十六夜橋 新版

十六夜橋 新版

小説・文芸
1,067円 (税込)

5pt

5.0

南九州・不知火(しらぬい)の海辺の地「葦野」で土木事業を営む萩原家。うつつとまぼろしを行き来する当主の妻・志乃を中心に、人びとの営み、恋、自然が叙情豊かに描かれる傑作長編。作者の見事な筆致で、死者と生者、過去と現在、歓びと哀しみが重なり、豊饒な物語世界が現れる。第三回紫式部文学賞受賞作品。

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  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    筑摩書房
  • 掲載誌・レーベル
    :
    ちくま文庫
  • タイトル
    :
    十六夜橋 新版
  • タイトルID
    :
    1367266
  • 電子版発売日
    :
    2023年06月16日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    北から順に、

    長崎 ……お小夜がみずなとして遊郭に。直衛が仕事で(三之助を伴って)たびたび訪れ、お小夜を落籍。
    ↕
    天草 ……志乃の出身。お糸と重左。
    ↕
    葦野=水俣 ……萩原家。直衛。嫁いだ志乃。娘のお咲。婿入りの国太郎。孫娘の綾。
    ↕
    薩摩 ……弟の三之助と姉のお小夜の出身。
    (すべて不知火海の近辺)

    という位置関係だと整理した。

    で、同じく著者の家族を題材にした「椿の海の記」で、以下のようにメモした。

    ・祖父。松太郎。天草の石。天草出身の石工。
    ・祖母。おもかさま。めくらさま。蓬髪。狂女。神経殿(どん)。漂浪(され)く。
    ・後妻。おきやさま。権妻殿(ごんさいどん)。
    ・大伯母。お高さま。祖父の姉。肉食を忌避。
    ・大叔母。お澄さま。おもかさまの妹。
    ・父。亀太郎。入り婿。焼酎。
    ・母。春乃。
    ・国人。春乃の兄。松太郎とおもかさまの子。跡取りだったが、29歳で死んだ。
    ・叔母。はつの。お洒落。
    ・わたし。みっちん。狐。
    ・弟。一(はじめ)。病死。
    ・ぽんた。末広の遊女。淫売。花魁。殺害される。
    ・髪結いの沢本さん。

    これを本作と対応させたら、

    直衛=松太郎。
    志乃=おもかさま。
    お咲=春乃。
    国太郎=亀太郎。
    綾=みっちん=著者。

    上の位置関係には書かなかったが、「椿の海の記」(1976)における、国人とか、お高さまとか、対応する人は本作(1992)にもいる。
    が、果たして、お糸と重左は、「椿の海の記」に出ていたか?
    綾にあたるみっちんに、育て役の青年っていたっけ? たぶんいなかった……と思う。
    ということは、おそらく、お糸と重左のような、高貴な娘に対する、使用人の青年の悲恋、が本作の意義。新たなステップ。
    しかも、重左が三之助に重ねられたり、お糸と志乃と綾が重ねられたりするように、歴史は繰り返す……ループする……輪廻転生する……しかも三之助が、噂として重左の存在を聞いて意識したり、志乃の認知の中で混濁したりするように、時間は単線だが、人(個人というよりは共同体の)の記憶の中では同時に存在することもある。
    中上健次は、相当初期の詩作で、「世界はいつまでもギリシア悲劇を上演している」と書いていたが、中期以降の作品でオバら(共同体)の噂話という、個人の集合体を語りの主体にした、つまり語りは騙りであると表明した。
    脱線したが、本作の「行きつ戻りつ」する、場所と記憶の記述って、中上に影響あったんじゃないかしらん?
    ひとつの小説として、ある場所のある共同体を描くわけだが、作中で語りの在り方が混交する……視点人物が特定人物ではなく、拡散していく……手法を取ることで、近代的小説という枠をはみ出そうとするような。
    石牟礼道子を読むことで中上健次に再入門できることの、僥倖。
    できたら、「椿の海の記」と「十六夜橋」の、発表年として中間にあたる、「あやとりの記」も、読んでみたい。

    0
    2025年04月09日

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    ひときわ悲哀を感じさせる物語で、余韻を噛み締めた。
    土木業を営む萩原家を中心として、その現在と過去が継ぎ目なく語られていく。夢か現か、次第にどちらでもよいように思えてくる。きっと志乃の生きている世界はこれに似ているのだろう。
    盲目で夢の世界に生きている志乃は、本人はあまり多くを語れないのにも関わらず、その存在感が強く印象に残る。ときどき正気に戻ったように喋るのが切ない。志乃と娘のお咲、孫の綾が愛情という絆で繋がっているようで胸が熱くなった。いつかあの世へ渡るとき、よき舟がこの親子のもとに迎えにきてくれたらいいのにな。
    土木業界の騒がしい宴会の場面から始まったために、荒々しい男性の世界という印象から始まったけれど、読み進めていくうちに守りに長けた男性も数名登場するのが興味深かった。十把一絡げではなく、それぞれの心をひらいて性格を示していくところに丁寧さを感じた。実直でしなやかな強さと奥ゆかしさを備えた重左と三之助にはやはり好感を持った。一族のお姫さまを守る役割を立派にこなし、かつ一族の土台を支えているような男たち。
    小夜のことも気になるし、まだまだずっと読んでいたい物語だった。

    0
    2025年03月11日

十六夜橋 新版 の詳細情報

  • カテゴリ
    :
    小説・文芸
  • ジャンル
    :
    小説 / 国内小説
  • 出版社
    :
    筑摩書房
  • 掲載誌・レーベル
    :
    ちくま文庫
  • タイトル
    :
    十六夜橋 新版
  • タイトルID
    :
    1367266
  • 電子版発売日
    :
    2023年06月16日
  • コンテンツ形式
    :
    EPUB
  • サイズ(目安)
    :
    1MB

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