石牟礼道子のレビュー一覧

  • みっちんの声

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    貴重な対談記録。天草から来た叔母様方のきれいな言葉や、散々苦労されたハルノさんの声まで聞こえるように。能を一度しか見ていなくても能が書けることも、短歌では収まりきれないと散文に移った理由も、池澤夏樹という完璧な聞き手のもと全てが興味深い。

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    2021年04月10日
  • 食べごしらえ おままごと

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    ネタバレ

    とても好きなエッセイだった。
    お料理というよりもその背景にある熊本の人たちの暮らしや土の匂いが漂ってくる。著者の父親の生きざま、貧乏であるからこそ人間のプライドに向き合うということ、お金を使わずに食べものと向き合うこと。

    現代では難しい、とても難しいことが書かれていて心が痛いところもあったが、少しでも心の隅におきながら生活したいと思う。お団子とか、お菓子が作りたくなった。年に一度や特別なとき、四季折々のお祝い事など、折にふれてこんな料理をしてみたいなと思う。

    醤油のいいにおいが心に流れ込んでくる本。

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    2020年07月28日
  • 西南役伝説

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    天草四郎の乱

    弘化の一揆

    天草から北薩への移民

    西郷さんのいくさ

    太平洋戦争

    水俣事件

    これらを一本の糸に縒り合せて現出させる、本作の野心は恐るべきもの。
    小説の体裁としては「苦海浄土」が成し遂げたような、寸鉄を打ち込む隙も無い完璧さには至らないが、体裁が整わないが故の異様な迫力がある。

    再読を己に課したい。

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    2020年05月02日
  • 食べごしらえ おままごと

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    石牟礼道子が語る「食べごしらえ」は、いわゆるごちそうではないのだろうが、本当にうまそうなのは、これは、土と、海とをそのまま食べているようなものだからだろう。それに、村そのものと食べているような、家族・家の記憶がないまぜになる。そんな幸せな記憶が、こうして書き手を見つけて残されることの尊さを考える。

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    2019年06月02日
  • 魂の秘境から

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    こう言うと語弊があるかもしれないのですが、近所のおばあちゃんの昔語りを聞いているようで、とても読みやすいと思いました。なじみの土地への親しみ、懐かしく思う気持ち、それは本来多くの人が共感できるはずのことで、決して大仰なことではないはず。
    弱者の声など堰き止めてしまう不条理な壁のようなものも、水俣の人々が過ごした悲しみの時間も越えて、いまの私たちの心に直接響いてくる語りかけ。魂の震えを感じられる上質なエッセイです。

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    2018年10月16日
  • 石牟礼道子

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    新作能「不知火」は素晴らしい。竜神の姉弟が、汚染された海を浄化するために力を使い果たしてしまう。見かねた菩薩が二人をよみがえらせ再び出会わせるまでが、幽玄の舞台で繰り広げられる。「風の谷のナウシカ」を思わせる、巨大なテーマを持った物語だ。「不知火」は、この全集にしか掲載されていない。この作品を読むためだけでも、この本を読む価値がある。

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    2018年09月14日
  • 西南役伝説

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    西郷好きの私はこのタイトルに惹かれて読み始めたが、思いがけない世界に深く引きずりこまれた。
    宮本常一の「忘れられた日本人」に連なる我々の根っこに触れた感覚。

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    2018年07月24日
  • あやとりの記

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    当時福音館の雑誌「子どもの館」に連載され、「児童書」に分類されているのだが、 実際に読むのは児童ではなく親だろうけれど、 これを子供が読んだらなんと贅沢な読書体験だろうと思う。

    ***
    不知火に住むみっちんは、海と山に囲まれた村に住んでいる。
    村の人々たちは人間以外の海や山の”あのひとたち”の気配を感じている。
    あのひとたちは八千万憶の世から来らいました方々。
    あのひとたちの歌が聞こえてくる、 山のものと海のものが入れ替わる時は喧騒が起きる、人々を助けてくれることも、悪さをすることもある。
    山というのはなんと多くものを養っているのか、山と海とは入り混じりあい、山が海のものを養っているのか、海

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    2021年02月10日
  • 水はみどろの宮

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    八歳のお葉は船頭の祖父千松爺と二人暮らし。
    父と母は水に呑まれてしまった。
    両親がいなくて町はずれに住むお葉は村の子供たちと一緒に遊べない。
    お葉は大犬の”らん”と親しくなる。らんは盲の山伏に寄り添っていた犬で、きっと山の神様のおつかいだ。
    らんに連れられお葉は山の奥深くに入り込む。
    お葉は”ごんの守”に会う。

    ごんの守は神様のおつかいで、位の良い狐だ。そしてそのお役目は、山の胎の水を浄めることだ。
    お葉はごんの守と一緒に山のお胎(おなか)のような湖の底にお籠りをして、その時から山の声が聞こえるようになった。

