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食べることには憂愁が伴う。猫が青草を噛んで、もどすときのように――父がつくったぶえんずし、獅子舞の口にさしだした鯛の身。土地に根ざした食と四季について、記憶を自在に行き来しながら多彩なことばでつづる豊饒のエッセイ。著者てずからの「食べごしらえ」も口絵に収録。
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Posted by ブクログ
郷土の暮らしと料理 熊本の方言が出てくるとその人たちが目の前に現れてくるようだ 「お米」がとても良かった
石牟礼道子が語る「食べごしらえ」は、いわゆるごちそうではないのだろうが、本当にうまそうなのは、これは、土と、海とをそのまま食べているようなものだからだろう。それに、村そのものと食べているような、家族・家の記憶がないまぜになる。そんな幸せな記憶が、こうして書き手を見つけて残されることの尊さを考える。
食にまつわるエッセイでさらさらとテンポよく読み進められるようで、読むごとに無性に郷愁がつのっていく。思い出す手仕事、食卓、人びと、土地の恵み。もう会えないとかできないことの切なさ。私は特に亡くなった祖母を思い出してしまった (最後にエッセイ全体を振り返った筆者が「今思うといかに(料理を)失敗したか...続きを読むという話をした方がおもしろかったかも…」と冗談めかしていた。確かにそんなのも読みたいかもと思った)
石牟礼道子さんといえば「苦海浄土」で、その作品で名を知った方なんだけれど、いまだその一冊には手を出せずにいる。数年前に手に取ったのは「椿の海の記」というエッセイのような自伝のような一冊で、そこには辛いことも楽しいことも、悲しいことも嬉しいこともごたまぜになった「生活」が記されていた。この一冊を知った...続きを読むのは「生まれた時からアルデンテ」平野紗季子さんのエッセイで「この序文がすごい大賞(もしあれば)受賞。」と書かれていた。序文がすごいが、中もすごい。豊穣のエッセイ。そのまんまだった。
作家が磨き抜かれた言葉で振り返る、天草、水俣で過ごした幼い日々の暮らしと食べごしらえ。味わい深い土地の言葉、凛とした父母の生き様、地に根差した食べ物。すべて失われて帰らぬからこそ、輝き、せつない。
小池一夫さんが読むと懐かしくなる、と薦めていた本。 読んでいた私は世代も育った地域も全く違うので懐かしくはならない。ただ九州育ちの義母なら知っている風景なのかな、と想像した。 食べるためには野菜を作ること、下処理をすること、お釜を洗う事。一つ一つ手間がかかる。 そしてその向こうに年中行事の九州の人々...続きを読むが見えてくる。料理の紹介というよりはエッセイみたいな本だと思った。
手が荒れてしまうからアクの強い野菜を扱うのは避けてしまいがちだけど、そういう軟弱な姿勢を見直したいと思いました。思い通りにいかない野菜や魚にちゃんと向き合って、おいしく食べる気概。
読み進めるうちに、映画「阿賀に生きる」の映像が頭に浮かんできた。作者の名前を見て、あの「水俣」の、とつい思ってしまったが、「阿賀に生きる」に描かれた阿賀野川流域と同様、水俣にも豊かな自然と風土、四季折々を慈しみ、節目節目を大切にする人々の生活があったのだ。この本ではそういう暮らしが「食べごしらえ」を...続きを読む通じていきいきと描かれている。それは公害病という災厄に見舞われても、その災厄と様々な形で付き合わざるを得ないということも日常に取り込みながら、続いてきたのだろうと思う・・・阿賀野川流域がそうだったように。
生きることをかみしめながら、口に運ぶものを自分の手でこしらえる石牟礼さん。 その豊かな記憶の広い世界が描かれていた。 食べごしらえ、おままごとの中に描かれていることもすでに失われているものが多い。私などよりも、描かれている出来事を体験したことのある読者の方が受ける感銘は大きいのではないかと思う。文...続きを読む章の感触は失われなくてもそういうことはありそうでうらやましい。 FOOD2040によると、2040年には日本の食品の70%が家庭外で作られるようになるとされているから驚いてしまうが、徐々に進行しつつある気はする。服の主流が既製服になったように、既成食になっていくのか。 そうした意味でも今読んでみると、苦い記憶のようにつきささるエッセイだった。冒頭文の猫が草を食む描写などがすばらしい。
食べてきたもの、作ったものが 思い出と結びついている。 熊本の郷土料理のことも いろいろ書かれていますが 祭事や行事の記憶も綴られていて その料理がその土地で 愛されてきたのがわかる。 母の行商についていって待ちぼうけ。 洗い場の女衆たちが 大きな夏蜜柑をくれたという逸話に ちょっとほろり。
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