと思う。現実に起きている問題を率直に忌憚なく描いた、北欧ミステリーらしい、終始重くて暗い内容。好きか嫌いかでいうと、少し苦手なかんじだったけど、もう少しこのシリーズを読んでみたい。

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2022年04月20日

Posted by ブクログ

暗く重い…
真実が土台のなっているがそれ以外は小説なので当然でっち上げだ…と著者は書いているが、その真実の部分が、なんと哀しくても辛くやるせないモヤモヤした気持ちが残り、読後感は悪い…。
しかし私はこういう小説は決して嫌いでは無く、むしろ好物である。

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2020年07月25日

Posted by ブクログ

ストックホルムで、バスに乗せられた43人の子供が放置される。病院の地下では女性の遺体が。地下道で暮らす者たちとの関係は・・・

同一作者の「三秒間の死角」や「死刑囚」と比べると落ちる感じがする。

子供たちが海外から連れて来られた話は実話らしく、動機は興味深い。しかし地下道で暮らす者たちの話が冗長に感じられた。

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2019年05月26日

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