    ある時地面が揺れ山が火と石とを飛び散らせる。
    山が火を噴けば石は飛び地面は割れ山

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    2021年02月10日
  • 椿の海の記

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    著者が過ごした不知火の思い出語り。
    祖父松太郎は天領天草出身を誇りとしている。土方仕事を「仕事は人を絞ってやるんじゃない、信用でやるんだ」と、天候による損失もすべて自分の山や土地を売って補填してきた。だから家はどんどん身代を崩していった。
    その本妻である祖母のおもかさまは魂が漂浪(され)き、盲の神経殿となり表を流離う。細い右足と象膚病で肥大化し膨れ上がった左足を引きずり着物の裾を破き歩く。おもかさまに付き添うのが孫のみっちゃん。 おもかさまは山に行けば「やまのものはカラス女の、狐女の、兎女のもんじゃるけん、慾慾こさぎっては成らん」という。家ではすっかり色の替わった白無垢をいじりながらみっちゃん

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    2018年05月23日
  • 西南役伝説

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    【わし共(どま)、西郷戦争ちゅうぞ。十年戦争ともな(※明治十年/1877年)。一の谷の熊谷さんと敦盛さんの戦さは昔話にきいとったが、実地に見たのは西郷戦争が初めてじゃったげな。それからちゅうもん、ひっつけひっつけ戦があって、日清・日露・満州事変から、今度(こんだ)の戦争―。西郷戦争は、思えば世の中の展(ひら)くる初めになったなあ。わしゃ、西郷戦争の年、親たちが逃げとった山の穴で生まれたげなばい】(P7)

    日本最後の内乱、西南戦争を知る地元の老人たちに聞いた聞き語り。
    著者が話を聞いた相手は、
    西南役からアメリカがアポロの打ち上げを行った時代まで生きた老人、亭主に嫁入りして八十年の老女、乞食非

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    2018年04月24日
  • 石牟礼道子

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    ネタバレ

    ゆっくり読め、は正しくそれこそ大切な話。ほかの本読めなくなるし。
    また読めるときに読みましょう。読む時間を作りあ商。こういう解説は古典や今とは違うものには有効だ。

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    2018年03月27日
  • 水はみどろの宮

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    ネタバレ

    久しぶりに心に染み入る本に出会えました。
    景色がすーっと目の前にうかんできて、思わず万物の神様に手を合わせたくなる、そんなお話しでした。
    苦海浄土とは違った感慨がありました。

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    2017年09月23日
  • 石牟礼道子

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    「椿の海の記」「西南役伝説」(抄)新作能「不知火」は再読です。「水はみどろの宮」は、とても幻想的な雰囲気が充溢し、読み進むにつれてどんどん物語の世界に惹きこまれていきます。日本語のもつ表現の豊かさがみごとに表れています。猫や狐の化身が登場することで、『苦海浄土』を想起しました。日本文学とはこういう作品をいうのだと思います。

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    2015年11月24日
  • 椿の海の記

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    時代も場所も異なっているのに、何故だかふたりの祖母と過ごした時間を想い出させてくれる。私も沢山語ってもらっていたんだな、と思う。

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    2015年08月06日
  • 死を想う

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     80歳、パーキンソン病の詩人、石牟礼道子さんと詩人・伊藤比呂美さんの「死を想う」こと。伊藤が聞き手となって、石牟礼の家族の死のこと、そして自分自身の死のことを聞いている。
     伊藤自身も両親を介護しながらだから、いずれかならず訪れるであろう身近な人や自分自身の「死」について考えている、うちに、話は「梁塵秘抄」に行き着く。後白河法皇の編纂した歌謡集で、平安時代の当時からどのようにして死んでいくか(そして、仏になるか)はずっと人々が思い悩んでいたということらしい。

     仏は常に在せども 現ならぬぞあはれなる
     人の音せぬ暁に ほのかに夢に見え給ふ

     なにかこう、人々が朝早くぱっちりと目が

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    2013年07月01日
  • 苦海浄土 わが水俣病

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    ネタバレ

    水俣病患者の悲惨さを書き綴った本。内容の悲惨の反面、患者の話す言葉を伝える文章の表現力の美しさに驚かされます。ところが解説を読むと、これは「忠実な聞き書き」の本ではなく、筆者が「話し手の心の中で言っている事を表現する」と、こうなるらしい。
    ... つまり本書は純粋なルポルタージュではないという事(解説者は「私小説」という表現をしています)。この点の評価は分かれるんでしょうが、私は名著である事は間違いないと思うのですが。

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    2013年01月27日
  • 十六夜橋

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    不知火に生きる人々の人間模様。
    旧家の女たちの因習、奉公勤めの少年の目に映る新しい世界、売られた少女の願掛け、主の娘達を見守り続ける重鎮の老人の想い。
    文章が美しく、人々の人間模様が織物のように重なり合います。
    神に供える姫人形と老人形師の物語や、想い人と心中した令嬢、神への踊りに励む青年など小さなエピソードがまた印象的です。

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    2012年02月04日
  • 苦海浄土 わが水俣病

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    まだまだ苦しんでいる人がいる。被害を受けた海や人々と密着している本。話し言葉の記述がすばらしい。臨場感を感じます。

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    2009年10月04日
  • 食べごしらえ おままごと

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    食にまつわるエッセイでさらさらとテンポよく読み進められるようで、読むごとに無性に郷愁がつのっていく。思い出す手仕事、食卓、人びと、土地の恵み。もう会えないとかできないことの切なさ。私は特に亡くなった祖母を思い出してしまった

    (最後にエッセイ全体を振り返った筆者が「今思うといかに(料理を)失敗したかという話をした方がおもしろかったかも…」と冗談めかしていた。確かにそんなのも読みたいかもと思った)

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    2025年09月29日