石牟礼道子のレビュー一覧

  • 食べごしらえ おままごと

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    石牟礼道子さんといえば「苦海浄土」で、その作品で名を知った方なんだけれど、いまだその一冊には手を出せずにいる。数年前に手に取ったのは「椿の海の記」というエッセイのような自伝のような一冊で、そこには辛いことも楽しいことも、悲しいことも嬉しいこともごたまぜになった「生活」が記されていた。この一冊を知ったのは「生まれた時からアルデンテ」平野紗季子さんのエッセイで「この序文がすごい大賞(もしあれば)受賞。」と書かれていた。序文がすごいが、中もすごい。豊穣のエッセイ。そのまんまだった。

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    2024年05月06日
  • 椿の海の記

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    朝日新聞の熊本紀行で紹介された本である。チッソ水俣工場の行員が働いている姿が時々に描かれているが、多くはこどもが主人公(本人であるかは明確にされていない)の
    水俣の田舎での生活暮らしを描いたものである。

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    2024年03月26日
  • 食べごしらえ おままごと

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    作家が磨き抜かれた言葉で振り返る、天草、水俣で過ごした幼い日々の暮らしと食べごしらえ。味わい深い土地の言葉、凛とした父母の生き様、地に根差した食べ物。すべて失われて帰らぬからこそ、輝き、せつない。

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    2024年01月08日
  • みっちんの声

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    石牟礼さんの著書も池澤夏樹さんの著書も読んだことはない。作家ということ以外はまったく違う2人の対話は呼吸や間を感じるゆったりとしたもので、とても心地よくそして興味深いものだった。ときおり登場する渡辺京二の存在感は強烈。
    『のさり』という熊本の方言は特に印象に残った。

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    2023年11月28日
  • 魂の秘境から

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     本書は、朝日新聞に2015年1月から2018年1月31日まで掲載されたものを書籍化したものだが、著者が亡くなられたのが2018年2月であるから、正にその最晩年の肉声である。(その文章は口述筆記でされたようだ。)
     育った場所や家族との思い出、幼き日に束の間出会った友だちとの遊び、水におぼれたときの記憶、そうした懐かしさを語る合間、合間に水俣病の被害者の姿や、海や川の汚染の様相が炙り出される。
     
     自然と人間とのつながり、人と人との関わりについて、美しくも、力強い文章をたくさん残していただいた。一つだけここに特記しておきたい。2017年9月28日掲載「原初の渚」より。
    「海が汚染されるという

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    2023年07月26日
  • 椿の海の記

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    エッセイのようでいて異なる。自叙伝というのともまた違う。四歳のみっちんの視点で語られる水俣の記憶。石道楽の祖父、神経を患っている祖母、気のちっさい父とは裏腹に働きものの母。背負子から除いた山々の風景。物質の豊かさと精神の豊かさは別物で、貧しいながらもくるくると働き、四季折々のご馳走や仕込みをした世界。夢のような、幻のような世界がそこにあって、胸がきゅっとなる。

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    2023年02月23日
  • 椿の海の記

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    失われた時を求めて、遥かな鎮魂の詩である。水俣病前の風土というもの。生活というもの。自然といったいの、アミニズムの世界。
    子供もまた客人として、自伝的に楽園を描く。やがて来る破壊と悲劇の前の神話の世界。このころ、家々の暮らしの中身が、大自然の摂理とともにある。
    中上健次のあとに読むと、中上健次は土と魂。石牟礼道子は花と詩。によって象徴できると感じた。

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    2022年12月31日
  • 新版 死を想う

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    ネタバレ

     死についての対話、先日、曽野綾子と石原慎太郎の対話の本を読み、ほぼ対話になっていなかったことを覚えています。本書は石牟礼道子さんと伊藤比呂美さんの対話の形ですが、伊藤さんが聞き役といった感じです。「死を想う」、2018.7発行。石牟礼さんの言葉は、しみじみとした心に響く優しさ、そして重さがあります。「浜辺の歌」と「椰子の実」がお好きとか。3年前からパーキンソン病、起きるためにベッドの脇の柵を握る、ペンを握る、箸を握る、それぞれの握力の違いを吐露されてます。また、この病は、食品か環境からくるのではと。

