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公害という名の恐るべき犯罪、“人間が人間に加えた汚辱”、水俣病。昭和28年一号患者発生来十余年、水俣に育った著者が患者と添寝せんばかりに水俣言葉で、その叫びを、悲しみ怒りを自らの痛みとし書き綴った《わがうちなる水俣病》。凄惨な異相の中に極限状況を超えて光芒を放つ人間の美しさがきらめく。
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Posted by ブクログ
日本の現代史を考える上で避けては通れない一冊。 未だに裁判が続く理由は何なのか、当たり前の日常がどうやって奪われたのか、その声をどう届けようとしたのか等々、色々考えさせられました。
まだまだ苦しんでいる人がいる。被害を受けた海や人々と密着している本。話し言葉の記述がすばらしい。臨場感を感じます。
水俣病に苦しむ人びとの声にならない声を、著者がことばに書きとめた作品です。 本書の巻末に収録されている渡辺京二の「石牟礼道子の世界」には、本書は正確なインタヴューやルポタージュではなく、著者自身が「だって、あの人が心の中で言っていることを文字にすると、ああなるんだもの」と語っていたことが明かされて...続きを読むいます。こうした著者のスタンスは、病に苦しむ人びとがうしなったものがいったいなんであったのかを的確にえがき出しているように思えます。 病状などについては、本書のなかでしばしば引用されている水俣病にかんする記録の文章で客観的に示されており、また患者の状況についてはジャーナリスティックな立場からの取材によって明らかになるはずです。しかし、病によってうしなわれた、それまで彼らがあたりまえのものとして過ごしてきた日常は、われわれにとって容易に知ることのできるものではありません。著者は、そうした患者たちの声なき声をことばにすることで、その困難な課題を果たしているように感じられました。
本当は1968年に講談社から出た単行本のほうを読んだのだが、検索で引っかからなかったため此方に。 今日まで未解決のまま続く水俣病。事件の外面的事情は色々なところに書かれているが、この本は現地の人々の声をルポした筆者がその時系列順にそのまま綴ったというドキュメンタリーな一冊。 水俣病は何が問題だっ...続きを読むたのか。この事件が被害を受けた人々にどのように捉えられていたか。そしてその加害者側の人々の対応はどうであったか。 水俣病を患う人々、とくに医学的に証明されている胎児生水俣病を病んでいながら、それが政治的には認められていないため未認定患者として打ち捨てられている人々の問題は、たんに水俣病患者だけの問題ではない。 東大や東電、そして政府の安全神話に騙され家や仕事を追われてもさしたる保障を受けられない人びと、東京でその安全神話を利用し享受しながらファッションの脱原発を唱える人びとの構造。 身分相応の会社に行けといわれて就職先を失い、あるいは労基法を遵守しない会社に追いやられ、精神を病み、あるいは過労し、あるいは死んでいく人びと。その上にあぐらをかいて、努力が足りないとかマッチングとかという言説を駆使して搾取を続ける人びとの構造。 枚挙にいとまがない。人の命を脅かしながら安穏としているこの社会、あるいは人びと。水俣病はこれの縮図といっていい。それを真摯に書き写したのが石牟礼である。社会問題が山積する今日、もう一度、多くの人にこの本を手にとって欲しい。
匿名
憤りと叫び
こういう表現が適切かは分からないが、作者に神様が乗り移って書かせたような、そういう文学だと思う。被害者たちの壮絶な叫びと、憤りの極限で研ぎ澄まされた作者の言葉が胸をえぐる。 水俣の人々にとって、「会社」は市の発展の象徴であり、心のよりどころであり、問題発覚後もそうであり続けたことを初めて知った。そ...続きを読むして、それを守ろうとする市民の感情が、被害者たちと対立・圧迫する形になってしまったことも。どこまでも因果な話だと思った。
水俣病患者の悲惨さを書き綴った本。内容の悲惨の反面、患者の話す言葉を伝える文章の表現力の美しさに驚かされます。ところが解説を読むと、これは「忠実な聞き書き」の本ではなく、筆者が「話し手の心の中で言っている事を表現する」と、こうなるらしい。 ... つまり本書は純粋なルポルタージュではないという事(解...続きを読む説者は「私小説」という表現をしています)。この点の評価は分かれるんでしょうが、私は名著である事は間違いないと思うのですが。
水俣病レポート。小説。ノンフィクション。 どの分野になるのかよくわからない。 このタイトルと名前ではわからなくても、「もう一ぺん人間に」は国語の教科書に載っていたぐらいだから、記憶にある人も多いだろう。まあ少なくても無夜と同じ教科書を使わされていた人は強制的に読まされたはずだから。 読んで騙さ...続きを読むれるといい(笑) 石牟礼道子の世界というところに答えがある。 無夜としては「あっそう」という程度のショックだが、これをバイブルにしかけていた人にはこのオチはひどいかも。 この人は人間の作り方がすごくうまい。無夜がこうほめるときは、汚さがよく書けているということだけれど、被害者の憎悪とかがわかりやすい。 「おまえらもみんな水俣病になっちまえ」と自分たちを揶揄する奴らにののしる。 「日窒の偉い人から順に同じ数だけ水俣病になれ。奥さん方も水銀を飲んで、同じ数だけの胎児性が生まれるように」と、憎悪の言葉をしたたらせる。 これがよくわかる。わかりすぎるぐらいわかる。 辛い話なのだけれど、あちらこちらが妙に明るい。それが不思議だ。 人がぼろぼろ死ぬ。苦しむ。治る見込みはない。それでもどこかで何かが作用している。 行き過ぎた絶望による開き直りなのかもしれない。
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