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    2022年08月27日
  • みっちんの声

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    ネタバレ

     石牟礼道子さんと池澤夏樹さんの対談「みっちんの声」、2021.2発行。第1部(2008.7~2012.6)は石牟礼さんの自宅と療養先の施設で。第2部(2014.8~2017.11)は、入院先の病室で。「苦界浄土」に関する話が中心です。インテリや官僚が偉そうに使う言葉を四角い言葉、普通の人が話す言葉を丸い言葉。水俣病は水俣病ではなくチッソ病。チッソの人間は、謝罪、弁償をしないで、救済という言葉を。あたかも善意。思い上がりも甚だしい。

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    2022年08月15日
  • 新版 死を想う

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    此処にひとりのほとけさまがいる。
    もはや、詩人伊藤比呂美を聞き手にした石牟礼版「歎異抄」。
    人は何故生き、何故死ぬのか。

    ‥‥次の世というのは、あるんだと思いますよ。「次の世は良か所に、行かれませ」って言いますよ。亡くなったあとに、体を清めてあげるときに。
    ‥‥人間というのはね、「願う」存在だと思いますね。(略)逆に言えば、人間はそれほど救済しがたいというか、救済しがたい所まで行きやすい。願わずにはいられない。
    ‥‥(この世に生まれた意味は?と聞かれて)役割とも違いますね。役割を自分は見つけたとしても、その役割を果たすのは至難の業で、ただ、なんか「縁」がある。
    ‥‥(死とは何かを聞かれ)(賢

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    2022年05月04日
  • 魂の秘境から

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    石牟礼道子の遺作にして、原風景を辿る追想
    水俣の豊かな自然が、神宿る土地が、少女道子とともに生き生きと浮かび上がる。

    この本に水俣病の詳細は出てこない。でも私たちは知っている。彼の地で行われた非人間的な破壊を。

    そして想像する。この豊かな自然がかくも残酷な手段で奪われたという事実。我々が持っていたもの。我々が失ったもの。考え続けるしかない。

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    2022年02月05日
  • みっちんの声

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    池澤夏樹と石牟礼道子の対談集。池澤夏樹の石牟礼道子に対するひたすらな尊敬がストレートに伝わってくる。池澤夏樹のマシアスギリの失脚を読んだときに、すごく抑制されているように感じたが、そういうものと関係しているんだろうなと読んでいて感じた。石牟礼道子は苦海浄土を途中で断念しているので再度読まないといけないなと気持ちを改めました。。。

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    2021年11月01日
  • 西南役伝説

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    苦海浄土をまたぐようにして書き継がれたそう。島原の乱から西南戦争そして水俣病

    これが我々の来し方かもしれないが、自分はそこからなんと遠いところに生きているのだろう。でも、こうして読んでいて感じるところがあるのだから縁が途切れてしまっているわけでもないのかな

    天草はもう40年近く訪れていない。ただの海水浴でいいからまた行ってみたいものだ

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    2021年09月11日
  • 苦海浄土 わが水俣病

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    水俣病に苦しむ人びとの声にならない声を、著者がことばに書きとめた作品です。

    本書の巻末に収録されている渡辺京二の「石牟礼道子の世界」には、本書は正確なインタヴューやルポタージュではなく、著者自身が「だって、あの人が心の中で言っていることを文字にすると、ああなるんだもの」と語っていたことが明かされています。こうした著者のスタンスは、病に苦しむ人びとがうしなったものがいったいなんであったのかを的確にえがき出しているように思えます。

    病状などについては、本書のなかでしばしば引用されている水俣病にかんする記録の文章で客観的に示されており、また患者の状況についてはジャーナリスティックな立場からの取材

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    2021年02月03日
  • 新版 死を想う

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    石牟礼道子さん、読まなきゃ読まなきゃと思っているのに、まだ読んだことがない。まず「苦海浄土」だけでも読まないと。
    「梁塵秘抄」も通して読んでみたい。

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    2020年10月12日
  • 食べごしらえ おままごと

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    小池一夫さんが読むと懐かしくなる、と薦めていた本。
    読んでいた私は世代も育った地域も全く違うので懐かしくはならない。ただ九州育ちの義母なら知っている風景なのかな、と想像した。
    食べるためには野菜を作ること、下処理をすること、お釜を洗う事。一つ一つ手間がかかる。
    そしてその向こうに年中行事の九州の人々が見えてくる。料理の紹介というよりはエッセイみたいな本だと思った。

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    2020年09月03日
  • なみだふるはな

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    ネタバレ

    水俣から福島へ。
    近代の日本史において、国と企業の闘いが前景化・可視化され始めたのがサークル村による一連の活動からだったとするなら、そこから半世紀以上たった今、石牟礼さんは何を思うだろうか(何を思って旅立ったのだろう)。
    本書は、写真家の藤原さんとの対談であり、震災を契機として露になった政府や企業の暴力性を足掛かりに、水俣病とその後(母胎を通じて継がれる苦しみは、現在のものであり、未来のものだ)に言及しながら、変わらない構造的な暴力が紡がれる。
    日本には教科書に書かれていない公害がたくさんあったし、今も規模の大小に関わらず起こり続けている。その姿に接してきた二人の語りには、どこか諦めに近い幻滅

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    2020年05月11日
  • なみだふるはな

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    作家・詩人の石牟礼道子(1927~2018年)氏と作家・写真家の藤原新也(1944年~)氏が、2011年6月に熊本市の石牟礼氏の自宅で3日間に亘り行った対談である。2012年に出版、2020年に文庫化された。
    石牟礼氏は、天草市(現)に生まれ、1969年に発表したデビュー作にして代表作『苦海浄土~わが水俣病』(第1回大宅壮一ノンフィクション賞の受賞を辞退)は、文明の病としての水俣病を鎮魂の文学として描き出した作品として絶賛され、1973年にマグサイサイ賞を受賞、その後も、数々の小説、詩集のほか、創作能なども手掛けた。ノーベル文学賞に近い女性作家とも言われた。
    藤原氏は、北九州市(現)に生まれ、

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    2020年03月17日
  • あやとりの記

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    幼いみっちんとものたち、あのひとたち、狐さんや死人さん、山の神さま、気のふれた人々、社会の最底辺に追いやられた人々の歌、散文、言葉の交歓。取り囲んでいる自然、海、大木、川、風、光などのやわらかく、繊細な描写。短編を読み進めていくうちに、自分の中にある原風景が重なり合っていく。
    読み終えたとき、吉川英治の言葉を思い出した。
    「本当の人生の苦労らしい、苦労を舐めたに違いない人は、そんな惨苦と闘ってきたととても見えないほど、明るくて、温和に、そしてどこか風雨に洗われた花の淡々たる姿のようにさりげない人柄をもつに至るのである。なぜならば、正しく苦労をうけとって、正しく打ち克ってきた生命には、当然、そう

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    2019年07月22日
  • 遺言 ――対談と往復書簡

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    小学校の教科書に載っていた大岡信さんの「言葉の力」というエッセイで志村ふくみさんの名前を知って、そのまま忘れていたのに大人になって志村ふくみさんのお名前を見た瞬間に桜を染める話が鮮やかによみがえって以来、志村さんのファンです。書評でこの本を見かけて手に取って糸の美しさにどきどきしました。石牟礼さんといえば「苦海浄土」があまりに有名で重たい印象があり敬遠していましたが、「沖宮」観たくなりました。
    対談の内容については、わからないところもあり、納得するところもあり、色々ですがお二人の真剣に打たれました。

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    2019年04月30日